天災二人と馬鹿一人   作:ACS

120 / 130
 
 今回は若干短め。


幕間:兎の秘密 4

 

 

 ––––紆余曲折はあったものの、ISの製作自体は順調に進んでいる。

 

 まだ飛行実験までは出来てないけど、歩行実験やパワーアシストなんかの試験にはパスできてるから、ハード面に関しては四割弱の完成度と言った所だろうか?

 

 しかし、それに反してコアの問題は未だに解決出来ていない。

 

 仮にコアへ意識を持たせる事を諦めたとしても、既存の材質だと常識的な出力しか出せず、搭載予定の各種機能が圧倒的なエネルギー不足を引き起こす事が分かった以上、コア自体の設計を一度見直す必要があるかなぁ? 今のままだと搭載予定の絶対防御はおろか飛行すら危ういし。

 

 この問題は正直誤算––––––いや、自分のやれる範囲でISを形作ってくれているみんなに対してそれは失礼かな? 誤算と言うより、自分との技術力の差を把握しきれていなかった私自身の見通しの甘さが原因だろう。

 

 解決策としては二つ、一つはIS全体の性能を目標としてるスペックから更に下げる事。

 

 それなら現状のエネルギー不足に関連した問題を何とか出来るかもしれないけど、さっきも言った通りスペックの低下は搭載予定の技術を諦める事とイコールな訳で……。

 

 宇宙空間での不測の事態から身を守る為の絶対防御や、地球や衛星なんかの位置を正確に把握する為のハイパーセンサーは最低限搭載しなきゃだし、搭載したらしたでこの案だと絶対防御が一回発動するだけで一気に安定感が消えてしまう。

 

 二つ目は私が新素材と新技術を使って完璧な代物に仕上げる方法。––––魔法扱いになるのが目に見えてるから却下、論外。

 

 

 「うーあー……どーしょっかなぁ……思い付く限りの素材で試しちゃったしなぁ……」

 

 急いで作る気は無いにしろ、コアありきのIS製作なのだからここがしっかりしてないと無駄に高価な宇宙服にしかならないし、なんだか行き詰まってる感が凄い。

 

 そんな風に自分の部屋で寝転びながらあーだこーだと解決策を考えていると、玄関のチャイムが鳴った。

 

 下にはお母さんと箒ちゃんが居るし、足音も玄関に向かってるから対応してくれるだろうと思っていると、そのお客さんの足音はこっちに向かって歩いて来る。

 

 その音の軽さから察するに彼が遊びに来たのだろう、とりあえず一日中ゴロゴロしながら考え事に耽ってた所為でボサボサになってる髪を軽くセットしてから扉を開けたんだけど……。

 

 

 「メリー・クリスマス!!」

 

 「…………女装の次はコスプレに目覚めたの?」

 

 

 扉の向こうには赤いサンタ服に身を包んだ彼の姿があり、無駄に膨らませてある白い袋を担いだ状態でそんな事を言われた。……ほんっとコイツの頭の中ってどうなってんだろ?

 

 と言うか、玄関から入って真っ直ぐこっちに来たって事はその時点でこの格好だったって訳だよね? 自分の家からコスプレした状態で出歩いてんの? コイツ。

 

 

 「で? そんな格好で何しに来たわけ? コスプレ見せに来ただけなら鼻で笑ってあげるよ?」

 

 「あのな束、俺はサンタクロースだぞ? サンタは良い子にプレゼントをあげるお仕事なんだからプレゼント配りに来たに決まってんじゃん」

 

 

 そう言って、彼は袋の中に手を突っ込んで何かゴソゴソと探してたらしいんだけど、適当に入れてたのか『あれっ? どこ行ったのかな?』とか呟きながら綺麗に包装されたプレゼントを私に差し出してきた。

 

 

 「ほいプレゼント」

 

 「……どーしてもって言うなら、貰ってやるけど?」

 

 「んじゃ、どーしても貰って欲しいな」

 

 「……ふん」

 

 

 私の嫌味にも気が付かない能天気な馬鹿からのプレゼントを受け取り、これ見よがしに目の前で開けてやると、中身は動物型のクッキーと見た事の無い小さな結晶片がデコレーションされたボールペン。

 

 クッキーは彼のお手製だろうけどボールペンの方が分からない、けどこれを直接彼に聞くのは負けた気になるから自力で––––––。

 

 

 「そのボールペン俺がデコったんだぜ? 確か……る、る、ルクセンブルク公国?ってところに旅行で行ったから記念に作って来たんだよ」

 

 「……ルクセンブルク? ヨーロッパにでも行ったの?」

 

 「あれ? ルクセンブルクじゃなかったっけなぁ……なんか似たような名前だった様な気がするけど思い出せねーや」

 

 

 彼はあっけらかんとそんな風に言って笑ってから、また別の知り合いのところにプレゼントと称してクッキーを配りに行くのか、そのまま帰って行った。

 

 …………毎度毎度、彼の即決即行動には振り回されてばっかりな気する。

 

 クリスマスでも忙しない奴だなぁと呆れていた私はすっかりコアの事で悩んでいた事を忘れ、下でお母さんと一緒にクリスマスツリーを出している箒ちゃんのところへ向かうのだった。

 




 主人公が旅行で行ったのはルクーゼンブルク公国と言う12巻にして唐突に出てきた謎の国です(白目

 旅行と言っても主人公のお父さんが知り合いに頼まれてアンティークを買い付けに行ったついで的なイメージ。

 本作品では現時点の時結晶は価値が見出されていないor実用化が非常に難しい為低価値な物質って感じで捉えて頂ければ幸いです。

 なのでしれっと主人公がお土産にとボールペンにデコった結晶が時結晶だったりしますが、束もそんなマイナー過ぎる国のマイナーな物質はまだ知りません。


 ……現実の時間結晶と混同しないようにね?(震え声

原作時代に入ってからの視点についてのアンケート。

  • 主人公視点(一夏は幕間)
  • 影響された一夏視点(主人公の出番は減る)
  • ①を完結させた上で両方(章分け)
  • ①を完結させた上で両方(作品分け)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。