オーバーロード~慎重な骨と向う見ずな悪魔~   作:牧草

32 / 41
大変長らくお待たせしてしまいました。
コロナの影響で大変な目にあっていましたが、生きてます。

エタってませんし、エタるつもりもありません。


mission 28

幸いなことにガルガンチュアを倒す必要もなく第5階層に到達したダンテは猛吹雪によってホワイトアウトしている状況にため息をついた。

普段から雪がチラついていたりする第5階層だが、ホワイトアウトするほどの吹雪が発生しているのは侵入者がいるときだけである。

 

第5階層は吹雪による遭難を誘発し、足止めをしつつ冷気による継続ダメージを与えるフィールドである。

狭い視界に加え雪山における天然罠であるクレバスも存在するため危険度は高い。

 

現在アインズやアルベドがダンテを監視している氷結牢獄も同階層にあるが、転移以外で氷結牢獄に行くことは出来ないようになっている。

侵入者が氷結牢獄に行くには特定の転移罠にかかる必要があるのだ。

それも普通に進むのであれば通る必要のない場所に隠されているため、たどり着く可能性はさらに小さくなる

 

ダンテは差し当たり氷結牢獄に行く必要はないと考え先へ進むことを優先している。

次の第6階層に向かうにはスズメバチの巣をひっくり返したような形をしたコキュートスの住居である大白球(スノーボールアース)を目指す必要がある。

そして大白球(スノーボールアース)の周りにはLv82という高レベルモンスターである雪女郎(フロスト・ヴァージン)が配置されており、猛吹雪の中を潜み、大白球(スノーボールアース)に気付かずに近づく敵を奇襲する。

それ以外ではあちらこちらに非実体のアンデッドが配置されている。

それら自体はあまり強くないのだが、非実体の為レイスのように半透明で吹雪にまぎれると目視し辛く奇襲を受けやすい。さらに戦闘が行われる度に方向を見失いやすくなり、さらに遭難の可能性が高まる。

じわじわと体力を削る。冷気による継続ダメージを考えれば馬鹿にできないダメージを最終的に受けることになる。

長居すべきではない階層となっているのだが、ここはナザリック地下大墳墓、ギルドメンバーによる魔改造を受け長居をせざるを得ないような造りになっている。

 

と、そんな想定の階層ではあるが、高レベルプレイヤーであれば冷気無効などのスキルを持っている者も多いし、視覚の阻害のような初歩的なデバフは簡単に無効化できる。

感知スキルがあれば奇襲なんて受けることはない。

つまるところ環境だけであれば時間稼ぎもほぼできない程度のギミックとなり果てているのだ。

あくまで高レベルプレイヤーの話であり、この世界の冒険者などからすれば極限の環境になるだろう。

 

 

ダンテも高レベルプレイヤーの例に漏れず真っすぐ大白球(スノーボールアース)を目指していた。

非実体のアンデッドなどはダンテに近づく間もなく銃で釣瓶打ちにされ消滅していく。

ダンテはちらりと見向きもしないので奇襲どころか方向を見失わせることもできない。

 

 

「………」

 

 

そのはずだが、ダンテは見事に足止めを食らっていた。

ある意味、この階層の本領だろう。

ダンテは雪に隠された罠を見事に踏み抜きまくっていた。

 

 

「あー!クソッめんどくせえ!!見てるんだろう?もう、帰っていいか?」

 

 

度重なる転移によって完全に方向を見失ったダンテは悪態をついた。

心底嫌になったダンテはこちらを見ているであろうアインズに向かって叫ぶが伝言(メッセージ)を使わないと通じないことを思い出し、内心で帰ることを決心した。

とはいえ、現状で帰りの方向すら見失っているため、それも勘に頼るしかない。

進むも地獄、退くも地獄とはこのことだとダンテは感じていた。

何度目かになるため息を吐くとダンテは再び歩き出した。

 

 

「足止めとしては優秀だが、決め手に欠けるな……」

「はい。ですが、この間に戦力を整えることも可能です」

 

ダンテをここまで足止めできているのだから大したものだとアインズは感じていた。

実際アルベドやデミウルゴスがどのように罠を配置しなおしたのかは手元の資料を見ればわかるのだが、ダンテは悉くの罠を踏み抜いている。

ダンテのことをよくわかっていると素直に感心した。

それと同時にアインズの脳裏にもしかしてが浮かぶ。完全に対ダンテ用の配置なのではないかと……

これほどの精度、一朝一夕で構築できるものではない。

随分前からダンテを敵として見ているのではないか?

