意外な、または驚愕の試験内容を終えた白髪の少年は人目に付かない路地裏で荒い呼吸を整えるのに必死になった。
未だに手には柔らかい感触が残っている。
言い分は確かに理解できるが――いや、今後を見据えればもっと不味い状況が起こりえた時、自分はかなり取り乱す。そうなれば【ファミリア】の雰囲気を壊してしまうかもしれない。
それでも――
(……冒険者、やめようかな)
せっかく期待を胸に秘めてここまで来たのだから、それはあり得ないのだが――それでも考えてしまう。
女性たちを前にしても冒険者でいられる自信があるのか、と。
さすがに同じ展開は無いと思いたいが不慮の事故という想定ならありえる。その時、慌てるだけならば相手の言いなりになるし、泰然とすればいいのか、というと――
(言い訳が出来なくなる。……言い訳をしないように振舞うことは大事なんだろうけれど……。今の僕には出来そうにないな)
ダンジョンの探索は男性ばかりではない。半裸な
そこで恥ずかしいだ何だと我がままを言っている余裕はおそらく無い。
まだ冒険者でもないのに既に満身創痍の若者ベル・クラネルは拠点とする宿にどうにか逃げ帰った。そして、そのまま薄い生地の掛布どんを頭から被って煩悩と必死に戦った。
次の日になり――前日は大して寝付けなかったけれど――【ファミリア】探索に向かう事にした。どの道、のんびりしている余裕は資金的にも無いので。
今回は最初から【ヘスティア・ファミリア】に行くべきか悩んだ。
候補はヘスティアとエニュオだ。
エニュオは『楽しい【ファミリア】生活をしよう』を募集要項に書いてあった筈なのに真面目な意見を貰ってしまった。ある意味では騙された。
いや、実際は何処も本質は同じなのかもしれない。
判断するのは入団志望者だ。
優柔不断のうちはきっと何処にも入れない。
†
多くの冒険者が集まりそうな場所で聞けるだけ尋ねてみた。ある意味では度胸が付いたお陰ともいえる。
今のところ胸を揉んだ噂は聞かないが――いがれは何処かで出るかもしれない。
冒険者の多くは入る前に自己鍛錬などを済ませ、冒険者に必要なアビリティなどを得ている人が多い。
特に獣人の
何らかの事情で眷族を集めているところはあるにはあるが、そういうところはえてして怪しい。あるいは犯罪系。
さすがにベルも冒険者になる為に犯罪者にはなりたくない。
「【ファミリア】に入ったら基本的に自己責任だ。装備もアイテムも。主神や団員達が養ってくれると思わない方がいいな」
「それを当てにしてる奴は大抵、三日と経たずにオラリオを去る事になる」
自分から売り込むにしても実力が無ければ駄目だし、将来に期待するほどの魅力を示す方法もあてがなければ無理だ。
特に田舎から冒険者に必要ものを一切持たずに来るような間抜けが欲しい主神は居ないに等しい。
一見馬鹿にしている冒険者達も修羅場を潜り抜けて今の地位に居る。彼らは彼らで日々、
(単なる憧れだけでは難しいのは分かっているけれど……。想像以上に難しい事は理解した)
女の人の胸で慌てているようでは冒険者は夢のままで終わってしまう。
活動資金も底をつきかけている。早く決心しなければ田舎に帰るどころか、オラリオの路地裏で野垂れ死んでしまう。
通りを歩いている途中で人生に諦めた
冒険者は皆が仲良く活動する場ではない。他人を蹴落としてでも上を目指す場だ。
ある意味では弱肉強食。だからこそ冒険者の面構えは一般人とは違う。
†
滞在最終日。情報を集めて色々と当たってみたものの予想通りの結果に終わってしまった。
どの人も事前に下準備を整えてから【ファミリア】に臨んでいる。それで駄目な時は諍いが起きて眷族に返り討ちに合う。そういう現場を何度か見掛けてしまった。
入団希望者と眷族では顔つきが段違いに違う。覚悟もおそらく違う。どうしてかは分からない。
それらを見てしまうと勇気が揺らいでしまう。
やはり自分はここに来るべきでは無かった、と。
