Untold Myth   作:トラロック

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#1-21 肉塊

 

 灰色のボサボサ髪を軽くかきつつ狼人(ウェアウルフ)の少年ベート・ローガは相手の土俵(ダンジョン)にて強さの程を確認した。その結果は想定内の()()だった。――いや、強さだ。

 落胆半分――もう半分は言葉にするには適切な表現が浮かばなかった。だが、良い表現ではない気がした。

 モンスター『ドレッドノート』は身体を変えても強さが変わらない、というのは幻想だったというのは理解した。

 害があるか無いかで言えば無い方がいい。しかし、害がある方が処分しやすい。気持ちの面でも。

 

(……元々のモンスターであれば俺はもっと非情になれる。何のことは無い。敵は倒すだけ……、確かにその通りだ)

 

 姿はポラン・ブーニディッカだが半分はモンスター。だが、それも昔の話しだ、と言わんばかりに弱体化してしまった。敵としては味気ない。

 戦う意思の薄れたものは【ガネーシャ・ファミリア】が使役するモンスターとあまり変わり映えがしない。

 ベートが求めるのは本気の殺意を持つ敵だ。モンスターだけではなく冒険者でもいい。

 それが無い者は敵と見做(みな)せない。

 

(俺が戦いたいのはこんな雑魚じゃねぇ)

 

 荷物をまとめてポランについてこいと指示する。今はドレッドノートと化しているが言葉は理解できたようだ。落とした剣を鞘に納めてベートに近づいてきた。

 本当に言葉を理解している姿に驚きつつ――

 下の階に進むとポランでは戦う機会の無かった牛頭のモンスター『ミノタウロス』が現れる。

 黒い右目がモンスターを見据えると威嚇し始めた。それだけ見ると気概のある冒険者に見える。

 試しに戦わせるとあっさりと倒して見せた。本来の彼女であれば初見のモンスターなのに。

 

(……んっ? 待て……。なんであっさりと倒せる? レベル(ツー)にカテゴライズされるモンスターだぞ。レベル(ワン)から見れば【ランクアップ】しなきゃ倒せないんじゃなかったのか?)

 

 指示した自分が悪いのは重々承知した上での驚きだ。

 その後も普通に倒していく。いや、動きを完全に把握し、的確な攻撃を加えている。

 レベル(スリー)のベートから見れば凄さが理解できないのだが各下から見れば――おそらく凄さが分かる筈だ。

 彼に分かるのは『どうして倒せるのか、分からない』事だけ。

 力押しのベートは殴ったり蹴ったりするだけでミノタウロスを倒せる。しかし、ポランは彼と同じ戦い方は出来ない。では、どうやって倒しているのか。

 肉体の脆い部分を的確に剣で突き刺している。ただそれだけだ。

 ミノタウロスは肉体的に強靭で刀剣類でのダメージが入りにくい。人型なので長引けば分が悪い事と多数で攻めてくる場合もある。

 

        

 

 都合七体ほど倒したポランはモンスター化している筈なのに魔石を拾って袋に入れる。普段からそうするように指示されていたかのように。

 【ガネーシャ・ファミリア】でポラン共々教育を受けた事が窺える。

 その後、更に下の階層に降りていき一七階層目に到達する。疲労した事を自覚したのか、ベートに回復薬(ポーション)強請(ねだ)ってきた。

 言葉を覚えたといっても満足な会話はまだ無理なようで、片言で断片的な文字の羅列が多く、理解する事が難しい。

 

回復薬(ポーション)が欲しいのか?」

 

 そう言うと何度も頷かれた。

 サポーター要員として連れてきたのだから自分の荷物の中にある筈だが――

 ドレッドノートは自分が背負っている荷物に気づいていない。または人から貰う物だと思い込んでいるか、だ。

 かなりの数のモンスターを倒したし、ポランであれば飲んでいてもおかしくないほど疲れているし、ケガもしている。――先の戦闘も加味して。

 

(……おかしい。俺の側にはモンスターが居るはずなのに……。何なんだ、ドレッドノートって奴は)

 

 ベートの知るドレッドノートは小さくて強いモンスターだ。素直な態度の弱者ではない。まして冒険者でもない。

 黙って見下ろす様に眺めているとイライラしたのか彼の身体を叩いてきた。更に時間が経つと蹴ってくる。気性の荒さが微笑ましく思える。けれども目の前に居るのはモンスター化した冒険者だ。それを忘れてはいけない。

 彼女の額を軽く指ではじいて追い払い、回復薬(ポーション)を取り出す。大してケガもなく運動程度で使うには勿体ないが【ロキ・ファミリア】からすれば安価で大量消費したところで財布が痛まないものだ。だが、それでも数を多く持てるわけでは無いので無駄遣いは基本的にしない。

 

(そうだモンスター。てめぇはそれでいいんだ。敵を前にして媚びるんじゃねぇ)

 

