Untold Myth   作:トラロック

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#1-09 リヴェリア・リヨス・アールヴ

 

 ダンジョン攻略から冒険者依頼(クエスト)に重点を置いた生活を始めて数日後、久方ぶりに【ヘスティア・ファミリア】唯一の団員『ポラン・ブーニディッカ』と出会った。

 丁度食料の買い出しに出ていたところだった。

 お互い約束を取り交わしたわけではないので一先ず軽い挨拶から。

 

「……どうも」

「こちらこそ……」

 

 赤髪の少女ポランは以前の食中りから体調を気にしつつ健全なダンジョン攻略を続けていて、積極的な行動は控えていた。

 対して金髪金眼の少女アイズ・ヴァレンシュタインもここしばらくはモンスターよりアイテム素材に力を入れている。

 年齢だけで言えば二人とも同い年の少女。だが、双方には埋めがたい実力差があった。

 アイズはレベル4への道を。

 ポランはレベル2の【ランクアップ】までもう少し、というところまで来ていた。

 

「……団員は増えそうにないんだね」

 

 【ヘスティア・ファミリア】はポラン一人だけ。パーティを組むには他の【ファミリア】の協力が必要不可欠となっている。

 単独(ソロ)攻略はとにかく非効率的だ。稼ぎにはあまり向かない。

 またアイズと組んだとしても分け前の差が大きく、利益率が低くなる。それでも構わないと本人だけが思っても生活があるので早めの改善が求められる。

 冒険以外の話しであれば仲の良い女の子友達にしか見えない。けれども片方は大手【ファミリア】の期待のルーキー【剣姫】である。

 

「私は冒険に必要なアイテムの備蓄と並行して装備品の調達かな。日用品も大事たけど……」

 

 彼女(ポラン)が先ほど購入したのは塩などの調味料だ。

 廃墟同然の本拠(ホーム)に住んでいるポランにとって火器は使えないし、調理場もまともなものが無い。

 商店にお願いして器具を使わせてもらっている。

 

「神様も『あるばいと』先で色々と融通してもらっているので……。生活はそんなに悪くないです」

 

 アイズの本拠(ホーム)は大勢の団員を抱えられる大きな建物で風呂場も大きい。生活するには不自由など無いと自信を持って言える程だ。しかし、弱小には弱小なりの魅力があるとアイズもポランも思っている。だから、二人とも互いを妬んだりはしなかった。

 アイズはダンジョン探索を誘ってみた。【ミアハ・ファミリア】の依頼は済んでいたので。

 

「毎日は無理ですが……。私で良ければ」

 

 いつもの素直な笑顔がそこにはあった。

 アイズはそれ(ポランの笑顔)を嬉しく思った。

 

        

 

 また二人だけで探索するのもいいのだが、ポランの【ランクアップ】の邪魔になってはいけない。そう考えるとアイズに出来る最良とは何なのか、だが――

 未知なる発見や冒険は深く潜るごとに多くなる。しかし、ポランはまたそれらとは違う発見をもたらしてくれそうな気配を感じた。

 ――なので、パーティメンバーを増やす試みに挑戦する。

 簡単なのは【ロキ・ファミリア】だ。当たり前かもしれないが。

 

「……その為には十階層以上……潜れる体制が望ましいです」

 

 ポランは堅実な冒険者だ。いくらモンスターを倒すごとに【ステイタス】が増えるタイプだとしても。

 技術自体は特別なものではない。武具も恵まれてはいない。それと単独で階層主を倒せる実力も無い、というのは流石に無茶ではあるが。

 

「……私は初期の頃からパーティを組めました。……逆に単独で活動することが少ない。……年齢の事も関係するかもしれないけれど」

「うちの【ファミリア】は……神様が頑張っていらっしゃるようですが、新しい団員は未だに……。無名だからでしょうか?」

 