このままこの演習を行っていていいのかという疑問が浮かぶ。

 

一方でアルベドは会心の笑みを浮かべていた。

デミウルゴスと協議を重ね、対ダンテ用の配置が実地で通用することが実証できたのだ。

今は転移が多くなっているが、いくつかをダメージを与える罠に変えてしまえばダンテであっても殺せると確信を持った。

ダンテがまだナザリックに居た頃に仕掛けていた罠に掛けることができなかったのは何なのかと若干思うところもあるが、今この時に勝利できるならそれは些細なことだろう。

 

ダンテ殺害の為に1~3階層では戦闘力の確認。4階層ではガルガンチュアの運用についての確認。

そしてこの5階層では搦め手、罠運用の確認。

これ以降の階層でもそれぞれ確認を行うつもりではあったが、状況を見るにこの方法が一番有効だと感じた。

1~3階層で分かったことはダンテを正面から殺すのは不可能であるということだった。対して5階層での試みは有効だとわかった。ダンテ殺害には状況を利用し罠でジワジワとなぶり殺しにするのがいい。

アルベドは自らの見立てが正しかったことに心の中で喝采を上げた。

 

 

「では、アインズ様。これでは埒が明きませんのでトラップの種類を変更して終わらせようと思います」

「う、うむ……」

 

 

次はナザリックの外でできるトラップを考える必要があると心の中で予定を立てながらトラップの種類を変更しようとしたとき、ふとダンテを映していたモニターに変化があった。

 

 

「待て、アルベド。ダンテが大白球(スノーボールアース)についたようだ」

「………そのようですね」

 

 

アルベドはトラップの変更だけ行い。モニターを忌々し気に睨みつけた。

 

 

 

「ハッ、マジかよ。帰るつもりだったのに……」

「オ待チシテオリマシタ、ダンテ様」

 

 

未だ大白球(スノーボールアース)内部に入ってもいないのに、眼前にコキュートスがいることに若干の驚きを覚えた。

ダンテは先に雪女郎(フロスト・ヴァージン)と一戦交えてからコキュートスとやるのだと思っていた。

見れば、コキュートスの周りには雪女郎(フロスト・ヴァージン)が数体控えている。

 

 

「ダンテ様相手ニ、コノ者達デハ役者不足デショウ。ワタシガオ相手仕リマス」

「まぁ、俺は一緒に相手しても構わねぇんだが……好きにしな」

 

 

ダンテのその言葉と同時にコキュートスが4本それぞれの手に武器を携えた。

対するダンテも両手両足がまばゆい光を放つと籠手と具足が装着されていた。

お互いが構えを取ると、弾かれたようにコキュートスが肉薄した。

一呼吸のうちに間合いに入ると手にした刀でダンテを袈裟斬りにせんと振るうが、ダンテは片足を引くことで半身になりギリギリでその斬撃を躱す。

もっともコキュートスも最初から斬撃が当たるとは思っていなかったのか、流れるように別の手に持ったハルバードを突き出す。

ダンテもそれを仰け反るようにして躱すと、メイスの振り降しに合わせてコキュートスの手を蹴り上げ追撃を阻止する。

4本の腕にそれぞれ携えた最後の武器であるブロードソードを横薙ぎに振るう。

蹴り上げによって宙に浮いたダンテを見てコキュートスは獲ったと感じた。

次の瞬間にはコキュートスの目の前からダンテの姿は消失していた。

 

トンとコキュートスは肩に重みを感じた。

まさかという思いで肩に視線を向ければ、己の頭に向けてショットガン(コヨーテA)を向けるダンテがいた。

微かにチャキッという音が鳴る。

 

 

「ウオオオオオオオ!!!」

 

 

コキュートスが雄たけびを上げ眼前のショットガンが火を噴く前にダンテを振り落とす。

ダンテは特に抵抗することも発砲することもなく、コキュートスから離れたところに着地した。

その手にはすでに銃はなく、リベリオンが握られている。

 

 

「来いよ、第2ラウンドだ」

 

 

 

ダンテはそう言うや否や散歩にでも行くのかという気軽さでリベリオンを肩に載せ歩いてくる。

ダンテの言葉通りここまでの流れが第1ラウンドであれば、ダメージ的にはお互い無傷で引き分けだが、内容的にはコキュートスの惨敗だった。

こちらに向かってくるダンテの姿はコキュートスには異様に見えた。

どう見ても隙だらけのはず、だというのに、こちらが何を仕掛けても対応されるのではないかという感覚に囚われる。

しかし、コキュートスは武人。臆したままではいられない。

己の最高速度の斬撃にて迎え撃つことを決め構えを取る。

対応されることは今は考えない。

 

