今日は春らしいぽかぽかした日だったから遊びに行くつもりだったんだけど、その前に母さんにとっ捕まって家事の手伝いをさせられてた。
『そろそろアンタも洗濯物の取り込みとか掃除くらい自分でやれるようになさいな』って言われたから一応真面目にやってた筈だったのに、気が付いたら縁側で畳んでたバスタオルに倒れ込むようにして爆睡してたみたい。
んで目が覚めたら何故か千冬が俺の寝顔覗いてた、流石に寝顔マジマジ見られるのは恥ずかしいんだけど……。
母さんが掃除機をかける音が聞こえてるから多分母さんが家に上げたんだろう、偶々家の前通りかかったとかで声でも掛けたのかな?
「ちゅー訳で千冬さんや、何して遊ぶよ?」
「寝起きの第一声がそれでいいのか……?」
「んー? でもそれしか無くね? 他に何かある?」
俺としては答えが出てるからなぁ、だから何するか聞いたんだけど千冬はその返事が割と予想外だったらしい、なんとも表現しづらい顔で俺の事を見てちょっと考える素振りを見せた。
「例えば私がここにいる理由とかだ、むしろ真っ先に聞く事じゃないのか?」
「母さんだろ?」
「……頼むからもう少し言葉を足してくれ、頭の中の過程をすっ飛ばして会話するんじゃない、私は束の様に脳内補完なんぞ出来ん」
「あはは、悪い悪い」
頭を掻きながらそんな風に謝ったけど、特に否定も訂正もされ無かったから多分正解だったんだろう、付け加えるなら千冬の服が私服だったのと稽古道具を持って来た様子が無かったから一夏くんとの散歩中だったのかな?
そう思って周りをざっと見回すとリビングの方でジュースを飲んでる一夏くんを見つけたのでとりあえず手を振って挨拶してみる。
「へーいいっくん!!」
「へーい!!」
「お散歩ー?」
「うん!!」
「あったかいねー」
「ねー!!」
ぴっと手を挙げながらそう返事する一夏くん、最近は色々と好奇心が出始めたのか良く千冬を連れ回してる姿を見かけるんだよなぁ、あの千冬が振り回される姿はなかなか新鮮だ。
お姉ちゃんは大変だなぁと思ったけど、今までの事を考えると変な同情してるみたいであんまりそう言う事も言いにくい、友達に言う様な言葉じゃない様に感じるからとりあえず親指を立てて笑っとこう。
「いや、いきなり親指立てられても分からないんだが」
「ん? まぁなんでもいいじゃん、それより外行こうぜ外!! 散歩の途中だったんだろ? 公園でブランコ乗ろう、ジュース飲み終わった一夏くんも暇そうだしゴーだ!!」
見れば椅子に座った足がブラブラしてるし暇な合図っぽいからね、洗濯物も寝てる間に千冬が畳んでくれてたのか片付いてるし遊びに行ってもオッケーな筈。
てな訳で二人を連れて外へ出た俺は公園に行ったんだけど、良い天気で風も強くないからか沢山人が居た。
コレが公園デビューって奴か……。
「てことは俺がお父さんで千冬がお母さんなのか?」
「なんの話だ?」
「ほら、一夏くんの公園デビューじゃん」
「私は姉だからむしろお前は兄なんじゃないか? 少なくとも親……では無いだろう」
「うーん、じゃあどっちが上なんだ? 俺たち」
「お前が兄? ふわふわし過ぎで似合わん、寧ろ弟だな」
「えーっ、俺が兄だろ? 誕生日は俺の方が先だし? ちょっとだけお兄ちゃんだからな!!」
『はっはっは!!さぁ甘えてごらん?』とか言って高笑いしてたら一夏くんに袖を引かれて砂場の滑り台まで連れてかれた。
今日の主役をほったらかしにするのは悪かったなぁと思って一緒に滑ろうと思ったんだけど、よく見たら周りに知り合いが何人かいるし、その連中も漫画を貸したり借りたりする様な子達だったからある事が出来るのを思い出した。
だから俺は一緒に滑る役を千冬に交代してその子達に話しかけて、ちょっとしたお願いをした後滑り台の下で一夏くんを待ち構える。
んで、千冬が背後から抱き抱える様にして一夏くんと一緒に滑り降りた段階である漫画に出てくる特戦隊のポーズを全員で取った。
四人が隊員のポーズ、俺が隊長のポーズ、そして俺たちの後ろにいる一人がBGM担当という完璧な作戦で俺は大満足。
…………凄く嬉しそうな顔をしてる一夏くんとは正反対になんとも言え無い顔をした千冬とか、調子乗って他の漫画の必殺ポーズとか変身シーンとかの真似をしまくってヘトヘトになったりとかは予想外だったけどね。
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
-
MF文庫J
-
オーバーラップ