天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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本日三度目の投稿。

兎さん視点回、残念ながらまだデレは無い。


幕間:兎から見た馬鹿

 

––––私の右の席にはとんでもない馬鹿が居る。

 

 

 ちーちゃんと別のクラスだったから毎日が苦痛で仕方ない中でソイツは特別嫌いな男。

 

 毎日毎日色んな奴に話しかけて、アホな事を言って、ヘラヘラとした私と真逆の人間、元々興味が無かったから気にも止めてなかったのに、最近になって矢鱈と話しかけてくるから嫌でも覚えてしまった。

 

 何度も何度も罵倒してもめげずに話しかけてくるし、肉体的な嫌がらせをしても無意味、その結果なにを思ったのか例のラブレターだ。

 ちーちゃんと帰る時にひらりと落ちたそれは、よりによってちーちゃんに拾われ、見た事も無いような良い笑顔で『ラブレターだぞ束!!』と私に手渡されて困惑した事を覚えてる。

 

『いやはや、私も実物を目にするのは初めてだ、中身に興味はあるが他人が横から盗み見る物でもあるまい、私は先に道場に行ってるから返事は返すんだぞ』とちーちゃんは変な勘違いをして行っちゃったから、嫌々ながらも読むしか無く、こんな目に遭わせた馬鹿を殺したくなった。

 

 内容はベタなラブレター、しかも文法の誤りや誤字脱字が多くて無駄にストレスが溜まるだけの物。

 

 差出人の名前なんて見なくても直ぐに分かった、こんな頭の悪いクソみたいな文章を考えられるのはあの馬鹿以外に居ない。

 

 当然報復はしたけれど、元々私は忍耐強い人間じゃないから今回の件で遂にキレてしまった。

 

 …………今まで良く堪えてたのが不思議なくらい頭の中に血が上ってたと思う。

 

 

 襟を掴んで持ち上げて、コイツが死んでも良いやって気持ちで締め上げてやったのに、よっぽど馬鹿なのかそれでも友達になるって言ってきたのは本気で呆れたよ。

 

 同時に思った、この手の馬鹿には何をやっても無駄だって。

 

 だから諦めてこの馬鹿の言う『トモダチ』とやらを好きにやらせてやる事に決めた、私からは何もしてやらないし、勝手に好きにしてれば良い。

 

 どーせ、コイツも私がオカシイとか狂ってるとか、良く理解しようともしない癖にそんな事を言って離れて行くんだろう、何時もの事だ。

 

––––そう思ってたのに、コイツは一瞬垣間見た筈の私の異常性を忘れた様にヘラヘラと毎日話しかけてくる。

 

 あのアニメが面白かったとか、俺はこの野菜が嫌いだとか、身にならない無駄な話ばっかり。

 

 時間の無駄だし、コイツの無駄話へ反応を返す為だけに脳のリソースを使うのが嫌だったから無視し続けても当たり前の様に話しかけてくる。

 

 

「なーなー、篠ノ之ー? 石の上にも万年……だったよな?」

 

「一生座ってたらいいんじゃないかな、君の頭だったら三年じゃ足りないからそれくらいは必要だと思うよ?」

 

「おー、三年だったのかー、やさしーな篠ノ之」

 

 

 イヤミを言ってもコレだ、今日は宿題を持って帰るのを忘れたとか何とか言ってた様な気がする。

 

 『二限目が始まるまでに終わらせる』なんて意気込んでるが、二問に一問の間隔で私に答えを聞いてくるから鬱陶しいなんてレベルじゃない。

 

「なー篠ノ之、仏の顔もサンドバッグ……でいーんだよな? なんかちょっと違う気がするけど」

 

「……日本の諺になんで横文字が出て来るんだよ、それこそ君の顔をサンドバッグにするぞ」

 

 

 八割正解なのになんでそうなる、天才のこの私にもこの男の発想が分からない。

 

 この間も理科の授業で泥棒草の事をタンポポの種が飛ばずに枯れた物だと頑なに信じてたし、非常におめでたい頭をしてるんだろう。

 

 しかも答えに詰まったり、分からない事があると教師じゃなくて横にいる私に遠慮なく聞きに来る、おかげでお昼休みにちーちゃんに会いに行くまでの退屈な時間が無くなった。

 

 ……まぁ、悪い意味でだけど。

 

「なーなー篠ノ之、しゅくだい出来たから見てくれよ」

 

 そんな事を考えたら馬鹿が何か言ってきた、何でわざわざ私が宿題の答えを確認しなきゃならないんだろうか?

 

 しかしココで断ってもこの男は絶対に食い下がって来るので、その分絡まれるから大人しく見てやった方が早い。

 

 

「はぁ……ホラ、見せなよ」

 

「ほい、どーよ?」

 

 確認した内容は諺の宿題にも関わらず『五十歩(キャット)』に『壁に耳あり(正直メアリー)』と言った訳の分からない回答が書いてあった。

 

「…………君は数秒前に私が言った言葉すら忘れるほど頭が悪いんだね? ある意味凄い才能だよ? 少なくとも束さんには出来ないし」

 

「いやぁ、それほどでも無いかなぁ?」

 

 この反応、もしかしなくても馬鹿にされてるんだろうか?

 

 イラッとした私はそのまま間違いを訂正してやらず、その宿題を彼に返してやった。

 

 案の定彼は意気揚々とその宿題を提出し、教師に片っ端からツッコミを入れられる。

 

––––ま、今日もちーちゃんとの話のタネになるマヌケな姿が見れたからそれで溜飲下げるとしよう。

 




主人公からドラえもん扱いを受ける束さん、そして何してもしつこく食い下がるから諦めてそれを受け入れた束さんでした。

まだ態度も内心も塩対応です。

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

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