天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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今回は束さん回、ちーちゃんはお休み。


小学二年生 18

 

俺は今日釣りの気分だったから堤防に座ってのんびり糸を垂らしてたんだけど、今回は珍しい連れが居た。

 

「なんつーか、珍しいなさんぼー? お前が俺の遊びに着いて来るなんてさ」

 

「箒ちゃんに話すネタが無くなったから仕方なく着いて来ただけだから変な勘違いしないでよ」

 

そう言ってふいっと顔を背けた篠ノ之、丁度釣りに行こうと思って色々準備してたところに遊びに来たから誘ったんだけど、今日は思ったよりあっさり着いて来てくれた。

 

何時もなら何か言われてるんだけど、今日はそれも無かったし機嫌が良かったんだろう、多分。

 

ただ今回は釣り道具もあったから歩きで行こうとしたんだけど、『歩きとかヤダ、自転車あるなら乗ってけば良いじゃん』とか言い出したんだよなぁ。

 

……いや、別にいいんだけどさ? 道具があるからちょっと危ないって話したら『ちーちゃんは乗せて私は乗せてくれないんだ、ふーん?』とか言って拗ね始めたから俺の方が大人しく折れた。

 

まぁそんな訳で、朝は普通だった篠ノ之の機嫌もちょっと斜めになっちゃったし、微妙に居心地が悪いんだよねー。

 

「おっ? 釣れた釣れた、さっきよりも大っきなぷぐが釣れたぞー」

 

「……ちぇっ、なんだよさっきから自分ばっか釣っちゃってさ」

 

「ん? なんだよさんぼー、まだ釣れてねーの?」

 

 

空気吸ってどんどん膨らむフグを見ながら思わず篠ノ之の方を見たんだけど、釣り針に付けた餌がまた食われてた。

 

さっきから一匹も釣れてねーから余計にむすっとしてて、余計に話し辛い。

 

「えっとさ、ぽ、ポイント変える?」

 

「イヤ、君が釣れてるのに私が釣れないとかあり得ないから」

 

「でもさ、もう一時間くらい釣れてねーだろ? だからポイント変えて浅いとこで魚見ながら釣りゃいいんじゃ……」

 

「ヤダ!! 絶対ここで釣るもん!! 魚如きにこの束さんが舐められるとかぜっっっったい認めないから!!」

 

 

むっすーっとしながら両手で竿を握る篠ノ之、漫画とかアニメとかで言うプレッシャー見たいなのが出てる気がして俺は何も言えなかった。

 

……そのプレッシャーが魚逃してんじゃね?

うーん、もしそうならその空気をなんとかしたら釣れる様になるんじゃねーかな?

 

てことは篠ノ之の肩の力を抜けばいい訳だ、そーなると……よし。

 

俺は手袋を外してバケツの水に手を突っ込み、手の平を冷えっ冷えにした後に篠ノ之の背中にその冷えた手を突っ込んだ。

 

「ひゃん!?」

 

「おーあったけー」

 

「やっ、ばか、へんたい!!」

 

 

篠ノ之がふくれっ面から元には戻ったけど、その代わりビンタを食らったから俺のほっぺたがジンジンしてて痛い。

 

自分の身体を抱きしめながら涙目でぷるぷる震える篠ノ之、珍しい表情だけどひっぱたかれた痛みで俺も涙目でお揃いだね……。

 

「っつつ、いくらなんでも叩くことねーだろ……」

 

「お、おま、いきなり、へんたいへんたい!!」

 

「悪かったってば、機嫌悪そうだったし楽になってくれりゃいいかなぁって––––おっ? さんぼー引いてるぞ!!」

 

「へっ? あっ、待って!! 私が釣る、釣るから!!」

 

ちょっとした言い争いになりかけたけど、運良く当たりが来たのか篠ノ之の竿が大きくしなる。

 

さっきまで怒ってた篠ノ之も思わず慌てたのか、立ち上がりながらオロオロとしてリールを反対側に巻いてる、そっちじゃ釣れないってば。

 

仕方ないから篠ノ之の後ろに回って、篠ノ之の手を握りながらリールをちゃんとした方向に巻く。

 

それでようやく変な方向に巻いてた事に気が付いたらしく、落ち着いた篠ノ之になんでか肘打ちでぶっ飛ばされた。

 

「おまっ、なんで肘打ち? クッソいてぇんだけど?」

 

「それで済んだだけでマシでしょ!! って、やった釣れた!!」

 

 

お腹を抑えながら転がってた俺の顔の前に篠ノ之の釣った魚が叩きつけられる、良かったなやっと初当たりだ。

 

……けどさ、なんかこの魚小さいけど平べったくて縦になげーんだけど? 顔も厳ついし、よく見ると篠ノ之の釣った小魚に食い付いてるから凶暴な奴じゃね?

 

「って、子供のウツボじゃねーかよ!? びびった、なんちゅーもん釣ってんだ!!」

 

「釣れる魚まで分かる訳ないでしょ馬鹿!! つかせっかく初当たりだし、余韻に浸りたいから黙ってて」

「お前なぁ……まーいいや、機嫌直ったみてーだしそれで良しだな」

 

 

喜んでる篠ノ之への文句を飲み込みふぐとか小魚は海に返してるんだけど、釣ったウツボはあぶねーしなぁ。

 

仕方ねーからちょっと先で船から荷物下ろしてるおっちゃんに海に返して貰うか。

 

 

そんな訳で俺がウツボを海に返して貰おうとオッチャンに話しかけたら漁師の人だったらしく、話してる内に仲良くなったから近くの店でウツボを捌いて料理してくれた。

 

味はそこそこ美味しかったよ? 篠ノ之は『なんか磯臭い……』って言って微妙な表情だったけどね。

 




あれ? 久々に超平和じゃね?(白目

個人的に食べたい魚にランクインしてるウツボ、他にも箱フグとかも食べてみたいですねー。

……ウツボは磯臭いらしいですし、兎さんの口には合わなかった模様(震え声

あっそうそう、ちーちゃんも束さんもまだ恋愛未満の淡い感情だからね?(念押し

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

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