ガーベラに寄り添うネリネ   作:勿忘草

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今回は今までスポットを当ててなかったキャラの躍進です。
設定時から書きたい部分を書けるのが増えるので千年血戦編は良いです。
眠六號の生死に関してはかなり迷いましたが…


『蛇の牙 - Snake Fang - 』

副隊長と隊長が大勢居る中に降りてきた滅却師。

攻撃力や俊敏さも含めて凄まじい。

 

「でも、まぁ……」

 

多勢に無勢という訳や。

全員が一気に攻撃を仕掛ける。

相手も血を流してぼろぼろになっていくのはよく分かるわ。

 

「こんなん、勝てるわけないやろ」

 

ワイがそう言うと背中を蹴られる。

ひよ里が気を引き締めろって言ってきおった。

相も変わらず真面目さんな事やで。

 

「それならばこの状況を覆すのは『奇跡』という事だ」

 

そう言って立ち上がる相手。

しかしその大きさは異様なものになっていく。

見上げても顔すら視認できない。

 

「受けた傷を神の尺度に変換して我が力とするのだ」

 

つまり傷を受けたらその損傷の大きさで強さが上がっていくという訳や。

こういう相手にはワイの卍解が有効になる。

『概念』を逆さにしていくから相手にもろに刺さるやろ。

ただ、卍解するのはええ。

でも深手を負わせて再生するまでが無理や。

 

「まずは薙いで雑兵を一掃しようではないか」

 

そう言って相手が剣を構える。

なんか体と同じようにでかなってないか?

そんな考えを一蹴するように勢い良く薙いで行こうとする。

しかし次の瞬間……

 

「ぬっ!?」

 

相手が驚いた顔を浮かべている。

刀で平然と受け止めていた。

質量も何も関係ない。

そう言わんばかりに。

 

「名前聞いていないから名乗りを上げてくれよ、滅却師」

 

斑鳩が堂々たる姿で相手に声をかけていた。

ええ所で来たわ。

唯一、今の面子の中では即座に致命傷を出せる男。

しかも何人か後ろに居るし。

 

「ええ感じやで」

 

ここからは相手の優勢を失わせる。

そしてこちらの土俵にさえ送り込めば問題ない。

 

.

.

 

俺が来た時には既に一人の死神がいた。

滅却師と見合っている。

このまま後ろから斬り殺すか?

いや……

 

「麻酔を打って人体実験の検体とするか」

 

注射器を取り出して相手の肉の柔らかい箇所を見定める。

その攻撃と殺気に気づいたか首を動かす。

こっちを見てくる顔は見覚えがある。

 

「開発局から出てきた滅却師かよ」

 

尚更実験体にしねえとな。

もしくは土に還してやる。

こっちの大事な場所に土足で入り込んできて、機器とかぼろぼろにされて苛ついてんだよ。

 

「隙だらけだぞ!!」

 

その言葉を皮切りに相手の滅却師は殴られる。

『瞬閧』を使えるあたり、四楓院元隊長に関係が有るな。

雨霰のように打たれていく。

炎を纏っている拳に打たれて皮膚が焼かれていく。

 

「どんなものだ!!」

 

拳を打ち付けて勝利を確信していた。

蹲っているが何か隠している。

あえて隙を晒しているような形だ。

 

「姉様の手を煩わせるまでも無い、とどめだ!!」

 

それを感じ取る事はなく攻撃を振り下ろして滅却師との決着を付けにかかる。

熱くなっているがこういう時こそ冷静になっていた方が良い。

相手がニヤリと笑っているのを見逃さない。

そのまま向かってきた攻撃を顔面で受けて言葉を放つ。

 

「おたくの攻撃はもう俺には効かねえよ」

 

相手のその目に嘘がない事は分かる。

そのまま反撃を許すわけにはいかない。

俺も多少は手助けしておかないとな。

 

「ふっ!!」

 

薬品をぶん投げる。

当然当たればただでは済まない。

相手に一直線で向かって行く。

 

「くっ!!」

 

相手がその危険性に気づいて回避する。

何とかこれで逃れる事は出来たが何処か危なっかしい。

 

「疑うのは結構だが、相手の目を見て真偽を見極めないと危ないぞ」

 

真偽も考えずに猪みたいに向かって行って楽に勝てるわけがない。

実質あのままなら致命傷を負ってただろうし。

 

