何の裏表もない回。
今日は束との秘密特訓の日。なんだけど、今日は基礎トレーニングじゃなく、メンタルトレーニングをするらしい。
内容は束と一緒に街中をただ歩くだけ、普段のキツいトレーニングとは全然違うなぁと思ってたら、『何も考えずに』歩かないといけないらしい。
束曰く、『キミは普段何も考えてないように見えてその実色々と考えてるからさ。それ自体は悪いことじゃないんだけど、その所為で自分の頭の中に入ってきた情報を考え過ぎちゃう悪癖にも繋がってると私は見てる』との事。
「この前のちーちゃんとの勝負も打って誘わないといけないのに、色々考え過ぎてて勝手にドツボに嵌っちゃってたでしょ?」
「いや、そー言っても隙が全然無かったじゃん」
「そんなのちーちゃん相手だし当たり前じゃん。
「つってもなぁ……」
実際問題、俺があの時千冬へ打ち込んだとして結果は変わったのかなぁ? 何を打っても二の太刀であしらわれてたような気がする。これまで同じようなシチュエーションで束と打ち合った時は普通にしばかれたし、この考え自体は間違って無いと思うんだけどなぁ。
そもそもとして、昔から千冬相手にこっちから仕掛けて勝った覚えが無い。いやまぁ普通に通算して全敗してるけどもさ、とにかく俺より反応が早いしなんなら忍者みたいな動きで裏取りされるから後の先を取るような待ちの剣になった訳で……。
––––と、そんな事を考えてたら、頬をムニっと摘まれた。
「ほら、今も考え過ぎてるでしょ? せめてちーちゃんと勝負する時くらいは余計な事を考えないよーに!! 分かった?」
「わ、分かったよ」
「よろしい。じゃあ今日は何にも考えず、見たままの事をそのまま口にして会話しな。今日1日束さんが横で見といてやるからさ」
「いやまぁ、それはいいんだけどさ」
「ん? 何? なんか束さんに意見でもあるの?」
束の言ってる事は何となく分かる。目の前の事に集中しなきゃいけないのに、それ以外の事がぐるぐる頭の中で回ってるから何も考えないようにして、『相手がこう来たらこう返す』ってな感じの集中力を持たせたいんだろうけど、その練習は俺の頭の中を見れないと難しいんじゃないかな?
「何も考えてない状態になってるとか俺が色々考えてるとかって見ただけで分かるのか?」
「––––––私はキミが思ってる以上にキミの事を分かってるからそんな事今更考える必要無いよ」
「なるほどなぁ流石ニュータイプ」
「だからその妙ちきりんなカテゴライズするなって言ってんだろ」
そう言って、束はジト目で俺にペチンとデコピンをしてくる。余計なことを言ったかもしれないけど、思ったまま会話しろって言ったのは束だしなぁ。
とりあえず、適当に手を繋ぎながら二人並んで歩いてたら近くのスーパーの前でたい焼きの屋台が出てるのが見えた。
「たい焼きかぁ……」
「何? たい焼きが気になるの?」
「たい焼きって詐欺だよな」
「は?」
「いやだってたい焼きって鯛が入ってないじゃん。中身あんこだし、鯛の形してるからたい焼きなのは分かるけどさ、じゃあたこ焼きってタコの形してるかっていったら別にそんなじゃん? なんなら明石焼って明石市を焼いてるのかって話になっちゃうじゃん。ならたい焼きは『鯛焼いてない焼き』にするべきじゃね? あっ、でもそうなるとラジオ焼きのラジオってなんだろ? マジでラジオ入れてる訳無いだろうし……ラジオ……ラジオ? なんかの頭文字かな? ラジオのラは……ラーメン? んでジ……ジ? ジンギスカンとか? じゃあ最後はオレンジかな? あれでもラジオ焼きってこんにゃくと牛すじが入ったたこ焼きのルーツっぽい食べ物じゃなかったっけ? うわーどうしよう、めっちゃ気になるんだけど!? あ、でもそう言う話になるとイカ焼きもアレだよな? なんか大阪の方だとクレープみたいな感じらしいじゃん? 粉物文化ってやつ? そうそう粉物って言ったら焼きそばも粉物だけどさ、なんで『粉物』なんだろ? 小麦粉から出来てるから麺料理じゃね? それならパスタも粉物だから大阪の文化料理になるのかな? キャベツと豚肉炒めてパスタ入れてソースいれて、『焼きパスタ!!』とか言ってさ!! あ、パスタって言ったらさ––––」
「ちょっと待ってストップ!! たい焼き一つでどこまで話広げる気なんだよ!?」
「えっ? いや別にたい焼きで話広げてるつもりは無いけど……? あ、でもたい焼きってさ尻尾まであんこたっぷり入ってるとかカスタードがはいってるのとか色々あるけどさ、おかずクレープとかみたいに中にシーチキンとか詰めてるおかず系たい焼きとかってあんのかな? 俺見た事無いんだけどあったらあったで実際どんな感じなんだろ? 案外無難な味してそうだけど、米粉使った白いたい焼きとかだったら普通にマッチしそうだし、なんか作ってみたくなったんだけど、今度みんなで作ってみねぇ? 確か知り合いの大学生のにーちゃんが家庭用のたい焼き機持ってたと思うし、よしそうと決まったらちょっと待ってて今から電話すっから。あーでも今もあるのかなぁ? 前に動画投稿用に改造して全自動たい焼き機とか言ってかなり大掛かりなたい焼き機にしてるって話だったし、あれ完成したのかな? 前に試運転を見せて貰った時はたい焼きの金型が無駄にめちゃくちゃ高速回転しながらたい焼き作ってたし」
「あれ? もしかして私パンドラの箱開けちゃった?」
そんなこんなで束と1日中一緒に居たんだけど、帰り際に『……コイツがこんなに喋るなんて予想外だった……今後はこの方法はボツ』と疲れ切った様子なのが気になった。
束の言われた通りにしたと思うんだけど、喋り過ぎだったのかなぁ……。
今回主人公は400字詰め原稿用紙約2枚分一気に話してます(白目
原作時代に入ってからの視点についてのアンケート。
-
主人公視点(一夏は幕間)
-
影響された一夏視点(主人公の出番は減る)
-
①を完結させた上で両方(章分け)
-
①を完結させた上で両方(作品分け)