オーバーロード~慎重な骨と向う見ずな悪魔~   作:牧草

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もう、何も言い訳しません。
お忘れでなければ読んでやってくださいorz


mission 29

ダンテは現在10階層に準備されている自室でアインズからの連絡を待っていた。

ダンテとしては特に用などないのでアーウィンタールに帰りたいと考えていた。

もともとダンテはアーウィンタールにおいて気掛かりがあり、実験にも気乗りはしていなかったのだ。

あの濃厚な悪魔の気配を放置して既に数日経っているのだ、異変が起きている可能性は十分ある。

 

 

「アインズが戻ってきたらニグレドに確かめて貰うよう言ってみるか」

 

 

アインズは、アルベドたちに説教でもしているのかしばらく戻ってくる気配はない。

この部屋で大人しくしている理由もないのでピッキーのところにでも行って久しぶりにストロベリーサンデーでも食わせてもらおうとソファーから腰を上げると、ノックの音が響いた。

出鼻を挫かれた思いで、ダンテは再びソファーに腰を下ろした。

扉の前で控えていた一般メイドのプランジュールが来訪者の確認をしているのを見つめる。

 

 

「ダンテ様、セバス様とツアレが参りました」

 

「あぁ」

 

「畏まりました」

 

 

ダンテの分かりにくい返事の意図を正確に受けたプランジュールが扉を開ける。

セバスとツアレが順に入室し扉横で一礼した。

 

 

「失礼致します。ダンテ様」

 

「し、失礼いたします」

 

「お休み中のところ申し訳ございません」

 

「いや気にすんな、退屈していたところだ。それでどうした?」

 

 

ダンテが要件を尋ねると、セバスが一歩下がり、代わりにツアレが一歩前へ出る。

以前、王都で見たシンプルなワンピースと違い、ナザリックのメイド服を着こなすツアレを見る。

最後に会ったのは王都調査中のセバス達の滞在先の屋敷だったか、その時が最初で最後だったような気もしているダンテだったが、どうでもいいかと思考を切り上げる。

ともかくその時に比べれば血色も髪のツヤも良いように見える。

 

 

「だ、ダンテ様、あの時は、わ、私をお助けいただきありがとうございました」

 

 

ツアレは何とかそれだけ言葉にすると、ペコリと頭を下げた。

 

 

「お礼が遅くなってしまい申し訳ございません」

 

 

ツアレの言葉を引き継ぐようにセバスが話す。ダンテとしては余計な手出しだったかも知れないと思っていただけに、お礼の言葉は予想外だった。

むしろあの時ははっちゃけ過ぎて、ツアレのいた地下室ごと崩壊させてしまってもおかしくない攻撃をしていたので非難されても仕方ないとまで思っていたのだ。

 

 

「それも、気にするな。俺がやりたくてやったことだ」

 

「ありがとうございます。ところで、ダンテ様がツアレにお貸しくださった銃弾についてなのですが……」

 

「ん?あれがどうかしたか?」

 

 

ツアレに初めて会ったときになんとなく渡しておいたダンテの魔力を込めた弾丸のことを思い出した。

攫われたツアレの場所を探知するのに使った弾丸である。

 

 

「お借りしたものである以上お返しする必要があるかと存じます」

 

 

セバスのその言葉を受け、ツアレがハンカチに包んだ弾丸をダンテに差し出した。

 

 

「………いや、それはツアレにやったものだ。返さなくていい」

 

「なんと、よろしいのですか?」

 

「あぁ、いらないなら捨てればいい」

 

 

むしろ、湯水のように使ってる弾丸の一発を宝物かのように扱われても困る。

「滅相もございません」と深くお辞儀をするセバスをダンテは冷めた目で見ていた。

 

 

「あ、ありがとうございます。大事にさせていただきます」

 

 

その言葉通り、ツアレは再びハンカチに包み大事そうに懐にしまった。

 

 

