天災二人と馬鹿一人   作:ACS

124 / 130
小学六年生 4

 

 今日は束に用事があるから特訓は休み。かなりしごかれたからか、束に『休む時はしっかり休む事』と言われてるので、久々に釣りをしてる。

 

 釣り糸を垂らしてゆっくりと魚が掛かるのを待つ、その間に聞こえる波の音や、風の音なんかがなんとも言えない心地良さを感じさせるんだよねー。

 

 そうやって暫く堤防で足をぷらぷらしながらヒットを待ってたら、背後から声を掛けられた。

 

 

 「此処に居たのか。お前は趣味が多いから少し探したぞ」

 

 「ん〜? その声、千冬か? どーした?」

 

 

 最近微妙に距離を置かれてる気がしないでもなかったから態々探して会いに来てくれた事が少し意外だった。もしかして考えすぎだったのかな?

 

 そう思って『まーとりあえず横に座って話しようぜ』と言って自分の横をぺしぺし叩きながら千冬を呼んだんだけど、微妙に間を置かれてしまった。

 

 今までは呼んだら割と近い距離に座ってたのに、人一人分の距離を開けられたのが微妙にショックだった。けどなんかこう、別に嫌われてる訳じゃ無いっぽいから、ちょっと距離を詰めてみたんだけど、詰めたら詰めた分だけ距離を離されてしまう。

 

 近寄る、離れる、近寄る、離れる、この繰り返しで暫く距離を詰めてみたけど、途中で千冬に止められてしまった。

 

 

 「待て待て待て、距離を詰めるな流石に私も対応に困る」

 

 「あっ、ごめんつい」

 

 

 何も考えて無かったから思わず距離を詰めに行っちゃったけど、人には付き合いを見直したくなるときがあるってのを知り合いの大学生から聞いたことがある。

 

 多分千冬もそんな感じなんだろうなぁと納得した俺は、人一人分の距離を空けたまま、改めて釣り糸を垂らす。

 

 

 「んで? なんで俺探してたの?」

 

 「……相談したい事があってな」

 

 

 かなり思い詰めたような声色で、そう吐き出すように呟く千冬。頼ってくれた事を嬉しく思うけど、俺は束ほど頭良くないからなぁ。

 

 まぁでも俺に相談しに来たって事は人間関係とかかな? 誰かと喧嘩したとか、喧嘩した誰かを仲直りさせたいとか。

 

 

 「ん。分かった。俺に解決出来るか分かんないけど、俺なりに力になるよ」

 

 「………………お前は、『最強』や『最高』な人についてどう思う」

 

 「悩み事が想像の斜め上だったんだけど? それって詳しい話聞ける感じ?」

 

 「…………すまないそれは話せない。だが、真面目な話なんだ」

 

 「それなら俺なりに考えてみるけど………うーん。なんつーか、なんだろ。言葉にしづらいけどさ……」

 

 

 最強とか最高とか、ゲームの中だけの話でしかない俺にはそれがどう繋がって千冬の相談事になるのかは分からない。

 

 けれど、強いて言えば別になんにも意味がないんじゃないかなぁとそう思う。

 

 だって誰よりも強かったとしても、誰よりも凄かったとしても、ひとりぼっちじゃ寂しいし、頑張り甲斐が全然無いんじゃないかな?

 

 束だって昔は殆ど人と関わろうとしなかったし、千冬だって人付き合いはするけど深いところまでは踏み込もうとしてなかった。

 

 でも二人とも誰かと一緒に居るのが嫌だった訳じゃない。そりゃ今思い返すと俺もすげぇ強引に仲良くなりに行った様な気はするけどさ、そんでもずーっと俺を拒絶してた訳じゃ無いし、誰だって一人は寂しいんだと思う。

 

 

 「てな訳で、最強とか最高とかそう言う人らって寂しがり屋さんなんじゃ無いかな?」

 

 「何がどう言うわけなんだ……私は束じゃないから言葉からお前の思考は推察出来んぞ……」

 

 「まーあれだよ、どんだけ強くってもどんだけ凄くってもさ、それだけで人とは仲良くなれないんじゃねって話」

 

 

 そう言いながら、俺は持っていた釣り竿を千冬に渡す。少し距離が離れてるから手渡し辛かったけれど、千冬は首を傾げながら受け取ってくれた。

 

 

 「釣り竿……?」

 

 「何かで見たけどさ『永遠に幸せになりたかったら釣りを覚えなさい』って言うんだってさ、なんで釣りしてれば幸せになれるのかはさっぱりだけど、千冬が今すげぇ悩んでるのは分かるよ」

 

 

 けど俺は多分千冬の悩みに答えは出せない。さっきの答えが腑に落ちてないって感じだったし、俺自身も千冬が何を悩んでるのか分からないから一緒に悩んでやる事も出来ない。

 

 でもだからって、俺が千冬に何も出来ないってのは悔しいじゃんか。だって友達が悩んでんだぜ? 俺に解決能力が無かったとしてもさ、せめてちょっとの間だけでも悩みから離れて遊んでほしい。

 

 

 「てな訳で釣りしようぜ!! 竿一本しかねぇけどな!!」

 

 「……ふふっ。お前と一緒に居ると、毒気が抜ける様な気がするよ」

 

 「おっ? 褒められた? ま、俺は難しい事考えんの苦手だからさ、悩み事の相談されても千冬の納得する答えが返せるかは分かんねーけど、一緒に居て一緒に遊ぶ事は出来るからさ。またなんか悩んでたら釣りに行こうぜ?」

 

 「…………ああ、そうさせて貰おう」

 

 

 そう言って、千冬は俺から貰った釣り竿を使って釣りを始めた。

 

 一本しか釣り竿を持って来なかったから、魚が掛かるまで俺は千冬の横に座って色々適当な事を話してたけど、何となく千冬の雰囲気が明るくなった様な気がする。

 

 もしそうなら嬉しいな。

原作時代に入ってからの視点についてのアンケート。

  • 主人公視点(一夏は幕間)
  • 影響された一夏視点(主人公の出番は減る)
  • ①を完結させた上で両方(章分け)
  • ①を完結させた上で両方(作品分け)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。