 ベートはアイズ・ヴァレンシュタインと違ってモンスターに復讐したいほど憎んでいるわけではない。ただただ弱い自分が許せないだけだ。それは相手にも強要するところがある。

 孤高の冒険者。仲間とつるむのは自分より強い者に負けたから。そうでなければ自分の我を貫く。

 だからといって弱者を屈服させたい気持ちは無い。それは卑劣なものがする事だ。

 肯定と否定を繰り返し、己を鍛える。時には自分の発言が正しかろうと間違っていようと反省する時は素直に認める。彼らしくいえば認めさせろ、だ。

 

        

 

 ポランに対する評価はもちろん低い。けれども同レベル帯の冒険者に比べれば高い。

 単なる力だけではない何かが高評価になっている。それはベート自身には思いつかないのが腹立たしいところだが。

 苛々しつつ階層主の部屋の前まで移動する。その間、機嫌を損ねたポランから執拗に攻撃を受けたが全くダメージを受けなかった。

 今の彼女は――モンスターはベートに決定打を与えられなくなってしまった。それが彼にとってはとても――残念でならない。

 怒りを燻らせながら階層主の部屋に入った。そこは何もない空間が広がっている。奥行きは一〇〇(メドル)。天井までの高さ約二〇(メドル)。壁は継ぎ目のない巨大な『嘆きの大壁』と呼ばれるものがあるだけ。

 ある意味ではたった一体のモンスターと戦う為だけに用意された場所だともいえる。

 ダンジョンにはこういう場所がいくつもある。そして、多くの冒険者が立ち向かう分岐点の一つで避けては通れない。

 階層主は討伐されると一定期間出現しない。その頻度は数週間とも数か月とも言われる。

 この一七階層の階層主は身長七(メドル)程もある『ゴライアス』という巨大な巨人型モンスターだ。今は討伐された後なのか、現れる気配はない。

 モンスターは居ないが先客が居た。

 一人は金髪金眼の女冒険者であるアイズ・ヴァレンシュタイン。もう一人は翡翠色の長い髪に横に長い特徴的な耳を持つ王族(ハイエルフ)のリヴェリア・リヨス・アールヴ。

 

「無事にここまで来たか」

 

 玲瓏な響きの声が無人の部屋に木霊(こだま)する。

 ベート達を確認した後、リヴェリアは出口に向かい、そのまま姿を消した。

 残ったのは――今日この日の為に準備を整え、完全武装した――アイズのみ。

 

「……てんて駄目だ。拍子抜けもいいところだった。……俺の感想としてはこんなところだ」

「……ありがとう……ございます」

 

 ベートは軽く悪態をついた後、部屋の中央付近に位置する壁に寄り掛かり小休止に入った。

 残ったアイズはモンスター化したポランを厳しい目で見つめる。

 眼帯を取った黒い右目がアイズを捉える。

 

(お互い満身……そうい? なのに……。なんだかあっちの方は冒険者らしい……)

 

 対するアイズは私怨の塊でこの場所に居る。それが酷く冒険者らしくないと思えた。

 未知を探求する者が一般的な冒険者の定義だ。決して私怨でモンスターを殺すものを表すものではない。

 だが、それでもアイズは強くなるために冒険者になった。それが近道だった事は否定しない。

 

「……ここは『迷宮の孤王(モンスターレックス)』が現れる部屋、だよ」

「………」

 

 ドレッドノートはここより上の階で生まれた。今日、初めて足を踏み入れる未知の領域である。

 彼女(ポラン)は興味深そうに部屋全体を眺めた。

 

「……君の仲間をここで呼ぶ事は……出来る? 壁を壊して魔石を入れたりして……」

「……ナ? キ、ギィ……」

 

 『壁』という単語は理解したようで拳を軽く壁に打ち付ける。今のポランの拳では破壊する程の力は――辛うじてあるかもしれない、という程度だ。

 アイズとてここではモンスターを倒す以外の事はしない。だからこそ試しに思いつく事など――今まで無かったし、これからも無い筈だった。

 ダンジョンのボスモンスターが現れる部屋で危険な冒険をする者は基本的に居ない。いや、そういう発想を持つ者が居ない。

 ギルドの規定にも無いし、過去を(さかのぼ)っても記載が見つかることは無いかもしれない。

 アイズは自前の杭と金槌を用意しており、それを巨大な一枚岩(嘆きの大壁)に打ち付けた。

 かつてポランが指示した時のように。

 小さい四角形になるように。奥に魔石を入れても零れない形を思い浮かべながら。

 ベートはポランに背負わせている大型のバックパックを下ろさせた。説明が何度も必要だが理解度が早いモンスターは最後には言う通りにする。

 まだ物の名前や形などが理解できないようだ。細かい説明が下手なベートにとっても難題だったが。

 今回は種類別に魔石を仕分けしていない。――それらを入れた袋を取り出し、アイズに渡す。

 戦闘以外の事は全く頓着しない狼人(ウェアウルフ)に任せたのは間違いだと思いつつ諦めるアイズ。その顔は明らかに失望の色が強かった。

 