「ありがとうございます。それではこれで失礼致します。後ほどツアレにストロベリーサンデーを持たせます」

 

「流石、気が効くな」

 

「ありがとうございます」

 

「し、失礼致します」

 

 

セバスとツアレは一礼すると部屋を出た。

ストロベリーサンデーを食べにピッキーのところへ行く名分も無くなってしまったので、ツアレが来るまで再びソファーで退屈と格闘することになる。

 

 

「弾でも作っておくか……」

 

 

弾丸の話題が出たことで、ふと思い立ったダンテは立ち上がると、テーブルの上に次々とアイテムボックスから材料である鉄と黒色火薬を取り出す。

最後に取り出した、合成用のアイテム《クリエイトボックス》に取り出した材料を放り込んでいく。

ユグドラシルに比べ物事の多くがよりリアルになっているこの世界において、エクスチェンジボックスをはじめとしたこの手のアイテムは原理はよくわからないがとても便利だった。

 

普通であれば手間暇かけて1発ずつ作成する弾丸も材料を入れて待つだけのインスタント感覚で作成できるのだ。

この世界に来てから初めての弾丸作成だったが、うまくいってよかったと胸をなでおろす。

よく考えなくても真っ先に確認しておくべきことの一つであったようにも思う。

弾丸くらい作れるだろうと思い込み、後先考えずに発砲していた自分は馬鹿なのかと今更ながら思った。

ダンテをやるのに銃なしでは格好がつかないというものだ。

 

ともかく銃弾が作成できるのならば作っておくに限ると考えたダンテは手持ちの鉄と黒色火薬をすべてクリエイトボックスに投入した。

材料は事務所(グリーン・シークレットハウス)にまだまだ備蓄があったはずだと考えたが、そろそろ入手経路を考えておくべきであると思った。鉄は採掘場等に行けば簡単に手に入るだろうが、黒色火薬は店売りだったことを思い出した。

そして、この世界で火薬そのものを見た記憶はない。

 

 

「……黒色火薬って作れるのか?」

 

 

クリエイトボックスに材料さえ入れれば作れるかもしれない。しかし、ダンテには黒色火薬の材料そのものが何なのか分からなかった。

 

 

「──ンテ様、ダンテ様?アインズ様がお見えです」

 

 

呼びかける声に顔を上げると、扉の横に控えていたプランジュールがいつの間にか近くまで寄ってきていた。

考え込んでいたせいで、ノックの音に気が付いていなかった。

黒色火薬について一度アインズに聞いてみるかと、プランジュールに入室の許可を出すと、程なくしてアインズが目の前までやってきた。

 

 

「クリエイトボックスですか?何を作っているんです?」

 

「弾丸だな」

 

「なるほど……」

 

「ところで聞きたいんだが、ナザリックには黒色火薬の備蓄ってどれくらいあるんだ?」

 

「黒色火薬ですか?あぁ、確かあれは店売りでしたね。何かと使うことが多いアイテムだったのでかなり残ってますよ」

 

「まぁ、俺もまだまだあるんだが……」

 

「ダンテさんは消費激しそうですからね……」

 

「クリエイトボックスで作成できるか確認したいと思ったんだが、黒色火薬を作る材料が分からない」

 

「確かに……調べてみますか」

 

 

アインズはそう言うと司書Jに伝言(メッセージ)繋げ、黒色火薬の成分について調べるよう指示をだした。

その成分を含んだ物質をクリエイトボックスに入れて作成できればそれでよし、できなければ最悪手作業で生成しなくてはならない。

そのために、製法も調べるよう指示してある。

 

 

「とりあえず、結果待ちですかね?」

 

「だな」

 

「ダンテさん」

 

「ん?」

 

「今日はすみませんでした」

 

「あぁ……まぁ、気にするな」

 

 

ダンテとしてもソロ攻略がめんどくさくなってしまって、「意義を履き違えている」と言い訳をしたに過ぎないのでそれ(・・)自体は然程気にしていないのだ。

むしろアインズに謝られたことで若干の罪悪感を覚えているくらいだった。

 

