天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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 (;゚Д゚)つ最新話


小学六年生 7

 

 

 –––––千冬に勝つ事を目標にして束の特訓を受けて暫く経った。

 

 その一環で今の実力差を把握する為に千冬と体術込みの手合わせをする事になったんだけど、はっきり言って打ち込む隙が全くない。

 

 夏場の道場の中で全く体が揺れずに竹刀を真っ直ぐに構える千冬は、まるで機械の様に感じる。なんと言うか、呼吸やリズムが読み取り辛いと言ったらいいのかな?

 

 上手く口で説明するのが苦手だからどう例えれば良いのか分からないんだけど、そのせいか俺から攻めた時に返される動きが読めない。いや、元々俺の剣は待ちの剣なんだから攻めに向いてないけどさぁ……。

 

 試合前に待ち合戦の根比べだと集中力の差で絶対に勝てないって束に言われてたのを思い出す。向かい合って十分くらい経ってるけど、千冬は本当に微動だにしてないし、ジッと俺の目を見続けているから逆に攻めっ気を見抜かれてると思う。焦れて手を出して来るのを待たれてるのか、もしかしたら攻めづらそうにしてる俺に付き合ってくれてるのかは分かんないけど、見透かされてる気分だ。

 

 チラッと束の方を見て、『ギブアップしてOK?』と目で訴えてみたけど、『つべこべ言わずにやれ』って感じの空気を感じ、ダメ元で斬りかかろうとしたんだけど、いつの間にか千冬が踏み込んで来ていた。

 

 

 「––––試合中に私から目を逸らすとは、良い度胸だ」

 

 

 若干不機嫌そうな声色でそう言う千冬。完全に反応が遅れた所為で咄嗟に竹刀を差し込む事しか出来ず、横薙ぎに振るわれた一閃で右手の竹刀を弾き飛ばされた。

 

 思わず後ろに引こうと思ったけど、束との特訓で悉くそれを狩られたのを思い出し、残った竹刀を手放しながらその場に踏みとどまり、千冬の後ろに回り込む様にして組み付き、羽交い締めにする。

 

 とりあえずこれで剣は封じられたんだけど、問題はこっからなんだよなぁ……。

 

 身長差によって少し床から浮いた状態の千冬はぱっと見どうしようもないように見える、実際俺だったらどうにもならないと思う。けど、千冬は違う。

 

 身体が浮いてる事を利用して俺の腹に両足を押しつけると、そのまま足を伸ばして密着した体の間に空間を作り、その空間を利用して鉄棒回転の様なイメージでくるっと回り、俺の拘束を抜け出した。

 

 そして、漫画みたいな抜け出し方に少し感動したのが悪かったのか、俺はそのまま千冬に水面蹴りで転倒させられると、体勢を起き上がらせる事も出来ずに馬乗りになられて顔面に拳の寸止めを打たれていた。

 

 

 「私の勝ちだな」

 

 「両腕が千冬の足で挟まれてるし、抵抗したくてもできねぇ」

 

 「背後を取られたのには少し驚いたが、詰めが甘かったな」

 

 

 そう言うと、千冬は俺の上から降りてタオルで汗を拭き始める。チラッとその横顔を見れば、道着を少しはだけて内側に籠った熱を外に出している。タオルで汗を拭いてはいるけど、その汗は多分俺との試合で流した汗と言うより、道場の暑さで出た汗なんだろうなぁと、少しだけ悔しかった。

 

 ただそんな風に千冬を見ていたら、束が俺の顔を覗き込んで来た。床に大の字になってるから逆さまになってる束の顔にはやれやれ、みたいな表情を浮かべてる。

 

 

 「ま、とりあえず今キミに一番必要な物は余計な事を考えないようにする思考ロジックだね、ちーちゃんの動きに一々頭の中で反応しちゃってたらキリがないよ」

 

 「………………束。この男にそれが出来るなら私達とのコミュニケーション能力に劇的な改善が出来てると思わないか?」

 

 「…………だ、大丈夫。タイムマシン作るよりは多分簡単だから」

 

「比較対象がそれの時点で色々察するんだが……まぁいい」

 

 

 呆れたようなため息を吐いた千冬は、そのまま倒れている俺のところまでくると、凍らせたスポーツドリンクを渡してくれた。

 

 

 「何を企んでいるのかは分からないが、稽古なら何時でも付き合うぞ」

 

 「さんきゅー千冬。今に見てろよ? 直ぐに強くなってお前に勝ってやっから」

 

 「ふふっそうか。それは楽しみだな」

 

 「ふっふっふ、今のうちに余裕ぶってるんだな。俺には覚醒イベントが多分残ってる」

 

 「ま、楽しみにしといてよちーちゃん。冬までにはコイツ仕上げとくから」

 

 「そうか、そこまで言うなら……よし、もしお前が私に勝てたなら何でも一つ言うことを聞いてやろう」

 

 「うわぁ師匠キャラみたいな事言ってる……」

 

 「『ししょー』だからな」

 

 「キミに対してのちーちゃんの『何でも』は本当に何でも言う事聞きそうなんだけど……大丈夫?」

 

 

 そう言ってドヤ顔する千冬とジト目で俺を見る束を横目で見つつ、どう束に返そうかと考えながら体を起こして貰ったスポーツドリンクを口にする。

 

 タオルで保冷してるからか、まだ凍ったままの中身は溶け始め独特の妙な甘さじゃなく、少し薄まったような味がする。よく見れば開封済みで、横に振ってみるとちゃぷちゃぷと量が少ない事が分かる。あれ?これ()()()()()()()()()()()()?()

 

 

 「なぁ千冬?」

 

 「ん? どうした?」

 

 「これ、間接キスじゃね?」

 

 

 俺がそう聞くと、少しの間を開けた後––––千冬は顔を赤くしてそっぽを向いたのだった。

原作時代に入ってからの視点についてのアンケート。

  • 主人公視点(一夏は幕間)
  • 影響された一夏視点(主人公の出番は減る)
  • ①を完結させた上で両方(章分け)
  • ①を完結させた上で両方(作品分け)
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