オーバーロード~慎重な骨と向う見ずな悪魔~   作:牧草

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とっくに明けてましておめでとうございました。


mission 27

かつて伝説を生み出したナザリック地下大墳墓。

その伝説とはギルド連合および、その関係ギルドに加え傭兵(主に連合ギルドに関係なく集まったアインズ・ウール・ゴウンに恨みのあるプレイヤー)、合計1500人にも及ぶ過去最大級のギルド攻略戦においてプレイヤーを全滅させているのだ。

通常ギルド攻略戦で攻め側の全滅というのはありえない。攻め側の旗色が悪くなれば攻め入ることをしないプレイヤーが増えるからである。

それがありえるとすれば、一網打尽にされるという戦力差がある場合に限られるだろう。

アインズ・ウール・ゴウンがそれを成し遂げているとなれば………

 

 

「いや、一人で攻略って無理ゲーだろう」

 

 

ダンテはナザリックの入り口を前にごちた。

 

ナザリックが当時程の難易度を維持しているわけはないが、攻め側の戦力1500分の1に対してナザリックの防衛力が1500分の1にまで落ちているとは到底思えない。

仮に防衛力が1500分の1まで落ちていても無理だろう。

実際にその戦力比で攻め側が敗北しているのだから…

 

 

ダンテは言葉とは裏腹に特に身構える様子もなく、扉を無造作に開け広げ、普段と変わらぬ足取りでナザリックへの進入を果たした。

 

 

そんな様子を第5階層のニグレドの部屋からアルベドと共にアインズは眺めていた。

 

 

「始まったな。アルベドよ、自信の程はどうだ?」

 

「はい、相手がダンテ様であろうと間違いなく止めることが出来ると確信しています」

 

「そういえば、防衛体制の切り替えのテストも兼ねているのだったな?」

 

「はい、そのため第1階層に関しては先程のワーカーたちに対して敷いていた体制と同じになっています」

 

 

ありていに言えば、第1階層を様子見に使う方針である。

さらに第1階層をブロックごとに分けて突破されるまでプロセスや時間などを解析し総合的な脅威度によって第2階層以降の防衛体制を切り替えていくのである。

これによって必要最低限の防衛を可能とし、コストを削減する。

今回の訓練は脅威度の見極めや、防衛対戦の切り替えのテストも兼ねているのだった。

 

 

「なるほど、道理で足止めにもならないわけだ……」

 

 

アインズが目を向ける先には狭い通路にひしめくアンデッドをリベリオンで刺し貫くように猛スピードで突き進むダンテがモニターに映されていた。

アンデッドの塊を突き抜けた先には計6体の死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が待ち構えていた。

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)達はダンテを視認すると一斉に火球(ファイヤーボール)を放った。

しかし、リベリオンを逆手に持ち腰を落としたダンテが一瞬の溜めの後に放ったDrive(斬撃)火球(ファイヤーボール)を残らず無効化する。

そして次の瞬間には死者の大魔法使い(エルダーリッチ)達の首が一斉に転げ落ちた。

 

 

「相変わらず、技の選択に無駄がないな」

 

 

ダンテの放ったDriveは2連撃で、その2撃目が死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の首を刎ねていた。

ダンテはリベリオンを肩に載せると、転がっている首を蹴飛ばして奥へと歩を進めた。

 

 

モンスターの配置、罠の設置場所。

どれをとっても秀逸であるとダンテは感じた。

たとえそれが自身に対してあまり効果をなさないとしても評価に値すると考えていた。

例えば先の死者の大魔法使い(エルダーリッチ)、彼らはこの世界の一般冒険者からすれば強敵であるが、アダマンタイト級などの上位冒険者ともなれば倒すこと自体は難しくない。

そんなモンスターであっても、先程突破した配置は必殺の配置といえる。

アンデッドの集団をくぐり抜け、一息つけるかと思ったタイミングで火球(ファイヤーボール)の乱れ撃ちである。

対抗する術がなければ火だるまになるのは必至だろう。

また、ここが横に広くない通路であるというのも利点である。

大規模な崩壊が起きれば痛手ではあるが、侵入者はそれ以上侵入できないし、場合によっては崩壊に巻き込んで殺すことだってできる。

なにより、火球(ファイヤーボール)を避ける場所がないのだ。

一見すれば炎の壁が迫ってくるようにすら思える。

 

