天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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 久々に投下。ここまでIS最新刊が出ないって事はやっぱり打ち切りかなぁ?

 あ、後今回マジでシリアスです。そろそろ色々回収していきます。


小学六年生 2

 ––––最近、千冬の様子がおかしい。

 

 何がどうとは答えられないんだけれど、一緒に登下校してる時も一歩引いた距離を保ってたり、妙に上の空だったりって言うか、とにかくそんな細かい部分が気になるんだよね。

 

 …………後は、千冬の剣が変わったのもかな?

 

 この間、道場で勝負した時に感じた事なんだけど、物凄く『冷たい』感じがして、千冬らしくないと思った。

 

 こう、なんだろう? 千冬の剣って、身体能力もそうなんだけど、『技』って言えばいいのかな? あんな感じで返しとか、先読みとかがしっかりとしててさ、綺麗な剣なんだよ。

 

 んで、束の場合は技術も使うんだけど基本アイツは『見てから反応する』って奴で、動きが完全に読めないから千冬とはこう、別な強さって言うのかなぁ? そんな感じなんだけど、最近の千冬はそっち側に近付いてる気がする。

 

 長年千冬と一緒に剣術学んでたから、俺の感じた感覚は多分合ってると思う。でも、束と違うのは今の千冬はなんていうか……暴力的なんだよね。

 

 

 この前の手合わせもボコボコにされたんだけど、竹刀越しなので両腕が痺れたし、胴に入れられた一撃で暫く立てなかった。

 

 ––––––その時の千冬が自分の手を見て悲しそうな顔をしてたのが頭に残る。

 

 

 「てな訳で束、なんか知らね?」

 

 「……あのさぁ、真面目な顔で相談しにくるんならその癖をどうにかしろよ」

 

 

 椅子に座った状態で振り向き、ため息を吐きながら呆れる束に謝りつつ、改めてここ最近俺が感じてる千冬への違和感を口にして行く。

 

 束に相談しに来たのは、千冬との付き合いは俺より長いだろうし、もしかしたら俺には相談してなくても束には相談しているかもしれないと感じたからだ。普段から仲が良いし、男の俺には話せない悩みとかだったら悪いかなぁと思って聞いてみたんだけど、話を聞き終わった束は怖い顔をしながら小声でぶつぶつ言って、何かを考えたままになってしまった。

 

 

 「………の経過と完成度に不満があるからかな? この前のリアクションが気になって調べた時に連中大分追い込まれてたみたいだしあり得る……か? けどもしそうなら…………の被験者である以上要求スペックに達しなかったら廃棄? いやでも大金を注ぎ込んだ以上是が非でもプロジェクトは完遂させたいはず、いや、そもそも身体スペックが規定値以上だったから完成品としてる。と言う事は外部環境から受ける刺激による精神面の変化が彼らの想定値以上で、その修正を–––––

 

 「なーなー束? 難しい事言ってねーで千冬の悩みをしってるのかどうか教えてくれよー」

 

 

 思わず急かす様に言っちゃったけど、真面目な考え事をしてる束が考えを纏め終えるまで待つの大分時間が掛かるし、束なら考えながらでも返事を返してくれるだろうからなぁ。

 

 

 「……多分、ちーちゃんが何を悩んでるのか、私は分かるよ?」

 

 「えっ? マジで?」

 

 「まぁ…………キミには話せない内容だけどね」

 

 「むー、俺が力になれる事も無い感じ?」

 

 

 悩んでる事を相談して貰えないって事は、千冬は俺が頼りなく感じてる訳だし、コレで束にはっきり無理って言われたら毎日話しかけたりして元気付けるくらいしか出来る事は無いんだけど……と、考えてた俺に返って来た束の返事は正直言って予想外の物だった。

 

 

 「…………別に、何もしなくてもいいんじゃないかな?」

 

 「––––えっ?」

 

 

 絶対に千冬は何かに悩んでる。コレは俺の感覚だけど、絶対間違ってない自信があったから束に相談に来たし、その事は束にも話してる、なのに何でそんな事を言うんだ?

