ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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卯ノ花隊長をゾンビ化させていますが、実力は落ちないという設定を考えた上で今回の話を書いています。
あとは書きたい部分があったのですが、卯ノ花戦と同じくご都合感は否めないと思います。
あくまで本作においての解釈という事ですので、皆様の寛容な対応をお願いいたします。


『逆鱗 - Touch Fools-』

「警戒はするが……」

 

狛村を沈めた内容。

感じる霊圧は卍解のもの。

すなわちゾンビになっても『技』を失っている訳ではない。

しかし大きなものが欠落している。

 

「いつもなら全力で長く長く斬り合っていたいものですが……」

 

だが、それはあり得ない。

有ってはならない。

起こしてはならない。

 

「苦しめずに速く決着を付けます」

 

例え表面上の強さは変わらなくても負ける訳が無い。

俺は確信している。

 

「……」

 

無言で斬撃を繰り出してくる卯ノ花隊長。

それを再度受け流す。

するとずるりと音が聞こえた。

お互い、どこかの部位が斬り落とされたわけではない。

 

「足を取られたか」

 

俺の足元の音ではない。

溜息すら出そうになる。

こんな失敗を普段通りのあの人ならばしない。

 

「永遠の地獄を彷徨わせてはならない」

 

血を求めるか何かはある。

折角、役目を渡してやり遂げた人をあんな小僧の傀儡にしてはいけない。

 

「……!」

 

ただ速いだけの斬撃。

迫ってくる殺気すらない。

結果的に斬り殺せるだけ。

決意もない刃に価値は無い。

 

「感情が無いとこんなにも……」

 

『心技体』のうちの『心』を失っている。

そのせいで十全の力を発揮できてるとはいいがたい。

 

俺は歯軋りをしてジゼル・ジュエルを憎む。

終われた人を叩き起こして己の欲だけに使い古す。

自分の滅却師としての力を見せて来い。

 

「もうお辛いでしょう」

 

刀の一撃が速くとも見える。

それはただ虚しい。

中身のない斬撃は哀しい。

やり残した人ならばまだしも終えたのだ。

最早、抜け殻と言って差し支えが無い。

 

「これで終わりにします、この一撃で貴方を救います」

 

その一撃を受け流す。

いつもならこれすらも読みきられていただろう。

そう言う頭脳面に衰えはなくとも、強さに陰りが無くても。

人生を支えたものや心が無ければ全てを有してなどいない。

 

「長い時で錬磨したものを捧げます」

 

一閃。

己の戦力をこの一撃に注ぐ。

今までの稽古の全てを貴方に。

 

「最初で最後の私の無礼と我儘をどうか許してください」

 

納刀して俺は呟く。

手応えがあった。

其れこそこれ以上ない斬撃だった。

今までの全てを余すことなく届けられた確信があった。

 

「弱くなってしまった貴方を見たくは無かったのです」

 

あの斬り合いをしたのは俺が憧れた貴方ではなかった。

貴方の皮を被っただけの何かだった。

ジジによって感情を奪われた斬撃の数々。

それは遠い思い出の中の貴方の像には結びつかない。

あんな濃厚な死を感じさせる貴方には程遠い。

 

「……貴方に渡して正解でした、後は頼みましたよ」

 

支配から逃れていた卯ノ花隊長の言葉。

それは染み入るものだった。

 

「お休みなさい、隊長」

 

呪縛から解かれた師に労いの言葉をかける。

背を向けたまま呟く。

殺気を漲らせて奴を視界にとらえる。

 

「俺は言ったはずだぞ」

 

調子に乗れば地獄を見せるとな。

ひよ里さんが見ても恐ろしさを感じるほどの非人道的な拷問を加えよう。

 

「頭下げて謝れよ、そんな礼儀もねえか?」

 

目隠しを取って睨み付ける。

全員が僅かに体を震わせている。

ジゼル・ジュエルは堂々としているがその態度が俺をさらに苛つかせる。

 

「頭下ろさせてやるよ、『滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり 否定し 痺れ 瞬き 眠りを妨げる

爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち 己の無力を知れ破道の九十『黒棺』』」

 

完全詠唱の黒棺。

それは地面を陥没させていく。

周囲に居たジゼル・ジュエルも例外ではない。

 

「ぎゃあっ!!」

 

落とされてそのまま地面に這いつくばる。

指一つ動かせない。

隊士の奴らも近づけなくなっていた。

 

「さて、拷問の時間だな」

 

指を鳴らして近づく。

このまま殺してもいいんだが気が済まないからな。

 

「何をするつもりだよ……」

 

お前ら滅却師にとっての拷問とは何だろうか?