コキュートスの間合いにダンテが足を踏み入れた瞬間、コキュートスの握る斬神刀皇が神速をもって姿を消した。

コキュートスは自身の思い描く通りに刀が迸しるのを感じた。一撃としての手ごたえは最高である。

極限まで集中力を高めたコキュートスには己の刀の動きもダンテの剣の動きも見て取れた。

ダンテの剣はコキュートスの振るう斬撃に対して迎え撃つように振り上げられ、それはコキュートス最速の一撃を防ぐに十分間に合うだろう。

ならば、力でもって圧し切るとコキュートスはさらに力を込めた。

だが、コキュートスの腕は意に反して頭上まで持ち上げられていた。

 

 

──キンッ!!

 

 

コキュートスは意識の外からそんな音が聞こえてきた気がした。

 

 

(弾カレタ!?)

 

 

そんな思考とは裏腹に目から飛び込んできたのはダンテの剣も弾かれていたという事実。

お互いに斬撃をはじき返していたと理解したコキュートスの切り替えは早かった。

別の手に握っていたメイスを振り下ろす。

現在ダンテが握っている武器が1本なのに対し、コキュートスはずっと4本握っている。

であれば、次の一手はコキュートスの方が圧倒的に早い。

自身の最高の一撃が相殺されたことに思うところがないわけではないが、逆にダンテの次の一手を遅らせることに成功したと思いなおす。

渾身の力を込めたメイスはまたしても弾かれていた。

込めていた力とは逆ベクトルに掛かった力に若干の痛みを感じながらも、次こそはダンテの防御を崩さんとブロードソードを振るう。

弾かれる。

武器を振るう。

弾かれる。

一体いくつ打ち合っただろうか?

繰り返される応酬にコキュートスは違和感を覚えた。

確実に攻撃を弾きあっているにもかかわらず、コキュートスが次の攻撃をしかける瞬間にはダンテも剣を振りかぶっている。

異常だった。この時コキュートスは己の攻撃が弾かれた瞬間には次の別の手に握った武器でもって攻撃を仕掛けている。

にも拘らずダンテの迎撃が間に合っている理由が分からない。

ここまでの応酬で弾かれたら次の攻撃という流れに慣れが出てきているのもあって、コキュートスはダンテの剣を目で追った。

弾かれた瞬間からダンテの剣は加速して引かれていた。

 

 

(明ラカニ自ラ剣ヲ退イテオラレル!?)

 

 

武器をぶつけ合う瞬間の力が足りなければ一方的に弾かれて隙をさらす。そもそも急激なベクトルの反転は負担が大きい。

この所業を正確に行うには武器同士がぶつかる前までに過不足なく力を籠め、弾きあう瞬間には剣を退けるように準備をする必要があるとコキュートスは考えた。

コキュートスは武器を複数持つことで弾かれたときに発生する隙を極力減らしてはいるが、次の攻撃を行うには万全の態勢とは言えない。

辛うじてダンテと互角にやり合えているが武器一本で渡り合うダンテの技量に舌を巻く思いだった。

コキュートスに焦りが生まれ、思わずこの至近距離においては取り回し辛いはずのハルバードを突き出していた。

コキュートスは至近距離においても長物を十分扱うことができる。しかし、それは対ダンテにおいては致命的な隙となった。

案の定弾かれたハルバードと共に己の手に刻まれた一筋の裂傷。

自身の緩んだ集中に付け込まれ形だった。

超スピードのやり取りの中コキュートスはダンテの目の中に「その程度か?」というような言葉を聞いた気がした。

 

そして、状況が一転した。

今までコキュートスが仕掛けていた攻撃は、ダンテが取って代わっていた。

コキュートスは必死でダンテの攻撃を弾いているが、それまでとは比較にならないほど素早くダンテが次の攻撃に移っており、防戦一方になっていた。

しかもそれは、時を追うごとに更に早く重くなっていき、コキュートスは防御も間に合わなくなり見る見るうちに傷だらけになっていく。

決して互角などではなかった。

そもそも飛び跳ね踊るように戦うダンテが足を止めて打ち合いに応じている時点でこちらの土俵まで降りてきている証拠だった。

それに、コキュートスはダンテがアグニ&ルドラという双剣を使うことも知っている。

今でさえ対処できないのにその手数が2倍になればあっという間に切り刻まれるだろう。

 

