ある日の昼休みに俺は束と千冬に向かって親父に教えてもらったトランプマジックを披露してたんだけど、何一つ成功しなかった。
というかこの二人相手だと種も仕掛けも丸裸にされてカードを捲る前にオチと手順を言われるからどうしようも無い。
そんな落ち込む俺を見かねたのか、バツの悪そうな顔をした千冬が俺にトランプを差し出した。
「……一度カードをシャッフルしてくれないか?」
「えっ? まぁ別にいいけど……」
言われるままシャッフルをしてたんだけど、混ざり方が甘い気がして覚えたてのショットガンシャッフルで混ぜて行く。本当は別の名前らしいけどカッコイイよな、ショットガンシャッフルって。
「やはり使ったか……」
「ん? どーかした?」
「何でもない、上から何番目でもいいから捲ってみろ」
「じゃあ取り敢えず真ん中で」
「当ててやろう、それはハートの6だ」
俺がカードを確認する前に千冬はそう宣言し、実際に見てみたら確かにカードはハートの6だった。これもマジックか何かなのかな?
「私も当ててやろうか? カードの上からスペードの5ダイヤのQスペードのJ––––」
頬杖をついて暇そうにしてた束が付け加えるようにシャッフルされたトランプを次々と当てて行く、すっげぇな二人共。
最後の一枚までキッチリ当てた束は『私とちーちゃんクラスだと、カードの絵柄が見えるシャッフルじゃ順番丸暗記できるから何の意味も無いんだよ』と不機嫌そうに俺から目を逸らして言った。
その声の感じから若干の不安を感じた俺は束が何を考えてるのかをちょっと考えてみたけど、多分俺の見る目が変わるのが怖いとかそんなありきたりな事しか思い浮かばない。
千冬も千冬で気まずそうな顔してるし、俺ってコイツらにそんな薄情な人間に見られてんのかな? ちょっとショック。
取り敢えずそのショックの腹いせに、新しく買って貰った扇子で二人の頭を一発づつ叩こうとしたんだけど、完全に視線切ってたはずなのに普通に避けられた、コレが気配を察知するって奴か……。
「すげーな二人とも、不意打ちだったと思うんだけど……」
「す、すまん、つい避けてしまった」
「なに? 私たちに対する腹いせ?」
「えぇ、俺ってそんな奴に見える?」
これ見よがしに肩を落として二人にそう言いながら、俺は扇子を閉じたり広げたりして空振りを誤魔化しつつどう言ったら良いのかを頭の中で纏めて行く。
束や千冬を知ってる年上の友達とかと遊んでると、偶に二人に嫉妬しないのかと聞かれる時がある。
その人はスポーツ少年団に入っていて剣道を習ってたらしいんだけど、年下の千冬に手も足も出なかった事がきっかけで剣道を辞めてしまったそうだ。
随分仲良くなってからそんな風に話してくれたんだけど、俺は特に二人に対して……というよりも他人に対してあんまりそんな感情を感じた事がないんだよなぁ。
自分に出来る事と出来ない事、それがあるのはきっと誰にとっても当たり前の事で色んな人が居るんだからその数だけ嫉妬をしても辛いだけだと思う。
確かに俺も束や千冬に勉強と剣術を教えて貰ったりしてるし、二人には簡単に出来る事が自分には出来ないなんて事もしょっちゅうある、今のこのマジックみたいに。
けど、だからってそれが原因でその人を嫌ったり避けたりするのは間違ってるんじゃないだろうか? 自分への情け無さを向けて良いのはやっぱり自分だけだ、少なくとも俺はそう考えてる。
じゃないと友達の中に上下関係を作って溝が出来るんじゃないかな、この人は俺よりアレが出来ないとかこの人は俺よりコレが上手だとか、そんなのを一々気にしてたら最後は絶対ひとりぼっちじゃないか。
それは嫌だ、一人は寂しいし悲しい、誰かと一緒に居て騒いだり笑ったりしてる方がずっとずっと幸せだ、親父だって似たような考えだから沢山友達が居るし、そのおかげでよく分からない仕事だけど繁盛はしてる。
だから俺は友達に嫉妬しない、天才でも馬鹿でも相手を真っ直ぐに見て友達になってる、束に言ったらきっと『綺麗事並べるなよ』とか言って怒らせるだろうけどこれは俺の中で決めた絶対だ。
でもそれは俺の中で決めてるルールだから他人に押し付ける物じゃない、俺には俺の考えがあるし束や千冬、それにそれ以外の人にも人を好きになる理由嫌いになる理由がある訳だから、年上の先輩の様に束や千冬の才能に嫉妬してるから嫌うってのも分かる。
人となりを知らないで勝手な事ばかり言ってる人には腹が立つけど、それを知ってもダメって人に無理に理解しろってのも無理だ。
でも少なくとも俺は何があっても二人の友達でいたいし、友達でいつづけるつもりなんだけど、難しい事考え過ぎてなんて言やいいか分かんなくなっちまった。
まぁいいや、素直に言っとけば一番!! 複雑な事より単純な方が分かりやすいしね!!
「てな訳で、俺は二人が好きだからお前らが俺を嫌いにならない内は何があっても友達だし、何やっても友達だからな? 今更これくらいで嫌いにならないって」
そんな風に二人に笑いかけながら言ったんだけど、二人ともだんまり決め込んで返事がなかった、何故に?
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