天災二人と馬鹿一人   作:ACS

9 / 130



小学一年生 8

 

 さて、例のちーちゃんから篠ノ之を寝取り返す為に頑張ると決めたんだけど、“おりむら”の身体能力も半端じゃなかった。

 

 短距離とか女の子なのに男の俺より圧倒的に速かったし、走り切っても息切れどころか汗一つかいてなかった。

 

 ま、まぁあの篠ノ之が唯一友達だって公言してる人物だし? そー言う事もある、よな? 世の中ってひでーや……。

 

 いや待てよ? 逆に考えるとだ、おりむらに勝てれば篠ノ之の興味を引く事も出来るんじゃね? そーなったら俺もアイツも友達が増えて万々歳じゃん!!

 よーし次は上級生の競技を挟んだ後のリレーだし、体力も回復出来るから体調も万全!! しかも奴も俺もアンカー!! くっくっく、覚悟しろよおりむら!!

「何かアホな事を考えてない? ちーちゃんに迷惑かけたらまたゴミ箱に突っ込むぞ」

 

「アホな事ってなんだよ、俺はただあの“おりむら”に勝つぞ!!って気合い入れただけだからな?」

 

「ふーん」

 ……めっちゃ興味が無いってのが声のトーンで丸分かりなんだけど、アレかな? 絶対のちーちゃんへの信頼って奴なのかな? 単純に俺に興味が無いって可能性もあるけど、きっと前者だな!!

 

「と言う訳で、俺があのおりむらって女に勝ったら友達になって貰うぞ!!」

 

「……だから、結論だけ話すなって言っただろ、もう少し過程を話せって」

 

「うーん、いや今回はそのまんまだろ? さんぼーはふつーの奴にきょーみが無い、だからきょーみ持ってるおりむらに勝つ、そしたらお前も俺にきょーみが湧くし、俺もお前と仲良くなれてりょーほーはっぴー」

 

 笑顔で親指を立てながらそう言ったら、珍しく篠ノ之も俺にすっごく可愛い笑顔を返してくれた。

 

 …………親指を立てて首を切るジェスチャーをしながら。

 

 あれ? おかしいな? 目から汗が流れて来たよ? 今は他の学年の競技中だし、日陰に居るから暑く無いのになんでだろなぁ……俺馬鹿だから分かんないや。

 

 そんな俺を見た篠ノ之はある程度満足したのか、俺を鼻で笑って去っていった、多分“おりむら”の所に行ったんだろう。

 

 ぐぬぬぬ、俺がこんなにアピールしてもつれない反応なのに、おりむらの奴め!! 幼馴染なのか家が近いのか知らねーけどずっこいぞ!!

 

 これはますます負けられない、篠ノ之を俺に振り向かせる為にもおりむらに勝ってやる!!

 

 

 そんな闘志を滾らせていると上級生の競技が終わり、俺達のクラス対抗リレーが始まった。

 

 お互いアンカーなので他のクラスメイト達の足でハンデの有る無しが決まるんだけど、おりむらのクラスと俺のクラスが良い感じに接戦になったのでこれでお互いの強さでの勝負になる。

 

 

「くっくっく、おりむら!! ココアで会ったが百万年!! 俺はお前に勝って汚名挽回、名誉返上し、篠ノ之と仲良くなってやるからな!!」

 

「……それを言うなら『ここであったが百年目』と『汚名返上』『名誉挽回』だ」

 

「えっ? マジで?」

 

「束の話の通り、愉快な奴だなお前は」

 

 

 レーンに並んだ時に軽く話しかけて見たけど、あっさりと流されてしまった。

 

 

「成る程、おりむらはクールビズなんだな」

 

「クールビューティと言いたかったのか? まぁいい、私は織斑千冬だ」

 

 

 さりげなく織斑が自己紹介してくれたので、俺も自己紹介をしながら近付いて来たバトンを受け取る為に身構えた。

 織斑のクラスのランナーは途中で転けたので俺のクラスの奴に離されている、なのでこれ幸いと助走を付けながら素早く受け取って全力で走る。

 

 身体もあったまってたので俺の足は軽快に動き、織斑がバトンを受け取った頃には半周ほど引き離す事に成功し、少々後ろめたかったが勝ちを確信していた。

 

 

 けど、織斑はバトンを受け取った瞬間に猛スピードで走り出し、半周遅れだったにも関わらず俺が最後の直線に入る前に抜かれてしまう。

 

 は、速すぎね? 前のランナーが転けたからこの勝負は無効じゃね? とか考えてたのがブッとんだ、さ、流石あの篠ノ之の友達。

 

 あ〜待って、速いって、もー少し手を抜いても良いんじゃ無いかなぁ? 俺も頑張って追い付くからさ?

 

 ……こんな虚しい事を考えてたらゴールテープを悠々と織斑に切らせてしまった、ちくしょう。

 

「ふっ、残念だったな?」

 

「ま、まだだ、まだ終わらんよ!! 玉入れとか綱引きとかいっぱいあるし? どっか一つでもお前に勝てば––––」

 

「ちーちゃーん!!」

 

 

 話してる途中だったんだけど、後ろから織斑大好き篠ノ之に突き飛ばされた挙句、背中を踏まれて上に乗られてしまった。

 

「いやぁ流石だねちーちゃん!! 前の奴が転けた時はどーしてやろうかと思ったけど、ちーちゃんの前ではハンデにもならなかったね!!」

 

「おい束、踏んでるが良いのか?」

 

「ん? この下に居る奴は何やっても脳内で友情に変換される新手のマゾヒスト野郎だから大丈夫だよ?」

 

「お、重いから降りて––––」

 

「あん? 誰が重いって?」

 

 

 俺の発言が聞こえてたのか、篠ノ之は下敷きにしている俺の頭を踏み付けやがった。

 

 はぁ、中々友情を築くのには程遠いなぁ……。

 




主人公が何か兎さんに気があるみたいな事言ってますが、仲良くなりたいだけだから、恋愛感情は無いから(震え声

後、兎さんも女の子、重いとか言っちゃダメ。

原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)

  • MF文庫J
  • オーバーラップ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。