(いずれは入団できるかもしれない。……その前に活動資金が底をつく。なりふり構わない方法も神の前では無力だ。彼らはそういう所をきちんと見抜く、と聞いているから)
朝方、
開店準備をしている店員であり神を見つけた。
(やっぱり居た。
大抵の神は【ファミリア】の
ベルは何となく神の様子を眺めた。
彼女も自分の眷族を持ち、冒険者を育成しているのか、と。
「んー、そこの
「そういうわけじゃないんですけど……。皆しっかり働いているんだなって」
「……そう言われるとこそばゆいけれど。皆ってわけでもないぜ。だけど……、確かに
「神様は僕らが冒険者になる事に期待とかしているんですか?」
「難しい事を聞くね、君。そりゃあ、期待もしているさ。しないと
作業の手を止めて女神はベルの側にやってきた。
少しくらい開店が遅れてもいいや、と。
人生に迷っている子供のように見えたなら、それに助言くらいは神としてくれてもバチは当たらない筈、と思いながら。
「ボクの【ファミリア】は割合い自由だ。女ばかりだけど……。他の眷族程高尚な望みがあるわけでもない。日々、健やかに暮らせればいい。……だけどね、ギルドの規定はそれを許さない。定期的に上納金を収めなければならないんだ。知ってるかい? 【ファミリア】にはランク付けがされていてね。上に行けば行くほど収める額も増える。そうそうのんびりも出来ないんだ。内は更に問題児が作った借金がべらぼうにあってね。無理してでもダンジョンに潜って稼いでもらわないといけない。ボクも暢気に
つい聞き手に回ったが、思いのほか聞いてはいけない事まで聞くはめになった。
女神の【ファミリア】には借金がある。――聞かなければ良かったことかもしれないけれど。
自分が冒険者になれるかどうか、とは別にギルドの規則を守らなければならない事も控えていたとは思いもよらなかった。
常に働き続けないと【ファミリア】が維持できない、という意味なら多くの冒険者の顔も険しくなるはずだ。何となくだが、そう理解した。
ボクの【ファミリア】に入らないかい?
にこやかに微笑む神は唐突に言った。
濡れ羽色の黒髪に水色の瞳。小柄な体型にも拘わらず大きな胸の神様が。
ベルにとっては大変ありがたい申し出だ。神自ら勧誘してきたのだから。だが、気掛かりな事がある。
女神の【ファミリア】は女性ばかりだと聞いたので。
「ボクは処女神の
「……いえ、なんか……その……」
言葉が見つからないが申し訳ない気持ちになってきた。
何処でもいいから【ファミリア】に入って冒険者になる、という安易な考えしか持っていなかった。所来の展望も無く、ただ英雄に憧れているだけの存在――
そんな自分を受けてくれるのであれば全力で応えたいと思わなくもない。
†
活動資金も底をつきかけている。下手をすれば故郷に帰る資金も足りない程だ。
単なる仕事であれば冒険者でなくても何処か働けるかもしれないが、それは考えていなかった。
もはや退路は断たれたと考えた方がいいのかもしれない、とベルは思う。
(その前に確かめないといけない事が……)
神の前で嘘は付けない。誤魔化したままでは後々の禍根に繋がる。
ベルは眷族の事をまず尋ねた。エルフが居て、その人はどういう人柄かを。――案の定、出会った特徴のエルフがまさに団員として存在していた。
彼女と出会い、胸を揉んだことを正直に告げた。
言っている内に神の顔が険しくなったり、顔を赤くする場面があったが激高することなくひたすら唸って話しを最後まで聞いた。
途中で怒られる事は覚悟していたけれど、ベルは嘘をついたままで居る事に耐えられない。
「……随分と生々しいやりとりがあったんだね」
「……逃げると切られますから。実際に頬を何度も切られてしまいました」
女神は大体の状況が想像出来たようでベルを見る目が哀れみに近いものになった。
もちろん、おっぱいを揉んだら入団が認められる、などという条件は存在しない。まして男子にふしだら事をさせる気も無い。
(……この
周りに人が居る。それもたくさん。
そんな中で少年は何を思って正直に告げたのか。もちろん、嘘をついていない事は分かった。
