【凍結】 Fantasy Story Online   作:竜人機

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第1話

 

 

 < キャラクターメイキング >

 

 

 

 四月末、ファンタジーストーリー オンライン正式サービス開始日を経たゴールデンウィーク。

 

 友人である村井 桃香の伝手で予約した(されていた)FSOを無事手に入れた青児郎は予定通りゴールデンウィーク中、店を休みにして自宅にてVRマシンにFSOをセットアップし、いよいよゲームへログインする段となった。

 

「なんだか、緊張するな」

 

 と青児郎は苦笑を浮べた。

 VR初心者の身としてはもしかしたらなどと、時代錯誤にデスゲームになったらどうしようかと考えてしまったのだ。

 今やVRの安全性の高さは折り紙付きだ。システム上デスゲームになること事態、笑い話のネタにもならないほどありえないのだから。

 まあ、希に不具合などによって一部でログアウト不能などと言った事態なら起きたりするらしいが、それもすぐに解決される類の問題だそうだ。

 

 ともあれ、桃香とFSOで落ち合う約束の時間、午前9時が迫って来ていた。

 

 もう一人の自分となるキャラクターの作製時間もあるからと、青児郎は早めにログインすることにした。

 

 ヘッドマウントディスプレイ型のVRマシンを被り、ベッドに横になるとVRマシンを立ち上げる。

 

 ふわりとした浮遊感と共に意識が遠のき、青児郎はFSO、FantasyStory Onlineの世界へと誘われていった。

 

 

 

  ×+×+×+×+

 

 

 ふと気付けば青児郎は真っ白な空間の中に立っていた。

 上下左右前後、どこまでも果てしなく続く真っ白な世界。地に足が着いている感覚がなければ立っていられなくなりそうな少しの不安感が湧き上がる。

 

『ようこそ、ファンタジーストーリー オンラインの世界へ』

 

 不安感に青児郎が顔をしかめそうになったところへ可愛らしい声音が響いてきた。

 

『ここはキャラクターメイキングルーム。もうひとりのあなたを作り出すための小世界』

 

 その言葉と共に前方に中性的な体型をした白いマネキン人形が現れる。

 

『まずはあなたの名前を教えてください』

 

 目の前に半透明なウィンドウが開くと、スクリーンキーボードが手前に開いた。

 スクリーンキーボードに触れて入力した名前は「アオ」。あまり凝った名前もと思い、青児郎は自分の名前から取ることにしたのだ。

 単純な名前ゆえに既に「アオ」で登録されているかもと少し心配したが、問題なく名前を登録できた。

 

『次にあなたの「種族」を教えてください』

 

 新しいウィンドウが開くとヒューマー、エルフ、ドワーフ、ビーストニア、ドラゴディア、神造人間の六つの種族が示され、手で触れてカソールを合せると、それに合せて白いマネキン人形の形が変わった。

 

 ヒューマーは人間。バランス・汎用型でHPとMPは平均的で高すぎず低すぎずといったところらしい。

 育て方次第でソロでもPTでもどんなプレイにも対応可能だそうだ。

 

 エルフ。MPが高く、戦闘職は後衛、魔法使い向きらしい。

 ダークエルフはキャラメイクで肌の色を変えるだけなので能力的には一緒とのこと。

 

 ドワーフ。やはり生産職、特に鍛冶系の特化型で、生産・鍛冶向き。

 

 ビーストニア。いわゆる獣人。

 獣頭人身から獣の要素が耳と尻尾だけで後は人間と変わりがないという萌系なのまで調節可能らしい。

 スピード型で、戦闘職は前衛や中衛向き。

 

 ドラゴディア。竜人。竜頭人身で調節不可。竜の要素が角と翼や尻尾だけで後は人間と変わりないというのにはできないようだ。

 HPが高いパワー型で、戦闘職は前衛向き。

 

 そして最後が神造人間。

 

 青児郎が選ぶのは勿論 神造人間だ。

 カソールを「神造人間」へ合せてウィンドウ内のEnterキーを押す。

 

『「神造人間」ですね』

 

 白いマネキン人形が神造人間の形に固定されると灰色に染まった。

 ウィンドウには初期ステータスとしてHP68/68 MP56/56表示され、性別が「Man」で固定されている。身体データを取り込むVRのシステム上ネカマ不可となっているためだ。

