ユーゴがナザリックの敷地に足を踏み入れる少し前、モモンガは遥か上空からDevil May Cryを見降ろしていた。
「……セバス、あれか?」
「はい、モモンガ様。間違いございません」
「少し離れたところに着陸する。ついてこい」
そう言って下降し始めたモモンガを制止する声が届く。
「お待ちください、モモンガ様」
完全武装状態のアルベドだった。
ナザリックの防衛をデミウルゴスに任せて、この場にはモモンガ、セバス、アルベドの3人が来ていた。
アンフィテアトルムにてセバスからの報告を聞いた後、Devil May Cryを調べることを決定したモモンガは案内役のセバスと不測の事態を考え防御特化のアルベドを供に訪れていた。
「何があるかわかりません。モモンガ様はこちらで私と待機しセバスを斥候として送ることを具申いたします」
アルベドの提案にモモンガはちらりとセバスを見ると、セバスはいつもと変わらない表情でモモンガを見ていた。
「もっともだ、わかった。セバスは建物およびその周辺の探索。意思の疎通ができるものがいた場合は友好的に接触し私に連絡しろ。」
「かしこまりました」
「アルベドは私とこの場で待機、不測の事態に備えろ。有事の場合はスキルを使って私を守れ」
「はっ」
セバスとアルベドは空中の為、頭を下げることで了解の意を示し、行動に取り掛かった。
セバスはDevil May Cryから少し離れたところに着地し、周囲を窺いながら建物に接近していく。
アルベドはバルディッシュを構え油断なく周辺を警戒する。
その間モモンガは様々なスキルや魔法を駆使し、周辺を調べていく。
しばらくすると、セバスがモモンガの待つ上空まで戻ってきた。
「大変お待たせいたしました。モモンガ様」
「ご苦労だったなセバス。それで?」
「はい、私のスキルでは探知しきれない罠などを除けば周辺に問題はございません。建物の入り口までは安全であることを確認しております」
「よし、では建物の入り口まで行こうか」
「「はっ」」
今度こそ、地上に降り立ちDevil May Cry入り口を前にモモンガは建物を見上げる。
(間違いなくDevil May Cryだ。ユーゴさんのグリーンシークレットハウスに違いない)
「モモンガ様? これはグリーンシークレットハウスでしょうか」
アルベドが首をかしげながら前方の建物を観察していた。
アルベドが不思議に思うのも無理からぬことだろう。
ユーゴのグリーンシークレットハウスはカスタマイズしすぎて原型がほぼないのだから。
「そのとおりだ。お前たちはユーゴという者のことを覚えているか?」
「はい、至高の御方々のお話を伺う機会があった際に、出てきていた名前と記憶しております。ナザリックの者ではなかったと存じますが…」
「私もお姿を拝見したことはございません」
前者アルベド、後者セバスの言である。
「そうか、お前たちは会ったことはなかったか……。ユーゴはアインズ・ウール・ゴウンのメンバーではない」
「では、一体……」
「アインズ・ウール・ゴウンの外部協力者であり、私の友だ。そして、このグリーンシークレットハウスはユーゴのものだろう。私もこの拠点の制作には協力していたから間違いない」
モモンガはそう断言しながらも、よく似せた贋作である可能性を考え、探知系スキルや魔法、スクロールも併用し罠が無いかなどを確認していく。
「罠などはないようだな……」
モモンガはアルベドとセバスにそう告げた。
(ユーゴさんは罠とか仕掛けない人だったからなぁ)
あまりにも無防備すぎるとモモンガ、ぷにっと萌えの二人がかりで説教したことすらあった程だった。
「では、私が呼びかけてみましょう。モモンガ様は少しお下がりください」
「うむ、よろしく頼む」
モモンガはセバスの言葉に頷くと、そのまま数歩後ろに下がった。
逆にアルベドはモモンガの前に陣取り油断なくバルディッシュを構える。
「ごめんください。どなたかいらっしゃいませんか?」
セバスは、声を上げながら扉をノックする。
(ユーゴさーん!!どこいってんのぉ!?)
さらにスクロールを使い中に生命体などの反応があるか確認するともぬけの殻であることが分かった。
「…もう一度
---リリリリリリリリリリリ!!
