雪合戦から一週間くらいしたある日、俺は母さんからお使いを頼まれて買い出しに出てたんだけど、その行き道で少し困った様子の千冬と不安そうに顔を見上げる一夏くんを見つけた。財布でも落としたのかな?
「おーい二人共、どったのー?」
「ああちょうどいいところに来てくれた」
声を掛けると駆け足でこっちに来る千冬、何事?と思いながらよくよく見てみると、両手で抱き抱える様にして仔猫を抱いていた。
ぱっと見でわかるほど毛並みは悪くて何より痩せてて元気が無い、今年は今までより寒いって話だから親から逸れた野良猫が弱ってても不思議じゃないけど……。
取り敢えず俺はジャンバーを脱いで仔猫を包みながら、不安そうな一夏くんを落ち着かせて千冬に話を聞くと、どうも散歩してる最中に一夏くんが路地裏で弱ってたこの子を見つけたらしく、取り敢えず抱き上げたもののそこからどうしたらいいか分からなくて途方に暮れていたところだったらしい。
「その、この仔猫を助けたくても私には頼れる相手がお前ぐらいしか居ないから正直どうしたらいいか分からなかったんだ……」
「そっか……取り敢えず今から母さんに連絡して動物病院に連れて行って貰うよ」
「にーちゃん、このねこさんだいじょーぶ?」
「うんきっと大丈夫だよ一夏くん」
ジャンバーの上から仔猫を撫でながら携帯から母さんに電話してなんとか動物病院に連れて行く事が出来た。
心配そうだった千冬と一夏くんも一緒に病院へ行ったけれど、暫くお医者さんが診断と治療をしてくれたおかげで仔猫は何とかなったらしい。
「はぁ、良かったわね三人共」
「すみませんおばさん……」
「別にいいわよ、それよりこの子の名前を考えなさいな」
「えっ? ウチで飼うの母さん?」
「何? 不満なわけ? 一夏くんが気に入ってる見たいだし、ウチに置いてあげようと思っただけだけど? なんならお父さんに言って里親探す? 一発で里親見つかるわよ、あの人なら」
そう言って母さんはお医者さんから薬やら何やらの説明を聞きに行っちまった。
確かに親父なら一発だよなぁ、俺が思ってる以上に知り合い多いし世界中に友達居るし。
けど名前……名前かぁ……猫に相応しい名前ってなんじゃろ? 冬に拾ったし雪太郎? 汚れてて分からなかったけど三毛猫だし、ミケ? んーでもオスらしいしカッコいい名前の方がいいよなぁ。
「よし、今日からコイツはアレキサンドロス大王ニャン世だ!!」
「待て待て、なんだそのネーミングセンスは!?」
「えっ? オスだからカッコイイ名前付けただけなんだけど?」
横文字だし大王付いてるし、中々立派な猫になりそうな名前だと思うんだけどなぁ、千冬はどーも不満っぽい。
じゃあいい名前あんのかよ的な視線を当ててやると、一瞬きょとんとした顔をした後、眉間にしわを寄せながら『むむむ……』と悩み始めてしまった。
「マタタビというのはどうだろう?」
「その名前は世界一快楽におぼれやすい猫になると思うんだけど……」
「ならカツオブシはどうだ? 猫と言えばかつお節だろう?」
「ぜってぇ俺より酷えだろそれ!?」
猫の様子が落ち着いた事もあってか、そんな風にあーでもないこーでもないと二人でやんやん騒ぎながら名前決めをしてると、ケージの中でタオルに包まる仔猫を見ていた一夏くんがジーッと寝顔を見ている事に気が付いた。
「どったの一夏くん?」
「一夏も名前を決めたいのか?」
「このこはねー、みーくんだよー」
そう言って一夏くんはケージの中を指差したんだけど、どうやらそのタイミングで目が覚めたのか少しだけ猫が顔を上げると、そのまま一夏くんの指先を舐めた。
「ほら!! みーくんはみーくん!!」
「待つんだ一夏くん、その名前にすると今度は料理も改造もOKなトンデモ猫ちゃんになるよ!? や、マタタビも大概トンデモだけどさ!?」
「同じトンデモなら私のマタタビも問題無いだろう!?」
「いやいや、ダメだって!! 名前っては重要なんだぞ? やっぱりここは俺の考えたアレキサンダー大王ニャン世でだな」
ワイワイと名前を呼んでいた俺と千冬だったが、どうもこの猫は一夏くんの付けたみーくんと言う名前が気に入ったらしく、俺や千冬の名前には全く反応しなかった。
多分何となくでも助けてくれた人ってのが分かるんだろう、雰囲気や警戒心の感じから一夏くんには信頼を置いてるのが見て取れる。
コレは負けたなぁ、そんな風に優しい子に成長した一夏くんにほっこりしながら、俺は千冬と顔を見合わせて笑うのだった。
猫の名前の元ネタはサイボーグクロちゃん、日本漫画界隈最強の猫が主人公の漫画です(白目
原作7巻までがどちらの会社かのアンケート(今後の描写に関わる為)
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MF文庫J
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オーバーラップ