 ポランはアイズから見ても目立った行動をしていない。

 それはダンジョン攻略をしていない、のではなくアイズのような派手さが無いだけ。

 赤毛でアイズと共にダンジョンに潜る、だけでは知名度は増えない。それは既に証明済みである。

 ではどうすればいいのか。流石にアイズとてよそ様の【ファミリア】を有名にする方法は思いつかない。

 

「……悪い事をするわけにはいかないしね」

「……それはちょっと。神様が言うには『ケンゼン』な【ファミリア】を目指しているとか」

「……それは単に地味な【ファミリア】って意味だと思う」

 

 アイズがお世話になっている【ファミリア】の主神ロキとヘスティアは互いに仲が悪い。それだけでも充分に知名度がありそうなものだ。それなのに【ファミリア】自体は存在していないかの如く、噂話にも出てこないほど。

 親しい別の【ファミリア】は【ミアハ・ファミリア】くらい。この【ファミリア】の存在も最近になってから知った。

 迷宮都市オラリオに存在する【ファミリア】はアイズが思っている以上に多く存在し、その全貌は未だに把握できていない。

 新しい神が何年かに一度、訪れて【ファミリア】を作ったりするらしく数は常に変動しているとか。

 

        

 

 ポランに言ったところでどうにもならない問題のように感じたので【ファミリア】の知名度の話を一旦中断する。

 少女二人だけでは何も進展は望めないと判断した。

 アイズはポランと共にオラリオの中央広場(セントラルパーク)に移動する。

 多くの冒険者や住んでいる住民たちが行き交う中心地。ダンジョンに蓋をするように天まで(そび)えている摩天楼(バベル)施設を中央に配し、東西南北斜めに真っすぐな通路が開けて見えている。中央広場(セントラルパーク)摩天楼(バベル)施設のすぐ傍にある。

 何日かに一回は何らかの(もよお)しが開かれる。

 

「……そういえばアイズさんはいつもジャガ丸くんを食べているんですか?」

「……外に出た時はだいたい食べているよ」

「栄養面とか気にしていないかと……」

「……本拠(ホーム)ではちゃんと食事を済ませているから。ジャガ丸くんだけしか食べないわけじゃないよ」

 

 そう言うとポランは安心したようだった。

 充分な設備のある【ファミリア】だから栄養面を気にしない事もあるかな、と思う程度。しかし、ポランはアイズ達と違って切迫した事情があった。

 まずお金を稼がないとまともな食事が出来ない。栄養面も不十分である。

 神は不変な存在なので空腹を感じたとしても餓死するかどうか不明。しかし、団員はそういう都合の良い能力を持っていないので食事は大事である。

 

「……ポランは回復薬(ポーション)一本買うのも大変そうだよね」

「そうですね。深い階層に挑戦するために備蓄しているところですが……。なかなかいざという時、使えるのかが……」

 

 高価なアイテムを消費するのは零細【ファミリア】や冒険者には胃が痛くなる問題である。

 アイズ達は大手で、深層域に挑戦できる。必然的にアイテム購入に関して気にしなくていいほど潤沢に揃えられる。絶対ではないけれど。

 それからポランが困っているからといってアイテムを簡単に譲渡することは出来ない。ギルドの規約によって制限されているわけではないけれど【ファミリア】同士は基本的に敵、というか競い合う(派閥)間柄だ。時には協力関係を築く事があるが――

 神同士の仲が悪ければ団員もそれに倣わなければならない。

 無償の友情は【ロキ・ファミリア】には――基本的に――無い。だから、ポランと仲良くする事は――本来であれば――あってはならない事だ。しかし、アイズの成長に何らかの役に立つのでは、と考えた幹部達の進言によって黙認されているのが現状であった。

 同性ということもあり、神ロキもうるさく咎めてこない。――いや、単にリヴェリアの機嫌を気にしているから何も言えない、ということも――

 

        

 