 

 予想外の言葉に固まって俺の方へ束が椅子から立ち上がり近寄ってくる。ゆっくりとした足取りで俺を目を真っ直ぐに見つめながら、『そもそもさ』と呟き俺の目の前に束は座る。

 

 部屋の中央でカーペットの上に座ってるし、春の陽気であったかいはずなのに、何でかは分からない緊張感で寒気を感じる。束と俺の距離は膝を突き合わせるくらい近く、そのままグイッと束は顔を寄せてきた。

 

 

 「––––お前の幼馴染は私だろ? だったらいいじゃん別に。多分ちーちゃんこのままだと……キミに分かりやすく言えば近いうちに転校して引っ越すだろうし? まぁちーちゃんの悩みを解決すれば何とかなるだろうけど? お前じゃちーちゃんの抱えてる『問題』を解決すんのは難しいからさ」

 

 「……お前、本気で言ってるのか?」

 

 「割と本気だよ? 昔はちーちゃんしか居なかったし、ちーちゃん以外はどうでも良かったけど、今はキミが居るからさ。キミだってそうだろ? 私やちーちゃんはキミしか居ないけど、キミにとって私達は大勢居る中の一人、極論すれば疎遠になってもキミの人生に大きな影響は無いじゃん。大人になる頃にはきっとちーちゃんの事は忘れちゃうだろうし、私も–––––キミが側に居るなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 束がそう言った瞬間、俺は凄い力で押し倒された。

 

 両腕を掴まれた状態で馬乗りになられたからまるで動けない、いきなりの事に完全に反応出来なかったのも問題だけど、俺を押さえ込んでる束が本気なのが一番の原因だと思う。

 

 だから束の言葉も本気……とは俺は思わない。

 

 確かに束の言葉には力が入ってるし、真っ直ぐ俺の目を見ながら真剣な顔で話してはいるけれど––––それ以上に心配そうな顔をしてたら説得力が全然無い。

 

 

 「束。俺じゃ千冬の悩みを解決するのは難しいって言ったよな?」

 

 「言ったよ。キミじゃ『難しい』って」

 

 「無理じゃ無いんだな?」

 

 「……………うん」

 

 「なら、俺は千冬の力になりたい」

 

 

 押し倒された状態で言う言葉じゃないけど……俺は束の目を見てはっきりそう言い切る。

 

 その時の束の顔はとても複雑そうな表情で、俺の返事を予想してたのと一緒に悲しい顔を浮かべていた。

 

 

 「なぁ束、俺はお前も千冬も大事な友達だと思ってる。だから、どんな小さな事でも力になりたい。もしもお前が困ってたら絶対に力になる、だから千冬の力になる方法を教えてくれ!!」

 

 

 俺の思いが通じたのか、束は顔を伏せながら俺の上から降りると、後ろを向きながら短くこう言った。

 

 

 ––––キミが、剣術の勝負でちーちゃんに勝てばいいんだよ。それで……多分……致命的に解決するから。





 ………最近、手の汚れが洗っても洗っても全く落ちなくて困っている。

 ざぶざぶと水道から流れる水と石鹸を使って五時間くらい延々と洗っているが、()()()()()()()()()()()()()()()()()。父と母に言われた通りのモノを斬った日は最近何時もこうだ。

 コレは困った……一夏が抱っこをせがんでいるが、このままだと一夏を汚してしまう。

 それに、神出鬼没で思い付いた様に我が家に立ち寄る『彼』も汚してしまう。それだけは絶対に嫌だ。

 だから、だから––––––嗚呼、早くこの赤い汚れが落ちてくれないだろうか。

原作時代に入ってからの視点についてのアンケート。

  • 主人公視点(一夏は幕間)
  • 影響された一夏視点(主人公の出番は減る)
  • ①を完結させた上で両方(章分け)
  • ①を完結させた上で両方(作品分け)

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