オーバーロード~慎重な骨と向う見ずな悪魔~   作:牧草

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毎度、感想、誤字報告ありがとうございます。


mission 11

「ダンちゃん、ダンちゃんってば」

 

「んあ…?」

 

 

ダンテはクレマンティーヌに揺すられ目を覚ます。

 

 

「誰か来たみたい」

 

 

──ドン、ドン、ドン!

 

 

「おい、ダンテいるんだろう?寝てるのか?」

 

 

扉を叩く音と、宿屋の親父の声がダンテの寝起きの頭に響く。

ダンテは頭をボリボリと掻き、欠伸をしながら部屋の扉を開ける。

 

 

 

「んだよったく…ふぁ…」

 

「お前に客だ」

 

「客?」

 

「漆黒だ、下で待ってるから降りて来い。あとちゃんと服は着て来いよ」

 

 

そういうと宿屋の親父は扉を閉じて去っていった。

 

 

「漆黒?」

 

 

ダンテは首をかしげた、漆黒といえばダンテにとっては《漆黒の剣》という銀級冒険者チームくらいのものだ。

ふとクレマンティーヌに顔を向けるが、彼女も肩をすくめて知らないのポーズ。

 

 

「会ってみればわかるか。クレマンティーヌ、お前はどうする?」

 

「あたしはパス。まだ眠い」

 

 

ダンテは再び布団に潜り込むクレマンティーヌを尻目に部屋に備え付けられている椅子にかけてあったコートを着込み部屋を出た。

宿屋の酒場に降りてくると黒のフルプレートの見知らぬ男がいた。

 

 

「眠そうだな、ダンテ」

 

 

ダンテはその声を聞いてようやく正体に思い至った。

その男はアインズが冒険者として活動する仮の姿であるモモンだった。

 

 

「わざわざどうした?」

 

「なに、少しばかり話があってな」

 

 

言葉を交わしながら、伝言(メッセージ)が繋がる感覚があった。

 

 

伝言(メッセージ)出てくださいよ』

 

『寝てたんですよ』

 

「話ね…部屋でいいか。こっちだ」

 

「服くらいはしっかり着てきたらどうなんだ」

 

「ズボンは穿いてるが?」

 

 

ダンテは特に股間を露出してる訳でもないのに指摘されたことに首を傾げながらモモンを引き連れ再び部屋へ戻っていった。

その様子を、酒場にいた他の冒険者達はじっと見つめていた。

 

ある種、この宿屋では知らぬ者のいない破天荒男のダンテと非公式ではあるが昨夜のアンデッド騒ぎ解決の立役者であると噂されている漆黒の英雄が一堂に会しているのだ。

気になってしまうのも仕方ないことだろう。

ちなみに漆黒というのは今はまだ正式なものではなく、モモン達の墓地での活躍を見た衛兵達の通称が広まった結果だった。

昨晩の事だというのにここまで広まるのが早いのは、事件の重大性が高いという証左のようなものだろう。

 

 

 

「あ、お帰りダンちゃん早かった……」

 

「なんだ、まだ服着てなかったのか」

 

 

ダンテが扉を開けると無造作に壁に立て掛けてあったリベリオンを眺める素っ裸のクレマンティーヌがいた。

 

 

「こほん、失礼した」

 

 

モモンは反射的に回れ右をして視界からクレマンティーヌを外す。

ダンテは一旦扉を閉めてクレマンティーヌに服を着るよう声をかけた。

 

 

 

しばらくの後に部屋に入った2人は改めて話を始めた。

ちなみにクレマンティーヌの今の格好は街の女の普段着と同じような地味な色合い布の服だ。

 

 

「服くらいは着てから見ると思ってたんだが、流石見せたがり」

 

「いくらあたしでもあそこまで見せるつもりないんですけど!?」

 

「別に隠れて見なくても言えば装備くらい見せてやるのに」

 

「んんっ!あー、ダンテ?そろそろそちらの人を紹介してくれないか?」

 

 

ダンテとクレマンティーヌの終わりそうにない掛け合いを止めるようにモモンは咳払いをひとつ、話をするよう促した。

 

 

「そうだな、こいつはクレマンティーヌ、情報提供者だ」

 

「手出しといて、情報提供者って……ダンちゃんの鬼畜!」

 

「ほう、情報提供者…」

 

 

