なので今回の幕間は兎さん視点です。
––––ある日の事、私は彼の家にお邪魔していた。
というのも、雲一つ無い晴れた休みの日に珍しく電話がかかって来たかと思ったら『てな訳でさんぼー、ちょっと遊びに来いよ』と何時もの様に過程を省略した遊びの誘いを受けたんだよ。
今日はいい天気だからお母さんと一緒に箒ちゃんとお散歩したかったんだけど、アイツがどーしてもって言うから仕方なく私は遊びに行ってあげる事にした訳、別に私が行きたかったからとかちょっとしょんぼりしたアイツが気になったとかじゃないからね?
そんな訳だから渋々しょうがなく、アイツの家に行ったんだけど庭のところに大きな天体望遠鏡が組み立てられてた。
口径の大きいオーソドックスな屈折式の物、作りもしっかりしてるし見るからに高級品だ、多分値段は五万以上すると思う。
「おっ? 来たかさんぼー、庭の物置掃除してたらコレが出てきてさー、せっかくだし月見ようと思って呼んだんだー。早速使って見ようぜ?」
「はぁ? 今お昼前じゃん、星なんて––––」
「おや束ちゃん、来てたのかい?」
「あ、おじさん……その、こ、こんにちわ」
何時もの口調で彼に返事をしようとしたら彼のお父さんが物置の中からひょっこりと顔を出して来た、この人も彼と同じで割とふわふわしてて調子が狂うんだよね。
彼のお父さんは肩に掛けたタオルで汗を拭いながら私のところまで来ると、しゃがんで目線を合わせながら彼の浮かべる笑顔と似た笑みを浮かべながら望遠鏡を指差した。
「ところで束ちゃん、実は朝からでもお星様は見えるんだよ?」
「えっ?」
「えっ? マジで? 親父マジで星見えんの? 俺割とツッコミ待ちだったんだけど!?」
「はっはっはー、天体観測は夜ばかりじゃないんだよー? 今日くらい晴れ渡ってたら月くらいなら見れるんじゃないかな?」
そう言って彼のお父さんは携帯を取り出すと、月の位置を検索したのか天体望遠鏡を弄り始めた。
彼は横で子犬みたいに忙しなく動いて凄く待ち遠しそうだったけど、調整が終わったのか彼のお父さんは『太陽を見ないようにね?』と言いながらちょいちょいとレンズを指差す。
先に見せてくれるっぽいからレンズを覗いたんだけど、––––私はこの時に見た光景を一生忘れないと思う。
月の模様が鮮明に見える、晴れ渡った空と高性能な天体望遠鏡だからこその光景。夜に見ればもっともっとはっきりと見えるんだろうけどお昼からでも宇宙が見えた事に感動したんだ。
本やネットを探せば知識として知る事は出来ただろう、しかしそれは知ってるだけで実際に見たときの感動までは手に入らない。
本やネットでの知識しかなかった宇宙が急に身近な物に感じて、言葉に表せない程の感動が私の胸に広がった。
「なー親父、こんなもんなんで家にあんの?」
「これはお父さんが大学生の頃に天体観測が趣味の知り合いから譲って貰ったんだよ、もっと高性能な奴に買い換えるからってね? あぁそうだ、二人ともちょっと待っててね?」
私が昼間の天体観測と言う新しい体験に心を奪われていた間に後ろで彼と彼のお父さんがそんな話をしていたらしく、気が付いたらおじさんが古いアルバムを持って来ていた。
「コレはその人が撮影した写真でね、お父さんもコレを見て天体観測に興味が出たんだよ? 学生の頃は良く母さんを誘って星を見てたなぁ」
「親父、んなどーでもいい話しなくていいから早く写真ぷりーず」
「まったく……はいどうぞ、ちゃんと縁側に座って束ちゃんと一緒に見るんだよ? お父さんはジュース持ってくるから」
そう言ってアルバムを私達に手渡した彼のお父さんは、そのまま台所に向かって行った。
彼は私の手を引いて縁側に座るとアルバムを開きながら、相変わらず語彙力の無い褒め言葉を言って一枚一枚を眺めてる。
私も興奮の覚めない内だったからアルバムの写真を見つつ、星座や星の名前を一つ一つ彼に説明したり由来の話をしたりしてしまった…………その、友達だからね。
昼間でも天体観測が出来ると知ったから書きました(震え声
完全に専門外の部分なので決定的な矛盾があれば修正します。
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