インフィニット・ストラトスの開発が本格的に始まり、私は研究所で各機能の開発と理論の再構築に追われていた。
当初の設計図だとコストが掛かり過ぎたり、フレームの強度が足りなかったりと、細かな問題の修正をしなきゃいけなくて、これからも当分は忙しいだろう。
今はISの機能の一つのハイパーセンサーの開発を進めているんだけど……思うような結果を出せていない。
恒星間の位置把握や搭乗者のバイタルチェック、視界を全方位に広げる機能などを盛り込んでるんだけど、エラーや性能不足が多くて困る。
「……っと、再調整終わり。視界はどうなったー?」
「さっきよりは広がりましたけど……魚眼レンズみたいな感じで若干景色が歪みますね、後真後ろが視認できません」
「ちぇー、また作り直しかぁ……」
技術試験用のゴーグル型ハイパーセンサーをテストしてくれている人に声を掛けたけど、返って来た答えは私の望むものじゃなかった。
色々な事を気にせず一から十まで私が作ればこの問題自体は解決できるんだけど、それだと結局私一人で作り上げる事になるし、利権絡みでも多方面へ角が立つ。
妥協や不満を飲み込んだ上で今があるのだから、私がやるべきなのは現行の技術から離れすぎない範囲内での問題解決。
彼じゃないけど、ちょっとした縛りプレイをしてる様な気分だよ。
「やあ、調子はどうかな?」
「天王寺さん……まーだまだ実用化は先かなぁ」
ぐーっと背伸びをして体の疲れを解しながらお茶を淹れて来てくれた天王寺さんに返事をしたけど、実の所型が出来始めてるからこのハイパーセンサーに関しては時間の問題だと思う。
そんな風に考えていると、少し考え事をしていた天王寺さんが口を開いた。
「実用化はまだ先かぁ……束ちゃんなら新技術とかで何とか出来るじゃない?」
「出来るには出来るよ? でも人は魔法を信じないからね」
「魔法?」
「SF作家アーサー・チャールズ・クラークのクラーク三法則にあるでしょ?『充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない』ってさ」
私が全てを一人で仕上げない最大の理由がこれだ。
人は科学を信じて魔法を信じない、他人に理解出来ない発展した科学技術は魔法の様に異端視されて理解しようとする気すら起こさせないのは人類史が証明している。
だから私が夢を叶える為にはISが科学の範疇である必要がある、最終的なスペックは魔法の域に持っていくとしても、一発目の機体がそこまでである必要は無い。
そりゃ確かに高性能に仕上げたいと言う気持ちは私にだってあるよ? だけどそれで認められなかったら何の意味もないでしょ?
「ま、そーいう訳だから、私はそんなに焦って無いかなぁ」
「成る程ね、じゃあハイパーセンサー以外の話に移ろうか」
「あー、やっぱダメだった?」
「うん。ISのコアなんだけど、材質が悪かったのか、試作品を起動して数分で動かなくなったよ」
「むぅ、既存の材質じゃダメなのかなぁ……」
ISの開発が始まったばかりだから躓くのは仕方ないにしろ、ハイパーセンサーよりも先が見えないのはISの核となるコアの製作。
これに関しては当初予定していた材質と予定通りの製法で仕上げたんだけど、いざ作ってみると不具合が多くて私でもどこから手直ししたらいいのか分からないレベルで少し悩んでる。
ISを動かすだけなら他にもやりようがあるんだけど、宇宙空間で活動する以上機械的なサポートだけだと不測の事態が発生するかもしれない。
だからIS自体に意識を持たせ、ある程度の自己進化を可能にする事でより自在に活動が出来る様にしたいんだけど、そのコアへ意識を持たせると言う部分がネックになっている訳で……いっそ誰も聞いた事の無い素材でも使おうかな?
「けどそんな材料……あるのかなぁ?」
「束ちゃん? そろそろ時間だろう? 後の事はこっちでやるから君はウチに帰りなさい」
「あ、もうそんな時間かあ……じゃあ箒ちゃんに怒られる前に帰りまーす」
時間的にはまだ夕方になるけど、本格的な研究開発になると深夜まで続くからと、子供の私はキリのいい時間で上がらせて貰う。
少しだけ疎外感を感じるものの、年齢差はどうしようも無いと割り切った私は帰る道すがら、今日は彼が道場に来る日だと思い出した。
––––時間的に少し急げば彼が帰るまでには家に着く、そう気が付いた私は不思議と足早に帰路へと付くのだった。
ISのコアは現状では製法を開示してますが、時結晶を使ってませんので後々に作られるものとは別物です。
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