 

「いえ、実験の趣旨違いよりも、アルベドのことです。ダンテさんのことをあれほどまでに排除しようとしていたとは気づきませんでした」

 

「それも気にしなくていい」

 

 

ダンテは軽薄な笑みを浮かべて手を振った。

アルベドに関しては本当に気にしていなかった。

ダンテとしては悪餓鬼が悪戯しているくらいの感覚だった。

それこそ、この世界に来てからずっとだったので慣れたというのもある。

ナザリックのシモベ達には多かれ少なかれ部外者を排除しようとする傾向があるのだ、アルベドの場合はそれがちょっとばかり過剰気味なだけだとダンテは思っている。

 

 

「気にしますよ……とりあえず、アルベドは謹慎させることにしました」

 

 

謹慎で直るとはアインズも思っていないが、いまやアルベド抜きではナザリックの運営はままならないので、それ以上の罰を与えることが出来なかった。

少なくとも、アインズがダンテを大切に思っていることは伝わったはずである。

NPCとしてアインズの意に逆らうことはしないだろうとアインズはアルベドの態度の改善を期待している。

もっとも、それはアルベドも最初から分かっていたからこそ、秘密裏にダンテを排除しようとしていたので、謹慎で態度が改善されるかどうかは別問題である。

 

 

「ダンテさん」

 

 

ツアレがストロベリーサンデーを持ってくるのを心待ちにしていると、アインズが意を決したように声を掛けてきた。

空気の違いを感じ取ってアインズに視線を向ける。

 

 

「ギルドに入りませんか?」

 

 

ナザリックのNPCは至高の41人に忠誠を誓っている。

その42人目になれば、アルベドの態度も改善されるとアインズは考えた。

 

 

「ありがとう、でも遠慮しておくぜ」

 

 

ユグドラシルに居た時から幾度となくやりとりした言葉ではあるが、この場では重みが違う。

何しろ命が懸かっている。ゲームとは違いデスペナルティでは済まないかもしれないのだ。

それにも関わらずのダンテの返答にアインズはため息吐いた。

 

 

「相変わらず頑固ですね」

 

「まぁな。でもわかっていたことだろう?」

 

「そう、ですね……そんな気はしていました」

 

 

それでも、アインズには何故という疑問が尽きない。

 

 

「でも、ゲームの頃とは違うんですよ!?」

 

 

幸いここまで誰も死亡しておらず、ある意味不幸にも蘇生の実験はできていないのだ。

六大神や八欲王たちが滅びていることを考えると蘇生ができない可能性すらある。

 

 

「……勘だけどな、俺たちは互いに外部の協力者って立場のままの方がいいと思う」

 

 

ダンテの勘という発言に黙り込んだアインズはその意味をしっかりと理解していた。

そもそもダンテの言う「勘」とは、いわゆる直感ではあるものの様々な情報を受けた上でのことで、意味合いとしては「勘案」した結果に近いのだ。

その根拠をダンテ自身が列挙していくことはないが、後から顧みればダンテが正しかったことなど今までにいくらでもあった。

そういった実績もあってアインズはダンテの「勘」を決して軽視しない。

 

 

(そもそも、今更ギルドメンバーになったとしてもアルベドの態度が変わるとは思えねぇしな……)

 

「そうか、気が変わったら言ってくれ」

 

 

アインズもそうは言ったもののダンテの気が変わることはないだろうと考えていた。

 

 

 

 

 

 

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その後、ツアレが持ってきたストロベリーサンデーを堪能したダンテは、アーウィンタールに向かうというアウラとマーレの双子と一緒にドラゴンの背に乗っていた。

 

 

「で?二人は何しに行くんだ?」

 

「僕たちは皇帝に謝罪を求めに行くんですよ」

 

「謝罪?」

 

「ワーカーでしたっけ?あいつらをナザリックに侵入させたことです」

 

