オーバーロード~慎重な骨と向う見ずな悪魔~   作:牧草

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DMC5 ……… DLなう


mission 20

ナザリックから王都へ戻ってきたダンテはクレマンティーヌとレイナースと宿屋で合流した。

 

 

「ねぇ、ダンちゃん?珍しく難しい顔してどしたの?」

 

「……まぁな」

 

「本当にどうしたのですか?」

 

 

生返事しかしないダンテにレイナースは覗き込むようにして尋ねた。

ダンテはずっと、今夜起こるであろう大規模な住民拉致の対抗策を考えていた。

とはいえ、ダンテは頭脳派ではなくどちらかといえば脳筋の類であり、デミウルゴスの裏をかけるような策は思いつかない。

最終的には己の直感に頼る他ないとは思っている。

危ういとは思っている。それでも知者を上回る為になりふり構っていられないのも事実。

加えて、この世界に転移してからこっち、自身の勘が冴え渡っていることにも気付いていたのは勘に頼りがちになる遠因であった。

デミウルゴスの説明した作戦通りであれば、拉致の対象者は各所に集積されてその後、ナザリックに転送されるはずだ。

その集積所が分かれば狙い撃ちできるのだが、先の説明でもその詳細は知らされることはなかった。

こちらの行動などお見通しということだろう。

思わず悪態をつきたくもなる。

 

ダンテはちらりと自分を心配そうに見つめる二人を見遣る。

法国のクレマンティーヌ、帝国のレイナース。

どう考えても王都の地理に詳しいはずがなく、集積所の予測も不可能だろう。

 

せめて人海戦術が使えればいいのだが、悪魔を大量召喚する都合上、人員を投入すれば被害が拡大することが分かりきっている為、それも難しい。

そもそも、誰に協力を要請すれば人海戦術など使えるだろうか、少なくともダンテにその伝手はない。

それ以前に、ダンテが作戦を外部に漏らした時点でデミウルゴスやアルベドには伝わってしまうだろう。

ダンテにはそれを感知するすべはないが、今も尚、厳重な監視が付いていることだろう。

誰かと接触すればすぐに知られることになる。それほどナザリックの監視網は厳重だ。

こうしている今でさえもニグレドあたりに見られているかもしれない。

 

あくまで一冒険者として動く必要があるため、事前に行動することは出来ない。

結局出来ることといえば、ことが起きてから作戦区域内を駆け回るしかないのだ。

 

 

ダンテは王都に来る際に嫌な予感を覚え自らの手を増やすためにクレマンティーヌとレイナースを連れてきたが、今となっては失敗だったと感じていた。

 

召喚される大量の悪魔はさほど強くない。しかし、それはユグドラシルにおいての話である。

ダンテはこの世界の住人の弱さを十分理解している。この世界における強者といわれるクレマンティーヌでもこの悪魔達の中に放り込めば死亡する可能性は十分ある。

クレマンティーヌより弱いレイナースも然りである。

 

 

「レイナース、これ使えるか?」

 

 

そう言ってダンテが取り出したのは一振りの槍だった。

それは、魔剣スパーダを再現しようとして試作したスパーダの槍形態だった。

結局魔剣スパーダの再現は3種の変形機構が組めず断念した為、試作の剣と鎌と槍の幾本かがそれぞれ残っているだけなのだ。

 

呪いを解いたレイナースはカースドナイトの職業レベルを失った為、弱体化している。ダンテはそのこと自体には気付いていないが、少しでも彼女を強化するためにとレイナースにその試作の槍を渡した。

槍を受け取ったレイナースは、その槍のあまりの重さに顔を顰めた。

 

 

「っ!?……申し訳ありません、この槍は私には重すぎて扱えそうにありませんわ」

 

「……そうか」

 

 

ダンテはレイナースから返された槍を受け取りアイテムボックスに格納した。

仮に槍全体の重さがレイナースに扱える重さであっても槍のバランス的にレイナースの手持ちのものと違いすぎて、渡されてすぐに扱えるようになるとは思えない。

武器というのはそれほど繊細なものであるということはダンテも理解していた。

そのため、レイナースに槍を返されること自体は想定内だった。

また、クレマンティーヌに関して言えば渡せる武器が手持ちになかった。

 

