天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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小学四年生 8

 

その日の俺は稽古が終わった後に箒ちゃんと遊ぼうと思ってたんだけど、その日は珍しく千冬が一夏くんを連れて来てたらしく、二人とも千冬と束の後ろに隠れながらお互いの様子を観察していた。

 

緊張してるっぽいから間に入ってあげたいんだけど、今の俺はゾンビ・オブ・ゾンビ状態で動けないんだよなぁ、束も千冬も竹刀持ったら容赦ねぇんだもんよ。

 

 

暑さと疲労となんやなんやでぐったりしてる俺に気が付いたのに目を逸らす千冬と束、次からは加減してくれると嬉しいんだけどなぁ。

 

そんな思いを込めた目で二人を見ながら扇子で体を扇いでたんだけど、しばらくしたらちびっこ二人が庭の水道から小さなバケツに水を入れて持ってきてくれた。

 

 

「にーさん、はい!!」

 

「にーちゃん、水!!」

 

「ありがとう二人とも!! うーん、すーずしー!!」

 

 

実際は二人が持って来てくれた水はそんなに量が無かったんだけど、庭に出て水を被る分には気持ち良いし、お互いが打ち解けてるのにそんな事を言うのはね?

 

 

「ちゅーわけで、束も千冬もコッチコッチ」

 

「……なんか、悪い顔してない?」

 

「してないしてない」

 

「そうか? 私は特に何も思わないんだが、束の気のせいだろ?」

 

「そーそー、気のせいだって」

 

 

そう言いながら俺は二人を手招きしつつ道場の側に作られた井戸までさりげなく移動して水を汲む。

 

 

「えっと、何してるの?」

 

「えっ? あーほら、井戸水って冷たいじゃん?」

 

「まぁそうだな」

 

「今夏で暑いじゃん? 稽古で汗もかいてるだろ?」

 

「ま、まぁね? ほ、ほら、ちーちゃん、いっくんと箒ちゃんのところに行こっ? ね?」

 

「束? 何をそんなに急いで––––」

 

「だからさぁ、冷や水でも食らいやがれ!!」

 

そんな風に叫びながら二人に向けて井戸から汲んだ桶の水をぶっ掛けた。

 

いや俺は別に怒ってない、けど二人とも稽古の時は遊びが無いから偶にはこんな風に遊んでもバチは当たらないんじゃ無いかな?

 

束は妥協しないから加減が効かないし、千冬は頑固で真面目だから束と同じで手加減とかあんまりしてくれないし、息抜きって絶対要ると思う。

 

だから水浴びでもと思ったんだけど、ぶっかけた後で束がやられたらやり返す女の子だって事を思い出した、ヤベェよ後ろ姿なのにヤル気なのが分かる。

 

 

「ねぇ? めっちゃくちゃ冷たいんだけど?」

「そーか? 夏の暑さ引く井戸水なら暑さの方がお釣りが来るだろ? な、千冬?」

 

「そうだな、ああ確かにお前の言う通り暑さの方が勝っているな。 それはそうとだ」

 

「ん? どったの?」

 

「お前も、暑くないか?」

 

 

千冬はそう言って初めて見る様な良い笑顔を向けてくれたけど口元がヒクついてるから多分怒ってるんだなぁ、その素敵な笑顔はもっと別の時に見たかったかなぁ?

 

とか思ってるうちに顔面に思いっきり桶の水をぶっかけ––––って冷たッ!? えっ? 井戸の中に氷でも入れてんの!?

 

ぷるぷると頭を振って冷たさに驚いてると、束の方から凄い勢いで水汲み用の桶が巻き上げられる音がしている事に気が付いた。

 

これは束の反撃が来る、けど甘いな束!! 俺は逃げるぞ!!

 

 

「ふっふっふー、音を立てながら水を汲むなんて束にしては珍しいなぁ? これが前に教えて貰った『弘法の川流れ』って奴か? んじゃそーゆー事で!!」

 

「逃げられると思ってんの? それとそれは『弘法も筆の誤り』と『河童の川流れ』が混ざってる、お前の意味だとただの土左衛門だ」

 

 

そう言った束は逃げ出そうとする俺に足払いして転かした後頭に思いっきり水をぶっかけやがった、俺は一回しかやってないのに二回食らったんだけど!?

 

 

「涼しくなって良かったね、正に水も滴るいい男って奴? まぁ君には過ぎた言葉だろうけど」

 

「ふぅ、すまんな私もつい手が出てしまった、結果として打ち水した様な状態になったし良かったんじゃ……」

 

「ふっふっふ、お前らは遂に俺に本気を出させたな?」

 

そう言って俺は泥だらけで立ち上がり、一夏くんと箒ちゃんのところまで走って行って二人からホースを借りた。

 

もちろん狙いは束と千冬、文明の利器の力を見せてやる!!

 

「さぁ一夏くん!! 箒ちゃん!! 水遊びするぞー!! 蛇口を捻れー!!」

 

「はーい!!」

 

「ういー!!」

 

「ほ、箒ちゃんがあの馬鹿の手下に!?」

 

「そんな……一夏まで!?」

 

「二対三だぞー!! 俺たちの勝ちだな!!」

 

 

そう言って俺はホースの口を潰す様にしながら勢いよく二人に水を掛ける。

 

キラキラとした水とそれのおかげで出来た小さな虹にちびっこ二人は喜んだり、途中で本気になった束が家の中からどデカイ水鉄砲を二つ持って来て千冬と一緒に反撃されたり、千冬の説得で一夏くんに裏切られたり、束の説得であっさり向こう側に箒ちゃんが行っちゃったりして、俺たちはその後も沢山遊んで最後は師範の車で千冬と疲れ寝ちゃった一夏くんと一緒に帰った。

 

 

…………ただ、俺はこの時知らなかった。

 

デロデロのぐちゃぐちゃになった道着を見て、家の中に鬼が生まれる事を。

 

 




本来なら小一で面識持った一夏と箒ちゃんが遂に出会いました、主人公が二人と遊んでるから遅かれ早かれこうなった(白目

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

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