特に変わった事も無く冬休みになったある日の事、母さんが商店街のくじ引きで高級なお肉を当ててきたらしく夕飯に鍋をやる事になった。
んで偶々俺の宿題を手伝ってくれてた篠ノ之と織斑も一緒に食べる事になったんだけどさ、今俺は横に座った織斑に箸の持ち方が悪いって怒られてる。
「ほら、箸はこうやって持つんだ」
「……なんか母さんが二人になった気分」
「何か言ったか?」
「なんでもないでーす」
前から母さんにも箸の持ち方が違うって言われてたんだけど、まさか織斑にも指摘されるとは思わなかった。
しかも手を握られながら持ち方を教えられてるから適当に流す事もできねー、ちくしょうメシくらい好きに食わせろよ。
「あっさんぼー!! お前その肉俺が食おうと思ってたのに!!」
「は? 早い者勝ちだろ? つかそもそも私お客様だし? 箸の持ち方が悪い君が悪いんじゃないの?」
「むーっ、俺さっきから全然肉食えてねーんだぞ!!」
「ふーん、なら食べさせてやろうか? ほらあーん」
そう言って篠ノ之は掴んでたお肉を俺の前に差し出して来た、やった食わせてくれるんだな?
俺はあーんと口を開けたまま肉が来ることを待ってたんだけど、篠ノ之の奴俺の口には入れずに自分の口に入れてドヤ顔しながら肉食いやがった。
「––––なーんて、すると思う? 残念でした〜お肉は束さんが美味しくいただきました〜」
「おまっ!? ずりーぞさんぼー!! 期待させるだけ期待させやがって!!」
「お前ら食事くらい静かに出来ないのか……」
箸の持ち方を教えてくれていた織斑がそんなため息を吐いてたけど、俺の様子を見かねたのか自分の器によそってた肉を俺にくれた。
ああ、織斑ってやっぱいい奴だなぁ。
そんな事を考えながら貰ったお肉を食いつつ、つみれとか肉団子とか好きな具ばかり取ってたら途中から織斑に野菜を器に入れられた。
「あれ? ししょー? これ俺の器だよ?」
「肉ばかりじゃなく野菜も食べろ」
「えー、せっかくのお鍋なのに?」
「せっかくの鍋だからこそだ、偏食は身体に悪い」
ジトッと俺の方を睨む織斑、一瞬口答えしようと思ったけど目が本気だったから仕方なく野菜も口に入れたんだけど、そしたら今度は篠ノ之に熱々の豆腐を器によそわれた。
「……なあさんぼー、豆腐ってさ? 超あっついじゃん? なんでもりもり盛ってんの?」
「肉ばっか食ってるから私もよそってやったんだよ、嬉しいでしょ?」
「うれしくねーよ!?」
鍋の豆腐って熱すぎて飲み込むのが辛いんだよ、味も熱さでわかんねーし?
けど器の中の具を戻すのはダメだしなぁ、しゃーねーけど食うしかねーか……。
俺は仕方なく豆腐をふーふーしながら食べてたんだけど、食べきったと思ったら織斑と篠ノ之が次々と色んな具を入れてくるもんで結局好きなように食えなかったし、食わされ過ぎた。
……これが飯テロって奴か?
「おばさん、ごちそーさま」
「ご馳走さまです、お母さん」
「お、おまえら、覚えてろよ? ……うっぷ」
俺は腹一杯食わされた二人に恨み言を言いながらソファーに横たわり、テレビのリモコンを操作してチャンネルを変えて気分を紛らわせてた。
篠ノ之はすっかり我が物顔で家の冷蔵庫から例のコーラもどきを取り出してコップに注いでるし、織斑なんか母さんと話しながら洗い物の手伝いしてるから微妙に暇なんだよ。
「本当に良かったんですか? 私達だけ先に夕飯を頂いてしまって」
「別にいいわよ、あの人が帰って来てないし」
「そーそー、母さんは親父と一緒にメシ食いてーだけだから別に気にしなくていーって」
俺がそう言った瞬間、母さんが無言で俺のところまで来て口を引っ張りやがった。
「いひゃいひゃい!! ほーりょふはんはい!!」
「アンタは何時も何時も人を茶化して!! おかげで私が保護者会でどんな目で見られてるのか分かってんの!?」
「いっつつ、アレだろー? 良く友達ん家に遊びに行くとそこのお母さんとかに言われるアレだろー? 確か––––」
「言わんでいい!!」
答えようとしたら拳骨食らった、母さんの中じゃ会話って暴力って読むらしい、親父に言いつけてやる。
てか篠ノ之も織斑も笑ってねーで助けてくれよ、まったく。
この後二人は帰って来た主人公のお父さんが車で家まで送りました。
因みに主人公が怒られてる間、束さんはドクペ飲みながら主人公の横にしれっと座り、ちーちゃんは洗い物を手伝いつつ主人公と母親のやり取りを見て軽く笑ってます。
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