        

 

 大きな魔石と小さな物を分けて、魔石を作った穴に放り込む。

 この部屋の壁の修復度は早いわけではないが遅くもない。元々長い時間をかけて階層主を生む場所だ。すぐに結果が出るとは思っていない。

 これでドレッドノートより凶悪なモンスターが現れたらリヴェリアに助けを請う予定だ。今の自分達の強さでは(かな)わない敵が深層にはまだまだたくさん居る。

 修復が始まるまで暇なのでアイズはポランの側に寄る。相手側は以前の敵意は見せず、大人しくしていた。

 片方の目が白いままなのでポラン本体は未だに気絶したまま。それが少し不思議に見えた。

 黒い右目はしっかりとアイズを捉えている。今の彼女はドレッドノートの意識に満たされた存在と言える。

 

(いずれは身体を乗っ取られるのかな。意識の切り替えは本人の意志では出来ないんだっけ。というか気絶している時の事は覚えてないから仕方ないか)

 

 覚えていたら色々と教えてくれる。ポランはそういう子だ。そんな子が懸命に足掻いている。モンスターを憎まず、現状を打破する為だけに意識を割いている。それは立派に強いと言える。

 対するアイズはモンスターを倒す事ばかり。

 そして今――

 

(お互いが同じ土俵に立っているのに戦闘に入らない。仲良くしている。……仲がいいのはポランの方だけど……)

「キィィ!」

 

 壁に寄り掛かるように座ったまま唐突に叫ぶポラン。

 その声にアイズとベートは驚いた。興味深そうに辺りを見回す。どうやら部屋全体に轟かせてどのように反響するのか確認しているようだ。表情に特段の変化が無かったので。

 黙っていると余った魔石を眺めたり、他の荷物を転がしたりしている。まるで子供だ。

 ――子供であることは事実だが。

 

(……色々考えても……、私はやっぱり……。モンスターを殺す。これは譲れない)

 

 アイズの中にあるのは復讐という言葉の他にポランを救う方法が無い事への悔しさだ。それが時間を追うごとに増えていき、彼女の機嫌は加速度的に悪くなる。

 剣の鞘で地面を突く速度が上がっていく。そんな苛々しているアイズを最近の【ロキ・ファミリア】ではよく見かけるようになった。

 弱い自分に苛つく葛藤のようにも見える。けれどもベートはアイズとは違うと強く思っている。

 何がと問われれば即答できるほどの答えは持っていないが、とにかくムカつく。

 

「!?」

 

 アイズの剣の突きではなく壁の修復による魔石の破壊音に驚いたポランが四足動物の様な体勢で壁際から飛びのいた。その動きは猫人(キャットピープル)のようにアイズ達には見えた。

 ある程度離れた後で壁に向かって威嚇する。

 

(……凄い俊敏性……。【ステイタス】が下がったはずじゃあ?)

 

 首を傾げるアイズがベートにどういう事か尋ねる。

 数字では下がっていても身に着いた能力は下がっていない可能性があると伝えた。

 どういう原理かはベートにも分からない。見た感じでしか答えられない。

 

「過去に聞いた話しじゃあ、恩恵(ファルナ)を失った眷族は酷く弱体化する。速度も当然下がる。だから、ポランもそうだと思ったんだが……。条件が違うのか、大して減っている感じには見えなかった」

 

 そもそも主神であるヘスティアは未だに健在だ。

 ベートが聞いたのは【ファミリア】の主神が天界に送還された後の眷族の情報である。

 前例のない事態が続いているので未確認情報が多くて困る、と愚痴をこぼす。

 

「……神様との繋がりが保たれている間は……、【ステイタス】の数字が下がっても平気ってこと?」

「見かけ上の数字って意味かもしれねえ。……それは自分(てめぇ)で確認するしかないだろうな。……元より他人の言葉なんざ当てになるかよ」

 

 二人が話している間にも魔石を砕くように壁が元の磨き抜かれた一枚岩へと戻っていく。

 異音に驚きこそすれポランはしばらく壁を見つめた後、安全だと分かればその場に(うずくま)る。

 傍目には赤毛の猫だ。

 

        

 

 投入した魔石が全て――異音を奏でながら――潰れて壁は元の形に修復される。

 特に階層主の部屋で馬鹿な実験を試みる冒険者など――おそらく――類を見ない。

 ――しかしながら何事にも通例通りとは行かないものだ。そうでなければドレッドノートというモンスターは現れなかった。

 アイズは持ってきた剣の一振りをポランに向かって投げた。それは今回の為に用意した少し丈夫な剣だ。

 自身が持つ細身の剣(デスペレート)ほどではないが安物だとあっさりと壊れてしまうので。いや、壊す、というのが正確か。

 

