戦わなければDMCじゃない! というわけで初戦闘です。
自分の文章でスタイリッシュな戦闘が表現できるか…そこが問題です。
Devil May Cry
このグリーンシークレットハウスに付けた看板である。
アイテム名に偽りありの存在感を示すこの店は大昔にヒットしたゲームに魅せられたとあるプレイヤ-が作成した事務所である。
再現されたDevil May Cryの主、名を「ユーゴ」というユグドラシルプレイヤーである。
わざわざDevil May Cryをグリーンシークレットハウスに再現した理由もたいしたものではない。
ユグドラシルのリソースは基本的に早い者勝ちだが、奪い取れないわけではない。
そういったトラブルの元になりそうな事柄も運営は容認していた。
よく話に聞いていたのはギルドホームの奪い合いだった。
そのため単純に人に奪われる可能性を潰したかっただけなのだ。
ユーゴは今でこそ
しかもオーソドックスな剣士職であり、ごくごく一般の無(理のない)課金プレイヤーだった。
あるとき拳銃が使える職をただ単にカッコよさそうという理由だけでビルドに組み込んだ。
近接と遠距離の混在するどちらも中途半端になりそうな微妙ビルドのキャラとなっていた。
しかし、ユグドラシルにおける戦闘はリアルの身体能力や経験が反映されるのは周知の事実である。
たっち・みーはリアルの職業が警察官なのもあって身体を動かすことに長けている。といったようにワールド・チャンピオンなどの面々はリアルで身体を使うような連中ばかりだった。
もともとリアルで運動神経のかなりいい方であったユーゴはこのビルド構成のキャラでもそこそこの戦績を修めていた。
「カッコ良さそう」を求めてビルドしていたユーゴは「カッコいい動きができないかな?」といろいろなアーカイブを現在過去問わず調べた結果、ゲーム「Devil May Cry」に行き着いた。
ユーゴはDevil May Cryにドはまりした。
主人公ダンテをユグドラシルに再現することに傾倒した。
手始めに堕落の種子を使用し
当初片手に剣、もう片方に拳銃を所持して使うスタイルだったが、剣は両手剣サイズのものを使用し、拳銃を使うときには背中に剣を背負って2丁の拳銃を使用するスタイルに変更した。
職業はガントレットやヌンチャクなど様々な武器を装備できるように取得していき、時には課金して職業レベルを下げて別の職業を取りなおしたりもした。
装備品に関しては最終の目標がすでに決まっているので、必要になりそうなドロップアイテムを精力的に収集した。
並行して、戦闘面ではスタイリッシュを心がけコンボや派生コンボの研究を続けた。
そのようにして、紆余曲折を経てユーゴのキャラが完成した。
現在、研鑽の末完成したアバターである銀髪で大柄の見た目は人間のユーゴは困惑していた。
「なんでログアウトされていないんだ?」
ユグドラシルに限らずコンソールからダイブするゲームについては、寝落ちを検知すると安全性確保の為、強制ログアウトをする仕様となっている。
サービス終了の時刻になってもログアウトされなかった際に、寝てしまっていたはずなのに未だに自分が事務所の椅子に座っていることが不思議でしかたなかった。
「ふむ……」
ユーゴはおもむろに背負った剣《リベリオン》と、腰に差し込んだ2丁の拳銃《エボニー&アイボリー》を確認しながら事務所の外へと歩を進め扉を蹴り開けた。
「………あ?」
気の抜けた声が出たと同時に扉を閉めた。
ありえない光景を目にした気がして、眉間を指で揉みながら、再度扉を開ける。
「…………沼地じゃない」
ユーゴの記憶が確かであるならば事務所はナザリックのある沼地の沿岸に設置していたはずだった。
「疲れてるのか?…甘いもの食いたいな」
現状、手元に甘味は無いので諦めてぐるりとあたりを見渡す。
草原、草原、草原、星空。
リアルではお目にかかれない景色にユーゴは感動した。
ナザリックの第6階層の空を見たときも同じように思ったものだったが、この光景は桁が違った。
ユーゴはブループラネットのことを思い出していた。
あの人が求めていたものはこういうものだったのだろうかと……
あまりにも
「こいつはすげえな……ん?」
ふと、遠くの方に大きな建物があることに気がついた。