防具に関してもダンテは鎧などの防具を所持してはいない。

アインズと違ってダンテに収集癖はなく、自分で使わない、もしくは使えないモノは所持しないのだった。

 

せめてもの気休めにとアイテムボックスから行動阻害無効化の腕輪、毒無効化の指輪、防御力と魔法防御力にボーナスを与えるアミュレットをそれぞれ2つずつ取り出し二人に渡した。

 

これは二人の生存率を少しでも高める為である。

 

 

「「…………」」

 

 

渡されたアクセサリー類を不安そうな顔で眺める二人にダンテは極力宿から出ないよう伝えて宿を出た。

宿を出たダンテは路地裏に入ると、アイテムボックスからケルベロスを取り出し、腰に差した。

 

 

「ケルベロス、俺の銃弾を持たせたツアレを探せ」

 

『…あっちだ』

 

 

ケルベロスは特に悪魔の姿に戻ることなくツアレのいる方向のみをダンテに伝え沈黙した。

 

 

「OK」

 

 

ダンテは指示された方向へ走りだす。まずは攫われたツアレを助け出すことにした。

ゲヘナの作戦の第2段階を消極的に待つのではなく、積極的に行動し第1段階から参戦することで対応を早めるのが主な目的だ。

ダンテが動かずともツアレの安全は確保されることは間違いないだろうが、唯一ダンテが作戦の第1段階に関われるのがツアレの救出のみである。

作戦の段階ごとの開始合図や制限時間など詳しいことを何も知らされていないダンテにできるのはこれくらいだった。

セバスの役目を横取りするようで若干気分はノらないが、そうも言ってられないのだ。

 

 

ダンテの走る速度はすさまじく、すぐにツアレが捕らわれているであろう屋敷に辿りついた。

ケルベロスもこの中からダンテの魔力を感じると伝えてくる。

この中にツアレがいると見て間違いないだろう。

もっとも、ツアレがダンテの渡した弾丸を持っていればの話ではある。

 

 

屋敷の門は固く閉ざされていたが、ダンテは門を飛び越え門の内側から外を警戒していた二人の門番のうち一人を踏み潰し着地した。

 

 

「て、テメェっ!?」

 

「………」

 

 

ダンテは踏み潰されなかった門番の叫びを無視して門の先に広がる庭を眺めた。

広々とした庭に、その庭をぐるりと囲むコの字型の屋敷。

庭と隣接するコの字の内側、その2階部分にはバルコニーがあり、バルコニーのどの位置からでも庭全体を見渡せる作りになっている。

 

まさにこれからこの庭で行われる催しを見物するかのようにバルコニーには仮面で素顔を隠した身なりの良い大勢の人物がワイン片手に歓談していた。

 

そして庭ではやはり何かの準備をしている最中なのか、大勢のガラの悪いおそらく八本指の構成員だろう者達が動き回っていた。

 

 

「侵入者──」

 

 

門番が槍をダンテにつきつけながら叫ぼうとした瞬間、その首が転げ落ちた。

ダンテは落ちた首を拾い上げ、庭に向かって投げた。

 

 

───パァン!!

 

 

風船がはじけたような音が響き渡ると、なぜかメイド服を着た()が頭を失ってドサリと倒れた。

ダンテの投げた頭もどこにもなくなっていて、メイド服の男の近くにいた者が血みどろになって呆けていた。

 

 

「Yeah!!」

 

「誰だ!?」

 

 

煌びやかな服装の男が叫ぶ。目につくのは金糸で刺繍の施された上着に腰に下げられた薔薇。

腰の薔薇がレイピアの鞘に収まっているように見える。

ダンテはこいつをひとまず薔薇野郎、長いので「ホモ」と呼称することにした。

 

 

「貴様ここがどこだかわかっているんだろうな?」

 

「パーティ会場だろう?なんだ?飛び入りは認めないか?」

 

 

エルダーリッチの言葉にダンテは笑みを絶やすことなく軽口をたたく。

 

 