女性団員しか居ないから問題が起きる可能性はとても高い。そんな中でエルフノ団員は特に対外的にも良からぬ噂が立っては困る眷族だ。そんな団員が最初に彼と接触したのは僥倖かもしれない。
胸を触らせた後の彼女の顔は意外と嬉しそうであった。何があったかは聞かなかったが、新しい団員希望者との面談をしていたのだと理解した。
(……とても面談とは思えないんだけど……。エルフはエルフでも、君は最も高貴な……)
大きくため息をつく女神。
持ち帰った資金からも秘密裏、というわけでもない。それはそれで実に腹立たしい。
この怒りはベルに対してではない。
「……状況は理解した。ようこそ我が【ファミリア】へ。ボクは君を歓迎しよう」
「ええっ!? 男の僕でもいいんですか?」
「いいよ。……そうしないとあの子が恥をかいたままになってしまうじゃないか。君がもし黙ったまま去るようだったら、後で事情を知ったボクは
今は言葉だけだが制式に参加させてもいいと女神ヘスティアは思った。それから仕事があるのでベルには一旦、宿を引き払ってもらったり、
罰則については仕事に身が入らなくなるので保留――後でどうせ忘れる。
こうして暫定的にベルは冒険者への切符を手に入れる事になった。
†
神との口約束だけで眷族になれるわけではない。【ファミリア】の団員になるには儀式の様な事をしなければならない。
その代表格が『
一般的に知られている範囲であればギルドでも教えてもらえる。
時間まで散歩するより【ファミリア】の位置と団員についての情報を集める事にした。
(……そういえば、あの神様は【ヘスティア・ファミリア】だからヘスティア様か……。団員が四名だったはず)
知られている名簿が確かなら四名だ。全員女性。
先に向かった【エニュオ・ファミリア】も眷族は全員女性で十人以上在籍している。
男性の冒険者の多くは大手に居るので無名に近いほど女性が多くなる傾向にある。ただ、種族はまばらだ。
【ヘスティア・ファミリア】の活動はダンジョン探索が主だが色々と問題を起こす事で公開されない情報が多い事に驚く。
(優しそうな神様なのに……)
神に問題があるわけではない。それはギルド職員も認めている。
ここ最近は大人しくしているので目立たないだけ、と教えてもらった。最初期のころはもっと荒れていた、とか。
何にしてもベルが決定した事にギルドは止める権利は無い。それが例え犯罪者の【ファミリア】だとしても。
ある程度の助言を受けた後、ベルは
かの【ファミリア】の
半裸のエルフが出入りした場所でもあるので迷うことは無かった。
(……外から見ると小さい建物なのに五人も共同生活しているようには……。地下でもあるのかな)
恐る恐る建物に入るとまず朽ちた教会らしい佇まいが見えた。今は来ない信者たちの為に用意された長椅子がそこかしこにあり、奥にある何らかの神の像もボロボロだ。
石造りの為か、床は丈夫そうだった。
辺りを確認すると矢印で入団希望者はここから入るように、という指示書きを見つけた。ほぼ隠し扉のような形なので指示が無ければ見つけるのが難しい様相になっていた。
扉を開けると地下への入り口になっており、そこを降りていく。
一階層分を下ると明るい光りが漏れているのに気づく。人の気配があり、おそらく団員か神が居るものと思われた。
†
下まで降りると扉が無い事に気づく。すぐに部屋に入れるようになっているようだ。
冬場は風通しがいいから寒そうな気がした。実際、地下の為か、肌寒く感じる。決して悪寒ではないのは分かった。
ベルは部屋に顔を出すと何人かの眷族らしき人物と談笑している神の姿を見つけた。
「す、すみませーん。今、いいですか?」
声をかけると二人ほどの眷族が黒髪の神に指さしで伝えた。
現場には女性だけで他の来客や自分と同じ入団希望者がたくさん来ているような雰囲気は無かった。
「早速来たねー。入って入って」
「は、はい。よろしくお願いします」
気さくな神様の言葉に従い、部屋の中へと入る。