ユーゴは何となく建物の正体に勘付きながら、その建物に向かって歩き出した。
途中、上空にキラリと光る何かを見た気がしたが、気にせず歩を進めた。
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ユーゴの目の前には6メートルほどの壁に囲まれた大きな霊廟が聳えていた。
その大きな霊廟を取り囲むように壁と同等の高さがある戦士の像が建てられており、さらにそれらを囲むように東西南北の各方位にも小さな霊廟が建っている。小さいといっても、中央の霊廟に比べればの話であり。それ単体の霊廟としてもかなり大きさがあった。
「やっぱナザリックだよな……」
ユーゴは迷いなく中央の霊廟まで歩を進め、ナザリックの入り口を前に一人つぶやく。
「ま、入ってみればわかるか」
入り口に手をかけ、ぐっと力を込めて重い石づくりの扉をゆっくり押し開ける。
重さの割にスムーズに開いていく扉。
腕の一本がようやく入るほど開きかけたその時、ハルバードの切っ先がその隙間からユーゴの眉間に向かって伸びる。
ユーゴはそれを咄嗟に首を傾けることで回避する。
「おいおい、熱烈な歓迎じゃないか」
ユーゴはにやにやと笑いながら扉の前から飛び退く。
完全に開いた扉の中から出てきたのは、冷気を放つ青白い外骨格の体から幾本ものスパイクが飛び出す。人の腕ならば簡単に噛み切りそうなほどの顎。4本の腕にはそれぞれ武器を携えた巨体の昆虫だった。
(コキュートスだと? 第5階層にいるはずのやつがなぜ?)
「人間ヨ、ココガドノヨウナ場所カ、ワカッテイテ侵入シヨウトシテイルノダロウナ?」
(………え? 喋った?)
「答エロ! 人間!」
「マジかよ・・・どうなってんだ」
返事をしないユーゴに苛立ったコキュートスがハルバードを振るう。
その風圧でユーゴのコートがはためき足元の地面が凍りついた。
コキュートスの明らかな戦意にユーゴの意識が切り替わる。
「はん、どうせなら美女に歓迎されたいけどな……OK!C'mon!!」
エボニー&アイボリーを引き抜き構えた。
「第5階層守護者コキュートス!!イザ参ル!!」
何故NPCと会話できるのかとか色々考えるべきことはあるのだが、ユーゴは今それどころじゃなかった。
(やべぇ、コキュートスやっぱかっけぇ!!動くとかっけぇ!!)
ユーゴはカッコイイものが大好きな男だった。
一足で間合いまで迫ったコキュートスの刀の袈裟切りを上体を反らして避ける。
また別の腕に握られている大太刀がユーゴを追尾するように迫るがバク転の要領で間合いの外へ逃げる。
そのバク転の着地を狙うようにハルバードによる突きが放たれるが、ユーゴはそれをも地面に伏せるようにして避け、すぐさまその場を離脱する。
4本目の腕に装備しているメイスの追撃がなかったことにユーゴは一息つく。
(ナザリックのNPCを傷付けるわけにはいかないしなぁ…そうだ
「うぉっと!」
「今ノヲ避ケルカ!」
コキュートスは大太刀の大上段からの振りおろしを注意力が散漫になっていたはずなのに、半身になることで避けたユーゴに感心する。
ユーゴはエボニー&アイボリーを連射しながら距離をとるように動き始めた。
その弾丸はコキュートスの武器に弾かれたり、外殻に弾かれたりで有効なダメージは与えられていない。
コキュートスは縦横無尽に己の武器を振るうがその一切がユーゴにあたらない。
また、ユーゴの銃撃もコキュートスにダメージを与えられず状況は膠着していた。
「背ノ剣ハ飾リカッ!!?」
自身へのダメージが無いとはいえ、一方的に攻撃されている状況にコキュートスは苛立ちを隠しきれずに叫んだ。
「ふぅむ……」
ユーゴも実は結構参っていた。
コキュートスを傷つけるのは避けたいが、このまま戦っていても埒が明かないのも事実。
モモンガを始めとしたアインズ・ウール・ゴウンのメンバーに何とかしてもらわない限り止まりそうにない。
「なぁ、コキュートス。どうしたら戦うのをやめてくれる?」
「アリエナイ、ナザリック地下大墳墓ニ足ヲ踏ミ入レヨウトシタ大罪…許サレハシナイ」
(返事からしてもここが、ナザリックでこいつが守護者のコキュートスであることは間違いないわけだが、どういうことだ?アインズ・ウール・ゴウンの誰かの命令か?)
