篠ノ之とコミニュケーションが取れる様になってから大体一ヶ月くらい経った。
最初の内は暴言に心がやられそうになったんだけど、きっと人との距離感が測り辛いだけなんだろうと考えたら、あんまり気にならなくなった。
「はーい、じゃあ来週にある運動会の種目決めやるぞー」
この言葉の通り来週には運動会がある、初めてなので俺もみんなも緊張してるが、目指すは勿論学年優勝!!
委員長の俺は先生に種目決めを任されたので黒板の前に立ち、リレーや短距離走なんかの出場者の名前をチョークで書いて貰う、無理矢理補佐に付けた篠ノ之に。
「なんでこの私が……」
「いや、俺の字が下手だって散々馬鹿にしたのはお前だろ?」
宿題を見て貰ってると毎回毎回『ミミズがのたくったような字だね』とか、『猿でももう少し上手な字が書けるのにねぇ』とか一言多い事を言って来たからその意趣返しだ。
ふははははっ!! どーだ篠ノ之、他人からの視線が嫌いだろう? この一番目立つ先頭に立ったお前はまさに
そんな考えを読まれたのか篠ノ之からめっちゃ鋭い目で睨まれた、やっぱニュータイプだろコイツ。
「君、今失礼な事を考えただろ?」
「なんで分かったのよ? やっぱニュータイプなのか!?」
「分かりたくは無いけど表情筋の動きを見れば分かるよ、君のは特にね。だからそんな訳の分からないモノに私をカテゴリーするのやめてくんない?」
その言葉と共に枯れた枝の様な音を立てて折れるチョーク、うーんやっぱコイツの握力やべーな、この間スチール缶を握り潰してたしあんまりからかうのはよそう。
自分の身の危険を感じた俺は真面目にやる事に決めて各種目に人を振り分けて行く、篠ノ之も人の顔を覚えては居ないらしいけど、俺が一人一人の名前を告げてやると大人しく書いてくれる。
こうして見るとやっぱ篠ノ之は悪い奴じゃないなと思うんだよなぁ、周りが必要以上に怯え過ぎっつーか、なんつーか、普通に接すりゃ大丈夫なのになぁ。
そんな思いと共に篠ノ之の横顔を覗いていたら俺はある事に気が付いた。
「おー、篠ノ之ってよそーより字が上手だな」
「馬鹿にしてんの? 君の悪筆に比べたら誰だって上手でしょ?」
「確かに俺は字が下手だけどいーすぎじゃね?、まぁいーやそれよりもいっこいーか?」
「何さ?」
「…………なんで俺の名前が全種目に入ってんの? おかしくね?」
しかも全部一番初めに書かれてる、あまりにも淡々と書いてたもんだから全く気が付かなかった。
「君なら出来ると思うんだよねー、何せこのクラスの
「ま、まー確かに? いいんちょーだし? クラスのリーダーっちゃリーダーだけど? それほどでもあるのかな?」
「そうそう、だから全種目に出場するのは普通だし、リーダーにしか出来ない事だから一番目立つのは間違いないね」
いやーでもそうかぁ!! 俺はこのクラスのリーダーなんだもんな!! 全種目出るのもリーダーの務めだもんねー!!
なんか横で篠ノ之が『……単純な奴』とかなんとか言ってた様な気がするけど気の所為だよな? まっ、細かい事を気にしてちゃダメだしどーでも良いか。
『よーしお前ら全員俺に付いてこーい!!』とか言って結局そのまま決定しちゃったけど、何となくなにかがおかしい気がしたので放課後に帰る前に篠ノ之に聞いてみた、俺より頭いいし多分何がおかしいのか分かるだろう。
「なぁ篠ノ之、なんかごまかされた様な気がするんだけど、実際どーなの?」
「さぁ? そう思うならそうかもしれないし、もしかしたら違うかもよ? まぁ好きな様に解釈すると良いさ」
「…………つまり俺ならイケるって訳なんだな!?」
取り敢えずよく分からなかったからそう言う事にしとこう、つまりさっきのアレは篠ノ之なりのエールって訳か。
よーしなら頑張るぞー、すっげぇ小馬鹿にされた目されてるけど、まぁ何時もの事だから気にしたら負けだ。
そもそもエールを送ってくれたと言う事は少なくとも友情を感じてくれてる筈、ならその友情に答えるしか無い。
ふっふっふ、はーっはっはっは!! 見てろよ篠ノ之!! 俺の活躍をその目にしかと刻み込んでやるからな!!
リーダーと言う単語に弱い主人公、兎さんの嫌がらせに簡単に丸め込まれてしまいました(白目
でも残念ながら体育祭にはもう一人の天災が出るのでどうあがいても目立てないんだよなぁ……。
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