束さんのIS開発に関係してオリキャラが出ますが、本編にはあまり出ないので気にしないで結構です。
––––遂に、インフィニット・ストラトスの設計図が完成した。
まだ開発資金やその他の問題が解決していないけれど、一応は現実的な物に仕上がってる筈、おじさんに頼んで例の友達さんに会わせてもらえる事になったから何度も何度も入念にチェックを入れてるから大丈夫な……はず。
今はおじさんと一緒にファミレスでその人を待ってるんだけど、さっきから妙な緊張感が背中を登って来てる。
こんな事ならあの馬鹿も一緒に連れて来て貰うんだったとか一瞬考えそうになったけど、まだこの子は完成しきってないからそうも行かない。
大きく息をしながら気持ちを整えていると、お目当ての人が来たらしくておじさんが手を振ってるのが見えた。
「やあ、君が束ちゃんかな? 初めまして天王寺です。あの子から君の話は良く聞いてるよ、俺に相談があるんだって?」
「あ、はい。今日はその、お願いします」
おじさんの友達だからと言う先入観もあったけど、目的の人は物腰が柔らかくて話しやすかった。
自己紹介も兼ねた雑談を挟んだ後、私は本題となるISの設計図が入ったノートPCを天王寺さんへと見せる。
いくら私が完璧な設計図だと思っていても受け取り方や理解力は人それぞれだから、正直この設計図を差し出すのは凄く怖かった。
けれど夢を現実にする為には横の繋がりは絶対に必要な事だから、いくら否定される事が怖くても、ここは絶対に妥協出来ない。
膝の上に置いた手を握りしめながら天王寺さんが中身に目を通し終わるのを待つのは苦痛で。途中から文字通り見る目が変わってたから、この後に何を言われるのかと言う不安で胸が締め付けられる様な、息がつまる様な、そんな緊張感だった。
「これは……これを、君が?」
「……は、はい、一から作りました」
「小学生がこれだけの物を……?」
「天王寺、そんなに凄いのかい?」
「凄いなんてもんじゃない!! これは、これが実現したら宇宙開発……いや、現代科学のブレイクスルーになる!!」
熱が篭った様にそう叫びながら立ち上がった天王寺さんに少し驚いたけど、ファミレス中の視線を集めて少し恥ずかしかったのか、顔を赤くしながら席に座り直しながら咳払いをしつつ、おじさんにISの事を話し始めた。
「これは宇宙空間での活動を目的とした物みたいだけど、それ以外にも新技術のオンパレードだ。 実際にここに書かれている物に再現性があるのかはまだ分からないが、不思議なくらい説得力のある説明が付いてる、コレを小学生が作ったなんて……」
信じられない、と言った目で私を見る天王寺さんの目に私は背中に氷の柱を突っ込まれた様な錯覚を覚えたけれど、そんな感覚は杞憂だったみたいで、天王寺さんは私の事を恐れる節は無かった。
そんな彼の目を見たら、何となくあの馬鹿に背中を押された様な感じがして、不思議と緊張感が消える。
––––だったら、本題に入ろう。
「相談と言うのは、その機体についてです」
「この機体? 見たところなんの欠点も無さそうだけど……」
「私は小学生ですからその、なんのツテもなくって……」
「なるほど確かに、君は小学生だからこれを発表したくても出来ないし、開発だって出来ない、再現性のある無しすら分からないペーパープラン止まりって事だね?」
「はい、だから、この機体の開発にきょ、協力して欲しいんです」
自分から他人に頭を下げて頼み事をするなんて我ながららしくないけど、そんなちっぽけなプライドは捨ててしまえ。
少しどもりながらのお願いになっちゃったけど、天王寺さんは少し腕組みをしながら考え込んだ後、片手でOKサインを作ってくれた。
「ただ、俺に出来るのはこの機体の話を所長に通すところまでだ、そっからの説得は君がする以外に方法が無いけど……大丈夫?」
「はい!! そこまで漕ぎ着けられれば、何とか説得してみます」
相手が責任のある立場ならメリットデメリットをはっきりと分けて利益が見込める事を上手く話して相手を丸め込めばいい、とにかく実現のためのチャンスを掴めたなら詐欺師の様に虚実入り交えて確実に説得してみせる。
約束の握手をして、連絡先を交換したところで天王寺さんは『早速この話を持って行く』と言って先に退店していった。
私は一仕事終えた様な疲労感と共に長椅子にもたれかかったんだけど、珍しくおじさんが難しい顔をしながらコーヒーを飲んでいるのに気が付いた。何かあったんだろうか?
「おじさん? どうかしたの?」
「ん? ああ、ちょっとね」
そう言っておじさんは曖昧に誤魔化しながら私の頭を撫でる、なんとなくその態度に隠し事をしてる様な気がした私は、少しだけ恨みがましい目で睨んで見た。
この人はあの馬鹿と似た様な性格をしてるから、こうやって罪悪感を煽ればよほどの事じゃ無かったら話してくれるはず。
思い通り、おじさんはバツの悪そうな顔をしながら頬を掻きだし、凄く言いずらそうな顔をして口を開いた。
「いやね? 水を差す様な事を言いたく無いから黙ってたんだけど……束ちゃん、君は少し気を引き締めた方がいいと思うよ」
「えっ? 私は初めからそのつもりだけど……」
「フラーレンによる52kでの超電導は知ってるかな?」
「確かそれは研究不正と論文捏造でその業界では一時期話題となった話だったような……でも私のISは発表すらしてないよ?」
「うん、事件の概要としては合ってる。けど僕が言いたいのはね? 一人の天才に対して人は盲目的になるって事だよ」
「盲目的……」
コーヒーを飲み終わったおじさんは空になったカップを眺めながら寂しそうにそう言って、支払いの為に席を立つのだった。
少々話がトントン拍子に進んでは居ますが、束さんが心血注いで作った設計図はそれほど完成度の高い物でした。
つまり人が盲信的になりやすく、肯定的な人種が周りに出来やすい状況になるレベルと言う訳ですので、嫉妬などの悪感情とは遠い物になります。
これであっ(察し……となった方はゲスパー(白目
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