「それ……、使っていいよ」

 

 元々の攻撃方法からは鎌の方が似合っていそうだ。

 ベートは互いの荷物をひとまとめにし、安全圏と思われる場所に移動する。それといつでも出口に逃げ込めるように。

 何事にも不足自体は起きるものだ。ベートとて逃走経路の確認はする。

 放り投げられた武器をしばらく眺め、器用に拾い上げる。モンスターとしては確かに器用ではあるが身体はポランのものだ。

 身体の動かし方は既に学んでいる。それゆえに武器を握り込むことも今は造作もない。

 本来の武装を失ったドレッドノートは人間達が作った武器を持って振り回すことで戦うすべを身に着けた。

 思考までは分からないがアイズは相手の出方を注意深く観察する。

 

「……オウ。ウ……」

 

 物の持ち方や使い方はある程度【ガネーシャ・ファミリア】で特訓してきた。それゆうに一通りの武具も扱える。

 ――けれどもモンスターには理解できない事がある。

 

 道具を使う理由だ。

 

 そもそも一般常識が無い。元々備わっていたのは冒険者を殺す事だけ。それ以外に興味を覚える事は――通常であれば――無い。

 その通例を何度も覆したのが今のドレッドノートであり、ポラン・ブーニディッカだ。

 まず、地面に転がった剣を拾い、鞘から刀身を引き抜く。それを握り込むのだが、ポランであれば不揃いの指では満足な力は籠められない。しかし、ドレッドノートはそんなことは構わずに力を籠める。

 痛みは共有しているのでモンスターと言えどケガの痛みは伝わっている。

 

「フゥフゥ」

 

 何度か上下に振りながら調子を試していく。その後で自分の武器も持って二刀流となる。

 乱雑な動きをしながらも自身を傷つけないように剣を振る姿は駆け出しの冒険者のようだ。

 

        

 

 武器を持つドレッドノートを眺めていると先ほど魔石を取り込んだ壁に亀裂が走る。

 前回の様な悪寒は無いものの何が起きるのか、一応は警戒する。何も起きなければそれはそれで良しとする。

 アイズにとっては前者も後者も受け入れる所存であった。

 ある程度の武器を振り回していたポランが動きを止め、壁に顔を向ける。それから少しずつ後退していく。

 

(……成功? ……それとも)

 

 仮に階層主が現れる事になっても構わなかった。ゴライアスは何度か討伐経験がある。

 自身の【ランクアップ】も近い。更に厄介な敵だった場合は確認次第、リヴェリアと合流する。それくらいは想定している。

 今回投入した魔石は上層に現れるモンスターだけ。内容はアイズは把握していないが現れるモンスターは知っている。

 壁の奥からモンスターの唸り声がしたような気がした。警戒しつつアイズ達は壁から離れる。

 

(モンスターが出るのか、それとも何も起きないのか。例のモンスター以外か……)

 

 ベートにしても中層域を攻略する冒険者である。そこらのモンスターに負ける気は無いが警戒は強めた。

 

「!?」

 

 一段と強い力を感じたアイズ達は更に後方に飛び退る。するとすぐに壁が爆発するようにはじけ飛んだ。それと部屋全体に(ひび)を入れるほど。

 相当な破壊音だったようで耳鳴りが酷い。ベートは獣耳なので一段と強く影響を受けた。

 

(鼓膜がいかれたか? すげぇ音がしたな)

(音の波動……。発生源はやっぱり壁……。天井は少しだけ危ないけれど崩落ってほどじゃないね)

 

 アイズとベートは冷静に対処したがポランは土煙で姿が見えなくなった。

 探す余裕もなく、異常事態に対処しなければならないアイズ達は音の発生源から目が離せない。

 まず最初に何が起きたのか。壁が壊れただけなのか、それとも未知のモンスターが出現したのか。

 

「ウォォォ!」

 

 聞き覚えのある咆哮。これはゴライアスのもので間違いない。しかし、それにしては威容が見当たらない。

 巨人型モンスターなのに片鱗が無いのはどういうことなのか。声だけということはまだ壁に埋まったままか、と。

 アイズは剣を強く振り、土煙を吹き飛ばす。それでも足りない時は魔法も使用する。その結果――

 嘆きの大壁を破壊した者の正体が判明する。

 それは一言で言えば『肉塊』だ。そして、それを確認する間もなく武器で攻撃するポランに気づく。

 彼女はろくな確認作業もせずに戦闘を始めていた。モンスターとしての本能かもしれないが無謀な、とアイズは言いそうになった。

 

(身体が出来る前のゴライアス? とても気持ち悪い姿だけど……)

 

 その肉塊ゴライアスには口があった。――正しくは肉塊に口だけ付いていて、それ以外の器官は見当たらない。。

 先ほどの咆哮(ハウル)はそれが原因なのは理解した。

 中途半端な状態のモンスターには覚えのないアイズ達は攻撃していいのか躊躇いを覚える。全くの未経験な事態だったので。

 ――それでもモンスターであれば戦わなければならない。

 