部屋には女神ヘスティアの他に見慣れない女性が二人いるだけ。エルフの姿は無かった。
一人は右目を眼帯で隠した赤髪でもう一人は茶髪。共に
残り二人の姿は軽く確認したかぎりでは無かった。
地下の部屋の内装は天井を除けば明るい色調の化粧板などで装飾され、調度品も新調されているようで埃臭さは感じない。
部屋の間取りは大人数が生活するには狭いが他の部屋へと繋ぐ扉があったので、思っている以上に広いのかもしれない。
空いている場所に腰掛けたベルに赤髪――左側だけ。右側は白髪だった――の女性はにこやかな顔を。もう一人は特に表情らしいものは表さない。ある意味では何の興味も抱いていないようにも見える。
「この子が新しい団員候補さ。どうかな、団長君」
「……気弱な田舎の少年って感じですね」
(……実際、その通りです)
「………」
団長と言われて言葉を発したのは赤髪の女性で茶髪の方は無言のままだ。
神ヘスティアは嬉しそうに、楽しそうにベルの事を話すが入団についてはまだだった。
緊張するベルは自己紹介から始めた。
「初めまして、ベル・クラネルといいます。英雄に憧れてオラリオに来ました」
「……そう。頑張ってね」
「………」
「二人共、新しい団員候補に言う事はそれだけかい?」
「……特に言うことは無いです。まだ本決定でもない相手ですし……」
確かにね、とヘスティアは言って団員の顔色を窺う。
男子ということで毛嫌いするのかと予想していたが団長は特に発言してこなかったので彼女は問題なし、と判断した。隣に居る団員も無反応なので問題無し、と。
残る二人の内エルフとは既に面識があるし、こちらも問題無し。であれば必然的に加入に問題は無いと判断するしかない。
ヘスティア自身もベルの受け入れに忌避は無い。
†
【ヘスティア・ファミリア】の実質的な団長は半分だけ赤く、残りが白い髪の女性である。ベルは彼女によろしくお願いします、と改めて頭を下げて挨拶した。
握手をしようと手を出すも彼女は両手を手袋に包んだままだった。
緊張していて気づかなかったベルは団長の女性の姿に驚いた。
歴戦の戦士の様な傷だらけであることに。見た目は強そうな感じはしないのだが――
「それより神様。一人は奥に居ますが連れてきますか?」
「そのままでいいんじゃないかい? それより入団の儀式をしないと」
「……随分とあっさりしていような気がしますが……。僕は何をすればいいんでしょうか?」
入団に伴う強さの確認とか血判状とか契約書とか危惧していた。それについて団長は噂にめげずに来た時点で特に確認するようなことは無いと言った。あえて寝室をどうするか、が残っている、と。
女性団員しか居ないので一つの部屋で雑魚寝する。ベルは当面は今いる場所で寝てもらう事になる。
「ボクはみんなと仲良くしてくれればいいよ。それと寝室か……。それとベル君。眷族になったらギルド本部がある『
「分かりました」
使用料はかからないが冬場は移動するだけで湯冷めしやすい。
その後、淡々と説明を受けるが無言の団員は最後まで大人しくしていた。聞けば普段から大人しいという。
思っていたよりあっさりと事が進むので何か条件は無いのか、と尋ねてみた。
「あるとしても【ファミリア】の借金くらいだよ。だいたい二千万ヴァリスくらいあるから。どんどん強くなって下層に潜って稼いできておくれよ」
「に、二千万っ!?」
「これでもかなり減らした方さ。うちの団員は色々と……、下層まで潜れないんだ。出来なくはないんだよ。初期から受けているギルドの制限に引っかかるから。君ならきっと何の条件も課せられないと思うけれど……」
「……この【ファミリア】はいったい何をしたんですか?」
「えー、そりゃあ、色々だよ。聞かなかったかい? 【ヘスティア・ファミリア】には問題児が居るって。その影響さ」
神が言うと団長は苦笑したがもう一人は無関係だ、と言わんばかりに無反応だった。
動いているので人形の
†
眷族の儀式は簡単に済むが問題はその後だとヘスティアは告げる。
