【凍結】 Fantasy Story Online 作:竜人機
< 友人からのお誘い >
全感覚投入型ヴァーチャルリアリティマシン、通称VR。
VRが実用化し、民需製品として世間に出回り始めて真っ先に作られたのは、創作物で散々デスゲームを題材にされたVRMMORPGだった。
デスゲームを懸念する声は絶えなかったが、デスゲームなど恐れるに足らずと言うほどに多くのユーザーたちはVRMMOにのめり込んだ。クラッキングによるデスゲーム紛いのログアウト不能事件が実際に起きようとも変わらずに。
ユーザーたちはVRMMOを求めた。求め続けた。現実から離れた非現実的な第二の世界を。
それがVRMMO創世期。幾多のゲームが生まれては消えを繰り返した時代。
時の流れと共にVRの安全性向上と価格低下と共にTVゲーム機やパソコンのように一家に数台置かれるようになった。
そしてまた新しいVRMMORPGが産声を上げ、多くのユーザーたちを第二の世界へと迎え入れる。
×+×+×+×+
落ち着いた音楽の流れるアンティーク調の小洒落た店、喫茶「ひだまり」。
新規のお客は少ないものの、昼下がりには常連客が足繁く通ってくれている。
そんな店のマスターを務めるのは先代である伯父から店を受け継いだ大滝 青児郎、25歳。
小さい頃から空手をやっていて、止めた今でも身体は鍛えていると言うだけあってか、がっしりとした体躯と精悍な顔付きをしている。
「ねえねえ、せいじさん、一緒に
不意にカウンター向こうにいる青児郎に声を掛けたのはその目の前、カウンター席に座った常連客、ウェーブの掛かったセミロングの愛らしい小柄な女性、村井 桃香だった。
彼女は常連客であると共に青児郎の友人でもある。
「ふぉそ? 」
「今話題のVRMMOだよ」
「ああ、お前がさんざん楽しいとか面白いとか言ってたヤツか。ファンタジーストーリー オンラインとかいう」
「そそ、βテストもやっと終って、いよいよ正式サービスがゴールデンウィーク前に始まるの」
「聞いてた限りは面白そうではあるが…… 」
「実際面白いよー。βテスターのわたしが保証したげる」
「誘ってくれるのは嬉しいが、生憎と俺はVRマシン持ってないからな。
一基3万円前後する物を思い付きなんかでぽんとは買えんよ」
「ふっふーん。これなーんだ」
と桃香は自慢げに持ち込んでいた紙の手提げ袋からひとつの箱を取り出して見せる。その箱にはHMD、ヘッドマウントディスプレイの写真に「VIRTUAL REALITY MACHINE」とロゴが描かれていた。
「VRマシン、か」
「そう♪ 昨日福引で引き当ててさ、わたしは今使ってるのがあるし、これはせいじさん使ってよ」
「いや、しかし……」
「さっき言ったとおり福引で当ててタダで手に入れたものだから、お金は気にしなくて良いよ」
「しかしだな」
「どうしても気になるなら、FSOで一緒に遊んでくれるのでチャラにしてあげるよ♪ 」
「いや、それはチャラというより貸しが増える気がするんだが」
青児郎はネットゲームならやったことはあるが、VRはまるっきりの初心者だ。ネットゲームと勝手の違うVRで一緒にとなれば色々と面倒を掛けてしまうのは目に見えている。
「それも含めて遊び楽しむんだよ」
「…… わかった、ありがたく受け取るよ。
色々面倒かけるかもしれないが、その時は頼むな」
「まーかせて♡ 」
ご機嫌にそう返答する桃香。
いつ頃始めるかやFSOのソフトはどうするかなどを話し、桃香がコーヒーを飲み終える頃その場はお開きとなった。
×+×+×+×+
「これで、よしと」
夜の10時頃、店の所用を済ませ帰宅した青児郎は早々にVRマシンの登録設定を行なった。
ネットに繋いでシリアルナンバーやIDの入力から身体データの読み込みまで済ませ、後はソフトをセットしてログインするだけにしておく。
FSOのソフトの方は桃香が行きつけのゲームショップに予約を頼んであると言う。勿論、何から何まで頼りきりと言うわけにはいかない。予約したソフトの代金は後日確りと渡すことになっている。
「さて、次はWikiでも見てみるか」
VRマシンを外し、ベッドの枕元に置くと青児郎はパソコンへと向かう。SFOのWikiを検索して探し出すと、良い暇つぶしになるなとWikiを見ていく。
実を言うと青児郎はショートスリーパーだ。日に2、3時間ほど眠れば充分な体質で、夜は少々暇をもてあまし気味になっている。
日々良い暇つぶしはないか探していたそこへSFOというVRゲームをやることになったのは渡りに船だった。
FSO、『
明確な
アビリティはその行動を取ることで熟練度が貯まり、Lvが上がる。一定のLvに達するとスキル、必殺技などを覚えることが出来る。
またアビリティのLvが上がるとAP、アビリティポイントが貯まり、それを消費して新しいアビリティを取得していく。
「桃香は戦士系で
自分はどうしようかと考えながら青児郎はWikiを眺めていくと、Wikīで不遇と称される種族が目に留まる。
先史文明の遺産たる種族、神が造り出したとも言われる「神造人間」。
いわゆる人造人間。全体的に初期のHPとMPが高く、HP微回復&MP微回復を特徴とする種族。
一見最優種族に見えるがしかし、全種族中で最もアビリティの成長率が低い。一つアビリティLvを上げるのに他種族のおよそ3倍もの熟練度を必要とし、アビリティのLvが非常に上がりにくい。
その上に料理を食べることが出来ず、満腹度回復には専用アイテムの「エネルコア結晶」か、それを「錬金術」で加工した加工品でしか行なえない。
これは料理も美味しく楽しめるFSOにおいては致命的らしい。
そしてその容姿は三つのタイプがあり、顔はフルフェイスメットで身体はボディスーツに上半身と手足に身体と一体化したプロテクターのタイプA、シルバーメタリックな肌をしたタイプB、耳にアンテナがついただけの人間に近いタイプCとなっていた。
「ファンタジー世界にロボか」
なんだか浪漫を感じる、と青児郎。他の種族よりも桃香に一層面倒を掛けてしまうかもしれないが、いざとなればソロのんびりでやれば良いかと種族はこれで行こうと決める。
次はどんなアビリティがあるかと見ていけば、「剣術」「槍術」「弓術」「斧術」と定番の戦闘アビリティの中でまたもや不遇と称される物を見つけ、これまた浪漫を刺激される青児郎。
「狙ってるのかね、コレは」
そんなことを独り語散る。
ロボにこのアビリティ、武器を組み合わせは剣と魔法のファンタジー世界でこれは面白そうだ。
桃香と一緒にプレイする以外特に目的もないしと青児郎。浪漫重視で敢えて不遇キャラと不遇アビリティを組み合わせて使うことに決めたのだった。
To Be Continued