「ウォォォ!」

「!?」

 

 攻撃に向かおうとしたアイズとベートは立ち止まった。ポランは全く躊躇(ちゅうちょ)せずに攻撃を繰り出している。

 彼女の【ステイタス】ではゴライアスに決定打が与えられそうにない。元よりアイズ達も攻撃が通じるのか未確認だった。

 二度目の咆哮の後、壁に異変が起きた。それは端的に言えばもう一つの肉塊が転がり出た。いや、二つではなく、更にもう一つ。

 咆哮が上がる度に巨大な肉塊ゴライアスが湧き出てくる。

 

(このままだと部屋を覆いつくすかもしれない)

「……ベートさん」

 

 声をかけるもののベートは聞こえていないのか、敵性体に蹴りを繰り出していた。

 先程の咆哮の影響か、ベートの獣耳から血が垂れているのが見えた。

 急遽彼の身体を引き留めて攻撃を止めさせる。その後で何か喋ってみて自身の耳が使い物になっていない事を分からせた。

 

「クソ。聴覚が駄目になったのか」

 

 アイズは身振り手振りで出口を指し示す。それだけで意図を汲んでくれたようで、荷物を持って出口に向かってくれた。

 ベートが助けを呼ぶまでこの奇怪なモンスターをどうにかしなければならない。悩んでいる間にも肉塊の数は増えていく。

 投入した魔石の数はそれほど多くなかった筈だ。それなのに魔石の合計数より多くのモンスターが出ている気がする。

 大きさは一つ五(メドル)。このまま増えていくとダンジョンの部屋は確実に崩壊するし、それでも止まらなければ次の階層に雪崩れ込む恐れがある。

 

(……どうしよう。こんなことになるなんて。全部倒せるかな)

 

 運がいい事は敵は身動きが取れない。転がる事と咆哮しか出来ない。

 転がると言っても自分の意志ではなく慣性に任せたものだ。ここから人型に復活でもすればそれはそれで脅威である。だが、その兆候は見られない。

 塊のままで完成品とでもいうように。

 

「ウォォォ!」

「ウォォォ!」

「ウォォォ!」

 

 (かたまり)が増えれば咆哮も増える。今度はアイズの耳に激痛が襲う。

 それ後で激しい耳鳴りと共に周りから音を拾えなくなった。分かるのは自身に関係する音のみ。

 

        

 

 耳は封じられたが目は健在だ。

 アイズは辺りを見渡すもポランの姿は見えなかった。けれども戦いながら避難しているかもしれない。このモンスターはただ壁から転がり落ちているだけ。意志を持って動き回っているわけではない。

 元々のゴライアス同様に異常に高い『耐久力』を持ち、なかなか剣を深く刺すことが出来ない。

 魔石を直接狙えば楽だが、ドレッドノートのように魔石を持たない場合はひたすら苦戦する。いや、時間がかかる。

 あまり時間をかければ地上に帰れなくなる。

 

「……やるしかない。「……【目覚めよ(テンペスト)。エアリエル】」

 

 風の付与魔法(エンチャント)を纏い、増え続けるモンスターに突っ込む。

 現在のレベルとモンスターの攻略レベルはほぼ同等。普段であれば一対一なら負けることは無い。

 『耐久』が特段増えているわけではない。今の自分は指が欠けている。その分、力を入れにくい。

 掛け声を上げながら肉団子と化しているゴライアスを突き崩す。

 

(手間取ればどんどん部屋が埋まってしまう。……まさか無限に出てこないよね?)

 

 多くの冒険者に助けを()えば殲滅は難しくないと思う。アイズの目的はポランとの戦闘だ。目の前のモンスターを一人で倒す気は無い。――全部倒したいけれど、今回の目的は別だ。

 細身の剣での攻撃は巨大なモンスターを倒すには(いささ)か決定打に乏しい。魔石さえ破壊できれば肉塊も物の数ではないのだが――

 アイズを(もっ)てしても増え続け、咆哮を上げ続ける未知のモンスターは難敵だった。既に音は聞こえない。誰かが来てても分からない程かもしれない。

 再生力は無く、定期的に咆哮があちこちから上がる事を除けば絶望には至らない。

 

「……くっ」

 

 深層域ではゴライアスよりも強いモンスターはたくさん居る。一体に苦戦していては攻略どころではない。

 焦る気持ちが怒りを増大させる。

 (おびただ)しい斬撃を当ててもモンスターの中心部に到達するのは数分を要する。出来れば魔法による支援が欲しい。それと――魔石が無い場合は事態の深刻さが頭に浮かび、集中力を削られてしまう。

 

「ウォォォ!」

 

