天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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小学六年生 3

 

 

 俺が千冬に勝てばいい。束はそう言ってたけど、それが出来るなら苦労は無いんだよなぁ……。

 

 成長して俺の方がもう背が高いのに、年々動きに追い付けなくなって行ってるし、竹刀の鍔迫り合いでも身体ごと弾き飛ばされる事も多い。

 

 伊達に長年無刀二扇の型を練習してきた訳じゃないから、受け流しの技術にはちょっとだけ自信があったのに昔に戻った様な気分だ。

 

 ただ千冬に勝つ為の特訓を束が付けてくれるらしいし、落ち込んでてもしゃーない。きっとなんかすげぇ修行メニューとか用意してくれるんだろう、波紋の呼吸とかやらされんのかな?

 

 

 「束……流石に息を五分吸って五分吐けって言われても無理だよ?」

 

 「……先に言っとくけど、変な特訓とかしないからね?」

 

 「マジで? じゃあ何すんのさ?」

 

 「私と模擬戦。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。反復練習で動きと癖を徹底的に学ぶこと、良い?」

 

 「へっ? そんな事できんの?」

 

 「私は出来る。でも、()()()()()()()()()()()()()()。まぁやったら分かるよ」

 

 

 そう言って束は髪を結びながら門下生が全員帰って二人きりになった道場で俺に向かって竹刀を投げ渡して来た。

 

 素直に受け取って構えたんだけど、本当に千冬の動きで踏み込まれて驚いた。しかも剣の速さも重さも完全に再現してたし、まるで千冬と戦ってるみたいで普通にボコられた。すげぇな束。

 

 何本かやって全部ストレート負けした上に疲れて息切れし始めた俺を見かねたのか、束は竹刀を下ろすと、用意してたらしいタオルとスポーツドリンクを手渡してくれた。

 

 

 「分かる? これが君とちーちゃんとの実力差。100回やろうが1000回やろうが今の君じゃ掠らせる事すら出来ない」

 

 「ぐぬぬぬ、やっぱ千冬は強いなぁ」

 

 

 割と毎回千冬と試合してる時に思うんだけど、あの反射神経に勝てる気がぜんっぜんしない。偶に決まるカウンターを見てから避けるとか平気でするようになったし、最近なんか足捌きのフェイントだけで後ろに回られるなんてのもザラにあるし、益々強さに磨きが掛かってる。

 

 その動きを完全に再現してる時点でやっぱ束ってすげぇんだなと思いつつ、本格的にどうしようかという悩みが出始めた。

 

 昔から千冬の動きには着いて行けてない、そりゃ長年同じ道場で剣を振ってるから普段通りの千冬なら表情だったり雰囲気だったりから太刀筋は予測できるよ? でも今の千冬はなんて言ったらいいのか、例えるなら機械っぽい動き? めちゃくちゃ正確な動きだからうん、そんな感じ。だから全然動きが分からん。

 

 うがーっとなった俺は休憩中なのでと道場で大の字になって横たわりながら考えるけど、良い案が浮かんでこない。そんな俺の様子を見て、束が近くに座りながら俺の顔を覗き込んできた。

 

 

 「あのさ、キミはバカなんだから深く物考えててもまともな解決策出ないだろ?」

 

 「いやいや、もしかしたら俺の中に眠るなんかよく分からん才能とかが目覚める可能性が!!」

 

 「んなもんあったら私はこんなに苦労してないっての」

 

 

 そう言いながら束は俺にデコピンを当てつつ『そもそもさ』と言いながら立ち上がる。

 

 

 「キミはバカだから難しい事は他人に聞く主義でしょ? んで、私にその『難しい事』を聞きにきた。そんで私はそれに対する答えを教えた。––––私が信用出来ない?」

 

 

 俺に背を向けながら、そう言う束。その声は若干の寂しさを滲ませた様な感じがしたので、俺はそのまま立ち上がり、その問いかけに対しての答えを返す。

 

 

 「うんにゃ。信用も信頼もしてるぜさんぼー」

 

 

 昔のあだ名を使ってそう言ってみたけど、束からの反応が無い。もしかして滑った?

