今回から少しずつ幕間はシリアス寄りになって行きます、ほのぼのとか三角の進展は少しお預け。
––––PCの前に座って一体どのぐらい時間が経っただろうか? 気が付けば随分と没頭していたらしく、窓から外を見ると既に日が傾いていた。
考えてみれば今日は休みだと言うのに一歩も外出していない、辛うじてご飯を食べにリビングには降りていたけれど、部屋の中に篭りっぱなしだった様な気がする。
「うーん、形は出来たんだけどなぁ」
誰に聞かせる訳でもなくそう呟いた私は背筋を伸ばして身体の凝りをほぐし、一旦休憩も兼ねてベランダへと出て沈む夕日を眺める事にした。
アレが沈んで少しすると今度は月が昇り、辺りが暗くなって星空へと変わる、今私が没頭してるのは丁度それに関する事。
まだ名前が決まっていないマルチフォーム・スーツ、理論や基礎設計は大まかに完成したけれどまだそれじゃダメ。
頭の中には完成系があるし、それを作ろうと思えば施設の問題はあれど一人で作り上げる自信もあるが、それでは私以外の人が理解出来ない。
私が理解できて、私がそれを十二分に扱えたとしても他の人が理解出来なければ存在しない物と同じ、個人でやれる事などたかが知れている。
人は未知を恐れ理解の及ばないモノを排斥する生き物、本気で宇宙の果てを目指すのならば、その足掛かりになるこの子は目に見える夢じゃないとダメだ。
彼との些細な会話から夢見るようになった浪漫、それを追い求めるなら個人でなく全体で。
……昔の私なら考えもしなかっただろうけどね? あーあ、誰かさんの所為なのかなぁ。
思考が横に逸れたけど、理論や設計を簡潔に噛み砕いて分かりやすい様に仕上げるのは簡単だ、似たような事を普段からやってるし。
だから今悩んでるのは名前、ようやく完成が見えて来たんだからこの子にも名前を付けてあげないと可哀想だ。
そう考えて既に二時間くらい掛かってるけどまーったく浮かんで来ない、自分の夢の結晶なのだから変な名前にはしたくないし、凝り過ぎて何が何だか分からないものにもしたくない。
「星座、惑星、恒星、銀河、うーんこの中からそれっぽいのを充てがう? なーんかしっくり来ないなぁ」
一瞬あの馬鹿に電話しようと思ったけど、みーくんの名前を決める時にかなりアレなネーミングセンスしてたらしいし却下。
纏まらない思考で、椅子の背もたれが軋む音を聞きながら名前の候補を絞ってたら、廊下を歩く小さな足音が聞こえて来た。
歩幅と音の軽さ的に箒ちゃんだ、時間的にも夕飯だし私を呼びに来たんだろう。
「おねーちゃーん、ごはんだよー?」
「うん、今行くね箒ちゃん」
部屋の中を覗き込む様にして私を呼びに来た箒ちゃん、相変わらず可愛いなぁなんて考えてたら、付けっ放しの画面が気になったのかPCの前に来たんだけど、内容が難しいのか眉を寄せながら困った顔をしてた。
「おねーちゃん、これなーに?」
「これはねー? おねーちゃんの夢なんだよー?」
「ゆめー?」
「うん、ゆめー?」
こてんと首を傾げる箒ちゃんと目線を合わせてそんな風にこの子の説明をする、といってもまだ完成してないんだけどね?
これで伝わるかな?と思ったけど、『おねーちゃんは起きてるよ?』と不思議そうだった。
「んー、そうだねぇ。箒ちゃんはもしもお月様に行けたら何をしたい?」
「おつきさま?」
「そ、夜のお空でぷかぷか浮いてるお月様だよー?」
「わたしはうさぎさんとお餅がつきたい!! それで、それでね? いちかといっしょにお餅たべるの!!」
「うんうん、やっぱ箒ちゃんは可愛いなぁ!! おねーちゃんもね? あのいーっぱいあるお星様を近くでみたいんだ。 それで、これはそれをする為の物なんだよー?」
「そうなんだー」
箒ちゃんはある程度納得出来たのか、私の方を見てにぱっと笑ったので、こっちも笑顔で返しながら頭を撫でる。
無限に広がるこの宇宙の果て、それがどうなってるのかを直接見た人は居ないし、近隣の星々ですら人類の手が届いている部分は僅かだ。
しかも大多数の人は宇宙空間は愚か行けて成層圏、そこで擬似的な宇宙体験をするのが関の山。
地球は広く大きいけれど、その外側に出てしまったら誰も彼も酷く小さな存在でしか無い、この私ですらも。
––––ああ、そうだ。それこそがこの子を作った理由、狭過ぎる人の可能性を伸ばす為、無限の未知を探求する為、成層圏までしか人が行けないのなら、成層圏そのものを伸ばしてしまえばいいんだと。
「ねー箒ちゃん、この子の名前知りたい?」
「うん!!」
「あのね? この子の名前は––––」
–––––
102話目にしてやっとISのあの字か出る作品があるらしい(白目
冗談はともかく、今回からコレ関係の下準備が始まります。
原作の束さんがどの様に白騎士を作り上げたのかは謎ですが、この作品の場合は作るまでにかなり色々準備をしますので当分束さんは忙しい。
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