オーバーロード~慎重な骨と向う見ずな悪魔~   作:牧草

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感想でダンテに対するナザリックのシモベ達の好感度を知りたいとリクエストを頂いたのでSecret mission発生!


Secret mission 2

「あ゛~……疲れた……」

 

 

アインズは一人自室のベッドでゴロゴロと転がっていた。

つい先ほどナザリックに帰還してアルベドと情報の共有を行った後、自室に引き上げたところだった。

もちろん体力的な疲れはない。精神的なものが大きい。

 

 

「それにしても、アルベドはダンテさんがそんなに嫌いなのか……」

 

 

アインズからダンテの話をアルベドに振ると途端にテンションが下がるのが分かるのだ。

前々からダンテへのあたりがキツイとは思ってもいたし、そんな発言も耳にしたことがある。

改善はして欲しいと常々思ってはいるが、アルベドに関してはアインズ自らが設定をいじったこともあって言えずにいた。

ダンテがアルベドに対して何かするとも思えないので、設定の改竄以外にはいまいち理由も原因も心当たりがない。

 

と、そこでアインズはふと思い立った。他のシモベ達はダンテをどう思っているのだろうかと……

 

 

 

「シモベ達のダンテさんへの感情次第ではナザリックに戻らないように伝えた方がいいかもしれないな……」

 

 

「ストロベリーサンデーが食べられなくなる」と文句を言いそうだなとアインズはそんなダンテを想像して思わず噴き出した。

 

しかし、ことは命に関わるかもしれないのだ。

特に自分がナザリックにいない状況では歯止めをかけるものがいない。

しっかり命令しておけば大丈夫だとは思うが、万が一ということもある。

ストロベリーサンデーは諦めてもらうか自分が届けてやるくらいしかできないなとアインズは考えた。

 

一度、シモベ達のダンテに対する意識調査をしてみた方がいいかもしれない。

ダンテがナザリックを出てしばらく経っているしタイミング的にもちょうどいいだろう。

 

 

「アンケートでも作って答えさせるとしよう。問題は何を聞くかだな」

 

 

アインズはベッドから起き出し、隣の部屋の執務机に向かう。

紙とペンを取り出し、質問事項を書き込んでいく。

 

 

「統計を取るなら数値化できたほうが楽か、5段階くらいで回答させるか」

 

 

 

Q1.あなたはナザリック地下大墳墓の現状に満足していますか?

1.満足 2.やや満足 3.普通 4.やや不満 5.不満

 

Q2.Q1.が4、5の回答の方は、理由を記述して下さい。

 

Q3.ナザリックのこれからに不安はありますか?

1.ない 2.概ねない 3.わからない 4.ややある 5.ある

 

Q4.Q3.が4、5の回答の方は、なにを不安に思っているか記述して下さい。

 

 

 

「まずは、小手調べと……ここから本題だな」

 

 

 

Q5.ナザリック地下大墳墓に部外者がいる事は不快ですか?

1.気にしない 2.条件付きで気にしない 3.わからない 4.やや不快 5.不快

Q6.Q5.が2、4、5の回答の方は、不快に感じる部分を記述して下さい。

 

Q7.Q5.が4、5の回答の方は、改善案があれば記述して下さい。

 

Q8.ダンテがナザリック地下大墳墓にいる事はどう思いますか?

1.良い 2.やや良い 3.普通 4.やや悪い 5.悪い

 

Q9.ダンテについて思う事を自由に記述して下さい。

 

 

ふと、ある程度シモベの立場を分類できた方が便利だろうと思い立ち、質問事項を増やしていく。

 

 

Q10.あなたのレベル帯を選択して下さい。

1.レベル0〜39 2.レベル40〜69 3.レベル70〜100

 

 

ダンテの脅威になり得るのは基本的にレベル70以上と考えていいだろう。

なにせシモベの数はかなり多い。重要視するアンケートを絞り込むためには重要な質問事項だ。

あまり細分化しすぎても特定しやすくなってしまって、匿名のアンケートとしては微妙になる。

匙加減が難しい。

 

 

「こんなものか……」

 

 

アインズは細々とした指示を考えながら伝言(メッセージ)でアルベドを呼び出す。

程なくして、伝言(メッセージ)が繋がる。

 

