天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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小学三年生 5

 

久々に部屋の掃除をしてたら何故か本棚の裏から昔親父が買ってきた将棋の駒と折りたたまれた板が出て来た。

 

親父の実家に帰った時にじーさんから将棋と囲碁の打ち方を教えて貰ったし、幼稚園の頃は親父としょっちゅう指してたんだよなぁ。

 

やらなくなったのは俺が熱中し過ぎてご飯時も親父を立たせなかったから母さんに禁止されたんだっけか。

 

勝つまでもう一局を繰り返してたら段々ご飯が冷めてった挙句、お腹も減ってなくて残すってのを繰り返してたから母さんが怒るのも無理ねーよな。

 

うーんせっかく見つけたんだし誰かと打ちたいんだけど、親父は帰って来てねーし近所に将棋とか囲碁をやれる様な人いねーからなぁ。

 

隣町まで行けば高校生の知り合いに将棋部の人が居たはずなんだけど、そこまでする気分じゃないし……。

 

いや待てよ? 篠ノ之なら将棋くらい……ってアイツと将棋したらエライ事になるって。

 

……あー思い出したなんでこんなところにしまってたのか、小1の時に『これなら勝てるだろ、年季の違いを教えてやるぜー』ってな感じで篠ノ之ん家に自信満々に持ってってボコボコにされたんだったわ、飛車角金銀落ちで。

 

今考えても何で負けたのか分からん、けどあまりにもショックだったから封印してたやつだこれ、苦い思い出も一緒に出て来るとは思わなかった。

 

 

け、けど今の俺の気分は将棋一択、どーしても打ちたいんだ!!

 

 

「てな訳でししょーん家に来たんだけど、一緒に将棋しよーぜ?」

 

「珍しく玄関から来たと思ったら……また唐突だな」

今回は横着せずに正面から行った、頼み事する立場だし偶にはコッチから行かなきゃね?

 

そんな事を考えつつ織斑の部屋に通して貰った俺は、早速将棋の話をしたんだけど織斑は打ち方を知らないらしい。

 

けどこの辺は想定内、俺は初めから織斑にやり方を教えるつもりで遊びに来たんだからのーぷろぶれむって奴だな!!

 

そもそも織斑って趣味がすくねーからなぁ、漫画とかゲームを貸しちゃいるけど俺はそれくらいしかコイツの趣味知らねーのよ。

 

だから俺の趣味を教えながら一緒にやれたらお互いハッピー、どーよこの完璧な計画!!

 

「じゃあ先ずは駒の種類と動きからだなー」

 

「……普段教える側だからか? 妙に違和感が」

 

「おっと、忘れてたわ」

 

 

人に物を教える時は賢く見える様に玩具の眼鏡を掛けて頭いい人アピールを忘れちゃダメだ、親父も伊達眼鏡?ってのを装着しながら『説明しよう!!』とか言って雑学喋ってるし、俺も良く真似してる。

 

「どう? 似合ってる?」

 

「あ、ああ、良いんじゃないか? 利発そうに見えるぞ?」

 

「おーい、ならなんで目を逸らすんだよー」

 

 

眼鏡をかけて目線合わせたら織斑にそっぽ向かれた、まぁこの反応は初めてじゃないからいいんだけどさぁ……最近女の子の友達にコレやると全然話聞いてくれなくなるんだけど、似合ってねーのかな?

 

まーいいや、大丈夫なのは俺のノリだし? そもそも男友達は態度変わんねーし、気にするほどのもんでもねーか。

 

 

気を取り直した俺はじーさんから教わった事を思い出しながら一通りルールとか指し方を教えていざ実践!!

 

初戦と二戦目は余裕の勝利だった、初めて織斑の口から『……参りました』って言葉が聞けたからすっごい気分良かったんだけど、三戦目からいい感じに粘られ始めて四戦目で負けた。

 

「……つ、詰みです」

 

「ありがとう御座いました」

 

 

あれ? おかしいな? 俺少なくても三年は将棋やってたのになんで今日始めたばっかの織斑に負けたの? やっぱ剣術やってると先読み力が鍛えられるとかか? ……本格的に篠ノ之道場に入門しようかな?

 

いや、でもトータルじゃ勝ってるからへーきへーき、気を取り直して五戦目行くぞー。

 

「これで詰みだな?」

 

「し、ししょー? 待ったは……」

 

「さっき使わなかったか?」

 

「参りました……」

 

 

アレ? さっきより早く詰んだんだけど……俺の手見透かされてね?

 

んで六戦目、コレに勝てばまだ俺は巻き返せると思ってました……。

 

 

「……ししょー、知ってる? 微妙に形がちげーけどその陣形穴熊囲いって言うんだぜ? 田舎のじーちゃんが好きな奴だから俺それだけは知ってんだー」

 

「そうなのか? 何戦かやる内にこうした方が良いんじゃないかと思って組んだんだが……」

 

「うん、でね? 俺じーちゃんにそれやられていっぺんも勝った事ねーんだー」

 

 

……この後、当然ながら俺は勝ち星を拾えなかった。

 

けどその犠牲もあって織斑の趣味に将棋が追加されたらしい、帰り際に『打ちたくなったら家に来い、私ならいつでも相手になってやる』って言われたから気に入ってくれたらしい。

 

次行く時までに穴熊の崩し方調べねーとな……。

 




主人公の将棋好きは父方の祖父が教えてくれたからです、ただ戦術とか考えない感じの純粋に遊んでるタイプの差し方なので飛車角でごり押しとかの指し方です。

しかしちーちゃんは最初の数戦を敢えて捨てて戦術を立てました、その結果辿り着いたのが無自覚穴熊(白目

束さんは割とガチ勢だからよりエグい陣形作るので主人公じゃ勝てません(震え声


……後主人公はおしゃれしたらカッコよくなる系の人、特に伊達眼鏡とかだと普段のギャップもマシマシです。

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

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