 遠くから更なる追加分が咆哮する。その響きでアイズは関知する。

 姿の見えなくなったポランは何をしているのか、それも考えなければならない。

 

        

 

 数分ごとに肉塊ゴライアスは壁から生まれる。大きな(ひび)を作りながら部屋を破壊していく。

 一見動いているように見えるゴライアスだが、それは新たに生まれる肉塊に押されているだけ。このモンスターは生物的に蠢くことはあっても飛び跳ねたりはしない。

 

「【……(ことごと)くを一掃し、大いなる戦乱に幕引きを。焼き尽くせ、スルトの剣……我が名はアールヴ】!」

 

 玲瓏(れいろう)()の魔法詠唱が室内に木霊する。しかし、中に居るアイズには――耳を負傷しているので――聞き取れなかった。

 不意に浮かび上がる魔法陣に気づいた彼女は一旦飛び退った。これは見覚えのある攻撃だと理解したからだ。

 何度も見てきた仲間の援護――

 

「【レア・ラーヴァテイン】!」

 

 無数に展開された魔法陣から一斉に天井に届くほどの炎の柱が立ち上る。

 転がるゴライアス達が苦悶の呻きを漏らした。その中で何体かは滅んだ。(おも)に魔石を露出した者やアイズがダメージを与えていた者が――

 魔法が発動しても詠唱の声が聞こえなかったアイズは回復薬(ポーション)を使おうか迷った。

 咆哮の嵐に晒されれば耳はまた使い物にならなくなる。今の自分は()()()()。しかし、アイテムを無駄遣いしたくなかった。

 

「お前達、【経験値(エクセリア)】稼ぎの為に存分に働け」

 

 魔法を唱えたのは翡翠色の髪の王族(ハイエルフ)リヴェリアだ。背後に大勢の冒険者を従え、敵性体ゴライアスに杖を突きつけて命令を下す。

 彼女も部屋の様子を見て驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻す。

 ダンジョンで異常事態(イレギュラー)が起きるのは珍しくない。(むし)ろ、悪意の塊たるダンジョンで真っ当な冒険など出来はしない。

 

「野郎共! なんかよく分かんねえモンスターが居るがやっちまえ~!」

 

 後から部屋に侵入するのは一八階層に住み着いている冒険者達だ。

 モンスターが現れない安全領域(セーフティーポイント)たる階層で辿り着いた冒険者に商品や宿を提供する。その相場はかなり高い。

 危険と隣り合わせのダンジョン攻略において、安全を確保する事は至難の(わざ)だ。

 

        

 

 新たな冒険者はだいたいレベル(ツー)超えが多い。それでも単独で階層主を討伐できるほどの実力者は少ない。いや、居ない。

 弱点をカバーする為に仲間達が数の暴力でゴライアスを仕留めていく。

 

「……まさかこんな事態になっているとはな。……アイズも耳をやられたか……」

 

 耳から血は出ていたがケガはそれほど見当たらない。

 手持ちのアイテムでアイズを癒し、事情を聴く。本当は聞かない約束なのだがゴライアスが大量に出てきたのは想定外だった。攻略の為に尋ねる事にした。

 

(例によって魔石を使ったか。今度は奇怪なゴライアスが出る事になるとは……。攻撃は咆哮だけ。聴覚を封じられる以外は止めどもなく出てくる、と……。倒せるならば楽な相手か? いや、階層を数の暴力で粉砕されればリヴェラの街が危ないな)

 

 咎めるのは後でも出来る。今は目の前のモンスターを倒しきるのが先決だ。

 しかし、リヴェリアは疑問を抱いた。

 魔石を壁に入れれば異常事態(イレギュラー)が起きる、という確証は全くない。現に自分達は何度も試した。その結果は()()()()()()()()

 アイズやポランが(おこな)ったから起きたのか、それともまた別の条件か、と。

 

(くだん)のポランは何処に行った? モンスターに潰されたか?)

 

 既にモンスター化しているならば易々と倒されていない筈だが自分の魔法で吹き飛ばしてしまった可能性も――一応留意した。

 ベートも加わりコライアス達は確実に殲滅されている。その様子を見て魔石のあるモンスターだと確信する。であれば一点突破で倒すことは容易いとアイズは試算した。

 

「人為的にモンスターを生み出せるなら……、これは確実に非合法なものだ。だが、ダンジョンがそんな甘い事を許すとは思えん」

「……うん。このモンスターは魔石を落とせない……んだと思う。リヴェリアくらいじゃないと無理って意味で」

 

 魔石はあるが、それを残すような倒し方が出来ない。または難しい。

 確実に砕かないと弱い冒険者には歯が立たない。そして、今のところドロップアイテムも確認できない。

 ゴライアスのドロップアイテムは皮膚が多い。強靭なモンスターの皮膜は良い防具の材料になる。

 