「大役だな、頑張れよ?」

 

 

そういえばワザとナザリックの情報を流していたんだったかとダンテは一人納得した。

それでドラゴンまで引っ張りだすのだから示威行為としては十分以上である。

アインズ達が帝国に対して何をするのかは知らないが、皆殺しにするとかでないならいいかと、気楽に考えていた。

それよりもダンテの目下の心配は、アーウィンタールを出る前に感じていた違和感だった。

一応ナザリックを出発する前にアインズ経由でニグレドに調べてもらったが、特に異変は起きていないと伝えられた。

しかし、嫌な予感が拭いきれない。

 

 

「まぁ、なんとかなるか」

 

「何か仰いましたか?」

 

 

ダンテの独り言に振り返るマーレになんでもないと応えると、遠目にアーウィンタールが見えてきていた。

帝都上空を守る皇室空護兵団(ロイヤルエアガード)の気配を感じるが視認は出来ない、何かしらのマジックアイテムで姿を消しているのだろう、もっともあちらからもこちらのことは見えてはいないだろう。

ダンテとナザリック関係が露呈するのは避けねばならないため、ここでダンテと双子は別れた。

 

「ここまでありがとな」と二人に声を掛け、頭をくしゃりと撫でるとダンテはドラゴンから飛び降りた。

二人から「いってらっしゃいませ」と投げかけられた声に反応することなく、火山弾も斯くやという勢いで地上に着地(墜落)した。

ダンテと別れた双子はそのまま皇室空護兵団の守備領域に侵入、彼らを蹂躙しながら皇城へ突き進んだ。

 

ダンテが帝都に戻ってくると、街は騒然としていた。

見れば、あちこちらに血溜りが出来ており、獣の手足や翼に混じり人のもの混じって散乱している。

皇室空護兵団の鷲馬(ヒポグリフ)やその騎乗騎士のものだろうと思われる。

 

 

「………」

 

 

なんとなく気に入らないものを感じながら空を見上げた。

すでに双子は皇城に乗り込んで皇帝に脅しをかけている頃だろう。

ため息をつき、無駄に人を殺した双子に一言言ってやりたい気持ちを頭を振ることでかき消した。

気を取り直して事務所に向かおうとしたところで、前方から走ってくるヘッケランに気付いた。

ヘッケランもダンテに気付いたようで速度を上げてダンテの目の前まで急停止した。

 

 

「ダンテ!ちょうど良いところにっ。クーデリカとウレイリカが行方不明になったんだ。探すのを手伝ってくれ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗く淀んだ空気が滞留している空間に多くの男女が蠢いている。

彼らは一様に髑髏を模した覆面以外に何も身に着けておらず、年齢の幅も広い。

彼ら個人間同士で把握はしていないが、その立場も平民から貴族まで分け隔てなく存在している。

 

若い男女間で肉欲に溺れ乱れる集団、一方で酒宴に参加する集団、邪神へ祈りをささげる集団とまとまりがないが、その様子を高い場所から見下ろしている存在があった。

遠目には胡坐をかいて座っている人だが、その頭は人の物ではなかった。

教団の信者のように覆面を被っているわけではなく、その頭は黒い羊だった。

筋骨隆々の羊頭は、首元や腕の肘から先に多くの体毛が見られるが、その身体は白く下半身と腕が漆黒に染まっていた。

禍々しくもどこか神々しいその見た目にこの教団では邪神として崇められるようになっていた。

 

元々はズーラーノーンの下部組織として邪神を信仰する20人程度の小規模集団だった。

何かを祀っていたりするわけでもなく、儀式として人を殺害して適当な儀式めいたことを行っていただけだった。そんな「邪神を信仰する教団」は突如現れたその黒い羊を邪神として崇めるようになってから変わったのだ。

まず、信者が一気に増加している。

現在はこの部屋に約200人が集まっている。この場に集まれていない者も含めればもっと多くなっているのだろうと予測できる。

なにより、形だけの集団だったのだが、崇める存在を得て本物の教団となっていた。

 

