天災二人と馬鹿一人   作:ACS

3 / 130
主人公のメンタルが強化ガラス並みですが、この強度が無いと天災の相手は出来ないって訳ですわ(白目

真面目な話、リーダーシップがあるせいでこの主人公は束さんの様な人をほっとけないという悲しい性があります(哀れみ


小学一年生 3

 篠ノ之と友人になると決めた翌日、俺は教室に一番乗りし、仁王立ちをしながら奴を待った。

 

 正直校門前で待とうかとも思ったんだけど、今日は風が強いので仕方なしに教室の中にいる。

 

 それと朝は友人と登校してるだろうしそれを邪魔するのも悪いし、何となくそこに乱入したら致命的な目に遭わされる気がするからな。

 

 ふっふっふ、とカッコ良い笑いを浮かべながらHRの時間まで待ち、漸く御登場された篠ノ之に向けて指を突き付けた。

 

 

「よーやく来たな篠ノ之!! 俺はお前と友達になるほーほーを考えて––––」

 

 

 考えて来た、そう言い切る前に篠ノ之は無表情で俺の横を素通りし、自分の椅子に仕方無さそうに座る。

 

 アウト・オブ・眼中!! うーん、朝から強烈な対応で不安しか無いな!!

 

 しかーし、俺は秘策を用意して来たのだ、そう、絶対に篠ノ之と会話が出来る秘策、それは!!

 

––––手ぶらで登校する事。

 

 

「ふははははっ、これで貴様は否が応でも俺にきょーかしょを見せなければならないのだー!! いや、きょーかしょだけじゃなく、ペンや消しゴムと言ったひっきよーぐもなァ!!」

 

「おい、ダーウィン賞レベルの馬鹿、初めから最後まで全部口に出てるぞ」

 

「…………コレが噂のゆーどーじんもんって奴か」

 

 めっちゃ冷たい目で睨まれた、無言のメンチビームが一番キツイっす。

 

 それになんちゃら賞レベルってどのぐらいなんだろうか? 取り敢えず賞を貰えるって事はそれなりに凄いって意味なんだろう、本人に聞くのが一番手っ取り早いんだろうけど教えてくれそうにねーしなー、いやダメ元でも会話のキッカケになるか?

 

 

「なーなー、そのなんちゃら賞ってなんだよ?」

 

「お前みたいなとびきりの馬鹿専用の賞だよ」

 

 おっ? やった返事してくれた、てっきりメンチビームか無視されるかの二択かと思ったけど、案外打ち解けられたんじゃね?

 

 そう思い、握手しようと手を伸ばしたら小指を反対側に曲げられた、しかも思いっきり。

 

「なに触ろうとしてんだよ便所コオロギ」

 

「ちくしょう、一日空いたのにまだ便所コオロギかよ……」

 

 どうやら打ち解けられたのは幻想だったらしい、しかも俺を触った手をウェットティッシュで入念に拭いてる、すげーな悪口以外にも人って精神攻撃できるんだ、知らなかったや。

 

 ……泣いてない、俺は泣いてないからな!!

 思わず目から流れそうになった物を堪え、気を取り直しながら一限目の授業に入ると同時に篠ノ之さんへ振り向いた。

 

 

「さあ!! きょーかしょを渡して貰おうか!! ついでに鉛筆と消しゴムもなァ!!」

 

「んなもん持ってる訳無いじゃん、私はこの学校の教師よりも頭良いんだよ? なんでそんな私がお前と同レベルの授業を受ける必要があるの? 無いよね? そんな単純明快な事も理解出来ないとか馬鹿じゃないの? あ、馬鹿だったね? 人類史に残るレベル––––ううん、残しちゃいけないレベルの馬鹿だもんね。 そっかそっか、あんまりにも馬鹿過ぎると流石の束さんも何を考えてるのか全く分からないなぁ、もう少し人間レベルの知能付けてくれないかな、最低限さ? ねぇ便所コオロギ君、それともカマドウマ君って呼んだ方がいいかい? ああ、オカマコオロギなんてのもあるね。お前は頭の中お花畑だからもしかしたら横文字の名前の方が気にいるかな? ならアタキシネス・アピカリスとかラフィドフィオリディーもあるよ? 好きな呼び方で呼んでやる、ちーちゃん以外をあだ名で呼ぶなんて初めてだから要望に応えてやるよ」

 

 この女の罵倒のプリセットは一体いくつあるんだろうか? 俺の事を木の股から産まれた何かとでも思ってないか、コイツ。

 

 というかそもそも持って来てないってアリかよ、計画が初手から頓挫してんじゃねーか、予想外過ぎる。

 

 頭が良いのは知ってたけど教科書要らないレベルとは思わなかった、篠ノ之が嘘を吐く必要は無いから多分事実なんだろうけど、すげーな。

 けどどーすっかなぁ、教科書を借りる事で会話のきっかけを作る基本戦術が台無しになったぞ、新しく戦術を練り直さなきゃならねーのか、はぁ……。

 

 いや、待てよ? 教師より頭が良いから授業を受ける必要が無い、だから教科書を持って来ない、それはつまり常に教科書を忘れて来てるって事になる訳だ。

 

 それなら逆に俺がコイツに教科書を見せれば良いんじゃね? 常に持って来てないなら毎日会話の口実を作れるし、それをウザがって教科書持って来たらそれこそ当初の予定通り行ける。

 

 なんだ、我ながら完璧じゃねーか、これなら篠ノ之と肩組んで遊びに行くレベルになるまで一気じゃね?

 

 何という名案、思わず俺は篠ノ之の顔を見ながら親指を立てて笑顔を浮かべてしまった。

 

「さっきからニヤニヤしてて気持ち悪いんだよ、こっち見んな」

 

 

––––が、相変わらずのコレである。

 




※ダーウィン賞=自らの愚かな行為で死亡・或いは生殖機能を無くす事で後世にアホな遺伝子を残さない事に貢献した人に送られる強烈な皮肉。

※アタキシネス・アピカリス=便所コオロギ(学名)
※ラフィドフィオリディー=便所コオロギ(英名)
※カマドウマ=便所コオロギ(和名)
※オカマコオロギ=便所コオロギ(俗称)


やったぜ主人公、あだ名で呼んでもらえるよ!!(哀れみ

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。