「いや、貴様が余興の一つでもやってくれるなら歓迎しよう」

 

 

エルダーリッチの横に立っていた刺青だらけのハゲが言葉とは裏腹の殺気をダンテに向ける。

しかし、当のダンテはそんな殺気などどこ吹く風で嬉しそうに手を叩く。

 

 

「ハッ!そうこなくちゃな!俺の余興はちょっと刺激的だぜ?」

 

「それは楽しみねっ!!」

 

「楽しんで逝けよ?狂わない程度にな!」

 

 

飛来する5本のシミターを跳躍し避け、上空に向けてエボニーを一発撃つ。

 

シミターを何らかの方法で射出したらしいベリーダンスの踊り子のような格好の女が愉快そうに笑う。

 

 

──ドスッ!

 

 

キメ顔でニヤリと笑うダンテの胸からシミターの剣先が突き出していた。

ダンテがそれを見下ろすと同時に残りの4本のシミターが立て続けにダンテに突き刺さる。

上空へ上げていたダンテの手がだらりと落ちる。

 

 

「我ら六腕に正面から挑んでくるからどれほどの者かと思えば、他愛のない…」

 

 

フルプレートの鎧を着込んだ男がこもった声で呟いた。

その声をきっかけに中心人物であろう5人が笑い出す。

笑い声は伝播して構成員、バルコニーに居る貴族らしき者達も声をあげて笑い出した。

 

 

「相変わらずエドストレームの能力は初見殺しだな。いやいや、流石踊る三日月刀」

 

「初見じゃなくても対処できる人は少ないわ、それを言ったらペシュリアンの剣の方が……?」

 

「どうした?」

 

「あいつに刺さったシミターが動かない」

 

 

ダンテに刺さったシミターを引き抜くべく操作をしているつもりだが、何かに固定されているかのようにピクリともしない。

エドストレームの言葉にぴたりと5人の笑いが止む。

バルコニーの貴族たちは相変わらず笑い続けているが、八本指の構成員達は5人の様子に気付き、黙って様子を窺っている。

 

 

「こいつはすげぇ!まるで幻影剣だ!」

 

「…っ!」

 

「いや、褒めすぎか…アグナスの人工悪魔程度か?」

 

 

ダンテの声に今度こそ貴族達の笑い声も止み、全員がダンテの方を注視していた。

ダンテはそれを意に介することもなく、胸から突き出たシミターの刃をつかみ引き抜き地面に突き刺す。

ダンテは次々と自らの身体に刺さったシミターを引き抜いていく。ダンテの身体からは盛大に血が噴き出しているが痛痒を感じていない様子に多くの者が目を見開いていた。

 

 

「化け物めッ!」

 

「やれるのか?ペシュリアン?」

 

「デイバーノック、二人掛かりだ!二人でやるぞ!」

 

 

ペシュリアンと呼ばれたフルプレートの男がエルダーリッチと前にでる。

 

 

「不死王の力見せてやる」

 

「…不死王?」

 

 

ダンテは不死王という単語で真っ先にアインズを思い出し、コイツは放っておいても死ぬと確信した。

ナザリックのNPC達が血相を変えてこのエルダーリッチを滅ぼす光景を幻視した。

ダンテの思考など関係なくデイバーノックは火球(ファイヤーボール)を放った。

 

 

「くらえ!」

 

 

ペシュリアンが鞘から剣を抜き放つ。

剣を抜いたにしては軽い風切り音が聞こえるだけだが、ピシッピシッと地面に亀裂が入る。

音は聞こえど刀身は見えない。ダンテ以外の目には…

 

ダンテは最初こそ楽しそうに火球(ファイヤーボール)が直撃することも厭わずかぶり付きで眺めていたが、次第に落胆の表情を浮かべ溜息をついた。

 

 

「なんだとっ!?」

 

 

渾身の火球(ファイヤーボール)が直撃したにもかかわらず、ダメージを負った様子がないダンテにデイバーノックが驚愕の表情を浮かべる。

ダンテはトンと一つバックステップを踏むと軽く腰を落としいつの間にか装備した閻魔刀を抜き放つ。

 

 

「ぐあああああああああ!!!」

 