 

 そう思って少し不安になったのも束の間、深いため息と共にやれやれと言ったポーズをしながら、束が振り返る。

 

 

 「懐かしいあだ名を使うのは良いけどさ、別に私は君の参謀役になった訳じゃ無いんだけど?」

 

 「でもほら、今は俺に知恵貸してくれてるじゃん。じゃあやっぱ参謀じゃん」

 

 「君の理論武装は単純なんだか考え無しなんだか……色々考えてるこっちが馬鹿みたいじゃん」

 

 

 そう言って少し寂しそうな笑顔を浮かべる束を見て、俺は思わずにっと笑い返す。

 

 なんでそんな顔をしてるのかは分からないけれど、束も大切な友達だ。だからこそそんな顔をして欲しくない、そんなつもりで笑顔を向けてたんだけど、竹刀の先でデコをぐりぐりされた。何故に?

 

 

 「ほら、休憩終わったんなら続きやるよ!! 君の身体能力じゃ逆立ちしたってちーちゃんには追い付けないからね、動きを徹底的に頭に叩き込んでカウンターを狙う事!! ゲームで言うボス戦のパターン攻略みたいなイメージでね!!」

 

 「よっしゃ分かった!! でもちょっと待って」

 

 

 そう言って俺は一旦束に待ったを掛けた後、道場の隅に置いてた荷物の中から携帯電話を取り出して母さんに電話を掛ける。

 

 理由は簡単、束との特訓を続ける為にまだ道場に居たいから心配を掛けない様に電話するのと、束が準備してる時に道場借りる事を束のお父さんに言いに行ったら『何か特訓の様な事をするのなら、良かったら泊まっていきなさい。束も箒も喜ぶし、私も剣術の手解きをしてあげられるからね』と言って貰ってたので、それの報告。

 

 

 『もしもし? 急に電話してきてどうしたの?』

 

 「てな訳で、束ん家泊まるから!!」

 

 『は?』

 

 「は? えっ、ちょっと待って?? 私聞いてないんだけど?」

 

 

 とりあえず言いたい事は言ったので、携帯の電源を切って束に向かって竹刀を向けたんだけど、肝心の束が驚いてた。あれ? 言ってなかったっけ?

 

 

 「師範から泊まってっていいよーって言われたからさ、折角の特訓だし、そっちの方がいいかなーって」

 

 「ま、まぁ、それはそうかもだけど……」

 

 「それに師範からは俺が泊まると束と箒ちゃんが喜ぶって––––」

 

 「お父さぁぁぁあん!?? 何ある事ない事言ってんの!?」

 

 

 そう言って、束は俺との特訓をほっぽり出して束のお父さんの所へ走って行ってしまった。

 

 放置された俺はとりあえず束の後を追ってたんだけど、なんだかんだで結局泊まる事にはなったので無事特訓を続ける事が出来た。

 

 ……ただ、特訓の結果。このままだと冬ぐらいまでは猛特訓しなきゃいけないらしい。やっぱ才能ないのかなぁ?




 父親に猛抗議する束さん(裾を引きながら上を見上げつつ理論武装全開でいかに喜んで無いかクソほど力説)でしたが、最終的に箒ちゃんが!!喜ぶから仕方なく!!みたいな論調で主人公が泊まる事に賛成してました。

 尚冬まで特訓したら千冬に勝てるかのAに関しては100%の勝率ではなく、束が主人公への特訓に全力だして状況・お互いの精神面・戦闘能力の差等々を完全に計算に入れてのガンメタ貼って漸く勝てる確率が出てる、ぐらいの感覚です。

 久々の投稿の為予め申し上げておきますが、決して主人公に才能があるわけではありません。あくまで『主人公が勝つ』ではなく『束が主人公を勝たせる』なので悪しからず。

 ps
 主人公の泊まりの件は親同士でよろしくお願いしますを裏でちゃんとやっておりますのでご安心を。

原作時代に入ってからの視点についてのアンケート。

  • 主人公視点(一夏は幕間)
  • 影響された一夏視点(主人公の出番は減る)
  • ①を完結させた上で両方(章分け)
  • ①を完結させた上で両方(作品分け)
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