 

「アルベド、私だ」

 

『アインズ様。いかがなさいましたか?』

 

「今から、私の部屋に来れるか?」

 

『アインズ様の命とあれば即座に参ります』

 

「頼みたいことがある。急ぎではないが重要な件なので、手が空き次第私の部屋に来てくれ」

 

『かしこまりました。それでは後ほどお伺いいたします』

 

 

アルベドの声は伝言(メッセージ)ごしでも分かるほどテンションが上がっているようだった。

しかし、幸いアルベドはすぐにかっ飛んでくることはなく、アインズの言葉通り仕事にキリを付けてから来たようだった。そのため、アルベドへのプレゼンの準備をする時間を取ることができた。

 

しばらくの後、アインズの部屋がノックされる。

本日のアインズ当番からアルベドが来た旨を伝えられ、アインズは当番のメイドにアルベドを通すように伝える。

割と最近できた一般メイドによるアインズ当番なる役目だが、アインズは未だ慣れずにいた。

とはいえ、やる気に溢れ、瞳を輝かせているメイド達の表情を見るに止めさせることはできそうにない。

そもそもが働き詰めで休む気配のないシモベ達に休みを取らせる。その代わりにと懇願された制度の為、これを取りやめればメイド達も休みを取ることをしなくなるだろう。

一方で、メイド達のように特典(本人たちから見れば)がなくても、休みを取らされているシモベからは不公平だという声があがっているとかなんとか…

 

 

「失礼いたします。アインズ様。守護者統括アルベド御身の前に…」

 

 

入室を許可されたアルベドは部屋に入り、アインズに跪き深く頭を下げ言上を述べる。

 

 

「楽にしろ」

 

 

アインズはそう声をかけて、アルベドが立ち上がったのを見計らうと言葉を続けた。

 

 

「わざわざすまなかったな、アルベド」

 

「先ほども申しました通り、アインズ様の命とあれば即座に…」

 

「うむ、では早速だがお前に頼みたいことがある」

 

「なんなりとお命じ下さい」

 

 

アインズはアルベドの返答を受け、さっきまで書き込んでいた紙をアルベドに差し出した。

 

 

「実は、ナザリックにおける意識調査を行っておこうと思ってな」

 

「意識調査でございますか?」

 

「あぁ、今後ナザリックはナザリック外部の存在を支配ないしは共生していくつもりであることはアルベドも把握しているだろう?」

 

「もちろんでございます」

 

「その過程において実験的にナザリック内に外部の者を招くこともあるだろう。そこであらかじめナザリックの者達の意思をある程度把握しておく必要があると考えたのだ」

 

「そのようなことをアインズ様がなさらずともお命じくだされば、我ら至高の御方々のシモベは全身全霊でその命にお応えいたします」

 

「違うのだアルベドよ、それではいけないのだ。私はアインズ・ウール・ゴウン。盟友の残した我らの子供たちの健やかなる暮らしを守り、ナザリック地下大墳墓を繁栄させる義務があるのだ」

 

 

アインズはオーバー気味に両手を広げ言い放つ。

アルベドは口元に手を当て潤んだ目でアインズを見つめていた。

 

 

「かしこまりました。アインズ様」

 

 

そう言うと、アルベドはアインズのアンケートを素早く目を通して、言葉を続けた。

一瞬眉をひそめたように見えたアインズは、何かまずいことを質問しているだろうかと少し不安になっていた。

 

 

「それではこの用紙を複製し、自動POPのシモベ以外に配布致します。3日以内に回収しまとめた上でご報告いたします」

 

「いや、アルベドも忙しいだろう。複製した後は各階層守護者たちに配布と回収を任せるようにするといい。回収も箱などを用意し誰にも内容が見られることのないようにせよ。内容の確認は私だけが行う」

 

「それではアインズ様にご負担が…」

 

「先にも言った通りこれは私の義務だ」

 

「……かしこまりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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数日後、アルベドから意識調査アンケートの回収が完了したと報告を受けたアインズは早速確かめてみることにした。

 

アンケートということで無記名にしていたのだが、回収を各階層守護者に任せたことで階層ごとに固まっていて、アンケートの回答のレベル帯を含めればおおよそ誰が書いたかわかるようになっていた。

 

 

