天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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小学五年生 18

 

 冬休みになってしばらくしたある日の事。その日は隣のクラスの田中君と斎藤君と一緒に炬燵で人生ゲームをしてたら束から電話が掛かって来た。

 

 今日は急に暇になったから遊びに行く的な事を一方的に言って切っちゃったんだけど、さっきも言った様に別の友人がここに居る。

 

 その事を伝える前に切られちゃったから一応メールしとこうかと思って文面を考えてたら、軽い足音が階段を登って来て俺の部屋の扉を開けた。

 

 

 「げっ、他に人居るならそう言ってよ」

 

 「電話してから俺ん家来るの早くね?」

 

 「だって君ん家の前で電話したからね」

 

 

 そう言いながら束は俺の横に座って炬燵の中に足を入れたんだけど、中々ポジションが決まらないのかしばらくもぞもぞと足を動かしていた。

 

 

 「なー束? さっきから足が当たるんだけど?」

 

 「えー別にいーじゃん、と言うかなんかあるの? さっきから足元でもぞもぞしてるんだけど?」

 

 「みーくんが中で丸まってるからじゃね?」

 

 「だから変なもこもこがあるんだ。まぁ良いけどね、で? 人生ゲーム? やるならちーちゃんも呼んでよ」

 

 「うーん、実は面子集めに呼ぼうと思ったんだけどさぁ……」

 

 

 実は束が来る前に連絡を入れてたんだけど、携帯の電源を落としてるのかアナウンスが流れるだけで全然繋がらない。

 

 最近ちょくちょく連絡取れない事があるからあんま気にして無かったんだけど、束も知らなかったのかな?

 

 とりあえず繋がらない事を束に伝えたら、確認する様に千冬へ電話してたんだけど、やっぱり繋がらないのか首を傾げて不思議そうにしていた。

 

 

 「珍しいね、ちーちゃんに繋がらないなんて」

 

 「確かに珍しいけど別に千冬にだって用事があるだろー? そんな気にする事じゃ無いって」

 

 「うーん、でも……」

 

 

 俺は特に気にならないんだけど、束は何か引っかかる物があるらしく、難しい顔をして悩んでしまった。

 

 ただ、束なりの答えが出る前にゲーム盤の上を田中君が片付けて駒を置き出したからか、考え事を中断してしまったらしい。

 

 

 「まぁいーや後で考えよ。とりあえず束さんの番からだねー。ちーちゃんが一緒じゃないのは不満だけど、我慢して君達に付き合ってやるよ」

 

 「んじゃ俺が一番なー? ルーレットだけどダイスロール!!」

 

 

 カラカラと回る人生ゲーム用のルーレットが止まって、出目の通りに駒を進めたんだけど……止まったマスが不幸マスのところみたいで、かなーりキツいマスに止まってしまった。

 

 

 「えーっと? 委員長の止まったマスは…………『父親が交通事故で死亡。片親カードを手に入れる』だって」

 

 「うへぇ、俺の車からお父さんピン抜かなきゃいけないのかぁ……」

 

 「ドンマイ委員長!! いい事あるって!!」

 

 「ちょっと待って!? まだこれ幼年マスだよね!? なんでいきなり人生ハードモードスタートなマスがあんの!? てかそこのお前もドンマイじゃ済まないから!! それに片親カードって何!? しれっと不謹慎なアイテム混ざってない!?」

 

 「束、これゲームだろ? ちょっと過激なだけだって」

 

 「ま、まぁ、確かに……そう、なのかな?」

 

 

そう言って束は自分の番になったからルーレットを回して、止まったマスで手に入れたのが『超天才カード』とか言うアイテムで、プレイヤー兼進行役の田中君に『なんかの嫌味!?』と食って掛かってた。

 

 んで一周回って俺の番、今度は思いっきり回して良いマスに止まろうとしたんだけど、力を入れ過ぎてまた不幸マスに止まってしまう。

 

 

 「えっと? 『生活の為に働き過ぎた母親が過労死。片親カードを手に入れる。既にカードを持っている場合は天涯孤独カードになる』だってさ」

 

 「ごめん母さん、この車一人乗りだったみたい」

 

 「委員長運が悪いなぁ」

 

 「さっきから不幸マスがエグすぎない!? 子供向けの内容じゃないよ!?」

 

 「なんかリバーブローになってて裏表で子供用と大人用で分かれてるんだってさ。斎藤君の親戚が勤めてる会社でボツになった奴なんだっけ?」

 

 「大人用にしたってブラックジョーク過ぎる気がするんだけど!? あとリバーブローじゃなくてリバーシブル!! こんなアホみたいな物ボツになるに決まってんでしょ!?」

 

 「あ、篠ノ之さん? ツッコミ入れてるとこ悪いけど天涯孤独カードって手に入れた時にルーレット二回回すんだってさ、だから委員長回してくんない?」

 

 「ほいほーい。……おっ、1と4が出たよ?」

 

 「マジで? じゃあ追加で親戚たらい回しカードと人間不信カードの二つゲットだって」

 

 「この馬鹿が何したっての!? コイツ悪い事なんて一個もした事ないのに、さっきから踏んだり蹴ったり過ぎるよ!?」

 

 「あのー、あれだよ束。人生山あり谷ありって奴?」

 

 「さっきから谷しか無いんだってば!! 急転直下の紐なしバンジー!! 緩やかな傾斜とかじゃなくて切り立った絶壁から落ちてるじゃん!!」

 

 ついに耐えられなくなったのか、炬燵の机をバシバシ叩きながら束は不幸マスを一つ一つツッコミを入れてダメ出しし始めた。

 

 まぁ確かに束が来る前にやってた子供用のマスでもちょいちょい変なマスがあったにはあったけど、そんなにツッコミを入れる程かなぁ。

 

 

 結局、裏表全部ひっくり返してゲーム性のダメ出しとか、内容へのツッコミをした束は、よっぽど疲れたのかその一回きり遊んだだけでフラフラと帰ってしまうのだった。

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

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