 

 

そんな様子を物陰から見ている影が二つあった。

 

 

「趣味悪いわね……」

 

「──きっとここが噂にあった邪神を信仰する教団のアジト」

 

「本当にここにクーデリカとウレイリカがいるの?」

 

「──情報が確かなら……」

 

 

フォーサイトのイミーナとアルシェが小声で状況を確認する。

未だ双子の姿を確認することは叶わないが、動き回るのも危険と判断し、現在は人員が揃うのを待機しながら、教団の様子を監視している。

今、この場にいないロバーデイクがヘッケランやクレマンティーヌ、レイナースら双子捜索隊のメンバーを探し帝都を走り回っている。

 

 

「約1週間ぶりの儀式か……」

 

 

そんな信者の声が二人に聞こえた。

その声にわずかばかりの安堵を覚えるが、気を引き締め直す。

ウレイリカとクーデリカの二人がいなくなったのが昨日、未だ儀式を行っていないというのであれば二人はまだ無事なのだろう。

もっともこの教団に攫われたのであればの話だ。

奴隷として帝都外へ連れ出されていればその限りではない。

 

ふと部屋の隅から子供が入りそうなほどの大きさの袋が二つ信者の手によって運ばれてきた。

その二つの袋は多くの信者たちの手を介し、バケツリレーのように祭壇の方へ運ばれていく。

祭壇の前まで到達すると幾人かの信者達が剣を握り袋の前に整列する。

 

 

『待テ』

 

 

信者たちが今までの儀式のように剣を振りかぶったところで低く重い独特なエコーが効いた声が響く。

今まで聞いたことのない声色にざわめきが広がる。

 

 

「じゃ、邪神様なのですか?」

 

『ソウダ、袋ノ中身ヲ出セ』

 

 

邪神の要求に信者たちが再びざわめく。

今までの儀式では袋の中身は見ないようにしていた。

というのも、中身が子供であるということは知ってはいるが、実際に見てしまうと殺意が削がれてしまったりして儀式に支障が出るからだった。

加えて、万が一捕まった際に中身は知らなかったと言い逃れをするためでもあった。

邪神の要求はその逃げ道を潰すものだったのだ。

そのため、信者たちには大なり小なり躊躇いが現れた。

 

 

「そ、それは……」

 

『早クシロ』

 

 

難色を示す信者達に対して邪神が目を赤く光らせて睨む。

その威圧感に泡食って袋の口をあける。

袋をひっくり返して、中身を落とすと二つの袋からはそれぞれ金髪の少女が転がり出てきた。

手足を縛られ猿轡をかまされているため、両目から大粒の涙を零し、くぐもった声を上げている。

その光景を見たアルシェは思わず声を上げそうになった。

すんでのところでイミーナに口を押さえられ、実際に声を上げてしまうことはなかったが、盛大に物音を立ててしまった。

近くにいた信者達は邪神の圧によってそれどころではなく二人の立てた物音には気付きはしなかった。

しかし、それが幸いだったかというとそういうわけではなかった。

 

 

『………』

 

 

邪神がジッと二人の方を見据えていた。

二人は邪神と完全に目を合わせてしまい、その圧力に身動きが取れなくなってしまっていた。

 

ふわりと浮き上がった邪神が腕を振る。

アルシェとイミーナの足元がジリジリと急激に熱を帯びて今にも破裂しそうになったとき、二人は急激に後ろに引っ張られた。

 

 

「「ぐぇっ!!」」

 

 

次の瞬間、目と鼻の先で炎が吹き上がった。

後ろへ引っ張られ投げ飛ばされたことで直撃こそしなかったがその熱量に肌が焼かれる。

一方で、不幸にも近くにおり、巻き込まれた信者たちは断末魔を上げることもなく炭と化した。

信者達は恐慌状態に陥り、我先にと広間から逃げ出した。

 