 

悲痛な叫びをあげペシュリアンが右手を押さえ膝をついた。

ドクドクと血を垂れ流すペシュリアンの右手は手首から先がこま切れとなって血だまりに落ちていた。

 

 

「よくも!」

 

 

地面に突き刺さっていたシミターを操作するのに何故か手古摺ったエドストレームはようやく5本のシミターを制御下に置きダンテに斬りかかった。

前から後ろから、左右から縦横無尽に斬りかかる担い手のいないシミターをダンテはステップを踏むように避け、時には飛び上がるようにして離脱し躱す。

 

 

「くらいやがれぇ!!」

 

 

そんな剣舞の中を今まで様子を見ていた薔薇のレイピアを携えたホモが突進してきていた。

飛び上がって着地したばかりのダンテに回避させないタイミングで突きを放った。

しかし、ホモ渾身の一撃は剣先をケルベロスの鎖部分で絡め取られて、ダンテに届いていなかった。

ニヤリと笑うダンテに対してホモはギリッと歯軋りをした。

 

 

「これは当たるとなんかあるのか?」

 

「野ろ──へぶっ!」

 

 

自信満々でレイピアを突いてきた割にダンテにとってその動作は遅く、何をもってそこまでの自信を得ていたのか理解できなかった。

純粋な疑問を煽られたと勘違いしたホモは、ダンテに今度こそ一刺ししようとレイピアを引いたところをケルベロスで軽くはたかれた。

 

 

「ぐはっ!がふっ!おぶっ!」

 

 

腹を薙ぎ払われくの字に曲がり下がった頭をかち上げられ、挙句に飛び上がったダンテが上空で回転。回転のたびに何度も叩きつけられるケルベロスにホモは、身体をごっそりと抉られ地面にべしゃりと叩き伏せられた。

 

ホモが一方的にやられている間もエドストレームのシミターによる攻撃が緩むはずもなく、間断なくダンテを攻め立てる。

しかし、その悉くがダンテに振るわれるケルベロスに阻まれる。

 

 

「ホァァァーォウ!!」

 

 

ダンテはノリノリで雄叫びを上げながらケルベロスを体の周囲で高速回転させる。

その回転によりダンテに迫るシミターを次々と打ち返し、火球(ファイヤーボール)を向けていたデイバーノックに突き刺さり、最後の一本がその頸を刎ねた。

 

 

「うおおおおおお!!!」

 

 

ダンテがケルベロスで決めポーズを取っていると、好機と見たハゲが突撃してきた。

それに気付いたダンテがステップを踏むように一つ跳ねると、ケルベロスを腰に差しハゲと正面から四つに組み合った。

 

 

「ぐぐぐぐ……」

 

「…やけに大物ぶってるからここのボスかと思ったら大差ないのかよ」

 

 

こめかみに血管を浮かばせながら力むハゲにダンテはこれ見よがしに溜息をついた。

ダンテの態度に怒るハゲ、もといゼロは最初から所持しているスキルをすべて発動して掛かってきていた。

 

シャーマニック・アデプトの憑依スキル。

脚の豹(パンサー)

背中の隼(ファルコン)

腕の犀(ライノセラス)

胸の野牛(バッファロー)

頭の獅子(ライオン)

それぞれが、発動者に動物の如き力を与えてくれるスキル。

人の力に比べて動物の力とは圧倒的なものであるにも関わらず、ダンテは真っ向から対抗していた。

 

 

「こ、この闘鬼ゼロがっ!貴様ぁ!!」

 

「人の顔の前で叫ぶなよ汚ねぇな」

 

──グシャッ

 

「があああああ!!!」

 

 

ゼロはダンテに組み合った手を握り潰され叫びをあげてたたらを踏む。

その大きな隙にダンテは四肢にベオウルフを纏わせて、ふらつくゼロを攻撃する。

若干のタメを入れながらの右フックがゼロの左肩を吹き飛ばし、続く左のブローが右脇腹を抉り取る。クルリと身体を回しながらの連続蹴りが無差別に蹂躙しゼロの身体を欠損させていく。

最早身動き一つ取れない状態に追い込まれたゼロはダンテの高く上がった右足を見上げた。

 