 女性キャラでやりたい、ネカマプレイがしたいといった拘りは特にない青児郎には関係のないことだと流し見る。

 

『あなたはどのような姿をしていますか? 』

 

 選ぶのはWikiでタイプAと称されるフルフェイスメットにプロテクターの身体を選ぶ。

 と、ここで顔をある程度弄れるとわかった青児郎は、頭のみ頭髪露出させ髪の毛を出して、顔前面を黒ゴーグルで覆い、口元の左右に丸い通気口を備えたメットに。

 身体の色は水色にして所々に青色を入れ、髪は短髪で黄色にし、アホ毛を一本付けてみた。

 体型は筋肉質な長身痩躯、細マッチョで身長は自身に2cm足した185cmに。

 

 満足のいく形に出来たところでEnterキーを押した。

 

『あなたのアビリティを7つ選んでください』

 

 また新しく開かれたウィンドウに初期に選択可能なアビリティが表示された。

 

 その中から青児郎がまず選んだのは――

 

 

 「銃術」。銃カテゴリーの武器が使えるようになる。

 

 

 ――Wikiで半ば不遇と称されたアビリティだ。

 

 なぜ不遇かといえばβテスト時、銃カテゴリーの武器は「魔導銃」しかなく、「魔導銃」その物が使いづらく、とてつもなく燃費が悪いのだ。

 MPを消費して魔力の弾丸(ビーム)を撃つのだが、ヒューマーなどでは初期MPで2、3発しか撃てずに入手可能な物、店売り品は値段が高いのに威力は並。低レベル帯のMOBも倒しきれず、普通のやり方ではLv上げもままならない。βで出たドロップ品もほぼ同様で、威力に比例して燃費の悪さも上がっている。

 その上に無属性の魔法攻撃扱いで、魔法耐性のあるMOBにはすこぶる弱いため『不遇アビリティ』・『不遇武器』とされたのだ。

 せめてもの救いは弓よりも長射程で使いやすいのだが、それでも使うならMP消費的に普通に魔法系アビリティを取った方が良いらしい。

 まあ、こんな情報がある時点でそれでも使い込んでいる者がいるのだろうが。

 

 そんなアビリティを選んで満足げに頷いた青児郎は次に選んだのは「体術」。

 

 「体術」は身体を使った攻撃でダメージを与えることができる、徒手空拳による接近戦が可能になるアビリティで、熟練度を上げて行けば、「格闘」などの派生アビリティを生む。

 敵に接近された際に武器の持ち替えなく戦えることと自身が空手をやっていたこともあっての選択である。

 

 次は「魔力運用」。

 パッシブアビリティで、スキルなどによる消費MPを3%減らすことが出来るという物で「魔導銃」の消費MP削減を狙っての取得だが、狙い通り行かずともMP上げに魔法も取るので問題ない。

 

 次に遠距離攻撃メインということで「鷹の目」を選択。

 遠くを視ることが出来き、遠距離攻撃に命中補正が付く。また熟練度が上がると遠視の距離が伸び、暗視効果も付くようになるらしい。

 

 MPを上げるために魔法アビリティ、「雷魔法」を選択。雷属性の魔法が使えるようなになる。

 雷魔法にしたのはロボに似合いそうだから。

 

 ロボに似合そうということでレーダーぽい「索敵」。範囲内の気配を察知することができるようになり、熟練度を上げることでダンジョンで罠察知もできるようになるとか。

 

 最後に「錬金術」。薬の調合などが行なえるようになる。

 これは神造人間唯一の満腹度回復アイテム、エネルコア結晶の加工のためだ。

 やはり料理が食べられない分、少しでも楽しみを持つための選択だ。

 

 初期アビリティ7つを選び、再確認して頷く青児郎。Enterキーを押す。

 

『これがもう一人のあなたで間違いありませんか? 』

 

 と問われ「yes/no」が表示される。青児郎は迷うことなく「yes」を押した。

 

『では、ファンタジーストーリー オンラインの世界をお楽しみください。

 あなたが良き物語を紡がれることを』

 

 その声と共に真っ白な空間は光りに包まれた。

 

 

 

 

  ×+×+×+×+

 

 

 

「………っ、ここは」

 

 光が引いて目を開ければそこは七色に輝く大きな水晶を中心に広がる広場。そしてそれを見下ろすように立つ天まで届かんとするような巨大な大樹。

 そよ風に吹かれ、日の光りを浴びて青々と覆い茂る大樹は生命力に溢れていて、とても作り物には見えなかった。

 

