天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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小学五年生 6

 

 

うちの学校は高学年になるとキャンプ体験やスキー体験とかの県外に出る授業がある。

 

日帰りじゃなくて一泊二日、去年からずっと楽しみにしてた行事だったから、当日はバスに乗ってからも身体がそわそわしててなんだか落ち着かなかった。

 

「うー、早く着かないかなぁ……」

 

「お前さっきからそわそわし過ぎだっての、もうちょっと落ち着けよ」

 

「そう言うな束、去年から楽しみにしてたのはお前も知ってるだろう?」

 

俺の様子を見て通路を挟んだ隣の席に座る束と千冬の声が聞こえて来た。

 

班分けで別々になったから微妙に席遠いから話し辛いんだよなぁ……けど俺の横の子は昨日夜中までゲームやってたからつって爆睡してるし、前や後ろの人に話しかけようにも身を乗り出さないとダメだから危ない、何とか二人と話せないかな?

 

千冬は手前に居るからまだ話しやすいけど、束は窓際に座ってるから影になってて中々顔を見て話せそうに無い、一応ガラスの反射越しに時々目が合うから雑談する気はあるみたいだけど。

 

補助席を使う方法もあるんだけど、危ないからって理由で先生に止められてるしなぁ。

 

しょうがないから雑談は諦めよう、こんな時の為に俺は家から本を持って来てるし。

 

そう思ってカバンから英会話の本を取り出したんだけど、それを千冬に見られたのか興味深そうにこっちを覗き込んできた。

 

 

「……お前は今何を読んでるんだ?」

 

「えっ? 何って、英語の本?」

 

「英語?」

 

「うん、英語。 この前道に迷ってる外人さん見つけたんだけど、俺挨拶くらいしか英語知らないから道案内出来なくってさ、それが悔しくて外国語勉強しようかなぁって」

 

「そっか、動機がお前らしいな」

 

 

ふっとクールな笑いを浮かべた千冬の顔を見た俺は、思わず気恥ずかしくなったから読書に集中しようとしたんだけど、その瞬間に束がボソッと呟いた言葉が耳に入って来た。

 

「––––ほんっと、君らしいね。英会話の本と英語で書かれたドイツ語の会話本を間違えるなんてさ」

 

「えっ!? マジで!? 確かに昨日チラッと見た時に日本語全然書いてねーなって思ってたけど、コレ違うの!?」

 

「見た段階で気付けよ馬鹿野郎!! 何お前その違和感スルーしてんだよ!? 毎度の事だけど私のツッコミ待ちしてんの!?」

 

「待て束、辞書を片手に読めば英語を学ぶ事は出来る」

 

「ちーちゃん!? 何でもかんでも庇えばいいってもんじゃないよ!? 着々と馬鹿が移ってない!?」

 

「ひっでぇいい方だなぁ」

 

 

なんか前にも似た様な事を言われた様な気がする、いやでも好奇心って重要じゃね? 何でも試さなきゃ始まらないし、今回がちょっとミスっただけで。

 

 

「大体さ、お前はその本どこで手に入れたんだよ?」

 

「あー、親父の店で買った」

 

「なんて言って買ったのさ……もう何となく読めるけど」

 

「……私も何となく分かったぞ、束」

 

「何って……別に普通だよ普通、『英語の本で外国語の奴下さい』って」

 

「だ・か・ら!! 昔っからずぅぅぅっと言ってるけどさ!! その圧縮言語やめろっていってんだろ!? 頭の中で話す内容が完結してっからこう言う事になるんだよ!! そもそも英語も外国語だよ!! てか店の人も良く条件に合致する英語で書かれた外国語の講座本見つけたよね!?」

 

 

こう言うの堰を切ったようにって言うんだっけ? めちゃくちゃ凄い勢いでツッコミを入れてくる束、確かに毎回同じ事言われてるけど気を抜くとつい出ちゃうんだよなぁ。

 

席の奥から身を乗り出す様にしてそんな風に捲し立てる束にちょっと千冬が迷惑そうな顔してる。

「おい束、少し落ち着け……」

 

「落ち着けないってば!! どーせこの後私のところに英語とドイツ語の両方をいっぺんに教わりに来るに決まってんだから!!」

 

「えっ? 教えてくんないの!?」

 

「お前もう少し遠慮しろよ!? 私だって年がら年中暇って訳じゃないんだよ!?」

 

「暇じゃ無かったのか束!? 私はてっきり箒と遊ぶぐらいしかやる事無いと思ってたぞ!?」

 

「あるよ!? 私は普通にやる事沢山あんの!! 神楽舞の練習だってやってるってのに!!」

 

「そーいやもうそんな時期だっけ? 去年の束は綺麗だったからさ、今年は写真撮っていい?」

 

「…………ま、まぁ? 撮りたきゃ撮れば?」

 

 

何故か急にクールダウンした束は、そのまま姿勢を直す様に自分の席に座って窓の外に目線をやった。

 

ちょっと照れてんのかな?と感じたけど、反対に千冬が妙にジトッとした目をしながらこっちを睨んでた、なんでだろ?

 

束を褒めたからかな? けど別に俺は千冬に頼ってないって訳じゃ無いんだよなぁ、実際稽古の時も色々面倒掛けてるし。

 

「てな訳でさ、俺の無刀二扇には千冬が必要なんだよ」

 

「私が必要……そうか、私が必要か。なら次の稽古からは今より厳しくやるとしよう」

 

「お、おう? よろしく……な?」

 

 

千冬の機嫌は直ったけど代わりに俺の稽古は厳しくなるとは思わなかったなぁ……。

 

まぁでも、相手を傷付けない様に無力化する技ってのは生半可な練習じゃダメだって師範も言ってたし……な? 大丈夫なはず、うん。

 

ちょっとだけ不安になったけど、そんな事を考えてる内にキャンプ場に着いたから、綺麗さっぱり不安は吹き飛ぶのだった。

 

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
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