「少なくとも守護者達やその近辺の者がどう思っているかはわかるかな」

 

 

アインズは呟きながら各階層ごと、レベル帯でアンケート用紙を仕分けしていく。

もくもくと仕分け作業すること幾許か、アインズはシモベの多さにうんざりし始めていた。

 

 

第1~3階層レベル0~69帯の結果は基本的に似通っていた。というより、9~10階層以外は同様の結果だった。

 

ナザリックの現状に不満も不安もない。部外者がいることは不快で、下等生物がナザリックにいることが許し難いとのこと。

そしてダンテについては普通という意見が多数だった。

思うことについては「強さに憧れる」「強くてうらやましい」など基本的に「強さ」に言及した記述が目立った。

 

 

「……予想していたとはいえ、ナザリック運営についても、ダンテに対しても役に立たないな」

 

 

さもありなん。運営についてはギルドメンバー至上主義のシモベ達が何か言うことは基本的にない。

そしてダンテはナザリックにおける行動範囲が極めて狭い。

アインズが把握している限りは第6階層の円形闘技場、第9、10階層のみだったはずである。

関わりが薄すぎてよくわからないのは当然の結果といえる。

 

 

 

アインズは高レベル帯の者と9、10階層の者に絞って確認を進めることにした。

記述項目に性格が表れていたため非常にわかりやすく、結果的に守護者やプレアデスについては誰が書いたものかまで判明した。

 

シャルティアの場合、低レベル帯のシモベと同様にナザリックの現状に不満や不安はなく。

部外者については、自身の玩具であれば不快ではないと予想通りの結果だった。

肝心のダンテについてシャルティアはナザリックにいることが不快かの問いには「普通」と答えている。

メリットもデメリットも感じていないということだろうか。

 

 

「いや、特に考えていないんだろうな……」

 

 

アインズはそう結論付けると、Q9.のダンテについて思うことについて守護者たちや高レベル帯の回答をまとめた用紙を確認していく。

 

・強さ、美しさは申し分ありんせんが、死体であればなお良いと思いんす。

・至高の御方々に並ぶ強者であり尊敬の念に堪えない。

・強くて優しい方だと思います。

・すごく強い方だと思いました。

・強さ、行動力に優れており、彼の方の行動一つ一つが今のナザリックにとって有用であると考えております。

・私の創造主であらせられるたっち・みー様に比肩する強さを誇る上、慈悲深さをも兼ね備えた素晴らしいお方であると思います。

・強さとフットワークの軽さがあるものの、その身勝手さ故に予定を狂わされる非常に厄介な方。

 

 

「…………ぶっちゃけ無記名の意味がないよな」

 

 

現状、回答できる守護者については誰がどんな回答をしたかは一目瞭然だった。

守護者とはいえガルガンチュアは回答していないし、ヴィクティムはその特性上、アインズが直接指示を出さない限り力を使うこともないため危険性は薄い。それにレベルは35と低めなので他の回答に埋もれてしまって特定はできなかった。

エノグ文字で書かれた訳でもなかったので余計にわからなかった。

エノグ文字で書かれていたらそれはそれで解読に時間がかかってしまうのだが…

 

 

シャルティアは文字に起こしても似非廓言葉なのかと変に感心した。

また、パンドラズ・アクターも回答はしていない。

アインズはパンドラズ・アクターを宝物庫から出すつもりはないので大丈夫だと考えていた。

 

 

「決して黒歴史を露出しない為とかではない」

 

 

とはいえ、アルベドも含めダンテのことは基本的に認めているようで、ダンテ自身に危険が及ぶようなことはないだろうと思える結果だった。

それでもアルベドについては要警戒といったところか。

 

プレアデスも概ねダンテに対して好意的であり、ナザリック外の者を下に見る傾向の強い者も譲歩ができることが分かった。

 

 

一方でダンテに対して直接危害を及ぼせない一般メイド達の回答は純粋に興味深かった。

「強い」という回答は一貫して多いが、「話していると楽しい」「行儀が悪い」「口が悪い」「意外と優しい」「手のかかる弟みたい」などなど非常にバラエティに富んでいる。

記述的にネガティブな意見もあるが、総じてダンテがナザリックにいることを不快とは思っていないようだった。

 

 

「……で、結局これは誰だ?」

 

 

アインズは8階層の高レベル帯のアンケート用紙を見ながら呟いた。

 

 

 

Q1.あなたはナザリック地下大墳墓の現状に満足していますか?