 

「バケモノ……め…」

 

その言葉を最後にダンテの振り下ろした脚はゼロの頭に叩きつけられ、そのあまりの衝撃でゼロは残っていた頭だけでなく身体ごと弾け飛んだ。

 

 

「ハァ……お前ら、やる気あるのか?」

 

 

ダンテはまだ生きているペシュリアンとエドストレームに視線を向ける。

自らのボスを一方的に蹂躙したダンテにエドストレームは顔を真っ青にガチガチと歯を鳴らし震える。ペシュリアンも顔色こそ見えないが震える身体に連動して鎧がカタカタと鳴っている。

 

ダンテはひとつため息をついて、二人に歩み寄る。

 

 

「Freeze!!」

 

 

ダンテは戦意を喪失した二人ごとケルベロスを使用して発生させた氷塊で身体を包み込んだ。

バルコニーにいた者たちは何が起こったか分からないといった顔で氷塊を眺めている。

 

 

「一体、なにが起こったというのだ……」

 

「分からないが、逃げるなら今ではないのか?」

 

「おいおい!もう帰るのか?お前らにもプレゼントを用意しているんだが?」

 

 

逃げ出す算段を立てる貴族達に氷塊の上に腰掛けたダンテが嘲笑するように笑う。

ダンテの声に耳を傾けることなく我先にと逃げ出す貴族たちを見逃すはずもなく、氷塊から飛び上がりパンドラを起動する。

 

パンドラはダンテを包み込むように広がり、宙に浮く移動砲台の姿(PF594 アーギュメント)を展開していた。

 

 

「じゃあな」

 

 

ダンテの言葉と共に数多の砲台すべてからミサイルが発射され逃げ惑う貴族達を吹き飛ばす。

ふわふわと庭の真ん中まで飛ぶとパンドラが元の形に戻り、ダンテは氷塊の上に着地した。

 

 

───ズズーンッ!!

 

 

ダンテは着地と同時に崩壊した建物の土煙に巻かれた。

 

 

「ゲホッ!ゴホッ!!……やりすぎたか?」

 

 

咳き込みながらパタパタと手を振っていると、次第に土煙が晴れ屋敷の惨状が目の当たりとなる。

庭の真ん中にワンポイントとして氷塊が聳え立つ、ただの瓦礫の山と化していた。

ツアレが地下以外にいれば間違いなく巻き込まれて死んでいるだろう惨状に、ダンテはポリポリと頬を掻いてちょうど門をくぐってきたセバスに声をかけた。

 

 

「セバス悪い、やりすぎた」

 

「これはダンテ様。つ、ツアレは無事でしょうか?」

 

「あー、多分……な」

 

 

ダンテはそう言いながらケルベロスに再度ツアレに渡した弾丸の魔力反応を探すよう指示した。

幸い、屋敷の地下に反応があるとのことだった。

ケルベロスの案内に従い、ダンテは地下への入口へ歩を進める。

 

 

「セバス様!これは一体?」

 

「あぁ、クライム君ですか。ここでのあなた方の仕事はなくなってしまったようですね」

 

「これはこれで状況の把握に努めなければならない気がしますが……」

 

 

セバスの後を追い敷地に入ってきたクライムは屋敷跡を見て呆然と呟いた。

クライムに続きブレインも盗賊風の男と話をしながら姿を見せた。

 

 

「こりゃすげぇ事になってるな…」

 

「一体何をどうしたらこうなるのか……とんでもないモンスターが暴れ回ってもこうはならないだろう?」

 

「まぁ、それ以上のモンスターが暴れたんだろうよ…」

 

 

ブレインは何かを察したようにやれやれと首を振りながらクライムに近づいて行く。

 

と、そこでブレインはダンテに気付き、盗賊風の男に「ほらな?」と笑いながら指差した。

男からすればなにが「ほらな?」なのか全く分からないのだが、目敏くダンテのコートに引っ掛けてあるブロンズプレートに気付いた。

 

盗賊風の男、名前をロックマイアーという。

王国の貴族レイブン候直轄の親衛隊の1人であり、また、元オリハルコン級冒険者であるという経歴の持ち主でもある。

 