クレマンティーヌの抗議の声を無視して、モモンが感嘆の声を上げる。

というより触れたい話題でないのは確かだった。

 

 

「なんでも、元漆黒聖典の第9席次?とかで法国の事情に詳しいらしい」

 

「漆黒聖典だと!?」

 

 

モモンが立ち上がる。

 

 

「んで、この黒いのがモモンだ。もう一人ナーベっていう魔法詠唱者と2人で冒険者やってる」

 

「えっ?この状況で紹介続けるの?」

 

「で?モモンは何しに来たんだ?」

 

 

明らかに警戒を示すモモンに目もくれず紹介が終わったので改めてというように視線を向けるダンテ。

対するモモンはひとつ息を吐き、静かに椅子に座りなおす。

 

 

咳払いをひとつし、モモンはここに来た理由を話し始めた。

 

 

「情報提供のお礼に来たんだ」

 

「情報?なんの話だ?」

 

「墓地が怪しいと連絡をくれただろ?」

 

「そんな事あったか?まあいいか、情報って意味ならもっといいのがある」

 

 

墓地のことを話したのはアルベドにであって、モモンにではない。

ダンテは情報提供というよりは、アルベドへのちょっかいのつもりだったのだ。

そのうえ、ダンテはアルベドが自分のことを伝えているとは思っていなかったし、調べたのはアルベドのはずなのでお礼を言われてもピンときていなかった。

 

 

「ユグドラシルからこっちに来ている奴がいるのは間違いない。少なくとも六だ──」

 

「ちょっ、ちょっと待て!!」

 

 

何を言おうとしているか察したモモンはダンテの言葉を慌てて止める。

 

 

「その話は後で聞く!」

『クレマンティーヌのいるとこで何言おうとしてんの!?』

 

「お、おう…」

 

 

ダンテはリアルの制止と副音声のように聞こえる伝言(メッセージ)に器用なことをすると妙に感心した。

 

 

「えー、じゃあクレマンティーヌから法国の話でも聞くか?」

 

「そうだな、差支えなければ聞かせてもらいたい」

 

「何?モモちゃんも法国のこと知らないの?」

 

「私はヘルムで見えないだろうが遠い国の者なのでな、この付近のことには疎いのだよ」

 

「そっか、なら仕方ないね」

 

 

クレマンティーヌは納得したように法国のことを話し始めた。

六大神による国の成り立ち、八欲王による六大神の死亡。

その後のスレイン法国の方針から現在に至るまでの遍歴。

法国の組織構成、六色聖典の役割や構成員について。

 

 

「元漆黒聖典と言う割に、漆黒聖典についての情報が少ないな?」

 

 

話を聞きながらふと感じたことを尋ねるモモン。

 

 

「ダンちゃんが壊滅させちゃったみたいだし、ほぼ総入れ替えの再編後のことは分からないからねぇ」

 

 

元とはいえ古巣の情報はそう簡単に漏らしたくないのかと納得しかけたところでこの言葉である。

モモンとしてはもしかしたら存在するかもしれないプレイヤーの次に警戒していた存在が漆黒聖典だったのだが…

 

 

「壊滅?一体なにがあったんだ」

 

「なりゆき。その場のノリ」

 

 

ダンテは仕方なくそうなった経緯を説明した。

冒険者としての依頼で偶々、野盗の塒に押し入ったこと。

偶々、漆黒聖典と野盗の塒の周辺で遭遇したこと。

襲い掛かられたので倒したことをシャルティアのことを省いて伝えた。

モモンには伝言(メッセージ)でシャルティアのことを付け加えながら説明した。

 

 

「なるほど、それで昨晩は街にいなかったのか」

 

 

モモンは合点がいったように頷いた。

ダンテがいたならアンデッド騒ぎなど喜んで首を突っ込んでくると思っていたが、来た様子はなかったので不思議に思っていたのだった。

 

 

「昨日、なんかあったのか?」

 

 

モモンはダンテの問いに、昨晩のアンデッド大量発生のことを簡単に伝えた。

 

 

「へぇ、カジッちゃん倒したのモモちゃんなんだ。やるじゃない」

 

「よく知ってるな?」

 

「カジッちゃんに叡者の額冠(えいじゃのがっかん)渡したのあたしだし?」

 

「なるほど」

 

 