疫病爆撃手(ブレイグ・ボンバー)の配置もエグい。

このモンスターは死亡した際に、爆発して負のダメージを与えると共に周囲のアンデッドを回復させる能力を持っているのだが、ところどころに紛れ込んでいるため、思わず倒してしまうと、負のダメージは受けるわ、せっかく倒したアンデッドは再び襲い掛かってくるわと侵入者サイドから見れば厄介極まりないモンスターである。

ダンテもこいつには地味にダメージを貰っている。

アンデッドではないので回復しないし、ダンテはアインズのように一定レベル以下の攻撃は無効化するといったスキルを保持していないのだ。逆にどんな攻撃も数%カットというような相手のレベルによらない防御スキルを保持している。そのため、相手がどれだけ弱くてもダメージは負ってしまうのだ。

アインズは一定のレベル以下相手であればどれだけいようとも倒されることはないが、ダンテは倒されることもある。逆に強者が相手ならばアインズのスキルは死にスキルとなるが、ダンテのスキルは生きてくるのだ。むしろ相手が強いほど恩恵にあずかれるスキルであるといえる。

 

相手が弱くても数打てば倒せるダンテ用の布陣である。

通路の交差点や一方通行の通路に飛んでいなければ確実に不意を打たれるように床擬態魔(フロアイミテーター)が配置されていたり、行き止まりの壁に配置される扉擬態魔(ドアイミテーター)がほんの少しずつ、だが確実にダンテのHPを削っていく。

ダンテの足が止まるほどの成果を得ることはないが、その様子をアルベドはタワーディフェンスゲームでも遊んでいるかのように眺めていた。

 

 

ダンテはいくつかのアンデッドの襲撃を越え、シャルティアが守る第2階層の死蝋玄室の前まで来ていた。

ナザリックはその構造上、第4階層に降りるためには死蝋玄室を通らなければならない。

ルートとしては第1から第3まで降り、そこから第2階層へ上がる必要がある。

攻略する側からすれば面倒なつくりをしている。

とはいえ、ダンテはナザリックの造りをある程度把握していることもあって、罠の配置こそ大幅に変更されているものの初見攻略に比べれば幾分マシに思えた。

 

 

「さて、シャルティアか……」

 

 

通常、目の前の部屋に入るとシャルティアに加え、複数の吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)と戦うことになるのだが、嫌な予感を覚え扉の前を行ったり来たりしている。

ここまでダミーで設置されている攻勢の罠にいくつか掛かったものの、転移の罠には掛かることなく順調に来ているため、日頃から自分の運のなさを実感しているダンテは懐疑的になっていた。

 

とはいえ、いつまでも扉の前でうろうろしていても話が進まないので、意を決して扉に手をかけようとした瞬間、轟音と共に土埃が舞い上がる。

そこにはスポイトランスを地面に突き立ててダンテを睨んでいる白色のシャルティア(エインヘリヤル)がいた。

間一髪のところで扉の前から飛び退いていたダンテは「やっぱりな」と言わんがばかりの苦笑いを浮かべている。

 

 

「《死せる勇者の魂(エインヘリヤル)》による奇襲か……ナザリックの構造を知っているダンテには思いもよらないタイミングになっていたはずだが、惜しかったな」

 

 

アインズの呟きに、モニターに映し出されているシャルティア以上の悔しそうな表情を浮かべるアルベドがギリッと歯軋りをした。

アルベドは死せる勇者の魂(エインヘリヤル)の奇襲から、本体のシャルティアと合わせた波状攻撃でダンテのHPを削るつもりだったのだ。あわよくば、そのまま本当の意味での撃破(・・・・・・・・・)まで持っていければと考えていた。

もっとも、シャルティアはアルベドと違いダンテに対して敬意を持っているため、それ(・・)を自発的に起こすことはないだろう。

それでもダンテの実力を知っているシャルティアが全力で事に臨むことは間違いなく、事故(・・)の可能性は十分にある。アルベドはそれに賭けている。

その可能性をほんの少しでも上げる。そのために、ここまでアンデッドを多数配置したり、いやらしい配置の罠で地道にダンテのHPを削っていたのだ。

分の悪い賭けだが、何も手を出せずに燻っているよりはとの考えである。

 

 

 

 

 

 