 ポランという友達を得たアイズに関して幹部達は大いに安心していた。

 ただの殺戮人形だった少女が血の通った人間(ヒューマン)と遜色なく過ごしているのだから。なにより依然の無感情だった表情と今とでは――雲泥の差とは言わないが――かなり違って見えている。

 もちろん、よその【ファミリア】の団員という事も気にしなければならないが、今は彼女(アイズ)の成長に良い影響を与えているのは事実だった。

 彼女(ポラン)や彼女が所属している【ファミリア】の裏取りも済ませてある。

 フィン達が警戒する本当の敵【ファミリア】とは無関係である事を――

 そんな保護者達の気苦労を理解していない若き冒険者アイズがまたポランとパーティを組んでいいか、と尋ねられた。もちろん断る理由は無い。

 ここしばらく素直に約束事を守っているし、極端にモンスターを殺戮しまくる事態も起きていない。二人だけではなく他の団員も引率するようになってきている。

 

「……出来ればリヴェリア達とも一緒がいい」

 

 お願いとしては可愛い。しかし、目的は深い階層攻略だ。

 まだ十二歳でレベル3の少女の頼み事としては物騒極まりない。

 しようがないな、いいよ。とは決して言ってはならない状況なのだが――

 

「……お姫様は僕らを何だと思っているんだろうか……」

 

 フィンは苦笑する。

 低年齢であるために表現が拙いのであれば仕方がない。けれども目的は至極物騒であることを忘れてはいけない。

 

「……彼女は面白い発想を持っている。……だからリヴェリアならある程度は、と……」

「ほう。お前も他人の言葉を気にするようになったんだな」

「……話を聞かない人に聞こえる」

 

 口を尖らせて不満の意思を見せる【剣姫】アイズ。

 歳相応の子供の顔をする未来の幹部の姿に気をよくしたリヴェリアは同行に同意した。

 流石にフィンやガレスも一緒という事は出来ない。彼らとも一緒だと物々しい遠征と大差が無く、また周りが騒然となって混乱が広がる。

 ただ――フィンも同行の意思はあった。ずっと机で事務作業ばかりしていたので身体が(なま)ってきたと感じていたところだ。

 次辺りには――そう考えて今回はリヴェリアに譲る。

 

「……問題があるとすれば……、彼女の報酬が減ること……」

「……それは大事だな。よき働きをすればそれに見合った追加報酬を与えればいい。というか彼女は……その……戦えるのか?」

 

 ポランの戦い方を知るのはアイズだけ。

 随分と熱心だからさぞ戦闘も上達しているのだろうとリヴェリアは思っていたが――アイズの表情は急に曇る。

 パーティメンバーとしてある程度の――【ステイタス】など――情報は聞いているがリヴェリアに今話す事かと疑問に思った。

 確かにパーティを組む約束は取り付けた。けれども()()ダンジョンに潜っていない。急に心変わりされては彼女(ポラン)に迷惑がかかる。

 しかし、それは杞憂に終わる。

 言いにくそうにしている相手から無理に聞き出そうとは思っていなかったようで、雰囲気を察したリヴェリアは会話を打ち切った。

 

        

 

 ポランはアイズと違って健全な探索をするため、攻略日時が決められている。これは体調管理の為の必要措置である。

 アイズ達も上層から中層域まで行けるとはいえ下準備も無しに突貫することは無い。

 その辺りのすり合わせもアイズは()()()()するようにしていた。

 戦闘一辺倒だった頃に比べて幾分か成長している彼女の様子に保護者であるリヴェリアは安心した。

 

(年上ばかりの【ファミリア】では絶望的だったが……。やはり歳が近いと何かと都合がいいようだな)

 

 リヴェリアにとってもポランは知らない存在ではない。

 どのような戦いをするのかは知らないが、精神面では役に立ちそうだと感じた。

 神ヘスティアも仲が悪いと言われている神ロキの眷族に対して付き合いを禁止しているわけではない。

 