「……そうだな。だが、【経験値(エクセリア)】稼ぎは出来るのではないか?」

「あのモンスターより強い人ならありえそう……。ポランの場合は倒さないと駄目ってことだったと思う。だから、倒せないモンスターと長く戦っても意味が無い」

(……結果がそうであるなら実に勿体ないな。……しかし、なるほど。そういう事もあるか)

 

 倒した分だけ【ステイタス】が増える、という事は倒せなければ増えないという意味にも取れる。

 早々都合の良い事態は起きない、という意味でなら安心出来る。いや、安心してはいけない。

 弱いモンスターを大量討伐して増える場合はとんでもないことになる。

 よその【ファミリア】の眷族なので確認するにはヘスティアの許可が必要だ。

 残念ながら【ロキ・ファミリア】は【ヘスティア・ファミリア】とは敵同士という関係になっている。(おも)に主神同士の仲が悪い。

 ロキに内緒でなら許可が貰えるかもしれない。少なくともヘスティアは眷族(こども)には優しい――それは【ファミリア】問わず――神様だ。それにアイズにジャガ丸くんを売らない、というような嫌がらせをしなかった。

 

        

 

 咆哮に気を付ければ肉塊ゴライアスは物の数ではない。そう思っていたが数による物量が思いのほか大勢の冒険者を苦しめる。

 今のところ倒しにくいゴライアスは今も生まれ続けている。

 投入した魔石の数より多いのは確実だ。

 

(毒性のモンスターではない事が救いか)

「……それ以前にこれだけの階層主が現れるとは。私も記憶に無いぞ。フィン達を連れてくればよかったか」

 

 団長以下が総手で出張る事になると大事(おおごと)にしかならない。――既に手遅れだが。

 リヴェリアは奇妙な光景を独占している事に苦笑を覚える。帰ってフィン達に言えば悔しがることは必至。

 

「おい! 【九魔姫(ナイン・ヘル)】! 暢気に見物していないで魔法の援護を!」

「……いいのか? 折角楽に倒せる階層主だというのに」

「レベル(シックス)は言う事が違うね~」

「簡単に倒せる相手じゃねぇんだよ」

 

 そう言っている冒険者の横では頭の耳を完全にペタンと伏せたベートが果敢に戦っていた。

 周りの雑音ごと遮断し、文句を言わずに突き進む。

 本来はアイズとポランの決戦の為に用意した舞台なのだが、とリヴェリアは残念に思いつつも赤毛の少女を探した。

 同じ部屋に居るのか、それとも十七階層を引き返して大人しくしているのか。今の彼女は放っておいても害が無い。それくらい大人しいと聞いている。

 モンスターなのに害が無い、というのがいまいち理解できなかったけれど。

 

「……しかし、本当にキリが無いな。もう少助っ人を呼ぶべきか」

「出来るならそうしてぇところだが……」

 

 リヴェラの街を取り仕切る『ボールス』という冒険者が疲れを見せながらやってきた。

 彼女の命令で冒険者をかき集めたのはいいが思いのほか苦戦している。咆哮しかしないモンスターに。

 尋常ではない『耐久』に手間取っている為だ。長期化すればするほど体力を奪われる。尚且つ、定期的に無数の咆哮(ハウル)が襲い掛かってくる。これは余波だけでも厄介極まりない。

 

「アイズ。もはや緊急事態だ。……応援を呼ぶぞ」

「……うん」

 

 その返答に少し意外だと感じつつも上への通路を確保する為、即座に魔法詠唱を始める王族(ハイエルフ)

 モンスターの出現頻度はそれほど早くはないが討伐速度は明らかに遅すぎる。それだけ倒しにくい証拠でもある。

 

        

 

 ダンジョンは過度な破壊行為をしても後々自然に修復される。しかし、部屋全体の崩壊は上層階に居る冒険者にとってはお目にかからない程の珍事であり大事(おおごと)だ。

 混乱を宥めつつ事態の収拾に務めなければ余計な被害が広がるばかりだ。

 リヴェリアの魔法によって空いた通路を何人かの冒険者が駆け抜けていく。

 転がるばかりのゴライアスが彼らを狙って追うことは無いが新たな出現で通路が塞がれるのは時間の問題だった。

 

(子供の興味から生まれたことがこんな事態を招くとは……。しかし、それを可能にするダンジョンにも問題があるのではないか? 一概にアイズ達を責める事は出来ない)

「……しかし。何なんだ、この状況は」

 

 初めて見る現象に改めてリヴェリアは驚いていた。

 緊急時とはいえ大規模な魔法で一掃した。しかし、それでもモンスターの誕生は止まらない。

 元々耐久力のあるモンスターだ。そこらの雑魚のように蹴散らせないところがある。

 

 勇敢なる軍隊(アーミー・ドッレドノート)

 

 不意に肉塊の奥から木霊した。それは聴覚に優れた亜人種(デミ・ヒューマン)王族(ハイエルフ)の耳に届いた。

 そして、すぐに膨大な量ともいえる邪悪な気配が()()()生まれた。

 