 

「グウウゥゥゥゥッ」

 

 

そして、最後の時を迎えた。

ついに体勢を崩し膝をついてしまったコキュートスの首元にダンテのリベリオンが突き付けられた。

 

 

「マ、参リマシタ」

 

 

コキュートスのその言葉を聞いてダンテはリベリオンを背に担いだ。

 

 

「少しだけ建御雷を思い出した」

 

 

ダンテはそれだけを言うと背を向けて第6階層への転移門へと歩いていく。

コキュートスがその背に「アリガトウゴザイマシタ」と声をかけると振り返ることなく手を上げて去っていった。

そこへアインズから伝言(メッセージ)がつながる。

 

 

『どうだ?コキュートス?』

 

『申シ訳ゴザイマセン。無様ナ戦イヲオ見セシテシマイマシタ』

 

『何を言う。良い戦いだったぞ』

 

 

アインズはコキュートスの謝罪に異を唱えるが、コキュートス自身が無様だったとそう思っていた。

本当であればこちらの4手目でダンテのショットガンに頭を打ち抜かれて終わっていたのだ。

時間にして数秒という短さ。

惨敗というのも烏滸がましい。勝負にすらなっていなかったと感じていた。

そのうえ、お情けでチャンスを与えられ、足を止めて打ち合うなどというハンデまで与えられての敗北である。

穴があれば入りたいというレベルではない、階層守護者としては自害して詫びてもなお足りないと考えている。

 

 

『………』

 

『なるほど、自分で納得はできないか』

 

『アインズ様ノオ言葉ニ反スルツモリハゴザイマセンガ……』

 

『いや、構わない。そうだな……お前が悔しいとそう思っているのならば、それもまた今回の収穫だ』

 

『……ハ?』

 

『次はどれくらいやれそうだ?』

 

『ハッ、次コソハダンテ様ニ一太刀浴ビセテゴ覧ニ入レマス』

 

『……ダンテが真に侵入者であればお前の命はなかっただろう。それがこうして成長の機会を得ることができたのだ。そうだろう?お前はまだ成長できる。リザードマンの時から比べても成長しているが、さらに成長できるのだ。私にとってこれほど喜ばしいことはない』

 

 

アインズは若干低い目標だなとは感じつつも、コキュートスが成長することを自ら願っているという点において大いに満足していた。

アインズはもしかすると、コキュートスは対ダンテを苦手に思っているのかもしれないと考えた。

攻撃を仕掛けども仕掛けども避けられ、逆に一方的にダメージを負っていてはそう思ってしまうのは仕方がないことかもしれない。

確かにその状況が続けば相性が悪いと言えるだろう。

ダンテはそのビルド上、回避に重きを置き、防御力などはさして高くない。一方でコキュートスは武器攻撃力においてナザリック随一である。

つまり当たりさえすれば倒せるのだ。

いくらダンテが回避に長けていようが、攻撃をずっと回避し続けることは現実的ではない。

要するに今回の勝負はコキュートスがダンテに一撃加えるか、ダンテがコキュートスを削りきるか、どちらが早いかの我慢比べだったわけである。

 

 

(なるほど、コキュートスは相手がダンテでも一撃当てられれば勝てると踏んでいるのだな……)

 

 

コキュートスの目標が消極的な目標というわけではないことに気付いたアインズはより一層機嫌をよくした。

そしてアインズよりもその結果に喜んでいるのがアルベドだった。

こちらの世界に転移してきた当初シャルティアと二人がかりで翻弄されたと聞いた時には、対ダンテ対策としてコキュートスは戦力にならないと踏んでいたが、今のアインズとのやり取りを聞いて一撃に特化した伏兵として扱えることに気付かされた。

こうした模擬戦ではなく本気でダンテを殺すことに加担させるには何かしら手を打つ必要があるだろうが、アルベドはコキュートスを言いくるめることは可能だと考えている。

 

 

『思うことはあるだろうが、今回のことを糧とし一層励むがよい』

 

『ハッ』

 

 

コキュートスの力強い返事を聞き、アインズは満足気に伝言(メッセージ)を打ち切った。

そして第6階層に降りて行ったダンテを見るためモニターに目を向けるとそこには、目に鮮やかな森の風景が映し出されていた。

第6階層は闘技場のみが侵入者の迎撃の場となっている。

侵入する側も防衛する側も闘技場以外に用はない。

だというのに、ダンテは森の中に配置されている泉のほとりで昼寝をし始めていた。

もちろん防衛に直接関係のない場所にモンスターも罠も配置はしていない。

森の中にいるのはアウラの使役魔獣や、NPCのような動物くらいである。

闘技場以外には蠱毒の大穴に住み着いている毒虫が多少危険なくらいだろうか……もっとも、高レベルプレイヤーにとっては大した問題ではない。

 