どういう状況であるにしろ、ギルドメンバーに連絡が取れない以上、手の施しようがなかった。
(出直すか…)
一旦事務所に戻るため、この場から離脱しようかと考えたタイミングで真横から少女の声がユーゴの耳を打った。
「美女が歓迎しんす、早く死んでくれなんし」
「あー、うん美少女だな。10年後ならかなりHOTなんだが……」
突如、現れた完全武装のシャルティアにユーゴは驚いたそぶりも見せず、苦笑する。
(まぁ、NPCが成長するはずもないからこのままだろうな…)
「なにか失礼なことを言わなかったかしら……コキュートス、とっととこの人間殺しんしょう」
「仕方ガナイナ……ワカッタ」
「いやいやいや、2対1とかマジ勘弁」
言葉とは裏腹に不敵な笑みを浮かべるユーゴに猛攻を仕掛けるコキュートスとシャルティア。
守護者二人の即席の連携それ自体はたいしたことはないがLv100NPC二人分の手数が確実にユーゴを追い詰めていく。
さすがにかわしきれない場面も増え、ユーゴに切り傷がつく。
「Yeah!!HAHAHAHA!!」
痛みを感じるそのことが、今この瞬間がリアルであり、実際に死ぬ可能性があることを示唆する。
その可能性を考えれば、ユーゴはかなり愚かなことをしているといえるが…実はこの男、生粋の戦闘狂だった。
己の死ぬ可能性についてなど微塵も考えていなかった。
二人の守護者を銃撃しながら飛び回り、避け切れない攻撃に対しては背負ったリベリオンで打ち払うだけ打ち払って距離をとりながら再び銃撃を行う。
また、時には自ら接近してきたかと思えばリベリオンで武器をかちあげ、そのまま肩を踏み台に飛び上がりながら銃撃しつつ離れていくというヒットアンドアウェイ戦法を徹底していた。
「来いよ、ノロマ!」
ユーゴは楽しんでいた。エボニー&アイボリーしか使用していないので限られた戦法しかとれないし、しかも、弾丸に込める魔力は極力少なくしているため守護者二人にはまったくダメージが通らない。
もっとも守護者たちは砂をかけられるような程度の鬱陶しさを感じてはいたのだが……
「ハァッ!!フッ!!」
コキュートスがひとつ、ふたつと武器を振るう。
それをユーゴがひとつ、ふたつと避ける。
「捕まえてみな!」
「マダダッ!! ハッ!!」
みっつ、よっつ、そして一度は避けられたひとつめが軌跡を変えて戻ってくるがリベリオンで弾かれる。
そのわずかな隙にユーゴはコキュートスの攻撃範囲から銃撃しつつ逃れる。
逃れてくるユーゴを迎え撃つためシャルティアはスポイトランスを構えるが、目の前でいきなりユーゴの姿がブレたかと思った次の瞬間、掻き消えた。
「シャルティア!上ダ!」
コキュートスの声にバッ!と音がするほどの勢いでシャルティアは上空を見上げる。
その瞬間ユーゴの持つ拳銃から銃弾が雨霰と降り注ぐ。
「くぅっ!!」
「ハァアアッ!!」
ひるむシャルティアの上空にいるユーゴをなぎ払うようにコキュートスがハルバートを振りぬく。
が、ユーゴは空中に足場でもあるかのように、水平に移動しその場を逃れたため、ブンと空を切る。
「Hey!Hey!ビビってんのか?」
再三にわたるユーゴの挑発にコキュートスの握る武器がギシリと音を立て、シャルティアがギリッと歯を食いしばる。
シャルティアが≪エインヘリヤル≫を召還しようとしたその時…
「そこまでだ!!」
上空から威厳ある低く重い声が響き渡った。
お付き合いいただきありがとうございます。
書き溜めもなく、そもそも遅筆なのでゆっくり更新となりますが次回もお付き合いいただければ幸いです。
prologueも思っていた以上に閲覧されたようでうれしかったです。
お気に入りに追加してくださったたくさんの方々。
評価を下さった、風属性様、アイチカ様、Coharui様、もっちー様、まままま様、りうまえ様。ありがとうございます。
また、コメントを下さった、もつ様、盗る猫様。本当にありがとうございます。とても励みになります。