ここには居ないエルフの団員の胸を揉んだ事だ。もし、話しが広まっていれば同族の眷族達に嫌がらせを受ける事を覚悟するように、と。
「あの子はただのエルフじゃないからね。何もなければそれに越したことはないんだけど……。全く、困った
苦笑しつつ儀式の為に場を整備する団長達を眺める。
世間的な噂はベルの耳には入っていないし、ギルドでも聞かなかった。それについては神だけが胸に秘めている可能性を示唆する。
「少なくとも君は他の神に弱みを握られた。それは間違いないよ。その上で冒険者として働かないといけない。……結構、大変な毎日が始まるけど……。改めて聞くよ。冒険者になる事に後悔はしないかい? このまま黙って故郷に帰る事も選択の一つだ」
「……いえ、折角の厚意に甘えさせてもらいます。冒険者になりたくてオラリオに来ましたから」
「そうかい? なら……、ボクから言うことは無い。後でエルフ君に会うといい。儀式は君の背中にボクが『
説明を終え、部屋に神とベルの二人だけになった。
ヘスティアはベルに上半身裸になるように言った。肌に直に触れる必要があるので。
【ステイタス】は背中で操作する。
「……そうそう。武具はギルドから借りられるから。最初はアドバイザーを付けるように。説明はギルドで聞いてくれよ」
「分かりました」
「じゃあ……、やろうか。君が冒険者としての第一歩を踏み出すきっかけを……」
「よ、よろしくお願いします」
服を脱ぎ終わったベルは長椅子にうつ伏せになる。その背中にヘスティアは乗り、軽く彼の背中を擦る。
待望の男の子だ。普段よりも大事にしたい。その気持ちを押し込めて儀式に意識を向ける。
どの眷族も特別扱いはしなかったが、ベルはどんな冒険者になるのか、期待に胸が膨らむ。
(出来れば問題行動を起こさない方がいいんだけど……。ボクの【ファミリア】は騒動に祝福されているらしいね、全く。実にありがたくない)
白い素肌の背中を眺めてからヘスティアは用意した針で指先を刺す。致命的なケガを負うと天界の
軽度なものであれば問題は無い。
そうして指先から血を一滴ベルの背中に垂らす。その後、神にしか理解できない記号を描く。
すると背中に光りの波紋が生じ、朱色の文字【
それぞれの神を象徴する
「一度刻まれた【ステイタス】は君が生きている限り有効だ。勝手に他の神に改竄される事もない。……けれども、
「はい」
「登録としてはこれで終わりだ。君の【ステイタス】は初期値だからいきなり強くなった、とかにはならない。誰でも最初はレベル
念の為に紙に写した【ステイタス】をベルに渡す。
その紙は不用意に見せびらかしてはいけない、とヘスティアは厳命する。
想像を絶するような大仰な儀式はなく、あっさりと正式な眷族になったのだがベルには実感が湧かない。しかし、他の【ファミリア】も同様の登録方法だから誰に聞いても同じ答えが返ってくるよ、と彼に伝える。
あくまで団員になっただけで強くなるのはこれからだ。早速、団長を呼びつけギルドに向かうように指示する。
「今日はギルドへの報告だけで本格的なダンジョン攻略は明日からにしなよ。折角入団したのにいきなり初日で死んでもらっては困るから」
「そ、そうですね。武器もありませんし」
「君がギルドに行っている間に寝床の整備をしておくよ。あと、ポラン君。食料の買い出しや冒険に必要なあれこれを教えてあげてくれ」
「分かりました。では、……クラネル君。行きましょうか」
紅白の髪の団長『ポラン・ブーニディッカ』の言葉によろしくお願いします、と応じる五人目の眷族ベル・クラネル。
二人が
「……どんな成長をするのか……」
(……それよりもエルフ達に因縁を付けられないか心配だな……。今まで女所帯だったし。あの子はきっと苦労する。……それに負けなければ化けそうな予感はするけれど……。どうなるんだろう)
心配事はたくさん控えているが未知への興味はそれ以上にある。
他の団員達もそうだった。だから、ベルもそうである、と。
神に出来るのは自分の
――四人目の眷族のように。