目の前で槍を扱くように振るうエインヘリヤルは思わぬタイミングで奇襲を受けたダンテに一息つく間も与えず突撃を敢行した。

ダンテは迎え撃つつもりで振るいかけたリベリオンを引っ込め、咄嗟に召還したアグニで受け止めた。

 

 

「なっ!?」

 

 

声の発生源はダンテの背後に突撃を仕掛けてきていたシャルティア本人によるものであった。

シャルティアの手に握られたスポイトランスはルドラによって止められていた。

 

 

「残念だったな」

 

 

ダンテが言葉と同時に手にした二刀を繋いで振り回すと周囲の空気が熱を帯び渦巻く。

シャルティアは咄嗟に渦に抗うように踏ん張るが、勢いを増す渦についに巻き上げられてしまった。

エインヘリヤルも同様に巻き上げられ吹き飛ばされる。

流石階層守護者というべきか、無様に落ちることはなく着地する。

 

 

「流石ダンテ様、本当にお強いでありんす」

 

 

話しながらもシャルティアの傷が急速に回復されていく。

シャルティアのもつスキル《時間逆行》でダメージを無効化したのだろう。

その様子を見ていたダンテは頭を掻きながら、後何回発動させたら回数切れになるのか思い出そうとして諦めた。

とはいえ、時間逆行で回復するうちは兎に角ダメージを与えればいいのだが、回数が切れてしまったタイミングに大技があたってしまうと、そのままHPの全損に繋がりかねないので危ない。

もっとも、回数が残っていたとしてもシャルティアがスキルを発動し損ねてしまうと全損してしまうため、極力大技は使わないようにしなければならないだろう。

 

ぶっちゃけ縛りがきついとダンテは早くもうんざりし始めていた。

万が一にもNPCを殺したくないダンテはHPを削るのではなく降参させる方向で決着をつけることにした。

 

 

(とりあえずはエインヘリヤルを早いところ退場させる!)

 

「Let's start the party!!」

 

 

チャキッ!とエボニー&アイボリーを構えそれぞれシャルティアとエインヘリヤルに向ける。

銃口が己を向いているにも関わらず、シャルティア達は同時に突撃を仕掛ける。

同時にダンテが発砲するが、掠るぐらいなら構わないとばかりに最低限の回避のみで迫りくる2人。

スポイトランスを当てさえすればこの程度は回復できると考えた結果だろう。

しかし、それはダンテに当たればの話である。

エインヘリヤルの突きを飛び上がり避けると、それを待っていたとばかりに飛び上がった先のダンテに向けてシャルティアが突きを放つ。

ダンテは軽く身体を捩るとスポイトランスに足を絡め、グルリと回転する。回転中にエインヘリヤルから放たれた突きをスポイトランスの横合いからアイボリーで叩くことによって軌道を反らす。同時にダンテは砲弾のように飛び出し、2人から距離をとる。

その際に、銃弾の雨を降らせることも忘れない。

 

 

「ハッハー!捕まえてみな!」

 

「清浄投擲槍!!」

 

 

ダンテの挑発にシャルティアが釣られてスキルを発動、MPを消費することで必中の効果を得た清浄投擲槍はまっすぐダンテに向かって飛ぶ。

しかし、ダンテは避けることもせず軽く腰を落として、清浄投擲槍が当たる刹那に腕を回すように受ける。

 

 

──カキンッ!

 

 

金属同士が当たるような音が響くとそこにはダメージを負ったような形跡の全くないダンテの姿があった。

間違いなく当たっているはず。むしろ必中の効果があった以上当たっていないはずはない。

しかし、ダンテは我慢している様子もなく無傷。耐性とかそういったレベルではない。

シャルティアはすぐに以前、たっち・みーとのPVPの様子を収めた映像を見たときにダンテが使っていた防御の技であることに気付いた。

たっち・みーの苛烈な攻撃すら防御しきるその技の前には自身の技など効きはしないだろうと、すぐさま頭を切り替える。

距離がある状態では勝ち目はないと考え、一足先に突撃を敢行しているエインヘリヤルに続き踏み出した瞬間、上空に吹き飛ばされるエインヘリヤルを視認した。

 

そこからエインヘリヤルが消滅するまではあっという間であった。

 

シャルティアとて、その様子を呆然と見ているつもりはなかった。

エインヘリヤルに追撃を仕掛けるであろうダンテを攻撃すべく、自身も吹き飛ぶエインヘリヤルを追って疾走するが、それよりも遥かに早く、まるでお手玉のようにあちこち無軌道に吹き飛ぶその様に追う足は止まってしまっていた。