「あんたは……」

 

相手は俺の事を覚えていたらしい。

まあ、死覇装を着ていないから少し記憶の片隅を探っていたんだろう。

はた目から見たらただの白衣着た野郎だからな。

とにかく相手の分析を行う。

さっきまでは無防備に喰らっていた。

そして急に掴んでいたり、新しく顔に火傷の跡がついていない。

 

「ある一定の攻撃を喰らえば耐性が付くのが能力か?」

 

とにかく防衛手段なり倒すなり、検体にするなり用意をする。

刀を抜いて相手をする。

まったく……斬魄刀を使うなんざ久々すぎるな。

 

「『蝕め』、『銀蛇』」

 

先が鋭い針状になった刀。

刀身に一定の間隔でギザギザした形になっている。

その先端も針状となっていて毒の注入に特化したのがこの特徴だ。

 

「えらく物騒な刀だ、怖いっての」

 

振り下ろす軌道を見て最小限で相手が避ける。

地面に事前に用意した毒物を注入したらどうなると思う?

罅が入った地面から噴き出てくる液体が相手へと飛沫を散らす。

 

「なにっ!?」

 

相手の肩と足の付け根に飛沫がかかり、炎症を引き起こすように煙が上がる。

火傷したように爛れていくのは肉だ、

もっと被ってくれれば酷いものになっていたのに。

 

「痛い真似してくれるぜ」

 

そういうものの俊敏性は落ちている。

このまま攻撃を仕掛けていく。

そう思った矢先、四楓院元隊長の弟が攻撃を仕掛けていた。

 

 

「隙を見たつもりだろうが無駄だって、あんたの霊圧に耐性を持ったんだからさ」

 

相手が攻撃に動じていない。

副産物と言えど霊圧が元になる部分は完全に遮断されているのが分析できる。

ならば相手を殴るのが主な目的でなければどうなるのか。

思い立った俺はすぐに指示を飛ばしていた。

 

「地面を殴ってくれ!!」

 

俺からの指示に首を傾げながらも殴ってくれる。

砕ける床が周辺に散らばり、炎が相手の足場をわずかに横切って道を塞ぐ。

十分すぎる成果だぜ。

 

「なんのつも……!?」

 

相手もいきなりの目的の変化に驚く。

さっきまで直接殴りに来たのに足場を崩す方向へ転換したからな。

でもそういう行動の奥に目的は隠されている。

俺は何気なしに腕を振っていた。

 

「こういうつもりだよ」

 

俺の言葉と同時に響く轟音。

単純に爆弾を使ったのだ。

霊圧もくそもない物理攻撃。

原始的な一撃の前に相手は吹き飛ばされていった。

 

「加勢させてもらうぞ」

 

後ろの気配に気づいて俺は振り向いた。

この状況を打開するには十分な人材。

俺達ではどうしても厳しい場面が増える中で有難い。

 

「阿近と夕四郎がやったのか」

 

四楓院元隊長が来てくれた。

これで三対一。

弟の方は攻撃が通用しないからな。

 

「いや、まだ息があるから喜べないです」

 

仕留めないとこの手の奴は安心できない。

まだ起き上がるまでに時間がある。

この間に報告しておくか。

 

「相手は一度でも喰らった死神たちの攻撃を霊圧としてとらえて耐性を得ます」

 

一撃で殺せないと厳しいかと。

そして今ここに居る面子ではそれだけの殺傷力ってありますかね。

 

「こっちにもやり方はありますけど相手が先に奥の手を出してくれないと困るんですよ」

 

絶対にこれは防げない。

とはいえど限定的なものだ。

この男がこんな能力でなければ絶大な威力は発揮できないだろう。

 

「厄介な相手っすね」

 

浦原さんも駆けつけていて俺の話を聞いていた。

仮にも相手の頭領が選別した奴らですからね。

一筋縄ではいかないでしょう。

 

「仕方ないのう」

 

四楓院元隊長が攻撃を仕掛ける。

弟と違って速度もさることながら急所に攻撃が入っていく。

 

「そらよっ!!」

 

そんな状況にもかかわらず球体を投擲する相手。

恐らくあの色合いから見て毒だろう。

 

「何のつもりじゃ?」

 

