天災二人と馬鹿一人   作:ACS

115 / 130
誰も居ないな?(チラッ

つ[投稿]


小学五年生 16

 冬になったから学校行事でスキー体験をする事になったんだけど、実は俺は昔からこのスキー体験が楽しみで仕方なかった。

 

 と言うのも、俺は毎年冬になると家族旅行でスキーをしに行くから束や千冬に対してある程度リードをしてる。

 

 つまり!! 普段は教わる側の俺が唯一あの二人に対して教える側に回れる日と言う事!! この日の為に俺はマイスキーウェアだってちゃーんと用意してきたからな!!

 

 だからスキー場に着いてから真っ先に着替えて二人を待ってたんだけど、俺のやる気に反して肝心の二人が中々来ない。

 

 委員長だから集合場所に一番乗りしたんだけど、浮かれて無いで二人の様子を見に行った方が良かったかな?

 

 結局時間も近くなって来たから先生に二人を探して来いと言われて宿の女子部屋の方に向かったんだけど、案の定と言うか何というか、束と千冬の班部屋の中から二人の言い争う声が聞こえてる。

 

 

 「だ〜か〜ら〜!! 私はこんな誰が着たのかわからない貸し出しのスキーウェア着るのはイヤだってば!!」

 

 「だったら自前の物を用意すれば良かったじゃないか!! そうしなかった以上、これを着るしか無いだろう!!」

 

 「よく考えてよちーちゃん!! 学校行事くらいでしか使わない物をお父さんやお母さんに買ってって言えると思う!? そこそこな値段するんだよ!?」

 

 「だ・か・ら!! ブツブツ文句を言わずに貸し出しの物を着ろと何度言わせるんだ!!」

 

 「嫌だから行かないって言ってるでしょ!! ちーちゃんの分からず屋!!」

 

 

 ドタバタと部屋の中から暴れる音とヒートアップする喧嘩の声、取り敢えずタイミングを見計らって部屋のドアを開けたんだけど……スキーウェアを片手に握った千冬が束を馬乗りになって押し倒してる所だった。

 

 

 「えっと、落ち着いた?」

 

 「……一応」

 

 「……そうだな」

 

 

 取り敢えず集合時間まではまだ少しだけ時間があるので、二人から話を聞いて見たんだけど、さっきドアの外から聞こえて来た内容が大体の物らしく、単純に束が貸し出しのスキーウェアを着るのが嫌だと言って千冬と喧嘩してて遅れたらしい。

 

 『だって貸し出しってことは不特定多数の人が着てるんだよ!! なんでそんな物を私が着なきゃいけないのさ!!』とは束の談。

 

 まぁ確かに束に貸し出されたウェアは少しくたびれ気味で、襟元にも汚れが目立ってるから束からしたら少し抵抗があるのかも。

 

 

 「君がなんと言おうと絶っ対私はそれ着ないからね!!」

 

 「私も説得しようと思ったんだがさっきからコレでな。もうほったらかして行った方がいいんじゃないか?」

 

「うーんでもそんな理由で休まれるのもなぁ……」

 

 

 言い出したら頑固な束の事だから、着ないって言ったら絶対着ないし行きもしないし……でも要はこの貸し出しのウェアが嫌ってだけだろ? 本人も別にスキーが嫌とは言ってないし、俺が使ってるウェアなら誰が使ったのか分かってるだろうから束も着るんじゃないかな?

 

 

 「てな訳で束、俺のウェア貸すから早く行こうぜ?」

 

 「えっ? 君は二着も持って来てたの?」

 

 「ううん、俺の今着てる奴。誰が着てるか分からない方は俺が着るからさ、ちょっと大きいかもしれないけどこのウェア束に貸すよ。てな訳で着替えてくるな〜」

 

 「えっ? ちょっ–––––」

 

 

束が何か言ってたけど、気にせずに部屋に備え付けられてるトイレの中でささっと着替えた俺は脱いだウェアを束に手渡した。

 

 その時ジトっとした目で千冬に睨まれた様な気がしたけど、急かす様に俺のウェアを抱えた束をトイレへ押し込んだらため息を吐かれてしまった。……何故に?

 

 

 「取り敢えずこれで一件落着だな!!」

 

 「確かに誰が着たのか分からない物では無いが……一休さんかお前は」

 

 「えぇ……だってそろそろ集合時間だし、俺早く滑りたいからこうするしか無くね?」

 

 

 俺の奴か貸出の奴かの二択なら多分俺の奴を着るだろうし、着て出てきた所を問答無用で連れ出したら言いくるめられる前に集合場所まで連れてけるし、多分これしか無いと思う。

 

 説得しようにも口論で束に勝てる気しないし、寧ろ負けた後に適当な理由で納得させられて先生のところまで行かされる自信がある。基本俺バカだし。

 

 だから余計な事は考えずに強引に押し切る!! もしこれでも着なかったら最終手段として千冬と二人掛かりで着替えさせて外に運び出すのが一番!!

 

 

 「てな訳で千冬さんや、いざとなったら強制連行。OK?」

 

 「結局力技か……」

 

 「……そんな事しなくても、着替えて来たから」

 

 

 ガチャリとトイレの扉が開くと、そんな言葉と共に俺のウェアを着た束が若干顔を赤らめながら出て来たんだけど……まぁ、その、ね? 改めて束が俺のウェアを着てるのを見ると––––。

 

 

 「な、何? ジロジロ見て、私の顔になんか付いてる?」

 

 「なぁ束……そのウェアなんだけど、さ?」

 

 「う、うん。その、似合って––––––」

 

 「ぜんっぜん!! これっぽっちも!! 似合ってねーな!! やっぱ男物だからかな? 可愛さ全くねーや!!」

 

 

 束は可愛い系だし、女の子らしい子だから割と何着ても似合うんだけど、こればっかりは俺の好みに合わせた奴だから全然似合ってない。

 

 千冬はキリッとしてる美人系だし、体幹もすっとしてるから割とメンズでも着こなせると思うから、千冬の方なら似合わなくも無いと思うんだけどこればっかりはしゃーないな。

 

 とか思いつつ、声を殺しながら笑ってる千冬に『先に行くね?』と言うジェスチャーをした後、ぽかーんとした束が俺の感想を頭の中で処理する前に全力で部屋を出て玄関まで走って逃げる。

 

 するとドアを開け放って逃げた俺にハッとなったんだろう、真後ろから『待てこの馬鹿ぁぁぁあ!! 一発殴らせろぉぉぉお』と叫びながら束が追って来た。

 

 よし!! 束が小難しい事を言いだす前に何とか連れ出せた!! 後は外まで出て……出て? ……そっからどーしよ? てか靴履いてる時に後ろから捕まる様な気がする。

 

 

 ––––––まぁ捕まったら捕まったでその時だうん。一発殴られよう、そしたら多分気が済むだろうしな。

 

 

 そう考えた俺は何とか束から逃げ切ろうとしたものの、玄関に着く前に追い付かれてしまい、有言実行と言わんばかりに一発殴られるのだった。

 

 

 

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。