 

正直なところ、ダンテが何をしていたのかシャルティアにはよく分からなかった。

エインヘリヤルが消滅すると、ダンテが本来の悪魔の姿で地面に降り立った。

 

 

『Sweet, Babe!』

 

 

独特なエコーのかかったようなダンテのご機嫌な声を聴き、ことここに至ってシャルティアはようやく自身の失策に気付いた。

ダンテに近接戦を挑むべきではなかったのだ。

所持する主武装であるスポイトランスの力によって可能となるHPの回復をあてにしていたのである。

HPの削りあいであれば、攻撃と同時に回復が可能な自身に分があると考えたシャルティアは間違ってはいない。が、それは攻撃が当たる(・・・・・・)ことが前提となる。

かといって、遠距離に腰を据えれば先のようにガードされるのがオチである。

 

 

 

「接近戦と遠隔戦の切り替えを繰り返し、それぞれの距離から適した攻撃をするのが正解だったな……」

 

 

ぽつりとアインズが呟く。

 

 

「申し訳ありません、アインズ様。それは一体どういう意味なのでしょうか?」

 

「謝ることはない、当然の疑問だ。つまりはダンテと同じ戦い方をするのが一番勝率が高いというだけだ」

 

 

アインズは敢えて同じ土俵で戦うのが一番であると分析している。

実際にダンテは自身と同じような戦い方をする者とのPVP戦績が一番悪いことをアインズは知っていた。

 

 

「まぁ、言葉にすれば簡単なことではあるが、実行するのは難しいだろう。

戦闘においてはそれぞれで役割というものがある。

たっちさんやぶくぶく茶釜さんのように前に出て戦う前衛職、私やウルベルトさんのように魔法中心に戦う後衛職、その中間でどちらもサポートするような中衛職。配置場所もそうだが、アタッカーやタンク、ヒーラー、バッファーなどといった役割もある。

各々役割が決まっているが故にそれ以外の配置につくことはまずない。

しかし、ダンテはアタッカーではあるが、その配置場所は選ばない。それほど多様な攻撃手段を持ち合わせている。どこからでも攻撃ができるのだ」

 

 

近接戦を好む傾向はあるがな、と笑うアインズをアルベドは真剣に見つめた。

多種多様な武器を扱うダンテを思い出すに、中近距離で戦うのは得意なのだとはアルベドも理解している。

アルベドが未だ見ていないだけで遠距離用の武器もあるのだと、アインズは言外に言っていた。

 

 

「前衛アタッカーは近付けなければダメージを与えられない。後衛アタッカーは近付かれれば一方的にダメージを負う」

 

「なるほど……ではダンテ様に勝つには、ダンテ様の距離でこちらもダメージを与えられる手段を持つということですね」

 

「タイマンに限った話ではあるがな……

ダンテはソロ故に各距離でのみ戦う相手に慣れている。逆に言えば自分と同じ戦い方をする相手には慣れていないのだよ。

そして、守護者でダンテのように戦えるのはシャルティアを措いて他にはいない」

 

 

アインズは一つ息をつくとシャルティアとダンテの戦いに再び目を向ける。

距離が詰まればスポイトランスで、逆に距離が空けば魔法やスキルを駆使して戦うシャルティアの姿がそこにあった。

 

 

「流石はシャルティア。自力でそれに気付いたようだ……」

 

「えぇ、ですが……」

 

「少し遅かったようだな。それに同様の戦い方をするということは、経験の差というものが顕著に出る」

 

 

だから最初に難しいと言ったのだけどな、とアインズは苦笑するように呟いた。

 

そこから二人の戦いに決着が着くまで時間はかからなかった。

しかし、ダンテとしてはかなり長引いたと感じていた。

流石に各種スキルを限界まで使用してまで粘られることは想定外だった。

 

 

「まだやるか?」

 

「こ、降参でありんす」

 

 

ダンテはシャルティアの言葉を聞いて、首元に突き付けていたルドラを引いた。

 

 

「「流石はダンテ、我々を使わせれば右に出るものはいない」」

 

「黙ってろ」

 

 

ダンテは双剣の柄頭同士をぶつけて黙らせると背に背負うことなくアイテムボックスに収納した。

 

 

「シャルティア」

 

「はい……」

 