「!!?」
不意に建物の中から響く音にモモンガの前方で警戒していたアルベドが全体防御スキル≪ウォールズ・オブ・ジェリコ≫を発動させる。
「…………あの馬鹿」
建物の中から聞こえるベルの音の正体に心当たりのあるモモンガは頭を抱えた。
「…頭痛い」
アンデッドに頭痛などあるはずもないがそう言いたくなる様な無防備さだった。
一つは、不在にもかかわらず黒電話の設定を変えていないこと。
一つは、不在の拠点に満足な防備も施さずどこかへ行ったかもしれないこと。
一つは、拠点に盗み聞き対策を施していないこと。
そして、おそらくではあるがこの建物自体に鍵がかかっておらず、誰でも侵入できる状態であるだろうこと。
同時に、モモンガはユーゴの身に何か起きたのではないかと考える。
「中に入るぞ!」
ドアノブに手をかけたその時、モモンガに
『モモンガ様、緊急につき失礼いたします』
『デミウルゴスか、どうした?』
『侵入者でございます』
『なんだと!?』
『侵入者は1名、銀髪で赤い服の人間です。』
『……は?』
『現在コキュートスが対処にあたっております』
『待て、デミウルゴス』
『はっ、いかがなさいましたか?モモンガ様』
『銀髪で赤いコートの男か? 背中に剣背負って、2丁拳銃の? 』
『…はっ?し、しばしお待ちください。確認します』
『………』
モモンガは冷や汗をダラダラ流していた。実際に汗は出ないので心の中でではあるが……
『お待たせいたしました。モモンガ様のおっしゃる通りの者です。また、コキュートスが対処に手間取っている様子でしたのでシャルティアを出撃させました』
『その戦い、今すぐ止めろ!!』
『はっ!かしこまりました』
モモンガはデミウルゴスに怒鳴りつけるように命令すると。後ろに控えていたアルベドとセバスに緊急事態であることを告げる。
「すぐにナザリックに帰還する。
モモンガは二人の反応を待たず
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モモンガとのメッセージを切ったデミウルゴスは、内心蒼褪めていた。
(私は何か見落としていたのでしょうか…)
モモンガの反応に自らの失態が何であるか、デミウルゴスは思考を高速で回転させる。
防御面の薄そうな相手に最大火力であるコキュートスをあてがう。……間違っていないはず。
ついで、最強のシャルティアを投入する。これが戦争であれば逐次投入は愚の骨頂ではあるが、そうではない。
もちろん小規模であろうとも逐次投入に比べれば一気に最大戦力を送り込むのが一番手っ取り早いが、ことはそう簡単なことではない、何事にもコストというものが存在するのだ。
その、コスト面を考えればこの対応は間違いではない。
デミウルゴスはそこまで考えてふと思い至った。
(モモンガ様はそんなことを仰っているのではない?)
戦うべき者ではないという可能性。
たとえば、戦闘に至ればナザリックを崩壊させ得る程の強者である可能性。
さすがにそこまではないとは思うが、片鱗はある。コキュートスとシャルティアの双方を相手取って戦っている。しかも明らかに余裕がありそうに見受けられる。
実力の上限が不透明な今、100%ないと言い切れないのだ。
(いや、ありえません…)
たとえ、コキュートスやシャルティアが敵に回ったとしても、ナザリックの戦力であればこの二人を押さえ込むことは容易い。そんな戦力が揃っているナザリックを崩壊に至らしめるほどの強者は至高の御方々を除けば存在するべくもない。
しかし、万が一多大な被害を受けては防衛を任された身として大失態だ。
(おそらく、モモンガ様はこの異常事態において戦力を失うことを憂慮されているのでしょう。交渉による解決に切り替えるべきか…)
デミウルゴスがその結論に至り、コキュートスらに引くよう伝えようとすると同時にモモンガの声が響き渡った。
「そこまでだ!!」
モモンガの声を聞きデミウルゴスは今度こそ顔色を真っ青にした。
遅かった……。
デミウルゴスに戦闘を止めるよう指示しながら、自らが最速で駆けつけるなど、尋常ではない。
考えまいとしていたこと…この侵入者は至高の御方々の関係者であるという可能性が高まったのだ。
かつてナザリックに来たやまいこの妹である明美のことをデミウルゴスは思い出していた。
この侵入者が明美と同じように関係者であった場合、至高の御方々に対する不敬はもちろん、先ほど考えていたナザリックを崩壊足らしめる強者である可能性も現実味を帯びてくる。
最悪のパターンであることを確信したデミウルゴスは地に膝をつきうなだれた。
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「……あ?」
ユーゴは制止の言葉の主を肩に剣を載せ訝しげに見上げる。
楽しくなってきていた戦闘に水をあけられて若干不機嫌になっていた。
「………あ゛?」
対するモモンガは絶望のオーラを纏いながらユーゴを見下ろし、めちゃくちゃ不機嫌になっていた。