(……しかし、神ヘスティアは普段は何をしているんだ? 本拠(ホーム)が廃墟だというのは聞いていたが……)

 

 アイズや他の眷族達の証言によれば露店商や摩天楼(バベル)にある飲食店で働いているらしい。

 神ロキはその辺りに関心がないようで、尋ねても何も知らないと言っていた。

 闇派閥(イヴィルス)でないのであれば問題は無い。

 普段は本拠(ホーム)でのんびりと読書をしている王族(ハイエルフ)の『リヴェリア・リヨス・アールヴ』は単身、外に出て情報にあった店を探す。

 他のエルフ達は彼女(リヴェリア)の姿を見かけるだけで歓喜の声を上げる。騒動の元だと自覚しているので普段は外出を控えていた。

 

(……同じ冒険者である筈なのに……)

 

 私用である為、手を握ってください、などの要望は断っている。

 レベル6でもあるから人気があるのは仕方がないと思うのだが、リヴェリアは更に希少な王族(ハイエルフ)であるためとても目立つ。

 高貴な存在が道を歩ている。それだけで同族たちから畏敬の念を抱かれている。それが当人(リヴェリア)にとっては(すこぶ)(わずら)わしい。

 そんなことを脳裏に置きつつ情報にあった店を発見。そして、すぐに頭を押さえる。

 目的の神物(じんぶつ)『ヘスティア』が店の制服を着て『ジャガ丸くん』を売るために声を張り上げているところだった。

 

「出来立てで美味しいジャガ丸くんだよ~。ノーマルから奇抜な味まで揃っているよ~」

(……アイズのお気に入りなのは知っていたが……。随分と種類があるものだ)

 

 ノーマルは塩のみ。甘いもの。辛いもの。変な色のものまで。

 多くの味付けに対応できる万能食のようだ。

 

「お~っとそこのエルフ君。一つどうだい? って君はロキんとこのエルフ君じゃないか」

「ご無沙汰しています、神ヘスティア。……つかぬ事を尋ねますが……、普段からここで働いているのですか?」

 

 軽く一礼した後でリヴェリアは尋ねた。神に対する態度は王族(ハイエルフ)とはいえ他の冒険者と同じだ。それゆえに自分だけが偉いと思わなくて助かっている。

 神達は彼女が知る限り、庶民的で偉ぶらない。それでいて掴みどころのない存在でもあった。

 

「あてがわれた本拠(ホーム)がボロくてね。それとうちの眷族()が内臓の弱い子で……。それでも頑張って稼いできてはいるんだよ。健気で素直なあの子にもっと頑張れ、なんて言える筈がないじゃないか」

(だからこそ神も働かねばならない……、ということ、なのか? 団員が一名しかいない事も原因か……)

「……団員の募集はどうなのですか?」

「してるよー。でも、何故かいつも逃げられてしまう。……あの眷族()一人に負担を強いているのが(つら)いよ、全く……」

 

 制作系の【ファミリア】であれば商品を作って売ればいい。しかし、ヘスティアは――聞いた限りでは――探索系だ。眷族が頑張らなければ収入は無い。

 知名度が上がれば団員希望者が増えるはずだが、それすら出来ていない状況というのは見ていて理解した。

 地上に降りた神にも色々な(ひと)が居るのだな、と。

 

        

 

 双方の都合がついた日、アイズとリヴェリア、その他数名がポランの到着を待った。

 持ち物の点検など済ませて軽い談笑を交わしていると赤毛の少女が冒険者用のバッグを背負って現れる。

 普段より多くなった事に驚きを見せるがすぐに気を取り直す。

 

「おはようございます」

「ああ、よろしく頼む」

 

 代表してリヴェリアが返礼する。

 今回の探索は上層でモンスターを倒すだけ。【ロキ・ファミリア】からすれば散歩程度のダンジョンアタックである。

 アイズはともかく荷物運びに選ばれた他の団員は少々戸惑っていた。

 