「まぁまぁだ、前の時よりよかったぜ」

 

 

ダンテはそう言うと、死蝋玄室を抜けて第四階層に降りて行った。

褒められたとも取れるダンテの言葉にしかし、シャルティアは褒められたとは思っていなかった。

ダンテは結局、エインヘリヤルを倒した後は魔人化することもなくシャルティアと戦っていたのだ。

シャルティア本人からしてみれば手を抜かれたと思っても仕方なかった。

もっとも、それはシャルティアの勘違いに過ぎない。

シャルティアとのサシの勝負で魔人化しなかったのは、エインヘリヤル相手に既に使ってしまっていたからである。

常時人の姿をとることで魔人化した際の強化を図るダンテのビルド上、連続の魔人化発動はできないのだ。

再び魔人化するには溜めが必要なのだ。

体力の消耗を抑えたかったダンテは2対1の状況で戦うことをヨシとしなかった。その為、エインヘリヤルを速攻で倒してシャルティアと対峙することにしたのだ。

それほどシャルティアを評価している。

 

結果としてダンテの圧勝で終わってこそいるが、ある意味でダンテの一番強い部分と戦ったとも言える。

戦いが更に長引けばダンテは再び魔人化しただろう。

 

 

『シャルティア』

 

『アインズ様!?』

 

『落ち着けシャルティア、伝言(メッセージ)だ』

 

『も、申し訳ありんせん……』

 

『謝罪の必要はない。ダンテ相手によくやった。素晴らしい戦いだったぞ。今はゆっくりと休むがよい』

 

『ありがとうございんす……』

 

『フフッ、どうした?不服そうだな?』

 

 

シャルティアの反応に思わず笑うアインズ。

 

 

『いえ、不服などとんでもありんせん。ただ……』

 

 

シャルティアは自身の思ったことをありのままアインズに伝えた。

自分はダンテに本気で戦ってもらえなかった。手加減をされたのではないか?

期待に応えられず失望されたのではないか?

 

 

『なるほど、シャルティアはそう感じたのか』

 

『はい』

 

『では、私が断言しよう。本当に素晴らしい戦いだったと。あれは本来のダンテの戦い方であったと』

 

『ほ、本当でありんすか?』

 

『ダンテは基本ソロだから、多対一の状況を短時間に抑えるため魔人化の高火力で相手を倒すパターンが多い。私が見ていた限りだと、もう少し戦闘が続いていればダンテはもう一度魔人化しただろうな』

 

『………』

 

『ちなみに、我等アインズ・ウール・ゴウンのメンバーでダンテとPVPを行って魔人化させることができたのはたっちさんだけだ』

 

 

アインズのその言葉にようやくシャルティアは顔を上げた。

 

 

『もちろん相性の問題もあるだろうが、お前はギルドメンバーと同じくらいの戦いを見せたのだ。称賛に値する』

 

 

嘘ではない、魔人化をするつもりのないPVPや魔人化する前にボコボコにされた戦いもあったのは確かだが、ユーゴが魔人化してまで本気で戦ったギルドメンバーはたっち・みーただ一人である。

たが、それも仕方のないことだった。

そもそもレベルの差が10もあれば手も足も出ずにやられてしまうのが普通だったユグドラシルである。

80レベル程度の力で100レベルと戦えるダンテが異常であり、最大160レベル近い出力を出せるダンテと戦えるたっち・みーが異常なのである。

 

アインズが思うに、その時の戦いは映像こそ残ってはいないが、以前シモベたちを集めて見せた同カードのPVPと比べても桁が違うと思うようなものだったことを鮮明に覚えていた。

 

その領域まではまだ一歩も二歩も及ばないが、素直に称賛できる戦いだったとアインズは本気で思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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ダンテは地底湖の前で深い溜息をついていた。

 

 

「マジかよ」

 

 

