天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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一話だけ詐欺発動(震え声


幕間:兎から見た馬鹿 3

–––最近、学校に行くのが苦痛じゃなくなって来た。

 

 それまでは朝起きて、ちーちゃんと登校して、お昼にちーちゃんと喋って、放課後にちーちゃんと帰るだけの単調なルーチンワークでしかなかったのに。

 

 ……理由は決まってる、あの底抜けの馬鹿。

 

 別にアイツの事を私はなんとも思ってない、勝手に友達だとか言って私に付きまとって、何の意味も無い話を一方的に話すだけの男だった筈なのにいつの間にか一緒に居ても不快じゃ無くなって、最近では時々遊ぶ様になってしまった。

 

 以前はコイツ以下の存在なんて居ないってレベル何よりも嫌いな存在だったのに、最近は不思議とそうは思わなくなっている。

「よーさんぼー、おはろー」

 

「……ふん、毎日毎日馬鹿の一つ覚えだね」

 

「おっ、褒められた!!」

 

「褒めてないって……」

 

「ふーん、でも俺はお前があいさつ返すまであいさつし続けるからな!!」

 

 

 朝に会うと必ずコイツは挨拶をしてくる、今まで全く気にしてなかったし返事を返す気も無かったんだけど、未だにこうも挨拶を続けられると呆れを通り越して感心するよ。

 

 

––––でもさ、その言い方だと、もし私が挨拶を返したら次の日から挨拶してくれないんじゃないの?

 

 喉まで出かかった悪態、思わずそのシチュエーションを想像した時、何故か私はほんの少しだけ寂しさを感じたので途中で言葉を飲み込んでしまう。

 

 コイツとの会話に殆ど意味は無い、話す内容なんて下らないテレビ番組とか昨日の晩御飯の話だとか、身にならない話が中心だから聞いてるだけ時間の浪費なのに。

 

––––何故、話しかけてくれない事を寂しいと感じたんだろう?

 

 

「おーい、さんぼー? 聞いてんのー?」

 

「……何? 君の話には生産性がないから全く話聞いてなかった」

 

「えーマジでー? んじゃさ、もっかい言うけど席替えがあるらしーぜ?」

 

 

 席替え、今までの私なら『やっと君と離れられるのか、清々するよ』とでも言っただろうし、実際口にするつもりだった。

 

 けど喉まで出かかったその言葉が中々出ない、次に私の隣に座るのがこの馬鹿じゃないって考えたら、そんな悪態が引っ込んでしまう。

 

 らしくない、自分でもそう思うんだけどもし席替えで横のコイツが誰か別の誰かと入れ替わったら、また退屈な時間が始まるんだろうか?

 

 横の馬鹿は授業中でも休み時間でも暇になったら話しかけてくるし、分からない事があったら真っ先に私に聞きに来る。

 

 それは全部不必要な会話だったのに、話しかけられる事がイライラした筈なのに、それが今じゃ嫌じゃない。

 

 過程を省いて結論だけを話してくる癖ももう慣れた、ツッコミを入れる必要も無いのについつい入れてしまう様になってさ、ほんとなんでなのかな?

 

 そこまで考えて、認めたくない事だけどコイツと他の連中ならこの馬鹿と一緒に居る方が何倍もマシだと感じている事に気が付いた。

 

 私はコイツの事をなんとも思っていない、思っていない筈なのに。

 

––––コイツ以外の誰かが私の横に来る事が嫌だった。

 

 

「また一緒の席だといーな、なぁさんぼー?」

 

「……まぁ、君は他の奴よりはその、少しはマシだからね」

––––そして席替えの時間が来た。

 

 箱の中に数字が書かれた紙が入った簡単なくじ引き形式、席順的に先に私が引いて次にこの馬鹿が引くんだけど、今まで感じた事の無い緊張感に私は包まれていた。

 

 問題は私の引いた番号じゃなくてこの馬鹿の番号、私の隣かそうでないか。

 私の引いた紙には窓際から一列離れた場所の番号が書かれて居た、だから右側にコイツが来てくれれば……。

 

「おっ見ろよさんぼー、お前の右の席だぜ? マジでまた隣だと思わなかったなー」

 

「……ふーん、あっそ」

 

「なんだよ、そっけねーなー」

 

「要は今の場所が入れ替わっただけでしょ? 空が見えないじゃん」

 

 

 席がまた隣だと分かった瞬間、私はふっと顔を逸らしながら何時もの様に悪態をついた。

 

 今までと変わらない状態になった事に対する安堵と、私にこんな思いをさせるこの馬鹿に対してのちょっとした意趣返し、特別な意味は無い。

 

「まっ、俺が窓際になったし空は諦めるんだなー」

 

「君が少し身体をどけたら良いんじゃないの? それで解決すると思うけど?」

 

「うへぇ、絶対疲れる奴じゃん」

 

 

 そう言って、馬鹿はぐてっとうつ伏せになった。

 

 横顔がふてくされたような顔で、何時もの様に頭の中で何かを考えてる様な顔をしているのでそろそろあの言葉を言うタイミングなんだろう。

 

「てな訳でさんぼー、今日は俺も一緒に昼メシ食っていいか?」

 

「だから結論だけ話すなって言ってるだろ? …………ばーか」

 

「えっ? なんで馬鹿って言われたのよ!?」

 

 

–––––私はこの男の事を何とも思ってない、少なくとも嫌な方向には。

 





※まだlike。

しかしloveになったらこのlikeが丸々土台になります(白目

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

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