––––俺がどう慰めたら良いのか分からないままでいたらいつの間にか織斑は泣き止んでた。
泣いてる子を慰める事自体は何回か経験があるんだけど、相手が織斑だったから驚きの方が勝っちゃって、全然なにも出来なかったのが悔しい。
そんな事を思ってたけど、なんでか泣き止んだ筈の織斑が中々俺の胸から顔を離さない、一夏くんも不思議そうな顔してるしどうしたんだろ?
「えっとさ……ししょー? 泣き止んだならそろそろ離れてくんない? 一夏くんも不思議がってるしさ」
「……私もそれは分かってるんだ、分かってるんだが」
「どったの? まだ泣き足りねーの?」
「いや、その、今お前の顔を見るのが恥ずかしいんだ……」
恥ずかしそうに俺の服に顔を押し当てながら若干上目遣いでそう言う織斑に、何故か俺も恥ずかしくなっちゃって思いっきりそっぽを向いちゃった、普段良く顔見て話してるのになんでだろ?
あ、でもそっぽ向いたまま話するのも失礼だよなぁ、けどなんか俺の方も織斑の顔見るの恥ずかしいしちょっとチラ見して慣れよう、うん。
そんな風にチラッと見たら織斑は若干まだ涙目だったから、取り敢えず指先で涙を拭ってから肩を掴んで俺から引き離したんだけど、何話したら良いのかわかんねーけどなんとか励まさねーとな!!
「あーえーっと、その……さ? なんて言ったらいいのかわかんねーけど、うん俺が居るから大丈夫だって!!」
とか言ってから思った、俺そんなに言うほど何か出来たっけ? 確かに釣りとか楽器とか色々やってるけど、下手の……横綱? だっけ? 篠ノ之に良く『上中下で表すなら中に毛が生えたレベル』って言われる程度だし、思ったより頼りにならねーじゃん。
「いや、悪りぃ!! 今の無し!! 俺あんま頼りになんねーからさ、えーっとさんぼーとか親父とかいっぱい居るから大丈夫だってば!!」
慌ててそんな風に言い直したんだけど、織斑は静かに顔を横に振って『それは違うぞ』って言った。
「お前は自分で思っている以上に頼りにはなる、確かに勉強や運動はアレだがな?」
「いやその二つがダメならダメじゃん!!」
「そう思うかもしれないが、お前には不思議な雰囲気があるんだ、それだけで十分頼りになる男だよ」
……どーしよ? 俺褒められ慣れてねーからさっき以上に恥ずかしい、てか織斑も言った後そっぽ向いて黙っちゃったしどーしたらのかなこの雰囲気。
何か別の話でもするか? うーんでも、色々頭がこんがらがって何にも思い浮かばない、スキーの話とかはもうしちゃったし、泊まった旅館の話? 無理だって俺旅館で話膨らませらんないってば!!
俺も織斑もだまーったままでいた時、ふと視界の端に一夏くんの姿が映った––––クレヨンを口に入れようとしてる姿が。
「ストーップ!! ストップ!! 一夏くんそれは食べちゃダメな奴!!」
「はっ!? ま、待て待て慌てるな、それはえっと、あれだ!! 食べても大丈夫なクレヨンだったはずだから一夏が口にしてもだな!!」
「いやいやいや!! アウトだってば!! 食べても大丈夫ってのは食べられるって意味じゃねーからな!? 俺しってっから!?」
「そ、そうだな!! 冷静になれ私……よし、一夏クレヨンを一旦床に置こう、それかぽいするんだ」
「そうだよ一夏くん? ね? お兄ちゃんに渡してくれるかなー?」
俺たち二人はさっきの居心地の悪さなんか吹っ飛ばして一夏くんに近寄ったんだけど、一夏くんは何を勘違いしたのかにへらと笑った後『あい!!』って言いながら俺たちに黒と青のクレヨンを渡して来た。
…………違う、そうじゃないって!!
ハッ!? 待てよ、このまま紙かなんかにお絵かきに移れば一夏くんが口にクレヨン入れる事も無いし話題も出来てみんなハッピー、良しこれだ!!
「ししょー!! スケッチブックか自由帳を持って来て一夏くんとお絵か––––待って一夏くん、それはカーペットだから落書きしちゃダメだってば!! お絵かきはもうちょっとまってぇ!?」
「と、取り敢えず何か紙を持って来るから待っててくれ、…………後は掃除道具もな」
「……なーししょー、俺たちが何にも出来ないんじゃなくて一夏くんが特別やんちゃなだけなんじゃね?」
「…………そうかも知れないな」
結局この後、俺たちは散々一夏くんに振り回されたんだけど、一緒に遊んだり後片付けをしたりしてる間に織斑も何時もの調子に戻って安心したよ、ほんと。
一夏くん最強説(白目
前回がシリアスだったから今回で相殺……出来たかな?
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
-
MF文庫J
-
オーバーラップ