モモンガのあまりの威圧にユーゴと戦闘していたコキュートス、シャルティアをはじめ、モモンガに続いて
「…ってあれ?モモンガさん怒ってる?」
「怒ってないように見えますか?」
「………いや、誰も傷つけてないよ?」
ユーゴの言葉を受けモモンガの怒りは抑制された。
「……はぁ、ユーゴさんが傷ついてるじゃないですか」
モモンガは一度抑制されたにもかかわらず、ユーゴのあまりにも的をはずした言動にじりじりとした怒りを押さえ込みながら言う。
モモンガのその言葉にコキュートスとシャルティアの肩がビクッと動く。
「モモンガ様っ!此度の失態、すべて私の指示によるものでございます。なにとぞ罰は私にっ!」
デミウルゴスがすかさず、モモンガの真下まで這いより地面に頭をつける勢いで嘆願する。
「モモンガ様、戦端ヲ開イタノハ――」
「よい」
コキュートスの言葉をさえぎるようにモモンガは発した。
「これはお前たちのミスではない。よって謝罪は不要」
「しかし、モモンガ様」
なお、言い募るデミウルゴスをユーゴはぼんやり見ていた。
(え?何こいつら怖い)
控えめに言ってドン引きだった。
モモンガが現れた途端、殺気を放ちながら襲い掛かってきていた二人がこちらのことなど意に介さないように跪き始めたのだ。
戦闘中にそんな行いをすれば次の瞬間には普通に死ぬだろう。
御方々至上主義の守護者たちには当然の行動だった、失望は死より恐ろしいのだ。
しかし、ユーゴはそんなこと知る由もない。
もっとも、この点に関して言えばモモンガであっても知る由はない。
「デミウルゴス、何度も言わせるな。お前に非はない」
上空からデミウルゴスの前に降りてきたモモンガはデミウルゴスにそう告げた。
「…ありがとうございます」
デミウルゴスは深く頭を下げたまま、何とか感謝の言葉を口にした。
「アルベド」
「はっ」
「現時点で周辺の確認は一旦終了とする。続きは夜が明けてからとする。マーレに連絡し、ナザリックの隠蔽作業を開始せよ」
「承知いたしました」
アルベドは極上の笑みでもってモモンガを見つめ、そして頭を下げた。
「セバス」
「はい、モモンガ様」
「私は部屋へユーゴさんと戻る。ペストーニャに私の部屋へ来るように伝えろ」
「かしこまりました」
静かに礼をし、了解の意を伝えるセバス。
「マーレを除く各階層守護者たちは自分の持ち場で待機とする」
「「はっ」」
モモンガの待機命令に失態を演じてしまったと考えている、デミウルゴス、コキュートス、シャルティアの3人は跪いたまま力強く返事をした。
「……モモンガさん?」
「あんたはこっちに来い!」
モモンガはおずおずと声をかけてきたユーゴの腕をつかむとリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを起動しモモンガの私室へ転移した。
「まさか私室へ伴われるほどとは……」
モモンガが転移してしばらくはそのままの姿勢だったデミウルゴスがポツリとつぶやいた。
「……それほど重要な方なのでしょう。後ほどモモンガ様に詳しくお話を伺ってみるわ」
デミウルゴスのつぶやきに、苦虫を噛み潰したような顔をしたアルベドが答えた。
「よろしく頼むよ、アルベド…」
「気持ちはわからなくはないけど、今はモモンガ様のお言葉に従って動くときよ。デミウルゴス?」
「そう、だね…」
デミウルゴスはそう言うとゆっくり立ち上がった。
「コノ失態、ナントカ挽回セネバ……」
「私も、持ち場にもどりんす……」
コキュートスとシャルティアは若干肩を落しながら、ナザリック内に戻っていった。
「では、私も戻らせていただきます」
セバスが残ったアルベドとデミウルゴスに一礼するとちょっと早足で戻っていった。
「アルベド、申し訳ないのですが先ほどの方について伺っても?」
セバスに続いて戻ろうとしていたアルベドにデミウルゴスは声をかけた。
「ユーゴ様についてかしら?」
「あの方が…」
デミウルゴスが何かに気づいたようにつぶやいた。
「知っていたの?」
「えぇ、お姿を拝見したのは初めてだったのですが……」
「そう、あなたも初めてだったのね」
「も、ということはアルベドも?」
「そうね、私も初めてよ。だから私もあなたに情報を提供できるほど知り得てはいないわ。ただ…」
アルベドは少し言い辛そうに視線をデミウルゴスから外す。
「ただ? なんです?」
「………モモンガ様が友であると仰っていたわ」
「…………なんということだ」
モモンガに許しの言葉を貰ったとはいえ、デミウルゴスは深い絶望の表情を浮かべていた。
デミえもんは悪くないんや…
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ミスターサー様
盗る猫様
JINAX様
万屋よっちゃん様
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次回は戦闘が書けたら良いなぁとぼんやり思ってます。
お時間ありましたらお付き合いください。