「これがVR、ヴァーチャルリアリティか。すごいもんだな」

 

 聳え立つ大樹の雄大さに感動を覚え、自身の身体の感触に感心しきりの青児郎(アオ)

 

「一緒にPT組みませんかー」

 

「ロングソード+1、今なら初心者応援のお買い得価格で安いよー」

 

「ハンバーガーとポテトいかがっすかー、STRとDEF上昇のバフ効果付だよー」

 

 広場は人だかりと賑わいに溢れていた。呼び込みの声を上げる様々な露店はβテストからの引継ぎ組だろうか。

 

 

 ≫チュートリアルを受けますか? 「yes/no」

 

 

 と、辺りを見回していたアオの視界にウィンドウが開き、そんなメッセージが表示された。

 本音はチュートリアルを受けたいと思うも、待ち合わせの時間が後数分と差し迫っており、時間的余裕がないアオは仕方なしに「no」を押した。

 

「さて、桃香は、ふろーれるめぬていあ、だったか? ログインしたらメールしてくれという話だったが」

 

 VRでメールはどうやるんだ、と手間取るアオ。やっぱりチュートリアルを受けていれば良かったかと後悔しつつ、ステータス画面を呼び出したりしながらなんとかヘルプを呼び出し、やり方を見付ける。

 

「PDAコール」

 

 コール宣言と共に中指と親指を3回叩き合わせると、目の前にスマートフォン型のPDA、Personal Data Assistance(ポータブル・データ・アシスタンス)が現れた。

 アオのPDAはスマートフォン型だが、後で聞いた話によれば、手鏡や水晶球など様々な形があるようだ。

 

 そんなPDAを手に取るとアオはメール機能を立ち上げる。宛先は「フローレルメヌテイア」。

 

 

 ━━━━━━━━━━

 

 宛先:「フローレルメヌテイア」

 件名:ログイン完了

 

 こちら青児郎。今ログインを完了した。

 そちらはもういるだろうか?

 待ち合わせはどこが良い

 

 追伸、ネームは「アオ」にした。

 

 ━━━━━━━━━━

 

 

 と書いて送信する。

 そしてしばし待つこともなくすぐに返信が来た。

 

 

 ━━━━━━━━━━

 

 宛先:「アオ」

 件名:Re:ログイン完了

 

 待ってたよせいじさん、じゃなかったアオさん♪

 今アオさんがいるのは世界樹広場?

 なら待ち合わせ場所は復活ポイントか世界樹の前でどうかな?

 

 ━━━━━━━━━━

 

 

 復活ポイント? と頭を捻るアオ。どこにそんなものがあるのだろうかと辺りを見回すと広場に中心にある七色の大水晶から光りが零れ落ち、ぐったりしたヒューマーやエルフのプレイヤーたちが出てきた。良く見れば大水晶の周りに回復のために座り込んでいるプレイヤーたちがチラホラと目に付いた。

 

 どうやらあの大水晶が復活ポイントらしいと納得するアオ。

 

 世界樹と大水晶を見比べるとフローレルメヌテイアへ再びメールする。

 

 

 ━━━━━━━━━━

 

 宛先:「フローレルメヌテイア」

 件名:Re:Re:ログイン完了

 

 世界樹の前で行こう

 復活ポイントの前は休んでいる人たちの邪魔になりそうだ。

 

 追伸、俺の目印は「青い人」だ

 

 ━━━━━━━━━━

 

 ━━━━━━━━━━

 

 宛先:「アオ」

 件名:Re:Re:Re:ログイン完了

 

 りょーかい、早速向かうね♪

 

 追伸・わたしの目印も「青い人」だよw

 

 ━━━━━━━━━━

 

 

 というやり取りを交わしてアオは世界樹の方へと足を向けた。お互いの目印が同じ「青い人」になっていたことに苦笑をもらしながら。

 

 

 

 

  ×+×+×+×+

 

 

 広場の中心にある大水晶を見下ろす世界樹の前、その根元は木漏れ日が差してなんとも幻想的風景をかもし出していた。

 

 同じ待ち合わせだろうか? ヒューマーにエルフやドワーフ、ビーストニアにドラゴディアといった人たちがたむろし行き交っている。

 

「神造人間はまったくいないな」

 