ブレインが指差しているのは間違いなくブロンズプレートの冒険者であり、ロックマイアーの見間違いというわけではないようだった。

元冒険者であるロックマイアーはブロンズ級の冒険者の大凡の実力がわかる。

そのため、ロックマイアーはより一層混乱してしまっていた。

 

 

しかし、ロックマイアーの疑問は解消されることはなく、生き埋めにされてしまったツアレを救助するために瓦礫の山と化した屋敷の地下への階段を掘り起こす作業に従事することとなった。

なお、この事態の張本人であるダンテはブレインに一言二言声をかけると倉庫街の方へ行ってしまった。

ロックマイアーは手伝ってくれればよかったのにと呟いたが、たまたまそれを聞いたブレインは何かを諦めたように首を振っていた。

ブレインは何となく察していた。ダンテにこの手の作業を振るべきではないことを…目的である瓦礫の除去自体はおそらく一瞬で終わらせることが可能だろう。

しかし、それは除去した瓦礫に倍する瓦礫の山を築くことになりかねないのだ。最悪の場合、周囲広範囲にわたって更地になりかねない。

ブレインはカッツェ平野でのダンテの暴れ様を思い出していた。

 

 

クライムが連れてきていた兵士がそこそこの数がいたので、掘り起こし作業は想定より早く完了した。現在はセバスが地下に降りてツアレの確保に向かっているところだった。

 

クライムはその間にこの屋敷跡の状況を整理するべく兵士たちに調査をさせていた。

散開した兵士たちの集めてきた情報によれば、この屋敷跡の周辺の家屋にも瓦礫の破片が窓ガラスを突き破るなどの被害が及んでおり、一部兵士はその対応に追われる羽目になった。

周辺の住人に怪我がないのが不幸中の幸いだった。

 

それにくらべ、この屋敷跡の敷地内は氷塊と瓦礫の山の所為でぱっと見では分からないが、人の死という意味では地獄であった。

飛散した人の手足に首、肉片。そこかしこに点在する血溜まり。

人の原型を保っているのは氷塊の中で氷漬けにされている二人だけだった。

 

 

「………」

 

 

クライムはこの氷漬けの女性──エドストレーム──の表情を見てブルッと身を震わせた。

浮かべているのは恐怖。それだけではないようにも思えるが、一体何を見たらこのような表情が浮かぶのだろうかと、少し哀れに思った。

 

その他の首も表情が伺えないほど損壊しているか、恐怖の表情、もしくは何が起きたか分からないといった表情を浮かべているものしかなかった。

 

 

「それにしても、一体どこからこんな氷が出てきたのでしょうか?」

 

「さぁな、っと触らないほうがいいぞクライム君」

 

 

首をかしげながら氷塊に触れようとしたクライムをブレインはその手をつかんで止めた。

それを見ていたロックマイアーは瓶に入れた水を氷塊に向かって投げる。

 

──パキンッ!

 

確かに瓶は割れた。しかし、水があふれ出す前に瓶ごと凍りついて氷塊の一部となり果ててしまった。

氷に触れたものが一瞬で凍る。そんなことは普通であればあり得ない。

万が一あったとしても、それは周囲に冷気を発するはずだが、この氷に関してはすぐ近くにいても冷気は感じない。

なんとも不可思議なものだった。

 

 

「さっきのカッパープレートの冒険者はこれの上に座っていたよな?」

 

「……座っていたな」

 

「先程の方はアングラウス様のお知り合いの方ですか?」

 

「俺もそんなに詳しくないのだが、奴の名前はダンテ。エ・ランテルで冒険者登録している。確か今の拠点は帝都だと言っていたな。俺の知る限りセバス様に匹敵するほどの強さを持ってると思う」

 

 

ブレインの言葉にロックマイアーだけは首を傾げていたが、クライムは思わず唾を飲み込んだ。

 

 

「違いますよ。アングラウス君。ダンテ様は私などより余程お強いですよ。クライム君も機会があればダンテ様に師事してみても良いかもしれませんね。引き受けてくださるかは分かりませんが……」