「……目標階層は十五。たぶん報酬は少なくなるけど、ドロップアイテムは君に渡すことになっている」

「そ、そうですか。ということは火を吹くモンスターを相手にするんですね」

「……そう。君は後ろに隠れていていいから。……私達の戦い方を見て今後の攻略に役立てて」

 

 アイズが率先して会話を交わす様子にリヴェリアは感心と驚きが入り混じる。

 十二歳の少女が年上を教育する事を気にしていたが、同年代の参加は色々と都合がいいと思い、黙って見ている事にした。もちろん、必要な助言は出す予定である。

 リヴェリアの知らないアイズの姿――

 果たしてそれはどのようなものなのか、保護者としては大いに興味がある。

 まず最初はポランが潜れる限界階層まで彼女(ポラン)の方法論で進むことになった。

 よその【ファミリア】のしかも零細で弱小と付くような相手に命令されることに他の団員から文句が出るかもしれない、と危惧したがアイズが黙らせる形で静まる。

 元より今回はアイズとポランが主役だ。脇役は黙って従った方がいい。リヴェリアも脇役として過ごす予定だった。

 普段のアイズは狼人(ウェアウルフ)の『ベート・ローガ』とアマゾネス姉妹である『ティオネ・ヒリュテ』と『ティオナ・ヒリュテ』の四人で中層域を攻略することが多い。

 しかし今回は――特にベート――彼らの参加をアイズ自身が認めなかった。理由は単純で(うるさ)いから。あと、弱者とは馴れ合わない、と言うに決まっているので。

 アマゾネス姉妹は次の遠征のための買い出しや情報集めで別行動中だった。

 早速ダンジョンに向かおうとしていたアイズだが、ポランがまずはギルドに申請してから、と言い出した。

 大手である【ロキ・ファミリア】と行動を共にする上で正式な手続きの方が何かと問題が起きにくいと考えたからだ。それにリヴェリアは感心した。

 

「強制力はないが……、やらないよりはマシだな」

「……む」

 

 アイズが口を尖らせつつ不満を見せる。

 その後、リヴェリアが代表してポランと共に手続きを行うのだがギルド職員は王族(ハイエルフ)自ら他の【ファミリア】とのパーティ参加にひどく驚いていた。

 特に同郷の者(エルフ)やハーフエルフの職員達が――

 

「そんなに驚く事か? それではまるで……、一人で手続きが出来ない子供ではないか」

「そ、そそ、そんなつもりは!?」

 

 子供扱いしたことはあるが、レベル6で子供扱いされたことには驚きと憤りを感じる。

 それだけ周りが騒然となってしまったからだ。

 長く冒険者家業をしているリヴェリアとて羞恥心はある。せめてギルド職員は泰然としてくれないと困る、と小声で忠告しておく。

 

        

 

 多少の騒動があったもののパーティ申請は済んだ。リヴェリアとていつまでも引きずりたい案件だと思いたくないのでダンジョン入口へと向かう。

 既に多くの冒険者が地の底へと続く階段を下りていく。

 

「……多少人数が多いがモンスターへの対処は怠るな」

「はい!」

 

 元気よく【ロキ・ファミリア】の団員は返事をし、ポランは横で驚いていた。

 単独(ソロ)は黙って潜るので。

 最初こそ驚いたもののダンジョンに降りれば静かになる。基本的にお喋りしながら楽しく攻略するような場所ではない。

 モンスターとの殺し合いをするところなのだから。

 降りて早々壁からモンスターが生まれる。ポランも今では苦も無く倒せるまでに成長していた。

 アイズが剣の手ほどきをしたから、ということはなく(つちか)った戦闘経験が彼女を強くした。

 長剣と小盾と申し訳程度の防具。小柄な体型だがドワーフと違い重武装に耐えられない事もあり、更にレベル1の駆け出しだ。

 貧相という言葉しか出てこないような様相だった。

 

