一応同時投稿にする予定。
セミがミンミン鳴きまくってる中、二枚重ねにした扇子で自分を扇ぎながら親父の店へ忘れ物を届けに行っていた。
なんか親父の話だと大学の時の友達に宇宙開発に燃えてる人が居て、その人に頼まれてフランスだったかドイツだったかに落ちた隕石を貰って来たとか言ってたんだけど、肝心な物忘れるとかおっちょこちょいだなぁ。
そんな事を思いながら俺は鞄を開けて、ついでにって言って母さんが態々作り直した出来たてほかほか弁当の横に入れた透明なプラスチックの容器に入った隕石を取り出して眺めてみる。
蜂の巣みたいな表現の難しい黄色の隕石の欠片、太陽に透かすと金色に光るそれは容器に入る程度の大きさだけどズシリと手にくる重さが隕石らしくてかっこいい、確か……何だっけ?名前があったんだけど思い出せねー。
丁度親父がコレを持って来たのが昨日の三時ぐらいだったんだよなぁ、んで種飛ばしで遊んでた束がビックリするぐらいの速さで親父に近寄ったかと思うと、自慢するみたいに持って来た隕石を見ながら『おじさん!! おじさん!! これってパラサイトだよね!? 地球に落ちて来た奴の中でも1%しか存在しない奴だよね!? 凄い、凄い!! 実物なんて初めて見た!! う〜んこの感じだとフカン隕石? この地球外物質って感じが良いよね!! ね!? おじさんもそう思うでしょ!? ほらほら君もスイカ置いといてコッチに来なよ私がコレ説明してあげるから!! ほら早く早く!! 箒ちゃんもおいで〜』とか言って俺と箒ちゃんを引っ張った後、一時間近く喋りっぱなしだった。
もちろん俺も箒ちゃんも二人揃って話してる内容がちんぷんかんぷんで、楽しそうに隕石や宇宙の星の事を語る束を見てる事しか出来なかったんだよなぁ。
隕石を見てた俺は束の超早口の解説を思い出しながら歩いてたんだけど、よそ見をしてたからか誰かとぶつかってしまった。
「おっと、ごめんなさい怪我はないですか?––––って千冬と一夏くんか、大丈夫?」
「ん? 大丈夫だ、軽くぶつかっただけだからな。それよりもお前がよそ見して歩くのは珍しいな? 何か気になるものでもあるのか?」
そう言って一夏くんとお揃いの麦わら帽子を被った千冬は俺の手元に視線を向ける、隠す事でも無いし教えようと思ったんだけど、服の裾を引かれたの先に一夏くんの方を見る。
するとそこには冷えピタで暑さ対策してる一夏くんが『よっ!!』と言いながら手をビシッと挙げていた。
「よっ!! 一夏くん今日もカッコいいねー」
「えへへー」
「あ、そうそう千冬さんや、俺が眺めてたコレ隕石ね」
「…………束のあのマシンガントークはコレが原因か」
ぼそりと疲れ切った様な声でそう呟く千冬、束だし絶対語りに行ってるとは思ったけどやっぱりな。
多分師範も奥さんも同じ目に遭ってるんじゃ無いかな? 今日朝一で家に来なかったし、多分まだ家で喋り倒してるはず。
そんな事を考えながらそのままバイバイしようと思ったんだけど、折角会ったんだし話し相手も欲しいなぁと思った俺は二人を誘って一緒に親父の店まで行く事にした。
「ここがお前のお父さんの店か」
「おう、すげーだろー?」
「確かに等身大の木彫りの熊が店先に飾ってあったらインパクトはあるな、というか値札が付いてるぞ? アレは売り物なのか?」
首からぶら下げられたパネルには『大特価!! 10000円5000円2500円!!』って書かれてる、よっぽど売れないんだねこれ、前来た時からまた半額になってる。
ぺちぺちと珍しそうに熊を叩く一夏くんと、値段の下がり方に何度も『大丈夫なのか?』と聞いてくる千冬を連れて中に入った俺はまずレジの人のところに行った。
「いらっしゃーい、って坊ちゃんじゃないか! 何? また店長の忘れもん?」
「うん、隕石と弁当」
「……隕石忘れるとか言うパワーワードよ」
微妙な笑い方のレジの人に鞄ごと渡した俺は珍しそうに店の中をキョロキョロと見回る千冬達の案内をする事にした、もう用事は済んだしね?
「ちゅー訳でかもんべいべー?」
「何故疑問系なんだ? それよりこの店は何なんだ? 古本屋と聞いていたが、本以外が多くて肝心の古本が見当たらないぞ?」
「だよなぁ、俺もこの店で本なんか見た事無いんだよ」
「……本当に本屋なのか、ここは?」
そうため息を吐いた千冬が何気なく手に取ったのは風鈴、ただ普通の丸い風鈴じゃなくて火箸風鈴って言うらしいけどね?
俺も何かないかと適当なものを手に取ったんだけど、昔の戦隊ヒーローの合体ロボットのおもちゃが出て来た、値札に5万とか書いてあるけどぼったくりすぎねぇ?
そんな風に色々見て回りながら三人で歩きまわってたんだけど、一夏くんが本を見つけて俺に持ってきてくれた。
嬉しそうな顔でてててっと近寄って来て『あい!!』と渡してくれたので、千冬と一緒に一夏くんの頭を撫でつつその本を開く。
適当にページを開いたんだけど、中は男の人が女の人の服を脱がしながらちゅーをする絵が描かれていた。
「漫画かなぁ? でも巻数が書いてないし、ざっと見ても色んな漫画が纏まってるからどっちかってーと週刊誌っぽい?」
「それにしてはえらく薄いな、コンビニで見かける様なのだと分厚いのにコレはその逆だ、その上表面がつるつるしてる」
「うーん、どこ捲っても女の人の肌とかばっかだし、もういいや」
そう言って、俺は適当なところにその本を置いて千冬の顔を見たんだけど、何故だかさっきの裸の絵が頭にチラついて思わず目を逸らしてしまった。あれ? なんでだろ?
「む? 私がどうかしたか?」
「い、いや? なんでもねーよ?」
普通にそう返したつもりが妙に声が上ずって恥ずかしかったから扇子を広げて顔を隠したんだけど、千冬はそれが不満だったのか俺を壁に押し付けながら扇子を取った。
「普段人の目を見て話すくせにどうしたんだ一体? 何かあったのか?」
「えっと、なんつーか、その、さ? さっきの裸の絵、あるじゃん?」
「あったな、それがどうかしたか?」
「その、めっちゃ言い辛いんだけどさ? お前の裸、想像しちゃって……」
…………多分、俺の顔は今超赤いと思う。
友達で変な想像するのは良くないけど、千冬の横顔を見た時に思わずそんな風に考えちゃったのは本当だし、ど、どうしよう?
怒られるのかなと思ってチラッと千冬を見たら普通に首を傾げられた。
「見たいのか? 私は別に構わないが––––」
「だ、大丈夫!! 大丈夫だから!! うん!!」
見たいなら見せてやると言わんばかり服を脱ごうとする千冬を止める為の説得は、一夏くんが親父を連れてくるまで続くのだった。
一夏くんはR指定されるコーナーから本を持ってきました(白目
主人公の思春期さんがアップし始めました。
千冬さんの羞恥心が仕事をサボりました。
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