モモンはこれらの話からクレマンティーヌの立ち位置をほぼ正確に推測できた。

叡者の額冠(えいじゃのがっかん)を一度鑑定したモモンはその特性を熟知していた。

そもそもあのアイテムは個人が持ってる分にはガラクタでしかない。

使用者の自我を失わせることと引き換えに強大な魔法を使用できるようにするというアイテムであり、その有用性は戦略級である。

しかし使用条件も相当に厳しいもので、適合者が百万人に一人では国家単位で探す必要がある。

それらを加味すると必然的に国家の秘宝扱いであるのはほぼ間違いないだろう。

その存在も一般には知られていないはずである。それを知っていた、カジットに渡したとあれば秘宝を盗み逃げ出したということだろう。であれば、元漆黒聖典(・・・・・)というのは納得できる話なのだ。

 

モモンとしてはクレマンティーヌが主犯の一人であろうがどうでもよかった。

むしろおかげで冒険者としての名声を手に入れたのだから感謝しているくらいだ。

 

モモンは苦笑した。ダンテの女運のなさに、クレマンティーヌは明らかな地雷だ。間違いなくこの先も厄介ごとを呼び込むに違いない。

ダンテに忠告のひとつでもしておこうかと考えたところでモモンに伝言(メッセージ)が入った。

モモンの癖なのかコメカミに指を当てているポーズにダンテは何かしら伝言(メッセージ)が入ったと分かった。

 

 

 

──ドン、ドン、ドン!

 

 

「おいダンテ!客だ!降りて来い!」

 

 

またしても来客を告げる宿屋の親父の声が響く、しかし今度はダンテの返事を聞くこともなく1階に戻っていったようだった。

 

 

「千客万来だな。ちょっと行って来る」

 

 

そう声をモモンとクレマンティーヌにかけるとモモンはひらひらと手を振りクレマンティーヌは「はーい」とやる気なさそうに返事をした。

 

宿屋の1階に下りるとそこには眉尻を吊り上げた組合受付嬢のウィナがいた。

 

 

「ウィナ?珍しいな何かのお誘いか?…デートって雰囲気ではなさそうだ」

 

 

ダンテの思うとおり、普通組合の受付嬢が職務上冒険者を直接尋ねてくるなんてことはまずない。

プライベートであるなら可能性はありそうだが、どう見ても怒っている。

デートなどとそんな色気のある話でないことは確かだろう。

 

仕事で冒険者に直接会いに来ることはないのだが、今回はいろいろと偶然が重なりウィナが赴くことになったのだ。ウィナもダンテに言いたいことがあったのでこれに乗った形になる。

ダンテの言葉を無視し、ズカズカと大股でダンテに寄るとウィナをダンテの額に指を突き立てた。

 

 

「どうして!報告に!来ないんですか!!!?」

 

「は?報告?何の話だ?」

 

「レイラさんの捜索ですよ!

 

「レイラ?連れ帰った冒険者が報告してるんじゃないのか?」

 

 

連れ帰った冒険者がレイラの発見を報告した時点で依頼は達成されているとダンテは考えていた。

 

 

「もちろん報告されています。レイラさんの捜索としての依頼は達成されています」

 

「だったら…」

 

「覚えていないようなのでもう一度言いますが、冒険者組合は冒険者のサポートが仕事です。いいですか?冒険者の安否の確認も出来ないのではサポートもなにもあったものではありません。報告は冒険者の義務です。それは依頼が成功であろうが失敗であろうがです。依頼の最中に亡くなってしまう冒険者も中にはいます。そういった方は発見された方が報告しています。発見されなくても一定期間音沙汰がない場合、場合によりますが組合から捜索依頼がでます。これも無料ではないのですよ!?依頼を受けた冒険者だって危険を伴うんですよ?分かりますか?」

 

「分かった、俺が悪かったから」

 

「ダンテさんの場合は報告に来た冒険者から強力なヴァンパイアの足止めの為に一人残ったと聞いていましたから余計に心配だったんですよ!?」

 

 

強力なヴァンパイアというのはもちろんシャルティアのことなのでダンテに累が及ぶはずもないのだが、事情を知らない者からすれば心配になるのも当然のことだった。

現在冒険者組合は昨日のアンデッド大量発生事件の後処理に加えて野盗の討伐に出向いた冒険者達からの報告にあったヴァンパイアの対策に東奔西走しているのだ。

金級冒険者が一撃でやられるほどのヴァンパイアが相手であれば、銅級のダンテの生存確率など皆無であるという組合上層部の決定によりダンテの捜索というよりは現場検証の意味合いで即座に調査隊として冒険者を送り出している。正直人手が全く足りていないのだ。