 まったくと言って良いほどいない。やはりアイビリティの成長に3倍も掛かるのは誰もが遠慮したいということか。

 「銃術」アイビリティとの組み合わせはなしにしても、「神造人間」だけなら少しくらい居そうだと思うんだがなとアオ。

 

 視線を感じて顔を上げれば、神造人間が物珍しいのか、それとも腰のホルスターに入った魔導銃が珍しいのか、アオを見つめる人がチラホラと。なんとも居心地が悪い。

 

「もしもし、そこの「青い人」。ちょっと良いですか? 」

 

 居心地の悪さにどうしたものかと身じろいでいると、不意に聞き覚えのある声が掛けられて振り返れば――

 

「もしかして、フローレルメヌテイア、か……」

 

 ――そこには鎧に身を固めたアオの頭一つ分ほど背の高い、2m強はあるだろう水色の肌にクリクリとした大きく愛らしい瞳の竜頭人身の女性ドラゴディアが立っていた。

 

「そっちはアオさん、みたいだね。

 へぇ、神造人間選んだんだ」

 

「あ、ああ、不遇キャラとか言われてるらしいが、浪漫を感じてな。特に目的もないし、不遇アビリティと合せてのんびりやろうと決めて、選んでみた」

 

「うんうん、楽しみ方は人それぞれ。地雷だろうと不遇だろうとなんだろうと楽しんだ者勝ちだよ。

 まあ、マゾいプレイになりそうだけど」

 

「マゾい言うな」

 

 あんまりなフローレルメヌテイアの言に苦笑するアオ。

 

「しかしフローレル、メヌテイアは……」

 

「あ、呼びづらいならテイアって呼んで」

 

「ああ、テイアは随分変わったというか、可愛い系とか美人系とかのキャラにはしなかったんだな」

 

 「女性なら普通そう言う風に作るだろう? 」とアオ。

 

「犬猫耳尻尾には惹かれたけれど、定番普通じゃ面白くないでしょ♪

 やるからには他人(ひと)と違うことしてみたいじゃない」

 

 そう言ってカラカラ笑うフローレルメヌテイア。

 

 確かにフローレルメヌテイアの言うとおりだなと頷くアオ。自分も地雷とまで行かずとも不遇と嫌厭されている「神造人間」で「銃術」アビリティを取って人とは違うことをやろうとしているのだし、大いに楽しもうと思うのだった。

 

「それじゃ、まずはギルドへ行って、訓練所でVRの慣らしがてら戦闘アビリティの使い方覚えよっか」

 

 そう言ってギルドへ先導すると言うフローレルメヌテイア。

 

 ギルドは世界樹広場から東に進んだ大通りにある石作りの大きな建物らしい。案内されるまま扉を潜るアオ。

 そうして入ったギルドは広いロビーに正面の受付、左側の壁際に置かれたクエストボードがあり、右側には情報交換の場の意味でもあるのかカフェがあった。

 受付の左側奥にギルド訓練所と書かれた、階下へ伸びる階段入り口があった。

 

「普通は大体30分くらいここで集中してやりこめば、アビリティのLvは3くらい上がるけど」

 

「俺は神造人間だから、30分じゃLv2に上がるかどうかってところか」

 

「まあ、やらないよりはやった方が良いよ。いきなりフィールドに出るよりも慣らしてからの方が死に戻りしづらいし」

 

「そうだな、じゃあ俺が訓練している間 テイアはどうする? 」

 

「勿論、わたしもやってくよ」

 

「そうか、それじゃあ、待ち合わせは」

 

「わたしは剣術と水魔法を取っているから、一つに30分くらいにするとして、アオさんは戦闘系のアビリティは幾つ取ったの? 」

 

「俺は銃術と体術に雷魔法の三つだな」

 

「じゃ、アオさんに合せて一時間半後に終らせて集合てことにしよう」

 

「すまないな」

 

 そうしてギルド訓練所と書かれた階段を降りて、訓練所の教官であるNPCに声を掛け、それぞれの訓練場所へと別れた。

 

 

 

 

         To Be Continued

 

 





 アオ
 HP68/68 MP46/46 AP0 W:駆け出しの魔導銃(Atk:6)
 銃術Lv1 体術Lv1 魔力運用Lv1 鷹の目Lv1 雷魔法Lv1 索敵Lv1 錬金術Lv1 

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