回避もせずに叩き割る四楓院元隊長。

その結果、膝をつく。

神経や霊圧といった形で複合させた毒だろう。

 

「浦原さんはこの間に相手の分析しといてください」

 

ここで浦原さんが動くより俺が動く。

その方が相手を追い詰める事がしやすくなるだろうからだ。

 

「四楓院元隊長!!」

 

こっちの声に反応をしたので小瓶を投げる。

それを取って中身を飲み干す。

毒を治しきるとは言わないが動けるように緩和できる。

 

「その状態が続くのは五分ほどですからね」

 

俺がそう言うと、四楓院元隊長は頷いて相手へと向かって行く。

しかし免疫を獲得している相手には攻撃が通らない。

どうしたものかと悩む。

 

「こうなったら夜一さんは嫌がりますけどあの手を使いますか」

 

そう言って浦原さんが紙か何かを見せると四楓院元隊長の姿が変わる。

霊圧も一秒間の間に何度も変化している。

確かにこうなれば免疫もくそもない。

 

「ぐあっ!!」

 

蹴り飛ばされる相手。

しかしその眼は諦めていない。

雷撃を伴っていたせいで煙がある。

それが晴れた時、相手の姿は先ほどとは違うものになっていた。

 

神の毒見(ハスハイン)

 

霊圧も別物となった。

しかしそれでもやる事に変わりはない。

四楓院元隊長の猛攻が体に次々と当たっていく。

しかし相手の能力なのだろうか。

あっさりと四楓院元隊長の変化時の攻撃に対応をした。

 

「即座に免疫を作る能力ってわけか」

 

一秒で複数回変わっているのが分かる。

四楓院元隊長の霊圧という下地からの派生なのだ。

その下地を起点として根本から免疫を作った場合を想定したら?

無論、表層部分の変化のみで済む為、対応も容易になる。

これによっていよいよ今の面子では火力面で相手を倒す術はない。

搦め手を使っていくのが常套手段だな。

 

「こうなったらもう全力の勝負っすね……」

 

そう言うが俺は先に相手へ攻撃を仕掛ける。

相手は驚くが僅かに掠ればそれで構わない。

 

「驚いたな、爆弾も使ってくるあんたが肉弾戦なんて」

 

そうは言うが所詮は卍解が使えないだけの死神。

そんな奴の攻撃なんぞ捌けるだろ?

 

「でも……これは通用するだろ?」

 

閃光を炸裂させる。

いくらでも手段や不意打ちのやり方は用意している。

負けたくないし死にたくないからな。

 

「ぐっ!!」

 

相手は目を塞いでそのまましゃがみこもうとする。

反射行動なのだろう。

それが分かっているから攻撃の仕方は決まってしまう。

 

「貰ったぜ」

 

下から上への斬撃を繰り出せばいい。

目晦ましでがら空きになったところを狙って切り裂く。

致命傷にはならなくても十二分の成果を得られた。

 

「すんません、阿近さん……」

 

戻った時に浦原さんから声をかけられる。

浦原さんの目が片方失明していた。

元は俺を狙っていなかったというわけだ。

 

「卍解使うんで少し下がってください」

 

そう言うと女の人が現れる。

初めて見る卍解に驚きを隠せない。

浦原さんも卍解を使って攻撃していく。

とは言っても範囲内。

 

相手がそこから向こうに行ってしまうと難しくなる。

まだ仕込みが終わっていないならば仕方ない。

止めを刺させてもらうか。

 

「悪いがあんまり動かれると困るんだよ」

 

そう言って俺は機械を腕に付けて相手に向ける。

縄とかぎ爪が付いたものが射出されて、相手の足に巻き付く。

相手の足元に向かって縮むように操作をして一気に眼前へと躍り出た。

 

「またあんたかよ、あんたの霊圧の攻撃もすでに免疫獲得済みだ」

 

そうはいっても攻撃が効かないだけ。

皮膚が硬化しているとかではない。

実際それなら四楓院元隊長の拳が砕けそうなものだからな。

 

「そう言わずにやられとけよ、こっちも総力戦なんだからよ」

 

だったらこの突きの意味は十分ある。

相手が回避しようとする。

しかしさっきの機械を使って再度足に綱を巻きつかせていく。

 

「逃がす訳ねえだろ」

 