そんな中、ダンテが宿屋に帰ってきているという情報を聞きつければどうなるかは火を見るより明らかだった。

ウィナが直接出向いたのはこれが理由でもある。

ダンテから報告を受けることは必須として、情報提供をさせる為に冒険者組合に連れて行くことがウィナの役割だった。

 

 

肩で息をしているウィナを落ち着かせようと椅子に座らせていると、モモンが2階から降りてきた。

 

 

「ダンテ、私は少し冒険者組合に顔を出してくる」

 

「モモンさん!?」

 

 

椅子に座ったばかりのウィナは椅子を倒す勢いで立ち上がりモモンに近づく。

ヴァンパイア対策としてモモンは冒険者組合から召集されていたようだった。

 

 

「ちょうど今しがた、仲間から組合長からの呼び出しがあったと連絡を受けたところだったのです」

 

「でしたらちょうどよかったです。私もこれからダンテさんを連れて組合に戻るところでしたので」

 

「なんで、俺ま──」

 

 

抗議の声を上げようとしたところでウィナに睨まれたダンテは肩をすくめて苦笑いをした。

 

 

「せめて装備だけでも持ってくるから待っててくれ」

 

「ダンテさん」

 

「なんだウィナ?」

 

「コートだけでなくきちんと服を着てきてください」

 

 

 

 

 

 

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

 

 

 

 

 

冒険者組合に到着したモモンとダンテは会議室に通されていた。

中には6人の男が座っている。

冒険者と思しき武装した屈強な男が3人。屈強ではあるが武装していない男が一人。ローブをかぶったやせぎすの男に、デブの計6人。

冒険者の男の一人が入室したモモンとダンテを見て息を呑んだ。

武装なしの屈強な男に促されて、モモンとダンテが空いている席に座ったところで自己紹介が始まった。

 

一人はエ・ランテルにおける冒険者組合のトップであるプルトン・アインザック。若い頃は屈強の猛者であったであろう名残のある男だ。

次にこのエ・ランテルの都市長パナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイア。

どう贔屓目に見ても鼻づまりの酷い肥満体ブルドックだ。ぷひーぷひーと空気の漏れる音をさせながら自己紹介していた。聞き取りにくいことこの上ない喋りだった。

魔術師組合長テオ・ラケシル。

ミスリル級の3チーム《クラルグラ》のイグヴァルジ、《天狼》のベロテ、《虹》のモックナック。

 

モモンについては到着する前に説明があったのか、紹介されることはなかった。

 

 

「それで我々が召集させられたのはどういった理由からなのでしょうか?」

 

「それはエ・ランテル近郊に現れたというヴァンパイアに関してです」

 

 

続けてヴァンパイアの特徴。さらにはダンテが交戦している旨が伝えられた。

モモンはつい先ほどダンテから話を聞いていたためとりあえずは落ち着いていた。

この状況をいかに収めるかそれを必死に考えながらではあるが…

 

 

 

「…お言葉ですが、ヴァンパイアであれば白金級冒険者で事足りるのでは?」

 

「いや、単純にヴァンパイアが強いんだよ」

 

 

ベロテの問いにラケシルが簡潔に応える。

 

 

「いや、カッパーが交戦して生き残っている時点で強いと言われても納得しかねるのだが?」

 

 

モックナックがダンテをちらりと見ながら反論した。

ダンテの実力を知らなければそう思うのは無理からぬことだとモモンは思い腕を組みながら沈黙。

 

 

「…?イグヴァルジ、どうかしたのか?」

 

 

ベロテが様子のおかしいイグヴァルジに小声で声をかけたが、イグヴァルジは「なんでもない」と返すだけだった。

というのも、ベロテとモックナックはイグヴァルジの性格からしてモモンやダンテに噛み付くと思っていたのだ。

しかし実際には黙って座っているだけだった。らしくないイグヴァルジを心配しての問いかけなのだ。

 

しかし、当のイグヴァルジはそれどころではない。自身に軽々と酷い大怪我を負わした存在が目の前に平然と座っている。それだけで心臓を鷲掴みにされたような感覚になっていた。

 

