天災二人と馬鹿一人   作:ACS

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思春期「そろそろ本気出すわ」


小学四年生 10

自由研究、普通の宿題と違って色々と好きな様に調べた事や作ったものを発表する宿題なんだけど、毎年毎年何をやるか悩むんだよなぁ。

 

部屋のベッドで仰向けになりながらうーんと考える、読書感想文はもう終わったんだけど自由研究は何やってもいいからなぁ、去年なんかやりたい事全部やろうとしたら全部中途半端で終わっちゃったし……。

 

他の奴の作品を参考にしようと思っても、人と被るのはあんまり良くないよなぁ、そもそも去年の作品って束が紙パックで作った変形合体ロボットがインパクト強過ぎて他の作品を覚えてない。

 

ぼーっとそんな事を考えながら天井に貼ったポスターを眺めてたんだけど、そこに貼られた北斗七星を見てピーンと来た。

 

夏と言ったら七夕、七夕と言ったら天の川、天の川と言ったら星座!! よーし星座の写真取るぞー!!

 

「てな訳で親父と一緒に撮った写真持ってきたぞー!!」

 

「だからどんな訳なんだよ……はぁ、もう私一生コレ言ってる気がしてきた」

 

撮った写真の出来を見てもらう為に束のところに持ってきたんだけど、何時もの様にため息を吐いて呆れた様にそんなこと言われた、まぁ何時もの事だね。

 

一応気をつける様にしてるんだけど、束や千冬と話してるといっつも忘れるんだよなぁ、気安いって言うのかな? こーいうの。

 

けど、束はため息を一つ吐いた後に俺の持って来た写真を見始めた。

 

俺は静かにその写真に集中してる束の邪魔をしないように少し控えめな声で箒ちゃんと手遊び歌を歌って遊んでたんだけど、何となく束の顔が気になった。

 

ちらっと覗き見ると真剣に写真を眺めてる、星の位置とか写ってる星座を確認してるんだろうけど、こうして真面目な束の顔を見てるとやっぱり可愛いと思う。

 

千冬はなんつーか、凛としてるって言う感じで落ち着いてるんだけど、束はよく怒ったり笑ったり忙しいからコロコロ表情が変わる、昔は話しかける時も露骨に嫌な顔してたけど最近じゃそれも無いし、本当の束が知れたような気がして少し嬉しい。

 

そもそも好きな事や好きな物について喋ってる人は絶対に一番良い顔をしてると俺は思う、だから束が宇宙について好きなだけ喋ってる時の顔が一番好きだし、千冬も竹刀を構えて向かい合ってる時の真剣な顔が一番好きなんだよな。

 

そんなことを考えながら束を見てたんだけど、どうも集中しきってるのか俺の視線に気付いてない、珍しいなぁと思いながらそのまんま眺めてたら何故だか段々恥ずかしくなってきた。

 

しかもそのタイミングで気が付いたのか、写真から目を離して俺と目を合わせて『どうしたの?』って優しい声で首を傾げながら聞いてきたもんだから思わず目を逸らしてしまった。

 

あれ? 何で今更? 俺今までずっと平気だったのに何でだろ? この前千冬と一緒に親父のところに行った時からなーんかこう、変なんだよなぁ。

 

ぽりぽりとほっぺたを掻きながら恥ずかしさを誤魔化す為に今度の縁日の話題に変える、こういう時は別の事を話すに限る、うん。

 

 

「と、ところでさ、今度の縁日一緒に回ろうぜ? 千冬や一夏くんも誘ってみんなでさ」

 

「ん? んー、別にいいけど少し遅くなるよ?」

 

 

あれ? 普段なら『ちーちゃんやいっくんだけならまだしも何で私がお前と一緒に縁日回らなきゃならないんだよ、そもそもお前には私達以外にも数えきれないくらい友達居るだろ、毎年そいつらと一緒に行ってるんだから今年もそうしろよ』とか言われるところなのに、珍しいな?

 

 

「遅くなるのは別にいーけどよ、なんか用事でもあんの? それなら別に他の奴と一緒に回るけど」

 

「今年は私も神楽舞やるんだよ、だから終わるまでは無理、てかせっかく私が踊ってやるんだから君も当然見に来るよね? てか来なかったらしばき倒す」

 

「お、おう、分かったとりあえず見に行くわ」

 

「取り敢えず? と・り・あ・え・ず? 絶対来いよ!? いいね? 約束だからね!? ほら指切り!!」

 

「ぜ、絶対見に行くから、な? な? だからその、ちょっと、な?」

 

「なんだよさっきから、君今日ちょっとおかしいよ? 熱でもあんの?」

 

 

そう言って束は目を瞑りながら俺のおでこに自分のおでこをくっつけた、その時ふわっと束の髪からシャンプーのいい匂いがして来て、胸が痛いくらいドキドキとして来た。

 

 

「なんだよ熱ないじゃん、じゃあ何でさっきから落ち着きが無いのさ」

 

「いや、その、さ? 顔が……近くて」

 

 

妙にどもりながらそう呟くと、俺も束も一瞬無言になって気まずい空気が流れる。

 

そして、次の瞬間俺は顔を赤くした束に突き飛ばされて絨毯の上で大の字でぶっ倒れた。 あ、箒ちゃん俺は大丈夫だから心配しなくていいよー?

 

 

「ふ、ふんだ、お前が変な事言うからだよ、謝んないからね!!」

 

「あ、あはは、ごめんごめん。 んじゃ、指切り」

 

「……ん、指切り」

 

こうして俺は束と指切りをした後、箒ちゃんを挟んで一緒に束と星座の話をして時間を過ごすのだった。





次回は縁日回。

尚束さんは神楽舞をやらせて貰う為、お母さんに控えめに頼み込んだ模様。

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

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