ダンテからしてみれば罠も何もなく悠々とこの場に来れて安心して眠れる格好の休憩スポットだった。

そして、モニターの視点を闘技場に向ければアウラとマーレが困惑したようにダンテが入ってくるであろう出入り口を見ていた。

待ちぼうけを食らわせられている双子はコキュートスがダンテに敗れたことを既に把握しているし、ダンテが6階層へ至る転移門を使用したのも第6階層守護者として把握していた。

故にダンテが訪れるのを今か今かと待っているのだった。

 

 

『ダンテさん?なにしてるんですか?』

 

 

見かねたアインズが伝言(メッセージ)でダンテに呼び掛けた。

ダンテはアインズの声が聞こえているのか、ごろりと寝返りを打つとポツリと「飽きた」と言葉を漏らした。

その姿は不貞寝している子供のようであった。

 

 

『つか、一人で攻略とか無理ゲーだろ。一人でここまで来ただけ頑張った方だと思うよ?』

 

『キャラ崩壊してますよ?』

 

『もう、ゴールしてもいいよね』

 

『は?ゴール?何の話ですか?』

 

『あぁ、モモンガさんは知らないか……』

 

 

「ぺぺさんなら間違いなく知ってるんだろうな」などと呟きながらのっそりと起き上がると闘技場へ戻るダンテ。

否、もはやダンテのロールプレイを忘れ疲れ果てたユーゴだった。

 

 

『ちょっ!?本当に大丈夫ですか!?』

 

『意義を履き違えたテストならもう十分だろ?』

 

『意義?』

 

 

実はダンテも第2階層くらいからこの罠の配置はなんとなくおかしいと違和感を覚えていた。

侵入者はあくまでナザリックの内部を知らない人物である。

高レベルプレイヤー想定かつ一般的(・・・)な罠避けを心掛けていたダンテは思った以上に罠にかからないことを不思議に感じていた。

シャルティアが死蝋玄室()で襲ってきたことも踏まえ、確信したのは第5階層だった。

一般的な侵入者を逸脱し、順路も敵の構成もわかっているダンテとして進み始めた途端、数多くの罠にかかることになった。

流石に直接罠に掛けられている本人なだけあって、ダンテ専用の罠であると気付いた。

高レベルの仮想敵に、自分たちと同じようにユグドラシルから転移してきているプレイヤーの存在を警戒してのテストだと聞いていただけに、騙された気分になった。

そしてアインズもまた、気付いた。

 

 

『そうか、これはダンテ用の備えになっていたのか……本当にすまなかった。実験は中止しよう』

 

 

直後、アインズからナザリック全域に対して実験の中止が伝えられた。

 

 

 

 

 

 

 

アインズに実験は中止するから戻って来いと言われたダンテが闘技場までのんびり戻ると、アインズと階層守護者達(ガルガンチュアとヴィクティムを除く)が勢ぞろいしていた。

 

 

「なんの集まりだ?」

 

「ダンテが戻ってきたようなので、今回の実験の総評を行うこととする」

 

 

アインズの言葉を聞いて露骨に嫌そうな顔をするダンテ。

そんなダンテを尻目にアインズが、中止に至った経緯と自身の感じたことを述べる。

特に中止の経緯を聞いたデミウルゴスは驚愕の表情を浮かべ、アルベドを睨んでいる。

アルベドも青い顔をして俯いていた。

見るにデミウルゴスはアルベドに騙された(?)のだろう。

二人の間でどういったやり取りがあったのかダンテには知る由もないが、ナザリックでアルベドが孤立してしまうのではないかと、少し心配になった。

 

 

「アルベドとデミウルゴスは後程、私の部屋に来るように」

 

「「かしこまりました」」

 

 

ダンテは俯く2人を尻目にルベドか、あれらと戦ってみてからリタイアした方が楽しかったかもしれないと考えていた。

もっとも、ルベドも第八階層のあれらも今回の防衛実験では検証の対象外となっていた為、戦う機会はなかった。




たくさんのお気に入り、感想、評価。本当にありがとうございます。
また、誤字脱字の報告もありがとうございます。


また次回もお付き合いいただければ幸いです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。