天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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幕間:戦乙女から見た馬鹿

 

––––私はこの馬鹿の事が嫌いじゃない。

 

 

強引に花見に誘われた形になるが、私も始めての花見と言う事で満更でも無かったし、内心では誘ってくれた事に感謝している。

 

ただ、素直に礼を言おうにも花見の場所に行くまでの移動時間に持ち前のマシンガントークに負けてしまったのと、着いたら着いたで束とお菓子について熱く語り合っているので口を挟めない。

 

…………こんな光景は滅多に見れる物じゃ無いはずだったがこの一年でそれもすっかり見慣れてしまったな。

 

 

彼の事を知ったのは一年程前、昼食の時に束が愚痴を漏らす事が多くなった時の事だ。

 

珍しく他人について話す束に相槌をうっていたんだが、次第に奴の口調から嫌悪感が消えて行ったので私もどんな男か気になったのを覚えている。

 

初めて会ったのは運動会の日、かなりハイテンションな男だと思った。

 

常にマイペースで私達をその自分の雰囲気の中へ包み込む男、私は束ほど周囲からの孤立感は感じてないがそれでも自分の異常さは自覚している。

 

なので思わず他人とはある程度引いた位置に自分を置いているのに、この馬鹿はその線を気安く飛び越えて私達の元に来るのだ。

 

悪く言えば馴れ馴れしいんだろうが、この馬鹿と話してるとどうにもその悪印象を抱けない。

 

彼の両親が作ってくれたお弁当をつつきながらそんな事を思っていると、ヒートアップした二人が私の所へ来た。

「なぁししょー!! ぜってーたけのこだよな!? きのことか邪道だよな!?」

 

「はぁ? ちーちゃんは君みたいな味覚音痴じゃないから絶対きのこに決まってるよ!! ね? ちーちゃん!!」

 

 

……このくだらない言い争いに巻き込まれて私はどうしたら良いんだろうか? 先程までの感慨が吹っ飛んだんだが。

 

そもそも私は別にそのどちらの派閥にも所属していない、だから私がやるべきなのは二人の仲裁だな。

 

「落ち着け二人とも、私はきりかぶ派だから中り––––」

 

「えっ? きりかぶ? あのパチモン? 嘘だろししょー?」

 

「えっ? きりかぶ? あの模倣品? 嘘でしょちーちゃん?」

 

「おい、きりかぶの何が悪いんだ」

 

 

私がきりかぶ派だと知った瞬間、二人が『信じられない』と言った顔をして同時に身を引いた、束の奴口では嫌ってる様な風な事を言ってる癖に息ぴったりじゃないか。

 

というかだ、きりかぶ派と言っただけで何故こんなリアクションを取られないといけないんだ?

 

「そもそもだ、きりかぶだって発売元が違うだけで似たコンセプトのお菓子だろ? なら別に––––」

 

「出たよ自分だけは違うアピール!! お前なんだよそれ、一線引いてんのがそんなにカッケーってか?」

 

「ちーちゃん、ちーちゃんはいつからそんな可哀想な人に……」

 

「……言い過ぎじゃないかお前ら?」

 

 

この馬鹿共、私がからかわれるのが嫌いだということを忘れていないか? 自分で言うのもなんだが、口より先に手が出るタイプなんだがな。

 

「俺知ってるもんねー、お前こないだ本屋で少年漫画でサンドイッチしながら少女漫画買ってたろー? 大丈夫大丈夫、お前もじゅーぶん乙女だから!!」

 

「ちーちゃん……そんな事してたの……」

 

 

馬鹿の勝ち誇った顔と(バカ)の哀れみの目を見た瞬間、私の中の何かが弾けた。

 

そもそも少女漫画をどう買おうと私の勝手じゃないか、誰に迷惑を掛けた訳じゃないし、言ってみれば漫画を三冊購入してるからむしろ逆に本屋さんの売り上げに貢献してる!! なんだ? 私が少女漫画を読んだらおかしいのか!?

 

「キサマら……覚悟はイイな?」

 

「あ、あれ? ししょー怒ってる?」

 

「ち、ちーちゃん? ほら、桜きれーだよー、束さんもお腹減っちゃったなー、なーんて……」

 

「言いたい事はそれだけか?」

 

「あのっししょー? 目が、笑ってないんですけど……」

 

「ちーちゃん? なんで指鳴らしながら近寄って来るの? ほら、束さんのスマイルだよー?」

 

「それだけだな?」

 

「逃げるぞさんぼー!! あの目はガチだ!!」

 

「もーっ、君がからかうからこうなるんだよ!?」

 

 

じりじりと間合いを詰めてやると馬鹿共は慌てて逃げて行った、まったく遅咲きの桜を見に来ている他の花見客に迷惑だろうに……。

 

そう思いながら捕まえに行こうと腰を上げた時、彼のお母さんから話しかけられた。

 

「千冬ちゃん、私の分まであのバカしばき倒して来て良いわよ?」

 

「あの、この場合普通止めるのでは……」

 

「私の説教には反抗的だもの、あの子」

 

 

ふん、と鼻を鳴らしながらお茶を飲む彼のお母さん、厳しい人だと思った矢先に今度はお父さんの方がボソッと呟いた。

 

「ほら、千冬ちゃんがあの子を追いかけてくれたら俺と二人き––––」

 

 

この発言の途中で彼のお父さんは高速のボディブローを叩き込まれていた、なるほどあの馬鹿は父親譲りか……。

 

「分かりましたお母さん、お母さんの分まで躾けて来ます」

 

私はそう言って夫婦水入らずの状況にする為に馬鹿共の追跡に向かう、決して顔を真っ赤にして言い訳をしているお母さんに居た堪れなくなった訳じゃないぞ?

 

ああ、ついでにもう一人の馬鹿()も躾けないとな、人をからかう事が何を招くのかと言う事をな……。

 






現在アンケートの状況は技術者ルートが71票、操縦者ルートが28票でした。

ルート外の意見は無効票とさせて頂いてますが、参考させて貰ってます。

参加して頂いた皆様ご協力感謝いたします。

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

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