(な、に……)

 

 部屋を覆いつくさんとするように発生した黒い靄――それを冒険者達は目撃した。(まさ)しく見えた、という表現そのままに。

 両手が刃物状になった黒い蟷螂(マンティス)のような形状。それらが眼下に広がる肉塊を――根こそぎにするように切り裂いていく。

 不思議な事に冒険者には当たっていない。――驚いた者達の叫びはあるものの見えている範囲で被害は確認できない。

 一斉に灰に還る肉塊ゴライアス。その消滅速度はリヴェリアの魔法を凌駕していた。

 

「……肉塊だけじゃないな。部屋全体まで切り裂かれているようだ。お前達! 一旦避難しろ! 崩れるかもしれん!

 

 彼女の怒声に突っ込んでいた冒険者達はリヴェラの街方面に一斉に駆け出していく。

 壁ごと切り裂く謎の斬撃に恐れ(おのの)き、避難を選択させた。

 

「……声の感じは俺にも聞こえた」

 

 耳を閉じている筈のベートは――今は片耳だけ上に()げて状況把握に努める。

 声の主は多少の差異はあるもののポランで間違いない。しかし、潰れた音声が実に痛々しいものであった。

 

(あの子が何かしたのか。魔法? それなら詠唱がある筈……。無詠唱か?)

 

 攻め込んでいたアイズもリヴェリアの側に戻ってきた。

 ほぼ壊滅状態のゴライアスであったが新たな肉塊が生まれようとしている姿は確認できた。つまり、まだ全滅したわけではない。

 それから程なく天井の崩落が始まる。するとその天井からも肉塊が落ちてきた。

 ある程度、予想していた事とはいえ――これでは落下による攻撃で冒険者が潰されてしまう。無理に突入するのは悪手と判断する。

 だが――

 落下してくる肉塊は巨大な漆黒の刃物のようなもので切り裂かれ、地面に到達する前に灰になった。

 階層主を一撃で倒す謎の存在。いや、それよりもそんなことが可能なのか、と。

 

「あの強さではレベル(セブン)すらもただでは済むまい」

 

 今はモンスターに向けられているが冒険者であれば現行の防具でも防ぎ切れない。それこそ『不壊属性(デュランダル)』を付与した武具を持ってこない限りは厳しい。

 強大な力を冒険者が発する場合、それは決して小さくない代償が必要だ。少なくとも魔法を放つのでさえ労力が居るし、精神(マインド)を消費する。

 ポランはどのような攻撃をしたのか、とても興味があった。

 

        

 

 部屋ごと切り裂く謎の攻撃により殆どの肉塊は灰へと還っていく。しかし、崩落も始まり、現場に居ることが難しくなってきた。

 肉塊の個数が大幅に減った所で赤毛の少女の姿が見えた。

 右目から巨大な腕の様なものを生やしている。あまりにも規格外の巨大さでリヴェリアのみならずアイズも息をのむ。

 

「あれが奴の隠し玉か?」

 

 度重なる咆哮(ハウル)を受けている為か、服が防具ごとボロボロで全身は血で汚れていた。

 駆け出しからすれば衝撃波を伴うゴライアスの攻略はとても難しい。無傷でいる事など不可能なほどに。

 

「リヴェリア。高等回復薬(ハイ・ポーション)をちょうだい」

 

 アイズのケガは軽微だ。であれば誰に使うのかは自明の理。

 どういう考えがあるのか疑問だが今回は彼女のやりたいようにさせることが目的だ。だから、リヴェリアは黙って要望されたアイテムを手渡す。

 見ている間にも巨大な黒い影は小さくなっていく。おそらく時限式の魔法。または特殊技術(スキル)

 元々レベル(ワン)の駆け出し冒険者だ。身の丈に合わない能力を行使すれば肉体が無事でいる事などあり得ない。少なくとも即死はしないとしても――

 視認できた黒い煙りは瞬く間に消え去り、疲労が襲ってきたのか、ポランはその場に(うずくま)るように崩れ落ちた。そこへアイズが彼女の身体に高等回復薬(ハイ・ポーション)を半分ほど振りかけ、残りは飲ませた。

 外傷が瞬く間に塞がっていく。

 

(背中が酷い火傷にあったよう……。今の魔法のようなものを使ったから?)

 

 元々傷だらけだった背中は【ステイタス】が判別できない程に焼け(ただ)れていた。しかし、それは今使った高等回復薬(ハイ・ポーション)で回復しつつある。治る前に見えた惨状だったようで安堵する事が出来た。

 もし、呪い(カース)であれば目も当てられない。

 一旦リヴェラに避難することを決め、アイズはポランを抱き起す。ドレッドノートは軽く呻くが抵抗はしなかった。

 天井の崩落と共に新たな肉塊が生まれつつあるのも確認出来たが無視する事にした。

 

 

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