天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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小学五年生 19

 

 

 今日俺は篠ノ之道場で実戦形式の試合をしたんだけど……何時に無く荒々しい千冬の剣に手も足も出ずにボコボコにされてしまった。

 

 でも俺をしばき倒した千冬はあんまり嬉しそうじゃない、てか寧ろうわの空って感じ? 試合の最中も首筋とか胸元とか、漫画とかで言われてる急所狙い? ばっかだったから、なんかあったのかな?

 

 とりあえず疲れが取れて来て動ける様になったから、のろのろ歩きながら千冬の横に座ったんだけど、集中して考え事してるのか反応が無かった。

 

 

 「おーい千冬ー? ちーふーゆー? 今日はちょっと剣が荒っぽいけどどーしたのさ?」

 

 「……荒っぽい、か」

 

 「うん。なんつーか、人を守る剣じゃなくてその逆って感じ」

 

 「昨日サバイバルゲームのような事をしていてな。その時の感覚が抜けきってないだけだ」

 

 

 そう言って深いため息を吐いた千冬は改めて俺の方を向いて––––––ぽかんとした間の抜けた表情を浮かべていた。

 

 

 「ん? どったの千冬?」

 

 「いや……えっ?……どうしたはこっちのセリフだ!! 何故女装してるんだ!?」

 

 「えっ? 今更? 今日俺朝からウィッグと化粧してたんだけど……」

 

 

 今は道着に着替えてるからあんまり女装って感じは出てないけど、私服もちゃんと女の子用の物を揃えて来たからてっきり気付いててスルーしてると思ったんだけどなぁ。

 

 

 「いやぁ実は昨日テレビで性同一性障害?って奴の番組がやってるの見てさー。そう言う心と身体の性別が違う人の気持ちをどうやったら分かってあげられるのかなぁって思ったから取り敢えず女の子になってみた」

 

 「普通は抵抗があるものじゃないのか?」

 

 「んー、俺は特にないかなぁ? ただ束からは『酷く浅はかな事考えたね』って言われたけどな」

 

 「で? 女の気持ちは分かったか?」

 

 「うんにゃ、ちーっとも。でもまぁ何事も形からって言うだろ?」

 

 

 それに、やってみてダメだからもういいやってのはあんまり好きじゃない。どーせオレは束や千冬ほど頭良くねーから馬鹿なりにやれる努力って奴をした方が為になるからさ。

 

 そんな風な事を胸を張って千冬に言って見たら、暗い雰囲気が和らいで少しだけ笑顔になった。

 

 「まったく……お前と話していると悩んでるのが馬鹿らしくなってくるよ」

 

 「おっ?褒められた?」

 

 「ああ、褒めたんだ」

 

 「そっかそっか!! いやぁそれほどでも無いかなぁ!! 何をどう褒められたのか分かんないけど!!」

 

 

 千冬に褒められる事なんてあんまり無いから思わず照れ笑いしてたんだけど、元気が出た千冬が次にしそうな行動が思い浮かび、笑顔が引きつってしまう。

 

 

 「さあ休憩は終わりだ。次の試合も手は抜かないからな?」

 

 「千冬? 今の俺は女の子だから手加減はするべきだと思うんだ」

 

 

 千冬は体力が回復したかもだけど、肝心の俺はまだ全然へろへろだから今やっても千冬の攻撃を捌けない。普段から千冬との試合は防戦一方になるのに、絶好調の千冬と試合なんてしたら俺はきっと口が聞けなくなる。

 

 だから手加減を要求しながら女の子っぽい笑顔を作って愛想笑いをしてみたんだけど、千冬はその顔を見て何か思うところがあったのか『早く立て。癖になる前に自分が男だと実感させてやる』と言って俺を引きずって行った。

 

 

 「いーやーだー!! 俺はまだ休むんだー!! 女の子だからまだ休むんだー!!」

 

 「私も女だぞ? その女がこうしてピンピンしているのだから男のお前が回復していない訳あるか」

 

 「サンドバッグにする側とされる側じゃ疲れ方が違うからね!?」

 

 「ならお前も私をサンドバッグにしたらいいじゃないか」

 

 「それが出来たら苦労しないってば!?」

 

 

 ––––そんな抗議も虚しく結局またしばき倒された俺は、稽古が終わるまで足腰が立たず、申し訳なさそうな顔をした千冬と一緒にふらふらと家まで帰っていた。

 

 折角の可愛らしい服装や小さなポーチも今になったら動きにくいし邪魔でしかない、スカートもミニにしとけば良かったんだけど、寒いからってロングにしたのが間違いだったなぁ……。

 

 

 「本当にその格好で道場まで来たのか……」

 

 「ゆ、有名無実って、言うだろ……?」

 

 「それを言うなら有言実行だ」

 

 「ま、まーねー……」

 

 「……その、すまない。少しやり過ぎた」

 

 「うん、まぁ、気にしないから大丈夫だって」

 

 

 そんな風にしょんぼりとした千冬を慰めつつ家まで送ったら、丁度一夏くんが帰りを待ってたところだったのか、玄関の扉を勢い良く開けて千冬に抱きついて出迎えてくれた。

 

 

 「ちふゆねぇ!! おかえりっ!!」

 

 「ああ、ただいま。一夏」

 

 「やっほー!! お出迎え出来て偉いね一夏くん!!」

 

 「にーちゃっ……にーちゃん? ねーちゃ…………にーねーちゃん?」

 

 

 出迎えてくれた一夏くんは声で俺だってのは分かったらしいけど、格好が女の子だから目を丸くして俺を見てたから、ウインクしながら目元にピースサインを持って来たんだけど、知らない人を見る目で見られてしまった。

 

 

 「……すまん、一夏が混乱してるようだから今日は早く帰ってくれないか?」

 

 「あ、あはは、じゃあまたな?」

 

 

 千冬に抱きついて隠れながら、顔を半分出してこっちの様子を伺ってる一夏くんに手を振って挨拶した俺は、女装は失敗だったかなぁ……とか考えながら自分の家に帰るのだった。

 

 

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ
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