(話によれば食料の備蓄をしながら武具の調達をしているんだったな。駆け出しで単独(ソロ)だとこの程度が関の山か……)

 

 もし、何年もダンジョンにこもった上でならば文句の一つも出る。しかし、ポランはまだ本当に駆け出しだ。経験も他のレベル1よりも少ない。

 なによりまだアイズと同じ十二歳の少女である。(むし)ろ、こちらの方が正しい有様とさえ思うほどだ。

 

(能力の差か……。どうしてここまで差がつくのか。……というのは彼女(ポラン)に失礼だな)

 

 嘆息しつつポランの様子を伺うリヴェリア。

 三階層までは黙ってポランの様子を見ていた。それが他の団員からは何か特別なものでも感じたのか、と勘繰られリヴェリア同様にポランを凝視する。

 当人は至って真面目に戦闘していたが流石に無視はできなかった。

 ポランの後姿を王族(ハイエルフ)がずっと見つめているのだから。何かあるのではと思っても仕方がない。

 荷物持ち担当の団員がいくら見つめようと戦闘自体は普通だから、特別変わったものは四階層に向かうまで発見することは出来なかった。

 

        

 

 戦闘は普通だがアイズと違って荒々しさは無く、戦闘後に魔石やドロップアイテムを回収する姿がいじらしく見える程度――

 淡々とした作業だが新たなモンスターに気を付けつつ回収漏れが無いかまで確認するところは感心した。

 

(……いや、当たり前のことを当たり前の事としてやっているだけだ。アイズは討伐一辺倒だからな。他の団員が居なかったらこうまで丁寧に出来まい)

 

 回収作業を終えた後、四階層に降りるのだが階段の途中でポランは所持品の点検を軽く(おこな)う。その様子をアイズとリヴェリアがなんとはなしに見物する。

 本来はアイズとポランの二人をメインとしたダンジョン探索だ。それなのに自然と【ロキ・ファミリア】の後を付けるポランの行動を気にする図になってしまっていた。

 彼ら以外に探索している冒険者から見れば大手【ファミリア】の取りこぼしを狙う貧乏冒険者にしか見えない。

 

(あいつずっとおこぼれを貰うつもりか?)

(というより【九魔姫(ナイン・ヘル)】や【剣姫】はどうして何も言わない?)

 

 赤毛の人間(ヒューマン)であるポランが【ロキ・ファミリア】の団員ではない事はある程度の冒険者には周知されていた。

 多くはアイズと同年代で赤毛の冒険者が単独(ソロ)で潜っている、というものだ。

 それと他の団員からもよその【ファミリア】であることは聞かされている。

 

「……アイズ。我々は物凄く目立っているようだが……。お前達は気にしないのか?」

「……? そんなに目立つ?」

 

 無邪気な子供らしい反応に吹き出しそうになりながらもリヴェリアは()()として構えた。

 少人数とはいえ大手【ファミリア】の後についてくるのがポランだけだから目立たない筈が無い。いや、より正確には別の問題があった。

 

 リヴェリアという一番目立つ存在が居るから。

 

 滅多に上層でお目にかからない王族(ハイエルフ)にして【ロキ・ファミリア】の幹部だ。そんな彼女の視線を受けているポランが他の【ファミリア】というだけで邪魔者に見えても仕方がない。

 

(……黙って見ているだけでパーティとして扱っていないのが原因か……)

 

 今のところ活動に関して言うことが無い。仕事は丁寧だし、ベート達のように賑やかでもない。

 ポラン側からも注意とか気になった事とか出てこないので。

 今回の探索の第一目標は七階層目。次が十階層となっている。それ以降になるとポランは何もできない、という話なので到達してから色々と話を聞くことになる。

 まずは淡々と現れるモンスターを狩っていく。それと階層に現れるレアモンスターの捜索も忘れずに。

 そうして難なく第一目標である七階層目に到達する。

 ポラン一人であれば二倍から三倍以上の時間がかかるところだ。

 

 

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