普段は地底湖の底に沈んでいるはずのガルガンチュアが目の前に聳え立っているのだ。

実験とはいえ、流石にガルガンチュアまでも起動してくるとは思ってもみなかった。

罠さえ避ければ第四階層はスルーできると思っていたのだ。

そもそも、内部で動かす前提のモノではないため、起動時には自動に外へ転移するはずと記憶していたダンテは内心で焦っていた。

この様子では第八階層のアレらも動かしてくるかも知れないとダンテは密かに戦慄していると、ガルガンチュアがその大きな拳を振りかぶっていた。

次の瞬間、巨大な拳が地面を揺らす。

咄嗟に後方宙返りで直撃を避けたが、ガルガンチュアは既に次の拳を振りかぶっていた。

巨体の割に速度のある拳を繰り出すガルガンチュアに対して、リベリオンを肩に担いだままステップを踏むように避けるダンテ。

どうあがいても、巨体な割(・・・・)に素早い程度のガルガンチュアの拳による攻撃だけではダンテを捉えきることはできない。

やはりというか、ガルガンチュア十八番の広範囲攻撃はできないよう設定されているらしい。

流石にナザリックを破壊することまではしないように設定しているようだった。

でなければ絨毯爆撃のような範囲攻撃にダンテもろとも第4階層は見る影もなくなってしまうだろう。

 

 

ガルガンチュアの起動には流石にアインズも驚いていたが、アルベドが意図を説明すれば納得したように息を吐いた。

曰く、少しでもダンテの不意を突いてダメージを与えられればと考えたと……

ダンテでなくとも、ガルガンチュア程の巨体が目の前に現れれば驚き隙になることは間違いないだろう。

その実験の意味もあるという。

そういう意味では、蜥蜴人(リザードマン)支配の為に一度起動したきりで使う場面もないガルガンチュアを効果的に使えるだろうとアインズは考えた。

残念ながら、ダンテへのダメージという意味では効果はなかったが、確かに驚いた顔をしていたのは確認できた。

 

幾度となくダンテはガルガンチュアの堅い腕や頭に攻撃を加えるが、効き目の薄さに辟易とし始めていた。

ガルガンチュアの拳を避け、アグニとルドラを振り回しながらガルガンチュアの腕の上を疾走する。

さらに走るダンテを狙い撃つように拳が振るわれれば宙に舞い、ルシフェルの魔力剣を縦横無尽に突き刺す。

さらに走りガルガンチュアの頭部にまでたどりつけば、イフリートを装備した拳を幾度も叩き込む。

手を変え品を変え、リベリオンにこだわらず、ケルベロスも使えばギルガメスをも使ってガルガンチュアに攻撃を加えていくものの、薄っすらと傷はついているようだが効果は皆無と言える。

一方でガルガンチュアの攻撃はダンテに当たる気配もなく、ダンテもガルガンチュアの攻撃に慣れてきたのか余裕をもって回避し続ける。

どちらの攻撃も決定打に欠けていた。

 

その様子を見ていたアルベドは気が気でなかった。

現状ガルガンチュアは拳しか使わない設定としているが、この戦闘の様子を見るにすべての攻撃を解禁していたとしても結果が変わらないのではないかと思えたのだ。

流石のガルガンチュアも、自身に張り付いている敵相手に拳以外の攻撃手段をとれるはずもないのだ。

搭載されている範囲攻撃を行えば、自身も巻き込まれダメージを負ってしまう。

ある意味完璧なガルガンチュア対策、少なくともアルベドにはそう見えていた。

これにより、フィールドの限られた第4階層におけるガルガンチュアの使用は効果的ではないことが浮き彫りになった。

少なくとも戦闘経験の豊富なカンストプレイヤーには通用しない。

足止めとしては優秀なのかもしれないが、高レベルプレイヤーに集られれば何もできずに沈むことだろう。

使用する機会があるかはわからないが、ガルガンチュアは対軍兵器としての利用が最適解のように思える。

運用方法の見直しが必要であると心のメモに書き記した。

 

 

正直逃げるのは性に合わないが、このままでは勝つにしろ負けるにしろどれほどの時間がかかるか想像もつかない。

ガルガンチュアはその巨体もあって攻撃範囲こそ広いが、拳しか使わない今であれば逃げるのは容易いだろう。

しかし逃走する場合、ガルガンチュアの撃破なくして第5階層への転移門(ゲート)が使えるかわからないことがネックとなる。

 

 

「使えなかったら倒すしかないか……」

 

 

意を決したダンテは、迫り来るガルガンチュアの拳に対して、一瞬だけ魔人化して真っ向からリベリオンをぶつけて弾く。

思わぬ反撃によって体勢を崩したガルガンチュアをダンテは飛び越えて第5階層へ走った。

 

 

 




たくさんのお気に入り、感想、評価。本当にありがとうございます。
また、誤字脱字の報告もありがとうございます。


また次回もお付き合いいただければ幸いです。
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