 

「金級冒険者を一撃で殺してしまうようなヴァンパイアでもか?」

 

「………」

 

 

ラケシルの言葉によく分からないと声を上げたパナソレイにも分かるよう、アインザックから追加で説明が入る。

生き残った冒険者からの報告によれば防御の上から身体を両断されたとのこと。

 

 

白金級が金級を一撃で葬ることが出来るかと問われれば、一応出来る。

しかし、それはいくつもの好条件が揃って初めて出来ることだろう。

少なくとも防御の上から両断は不可能といえる。

 

そもそも冒険者の多くがチームを組む理由は連携を取れるからというのが一番大きい。

個々人がそんなに強くなくても連携のよいチームは冒険者としてのランクも上がりやすいのだ。

つまり冒険者としてのランクは個人の強さには直結しない。もちろんある程度、個人としての強さにも差はあるだろうが一撃で殺せるほどの差がついてることは滅多にないことだろう。

ありていに言えばヴァンパイアは推定でミスリル級以上の難度であると考えている。

 

 

「ではダンテ君。君が戦った状況を話してくれないか?」

 

「あー、状況っていわれてもな……」

 

 

アインザックがダンテに話を促す。

しかし、ダンテは困っていた。戦った状況といわれても実際には戦っていないのだから。

 

 

「そうだな、あのヴァンパイアはこの場にいる誰よりも強いと思うぞ」

 

「そ、それは本当なのか?」

 

 

事実だった。シャルティアのレベルは100、モモンやダンテ以外の連中はレベル30にも満たないため話にならない。ダンテでさえ魔人化しない限り、普段80%の力に抑えられているのだからレベル100と戦えば普通に負ける。

モモンにいたってはアインズとして本気で戦ってもシャルティアとは分が悪いのだから、現状30レベル程度の戦士では勝ち目はない。

 

本音を言えば、ダンテは魔人化しなくても負けるつもりはないのだが、シャルティアと戦うことはないので口にはしない。

 

 

「そうなると、ますますカッパーの君が生き残ったことに疑問を覚えるのだが…それこそヴァンパイアとグルなのではないかと考えてしまうほどに…」

 

「好きに考えていろ」

 

 

ダンテは適当に受け流すと席を立って部屋を出ようとする。

 

 

「ダンテ君、席に座りたまえ」

 

「断る。下位冒険者は下位冒険者らしく、せこせこと依頼をこなさないと飯も食えないんでね。それに俺に話せることは話した。もう用はねぇだろ?まともに聞く気もないだろうしな、後は上位冒険者の方々に任せるさ」

 

 

アインザックの言葉を鼻で笑いながらダンテは断った。

モモンはダンテの様子からこの場に飽きたのだろうと思っていた。

 

 

「あぁ、そうそう。俺の強さが知りたいなら直接やりあうか……あー、《フルグラ》のイクジナシ先輩に聞いてみろよ」

 

「ダンテ、《クラルグラ》のイグヴァルジ殿だ」

 

 

モモンがダンテの言葉をやれやれといった風に訂正した。

 

 

「そうだったな」

 

 

ダンテは特に気にした様子もなく部屋を出て行ってしまった。

ダンテが開け放った扉が閉まると、モモンは一同に頭を下げた。

 

 

「友人が申し訳ない。しかし、態度は悪いがあの言葉に嘘はないと私は思っている」

 

 

モモンの言葉からヴァンパイアの対策会議が再開した。

結局その後、ヴァンパイアは漆黒──モモンとナーベ──の二人だけで対処することが決まった。

 

イグヴァルジの態度がおかしいことをベロテとモックナックは問い詰めたが本人は頑として答えない。逆にそれがダンテの言葉と相まって真相を導き出していた。

イグヴァルジはダンテに負けているのだと。

プライドの高いイグヴァルジは絶対に口にすることはないだろう。

そんな彼を負かした男がヴァンパイアがここの誰より強いと公言したのだ、直接戦おうと思うはずもなく同行を申し出ることはなかった。

 

 

(完全にマッチポンプになってしまったな)

 

 

モモンはヘルムの下で苦笑していた。

 




クラルグラ壊滅回避!今後の活躍予定なし!!
ノープランで生かしてしまいました。


若干更新速度が落ちていますが、生きています。
もちべも落ちてはいません。


次回もお時間ありましたらお付き合いください。
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