①.満足 2.やや満足 3.普通 4.やや不満 5.不満

 

Q2.Q1.が4、5の回答の方は、理由を記述して下さい。

 

Q3.ナザリックのこれからに不安はありますか?

①.ない 2.概ねない 3.わからない 4.ややある 5.ある

 

Q4.Q3.が4、5の回答の方は、なにを不安に思っているか記述して下さい。

 

Q5.ナザリック地下大墳墓に部外者がいる事は不快ですか?

①.気にしない 2.条件付きで気にしない 3.わからない 4.やや不快 5.不快

Q6.Q5.が2、4、5の回答の方は、不快に感じる部分を記述して下さい。

 

Q7.Q5.が4、5の回答の方は、改善案があれば記述して下さい。

 

Q8.ダンテがナザリック地下大墳墓にいる事はどう思いますか?

①.良い 2.やや良い 3.普通 4.やや悪い 5.悪い

 

Q9.ダンテについて思う事を自由に記述して下さい。

とても優しくしていただきました。

 

Q10.あなたのレベル帯を選択して下さい。

1.レベル0〜39 2.レベル40〜69 ③.レベル70〜100

 

 

 

あまり関わりのないはずの8階層高レベル帯で唯一ダンテに好印象を抱いているらしき結果があったのだが、ダンテと関わりがありそうな者の予想がつかない。

そもそも、8階層は基本的に立ち入り禁止にしているため、ダンテが勝手に入り込むはずはない。

以前考察したように、こちらの世界に来る前に入ったことがあってそれが影響している可能性は十分あるのだが、ユグドラシルにいた頃の無反応のNPCに優しくするだろうか。

もしそうであれば、8階層にダンテのお気に入りのNPCがいることになるのだが、アインズはギルドメンバー全員が愛したナザリック最萌大賞であるペストーニャを除いてダンテがNPCに執着するとは思えなかった。

 

 

「高レベル帯ならあれらかオーレオール・オメガのうちの誰かだとは思うが、ダンテに対して危険はないだろうから良しとするか」

 

 

そもそも、シモベ達の傾向を見るためであって、特定することが目的ではない。

主要守護者達が分かり易すぎただけで、本来はこういうものだ。

 

アインズは満足そうにウンウンと頷きながら、デミウルゴスやアルベドの回答用紙を再度確認する。

双方とも、ナザリックに不満や不安はないようだが、改善点などのアイデアを書き込んでいた。

それはごくごく一般人的な思考回路のアインズには宝だった。

アインズはせっせとメモにそれらを書き写す作業に入った。

 

 

 




だ~れだ!


Q1.あなたはナザリック地下大墳墓の現状に満足していますか?
①.満足 2.やや満足 3.普通 4.やや不満 5.不満

Q2.Q1.が4、5の回答の方は、理由を記述して下さい。

Q3.ナザリックのこれからに不安はありますか?
①.ない 2.概ねない 3.わからない 4.ややある 5.ある

Q4.Q3.が4、5の回答の方は、なにを不安に思っているか記述して下さい。

Q5.ナザリック地下大墳墓に部外者がいる事は不快ですか?
1.気にしない ②.条件付きで気にしない 3.わからない 4.やや不快 5.不快

Q6.Q5.が2、4、5の回答の方は、不快に感じる部分を記述して下さい。
    私がナザリックを支配する際、または支配後の障害にならなければいい。

Q7.Q5.が4、5の回答の方は、改善案があれば記述して下さい。

Q8.ダンテがナザリック地下大墳墓にいる事はどう思いますか?
①.良い 2.やや良い 3.普通 4.やや悪い 5.悪い

Q9.ダンテについて思う事を自由に記述して下さい。
私がナザリックを支配する際の有用な駒となってくれることでしょう

Q10.あなたのレベル帯を選択して下さい。
①.レベル0〜39 2.レベル40〜69 3.レベル70〜100


アインズ「ブレなくて安心するわ……」



たくさんのお気に入り、感想、評価。本当にありがとうございます。

また次回もお付き合いいただければ幸いです。

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