あれだけの能力を発現できたとは思えない。

もし、ユーハバッハから貰っているとしたら……

 

「お前にはユーハバッハを裏切って貰おうか」

 

恩を仇で返してもらう。

其れこそが一番いやらしい拷問だろう。

当然そんなものが承認できるわけもない。

ジゼル・ジュエルが反論の為に顔をあげるが……

 

「ふざけ……」

 

言葉を言い切る前に顔面を踏みつける。

誰が反論を許すといったんだ。

お前は頭を垂れて研究材料になる喜びをかみしめるべきだ。

何故ならば……

 

「貴様は卯ノ花隊長という我々死神側の偉大なる方を利用した、その償いを貴様程度では不釣り合いだが許してやろうと言っているんだよ」

 

俺の私的な拷問ではなく、瀞霊廷や護廷十三隊の為の犠牲に切り替えたのだから。

もし、私的な拷問だったらそれこそ死んだほうがましと思えるほどのものになっていたよ。

 

「協力する気が無くても強制的に隷属させてあげるよ、従順な捨て駒になれるようにね」

 

雛森副隊長が若干恐ろしいものを見るような目をしていた。

狛村も清廉潔白な所しか見えてなかったからか驚いている。

 

「卯ノ花隊長じゃなくても運が悪ければこの結末だった」

 

ましてやあの人にこんな真似をしていたらお前はもう原形もとどめないほど切り裂かれていただろう。

その上で生きているか死んでいるか分からない状態にまでしていた。

 

「この薬剤を打ち込んでしまえばお前は自我も何もなくなり従順な傀儡だよ」

 

そう言って首に打ち込む。

目の光が徐々に失われていき、体をひくひくとさせている。

やがて立ち上がらせると頭を下げてきた。

 

「次はこいつだ」

 

再度薬剤を打ち込む。

これは『虚化薬』といい昔の研究で作ったもの。

それを引っ張り出してきたのはこいつらへの特効薬としての役割りがあるからだ。

 

「これで純粋な滅却師ではなくなる」

 

ゆえに裁きを受けるだろう。

これで拷問は終了。

 

「次は六番隊まで戻ろうか」

 

そう言って向かって行く。

いつの間にやら十三番隊から移動していたのだろう。

ひよ里さんの霊圧も感じ取れた。

 

「流石に向こうの戦力も削がれているはずやろ」

 

平子がそう言うが首を振る。

まだまだ相手は手の内を見せていない気がする。

本当に厄介な奴はおいているか護衛に回しているだろう。

無論、今までの奴も厄介で強い奴らも多かったが。

 

「バンビエッタ・バスターバインが情報漏洩しないもんだから確証が無いんだよ」

 

もうここまで付いて来ているんだから言った方が良いのに。

傍から見たら完全に裏切り者だよ。

今更なんだし、少し他の滅却師の名前出したっていいじゃないか。

 

「言うわけないでしょ」

 

そんな事を言っていると六番隊に着く。

すると檜佐木副隊長が倒れていた。

マスク・ド・マスキュリンにやられたばっかりだろ、お前。

拳西さんが見たら溜息出るぞ。

 

「これは……」

 

バンビエッタ・バスターバインも驚いている。

三人ほどの滅却師も横たわっている。

バンビエッタ・バスターバインの取り巻きも向かっていたがそうでもないようだ。

中心に立っているのは朽木隊長でその周りに阿散井君と朽木三席の二人が立っている。

 

「檜佐木さんに続いて……」

 

阿散井君が歯を食い縛って言う。

その視線の向こうには見慣れた姿があった。

少し様子がおかしい。

その後ろには肌の色が黒い滅却師がいた。

 

「ミーの操り人形だよ」

 

そう言って満面の笑みを浮かべる相手。

構えているひよ里さん。

なるほど、そう言う事か。

 

「俺が相手だ」

 