 

「──ゴホッゴホッ……吹き上がる炎(ブロウアップフレイム)!?」

 

「ゲホッ!あ、危なかったぁ」

 

 

助けられた二人は転がりながらその炎の前に立つ大きな背中を見た。

炎の柱が消えるとアルシェは安堵し思わずへたり込んだ。

 

 

「ダンテ!」

 

 

イミーナは命の恩人の名前を叫んだ。

 

 

「はぁ……」

 

 

しかし、当のダンテは盛大にため息を吐いて、手のひらを額に当て空というか天井を仰ぎ見ている。

明らかにヤル気を失っていた。

 

 

(散々『嫌な予感』とか『濃厚な悪魔の気配』とか思わせぶりなこと言っておいて、雑魚(ゴートリング)かよ!!)

 

 

邪神もといゴートリングが更に連続で炎を噴き上げるが、ダンテはステップを踏むようにスイスイ避け続ける。

苛立ったゴートリングはダンテに飛び掛かると、ダンテが振り下ろしたリベリオンに両断され、塵となって消えた。

 

そのあまりの呆気なさにアルシェ、イミーナの両名はもちろん未だ逃げていなかった信者までもが呆けていた。

 

 

「アルシェ、イミーナ!双子を連れてここから離れろ!」

 

 

と、突然ダンテが先程までのヤル気のなさと打って変わって、真剣な目つきで二人に離脱を促す。

 

ダンテはゴートリングを倒したにも関わらず、全く薄れることのない悪魔の気配を警戒していた。

この場に現れてくれれば一番面倒がないのだが、仕切り直す必要もあるかもしれない。

 

アルシェとイミーナが双子を回収するために動き出そうとしたその時、ダンテの上に落ちてきた巨大な岩のような何かが建物を揺らした。

しかし、それは岩ではなく、蜘蛛ような生物、否、悪魔だった。

岩のように見えたのはその悪魔の外骨格、その外骨格の隙間からは赤い光と凄まじい熱が漏れている。

まさにマグマが内包されている悪魔だった。

 

 

「──ダンテ!?」

 

「嘘……」

 

 

二人の目にはダンテが押し潰されたように見えた。

 

 

「なんだこのチビは……大きな闘気を感じたがただの人間か!」

 

 

重く低い声で悪魔が呟いた。

6つもある青い複眼がアルシェとイミーナを貫く。

二人はその視線に威圧され全く身動きが取れなかった。

もし、身動きできたならば、自分ではないと必死に否定していたことだろう。

 

 

「なんだ化け物。図体の割に頭は空っぽか?あとは眼も節穴なんだな?」

 

 

いつの間にか悪魔の横に立っていたダンテが「たくさん眼がついてるのになぁ?」と嘲笑うようにコツコツとその外骨格を叩く。

二人はダンテが押しつぶされていなかったことに安堵しつつ、煽るんじゃないと声を大にして言いたい気持ちになっていた。

 

 

「ほざいたな虫ケラ、踏みつぶしてやるわ!」

 

 

青かった眼を真っ赤に染め上げ、先程までと段違いの威圧感を放ち、腹部から針のついた尻尾を振り回し始めた。

蜘蛛のようなではなく、蜘蛛と蠍を合わせたような悪魔だったのだ。

 

 

「どっちが虫だって?」

 

 

悪魔の振り上げた足を見上げながらダンテはニヤリと笑った。




銃弾関連についてはほぼ捏造設定です。
クリエイトボックス(オリジナルアイテム)

また、自分でもほぼ忘れ去っていた、オリジナル一般メイド(何人か考えていた子の一人)を出しました。
話数的にはそんなに昔じゃないんですけどね……

たくさんのお気に入り、感想、評価。本当にありがとうございます。
また、誤字脱字の報告もありがとうございます。

感想の返信が滞ってしまっていますが、全部読ませていただいています。
本当にありがたい限りです。

また次回もお付き合いいただければ幸いです。
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