 

「そ、それほどですか…」

 

「それでは、私は用事も済みましたのでこれで失礼します」

 

「はい、御協力ありがとうございました!」

 

「いえ、私はなにもしていませんよ」

 

 

ツアレを横抱きにしたセバスはそう言いながら去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~

 

 

 

 

 

ダンテはセバス達と別れた後、己の勘に従い街を歩いていた。

そろそろ深夜に差しかかろうという時間のためか、人出は多くない。

帝都に比べ夜間に使える照明が発達していない為だろう。

 

そんな暗闇の中でダンテは空を横切る何かを目にした。

しばらく目で追っているとその何かから黒い物体が落ちていった。

 

 

「あれは……モモンか?」

 

 

エ・ランテルにいたモモンが王都に来たということは、作戦の第2段階は近々始まるのだろう。

 

モモンが飛び降りた方向から微かに聞こえる戦闘の音は八本指の襲撃に関連する音だろう、予定通りのはずの場所に向かったらしいモモンにたいし不思議に感じたダンテは音の発生源に向かうことにした。

 

程なくして目的地に着いたダンテはモモンと仮面を付けたデミウルゴスの戦闘を目にした。

すぐ近くには蒼の薔薇にいたアンデッドが喰い入るようにその戦闘を見守っている。

同じく蒼の薔薇のオーガと双子の片割れが息絶えている姿を目にし、ダンテは凡その事情を掴んだ。

ダンテは蒼の薔薇のアンデッドの元に歩を進めた。

 

 

「よう、久しぶりだな」

 

「っ!!? き、貴様は…ダンテ?何故ここにいる?帝都にいたはずじゃ…」

 

 

突如現れたダンテに蒼の薔薇のアンデッドことイビルアイは咄嗟に警戒を強め、ダンテに対峙した。

その様子を戦闘を行いながら横目にモモンとデミウルゴスは見ていた。

 

 

『デミウルゴス、ダンテが来てしまったぞ?お前のシナリオ的に私はどう動くべきだ?』

 

『アインズ様にお任せ致します』

 

 

アインズとデミウルゴスは戦いの手を止めることなく伝言(メッセージ)でやり取りをしていた。

 

 

『おそらくダンテ様は冒険者モモンとの共闘はしないと思われます。万が一の場合、私はこの場から撤退して計画を次の段階へ進めることとします』

 

『わかった、その時には私がダンテが追撃しないよう引き止めることにしよう』

 

『ありがとうございます』

 

『それはそうと、ダンテに撤退を促す。私をダンテの方へ弾き飛ばせ』

 

『承知致しました』

 

 

──ガキンッ!

 

 

けたたましく金属が打ち付けられる音に続いてズザザと地面を滑る音がしてダンテの目の前にモモンが吹き飛ばされて来ていた。

 

 

「ダンテ!いいところに来た!イビルアイ殿を連れて撤退しろ!」

 

「しかし、それではモモン様がっ!!」

 

「わ、私のことは構うな!仲間を連れて早く行け!ラキュース殿なら彼女達を蘇生できるのだろう?」

 

 

ダンテに対して投げかけた言葉を何故かイビルアイに返され、一瞬戸惑ったモモンは咄嗟にそれらしいことを言って撤退を促す。

それでも、なお言い募るイビルアイの言葉に腹を抱えて笑うダンテ。

 

 

「ダンテ!モモン様の危機に何を笑っている!?」

 

「ふっくく……いいから、行くぞ。モモン様は俺達がいると邪魔だとさ」

 

 

ダンテはニヤケたまま、イビルアイの返事を聞くこともなく遺体二つを担ぎ歩き始めた。




3月8日はDMC5発売日ですね!
でも、遊ぶ前にまずは投稿しておかないとと思いまして、大変お待たせしましたがmission20の投稿と相成りました。

オバマスやりながらこの日を待っていました。
でも、来週まで出張でDMCできないんですけどね……
俺、この仕事が片付いたらDMCやりまくるんだ…


たくさんの閲覧、お気に入り、感想、誤字脱字修正ありがとうございます。

また次回、お時間ありましたらお付き合いください。
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