こっちに引き寄せて刀を突き刺す。

こんな攻撃で命まで奪えはしない。

この後が重要なんだ。

 

「注射を嫌がったりする年でもないだろう?」

 

針が刺さってそのまま生成した毒を注入した。

俺の奥の手をここで使う。

備えはあっても良いが出し惜しみをする場面ではない。

 

「これでこっちの目的は完了だ」

 

そう言って離れていく。

徐々に濃くなっていく毒の領域。

自分を所々騙してやっているが意識が薄れていっているのが分かる。

 

「あんた、何したんだ…」

 

さっき攻撃した際に掠め取った血を『銀蛇』に吸わせて霊圧に変換。

それを基に毒を生成した。

これが俺の奥の手だった。

 

「あんた自身の霊圧で生成した毒を注入した」

 

そう俺が言った瞬間。

相手の顔がみるみるうちに青ざめていく。

理解できてしまえばこの反応も無理はない。

 

「なんて事をしやがる……」

 

そう言った瞬間、血を吐く相手。

強制的に免疫を作ってしまう能力だったのだろう。

それで自分の霊圧が『毒』になった事で、自分の『毒に対する免疫』が体を絶え間なく攻撃していく。

自身の霊圧が毒である以上、体が過剰な力で蝕まれていく状態なのだ。

血を吐く事も有れば激痛もある。

解除をして、この状態から逃れても良いがそうすると浦原さん達にやられる。

 

「……どうしようもなく詰んでいるはずだ」

 

フラフラになっているが闘志はある。

しかも徐々に自分たちを囲む毒の範囲を大きくしている。

ただ……

 

「これ、絶対制御してるな」

 

自分も死なずに済むように無意識なものだ。

免疫暴走で死ぬまでまだ時間はある。

あいつが自害するなら話は別だがな。

 

「しかしあんたは一つ大事な文言をにおわせすぎた」

 

『脱出不可能』とは言ったが『侵入可能』とは言わなかった。

通る道を作っておいた方が良い。

浦原さんもそれに気づいていたのか動き始めていた。

 

「だから一息で貴方を殺す道を作ったッス」

 

虚の攻撃で心臓を抉り出される相手。

このまま、我慢比べをしても良いが相手の反撃の目や可能性を摘む。

それがあった場合に想定したことがいくつもあるんだろう。

しかし最後まで諦めず、息を止める事も無い。

負け惜しみのような見苦しい真似一つなくこっちに言葉を投げかけていた。

 

「これは……」

 

一気に毒の濃度が上がった感覚。

四肢の末端が痺れ始めている。

心臓を抉り出される前の我慢比べとは比較にならない。

解毒剤の調合が即座にできないほどには複合されている。

 

「……想定はしてましたけどかなりきついッスね」

 

浦原さんの言葉に嘘はない。

事実、卍解の力が弱まっている。

しかし僅かにでも隙間が有ればなんとかなるだろう。

侵入してもらって救い出してもらえればいいのだから。

俺は四楓院元隊長の弟を抱えて浦原さんと待機の姿勢を取った。

 

「都合、数回の往復が出来るまで意識を保たないといけないのがきついですけどね」

 

浦原さんがそう言ったのも束の間。

僅かな隙間を桃色髪の女性と黒髪の女性が爆撃と馬鹿力でこじ開けていく。

その隙間から入ってきた破面の女性たちが俺や浦原さん達を抱えて毒の要塞を抜けていく。

 

「こっちに協力してくれる滅却師や虚って結構いるんだな」

 

俺は抜けた後に呟く。

毒に塗れていない空気は新鮮で肺を満たした。

当然、疲労や毒による肉体の損傷等は残っている。

 

「あとは黒崎さんや朽木さん達に任せるしかないッス、申し訳ないけれど……」

 

そう言って浦原さんが倒れる。

俺も意識が朦朧とし始めた。

向こうであの人の霊圧が動いている。

 

あとは下に落ちていった滅却師はきっと駆逐されるだろう。

目を覚ませばきっとこの騒動は死神の勝ちで終わっている。

そう、確信を抱いて俺は目を瞑った。




今回は阿近の活躍回でした。
相手の免疫の強さを逆手に取った勝ち方ですね。
次回は平子の活躍の予定です。
スポットライト当てる為にオリ卍解にしていたので良かったです。

何か指摘等ございましたらお願いいたします。
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