他の奴らに手出しはさせない。

阿散井君にも朽木三席にも。

其れこそ朽木隊長もだ。

 

「思う存分、全力でかかって来なさい」

 

そう言って向かい合う。

眼は向いてはいるが揺らぎがある。

 

「完全に操られてはいない」

 

霊圧で鬩ぎ合っているのだ。

既に操られていたら他の奴らに襲い掛かっている。

それが無いから構えている状態なのだろう。

 

「戻してあげますからね」

 

防御をせずに真っ直ぐに足を進める。

無論、そんな無防備な状況を操られているとはいえひよ里さんが逃すわけがない。

 

「おらっ!!」

 

斬撃は深く傷をつける。

血が流れるがお構いなしに突き進んでいく。

 

「はあっ!!」

 

再度傷をつけていく。

それから五月雨のような斬撃。

血は流れていく。

反撃をする事も無く進み、眼前へと迫った。

 

「退くものかよ……」

 

貴方の心の中で流れる血の涙に比べればかすり傷に過ぎない。

俺は刀を振れないように抱き留める。

怒りの念もなく諭すように。

 

「もう大丈夫、貴方の心はそこにある、貴方の芯は揺らがない」

 

抗ったからこれだけの傷で済んだのだから。

本当に奴の味方なら今頃絶命していただろう。

 

「苦しかったでしょう」

 

本来やりたくもない事をする。

それは貴方にとって如何ほどの苦しみか。

その言葉で操っていた力が無くなったのだろう。

こちらを見据えていた。

 

「ウチ……なんて事」

 

項垂れるひよ里さん。

辛かっただろうな。

でも気にしなくていい。

貴方の意志ではないのだから。

 

「密着してもミーの愛には勝てないよ、斬っちゃってよ、ザックリとさ!!」

 

そう言っても動きはしないひよ里さん。

何故かと首を傾げる相手。

 

「お前のは所詮上っ面だけのしょうもないものだ」

 

俺が立ち上がって睨み付ける。

回道で治していく。

其れに並ぶように立ち上がるひよ里さん。

 

「心を一時的に操っても歩んだ年月を無為には出来ない」

 

操作から解き放たれたひよ里さんを見て驚く相手。

お前もジジも随分と愚かな真似をしてくれたな。

 

「死ね」

 

俺はそう言って向かう。

相手は笑いながら手で何かの形を作って光線を撃ち始める。

それに当たるものの何も起こっていない。

その状況に相手は驚く。

 

「なんでミーの愛が通用しない!!」

 

何発も打つが無駄な事。

あの人を苦しめた時点でお前は許されない。

愛情なんぞ微塵もわかない。

 

「逆鱗に触れたものを愛するほど寛容ではないんでな」

 

普通に考えたらそうなるよね。

これでお前に愛情を抱けるなんて聖人ぐらいのものだよ。

俺はそんな高尚なものではないから憎悪剥き出しで進む。

 

「この…犬グソ野郎が……」

 

その言葉を聞き入れて、相手の首を斬り落とす。

滅却師って奴は人の大事なものを土足で踏みつける奴が多いんだな。

 

「どうやら結構片付いているようだな」

 

しかしまだまだ一波乱はある。

相手の右腕も出陣していないのが根拠だ。

向こうに人影があった。

こちらに向かってくる鳳橋さんと拳西さん。

そんな最中、霊圧が立ち昇る。

 

「これは…」

 

更木の霊圧だった。

あの初めて見た時よりを凌駕する霊圧。

これこそが本来の強さなのだろう。

あの人が『剣八』に相応しいと認めるのも納得だ。

 

「相手もどうやら強敵だろうな」

 

そう言いながら今の状況を整理するのであった。




『心/技/体』があってこその全力という事で斬術の技量や身体能力は落ちてないけども、足を取られたり斬撃に殺気が無いという形を取りました。
日番谷隊長もゾンビ化した時に『涅だから何か仕込んでいる』みたいな警戒心出してない時点で、多少知性にも影響出てそうです。
ペペの奴は『虚の霊圧があるから効きが弱かった』+『白哉の様に精神力強かったら影響がほとんどない』というのが理由です。
最後のあれはマユリのゾンビみたいに愛情を相手に感じてないのが理由です。

何かしら指摘がありましたらお願いいたします。
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