……夏ってなんで暑いんだろーなー。
ジリジリと太陽から遠火で焼かれてる様な真夏日、今日は熱中症だか日射病の危険があるだとかで稽古が休みになった。
流石の俺も外で遊ぶ気にならない暑さだから縁側で寝そべって部屋に置いてある扇風機の風を浴びてたんだけど、実を言うと今日はもう二人ここに居る。
「なー、なんでわざわざこんな日に遊びに来たんだー?」
「うっさいなぁ、こんなに暑くなるとか思わなかったのー、知ってたら来なかったってのー」
だらんと俺と同じ様にうつ伏せで扇風機に当たる束、携帯番号教えたはずなのに家まで来て稽古が休みなのを教えてくれたんだけど、そのまま遊ぶ気だったのか箒ちゃんも連れて来てる。
んでその肝心の箒ちゃんは扇風機のど真ん前という特等席でカップアイスを食べてる、口元がべたべたなのはご愛嬌って奴だね。
「たばねー、あの太陽暑過ぎるから何とかしてくれよー」
「えー? めんどいからヤダー」
「じゃあこのままこんがりウェルダン?」
「日焼け止め塗ってるからへーき」
「ずっこいぞー」
なんだろう、暑過ぎて俺も束も会話がだらだらしてていつも以上になにも考えずに口が動いてる。
「なーたばねー、服脱いだら涼しくなるんじゃねー?」
「何? 私を脱がしたいの? へんたい」
「ごめん、なんかテキトー言ってたわ」
「普段からテキトー言ってるよ、君」
ジトっとした目付きで俺を睨み出す束、まずい事言ったなぁとは思ったけど、束はあんまり気にしてないのかコロコロと横に転がって行って部屋に置いてた本を拾ったらしく、ペラペラとページを捲る音が聞こえる。
「何コレ、伝記?」
「おー、学校の図書館から借りた奴、何だっけか……確かファンブル昆虫記だっけ?」
「……どんな昆虫記だよそれ? ファーブルでしょファーブル、
「ほえー、流石束ちゃん、勉強になったなー」
「ちゃん付けすんなブン殴るぞ」
そんなこと言いながらもこっちを見る事無く束は俺の借りて来た本を読み始める、暇だから流し読みしてるって感じだけどそうなると俺が暇になるんだよなぁ。
そんな風に思いながらうつ伏せになってたら、母さんが来た。
「ほら二人とも冷やしたスイカあげるからダラダラしないの」
「ありがとーおばさん」
「ありがとー母さん」
二人揃ってダラダラ立ち上がりながら縁側に並んでスイカを食べる。
正直暑さに参ってたけど、母さんが庭に水撒いたり俺らの足元に水と氷を入れたタライを置いてくれたので大分涼しくなってきた、背中に扇風機も当たるしね。
「ほい束」
「ん」
俺はスイカに何もかけないんだけど束は塩をかけて食べる、母さんもちゃんとそれを分かって用意してくれてるので束に塩を手渡しながらスイカの種を庭に飛ばす。
適当に飛ばしたんだけど、それなりに飛んだから中々良い記録なんじゃないだろうか?とか考えてたら視界の左からスイカの種が飛んで来た。
しかもその種は俺の飛ばした奴のちょうど真上に落ちてて、ちらっと束を見ると勝ち誇ったような顔で俺を見ている。
俺はその顔に反応しないようにしながら二発目を飛ばして束の種よりも先に落として勝ち誇った顔を仕返してやったけど、鼻で笑った束にあっさりと抜き返される。
……なるへそなるへそ。 とーぜんの話、これは戦争だ。
その後当たり前の様に俺と束の種飛ばし勝負が始まったんだけど、後一歩のところで箒ちゃんがえらく不満そうな顔をしてる事に俺も束も気が付き、一旦種飛ばしをやめる。
「あ、あれ? どーしたのかなほーきちゃん? ほ、ほら束お姉ちゃんだよー?」
「…………ねーさんきらい」
「き、きら、い?」
プイッと横を向いた箒ちゃんの態度にショックを受けたのか、束はふらっと後ろに倒れそうになった。
慌てて手を伸ばして背中を支えたんだけど小声でぶつぶつと『箒ちゃんに嫌われた箒ちゃんに嫌われた箒ちゃんに嫌われた––––』と言ってて揺さぶっても話しかけても反応が無い。
とりあえず箒ちゃんが何をそんなに怒ってるのか気になって見てみたら、俺たちのスイカと自分のスイカをチラチラと見比べてるのが分かる。
あー、うん、あれだ、箒ちゃんのスイカは束が全力で種取っちゃってるんだった、それなのに横で種飛ばして遊んでたら機嫌悪くなるよね。
それならと、俺は束のスイカを箒ちゃんに渡して種入りの果肉を食べさせてあげたんだけど、もぐもぐと口を動かしていた箒ちゃんは最初こそ嬉しそうな顔をしてたのに途中からどのタイミングで種を飛ばせばいいのか分からなくなったのか、涙目で口を押さえながらおろおろし始めた。
んで困った箒ちゃんは口を押さえながら束のところに行ったんだけど、その瞬間束はぶつぶつモードから復活した後、箒ちゃんを落ち着かせながらゆっくりと果肉だけを飲み込ませて姉の威厳?を取り戻したっぽい。
箒ちゃんを落ち着かせながらゆっくりと果肉だけを飲み込ませて姉の威厳?を取り戻したっぽい。
その後、無事仲直りした二人と一緒に俺はまた種飛ばし大会を始めたんだけど、束が目線だけで『箒ちゃんの奴より遠くに飛ばすなよ?』って睨むもんだから実質箒ちゃんの一人勝ちだった。
ふと、大人編のネタをストックしてる最中に思い付いたのですが、オータムが主人公を誘拐しようと接近したは良いものの、人の良さとふわふわした人柄の所為で中々誘拐できず普通の付き合いのまま何回か接触を重ねてるうちに段々と絆されて、香水とか服の趣味とかを主人公に合わせ出す様になり、スコールとド修羅場になるってのを思い付いたんですが、最終的なヒロインは束か千冬と決めてるので後が続かない悲しみ。
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