壁|彡サッ
ジルクニフは内心で苦悩していた。
頭を掻き毟りたくなるような衝動に襲われていた。
むしろこの場に人の目がなければ掻き毟っていただろう。
「どうかしたかね?ジルクニフ殿?」
「いや、なんでもないさ」
案内されたこの場所はとても地下とは思えない荘厳な空気を纏っている。
ジルクニフはアインズが現状、地位こそないものの力も財力も兼ね備えているのは間違いないと確信していた。
のこのことこの場に来てしまったことを後悔していた。
謝罪に来たのだから、後悔も何もあったものではないが……
それでも実際に会ってみれば、自身の勘が正しかったことが分かった。
言葉一つで人を操ることのできる悪魔を従えていたり、
デミウルゴスという悪魔の言葉の力により跪く臣下たちを目の当たりにした。これで無礼はお互い様とされ謝罪の必要はないと宣言された。
やることなすこと規格外でしかも計算づくのような印象も受ける。
挙句の果てに、地上に出て静寂を取り戻すため人を始末していくという。
この力、財力があれば可能であると思わされる。
このままでは王国のみならず帝国も法国も犠牲となるだろう。
咄嗟に、同盟を組むことを提案した。
正直なところ、従属することも視野に入れていたが、すんなりと同盟を組むことになった。
圧倒的な力を有しながらも従属を求めないその姿勢にジルクニフは懐疑的にならざるを得なかった。
連絡役としてのお互いの配下を紹介するが、よりにもよってアインズはデミウルゴスを寄越すという。
ジルクニフはこちらの者を操るつもりかと思わず歯噛みをした。
力もあり、財力もある。そのうえ智謀をも兼ね備えている。
この会談の流れもアインズの掌の上なのではないかと思わされる。
「それより、これからは同盟者だ。貴殿が外で待たせている者たちも呼んで宴でも催すとしようではないか。一泊くらいしていくといい」
「いやいや、ありがたい話ではあるが、それには及ばないとも。こちらとしても色々と準備をすることがあるのでね」
実際準備することはいくらでもある。
仮にここの者達が外部へ進出、否、侵攻というべきだろう。
侵攻し始めれば、最初の標的は王国、次に帝国…いや、仮にも同盟国なのだから次は法国だろう。
この広間に集まっているアインズの配下を見れば想像は容易い。
ほんの一部を除き人間とは姿形の違う異形、またはアンデッドの集団である。
そんな者達が外に進出すれば、間違いなく王国、法国の抵抗を受けるだろう。
そうなれば、目の前の者達がこれ幸いと虐殺を始めるだろうことは火を見るより明らかだ。
もはや国どころの話ではない、この大陸に生きる生命体すべての危機であるとジルクニフは考えていた。
一国、一国では抵抗もままならない。早急に対アインズ・ウール・ゴウン連合を組む必要があるのだ。
とはいえ、現在この脅威を正確に感じ取っているのは帝国のみだろうとジルクニフは考えている。
だからと言って、帝国が連合の発起人となるわけにもいかない。もはや形だけになってしまったとはいえ、この場には謝罪にきているのだ。
それが終わったら、即連合結成。そんなことをされれば怒り心頭に発することは間違いないだろう。
見せしめも兼ねて真っ先に滅ぼされることだろう。
帝国がその立場であれば、間違いなくそうする。
最短で連合を組むには自ら発起人になるしかないがそれもできず。よしんば連合を組めたとしてもこの脅威を共有しないことには連合として機能することはないだろう。
とにかく今は時間が必要だった。幾重にも策を弄する必要がある。
時間を稼ぐ為とはいえ、同盟国となっては難易度が跳ね上がる。
何故自分がこんな目にと思わなくもないが、やらねばならない。
諸々の思考が渦巻くが、今のこの状況ではそれらをまとめることもままならない。
落ち着く必要があるのだ。
なによりも、ジルクニフとしては一秒でも早くこの場を離れたかった。
またいつアインズの口から爆弾発言があるとも限らないし、地上に置いてきたダンテのことも気がかりだった。
「そうか?残念だ。ジルクニフ殿が連れてきていたアダマンタイト級冒険者と会ってみたかったのだが、本当に残念だ」
「………また機会はあるさ。では、我々は引き上げさせてもらおう」
ジルクニフはまさかダンテのことまで気付いていたのかと、呪詛を吐きたくなった。
それとも、今しがたダンテのことを考えた、自分の思考を読んだとでもいうのだろうか?という疑念が頭をめぐる。
(いや、それはないはずだ。たとえそうであれば、今この場で死んでいるだろう。この男はそういう類の者のはず)
対アインズ連合のことを考えてる自分が生きていることが何よりの証明であると、半ば自らに言い聞かせるように最悪の考えを否定する。
泳がされているだけという可能性もあるが、生きていることが全てだろう。
「そうだな、次の機会に期待するとしよう。今日は同盟者の生まれた良き日だ。記念日にしたいほどだ」
「全くだね、本当に──全くだね」
ジルクニフは大量の苦虫を噛み砕いたような表情を必死に押し込め、爽やかな笑顔を浮かべた。
◆
ジルクニフたちがユリやルプスレギナに送られ地表まで戻ってくると、ここまで負の感情を隠し通してきたジルクニフの表情があからさまに歪んだ。
目の前には山積みになった兵士たち。皆生きてはいるようだが、一様に気を失っている。
一部の兵士は頭から血を流しているようにも見受けられる。
そして、ジルクニフたちがアインズとの面会前に極上の飲み物を振舞われたテーブルはまだ片付けられてはおらず、そこではダンテがワインの瓶などを片手に、ユリ、ルプスレギナとは別のメイド数人を侍らせていた。
メイドが器から
実態はどうであれ、他人にはダンテがメイドたちに強要しているに見えるだろう。
(メイドたちに嫌がる素振りはないが、やられた……これは間違いなく罠だ。こちら側にも一手差し込んできたかっ)
山となった兵士たちはおそらくダンテを止めようとして返り討ちとなったであろうことが想像できる。
兵士の頭の血だと思っていた液体はワインだった。もしかしたら瓶ごと叩きつけたのかもしれない。
完全に失態である。
いくらダンテが外部の者とは言え、連れてきたのはこちらだ、知らぬ存ぜぬでは通らない。
この失態をついて更に何か仕掛けてくる可能性がある。否、間違いなく仕掛けてくるだろう。
また一手後塵を拝することになってしまったとジルクニフは苦い顔を隠せなかった。
帝国の誇る優秀な秘書官たちも顔が青ざめている。
「ダンテ、貴様何をしている?」
普段であれば、怒りを見せることもなく淡々と処理するジルクニフだが、今は余裕がない。
先程までの努力を一瞬で水の泡にされそうになっているジルクニフは怒りを抑えきれなかった。
「あん?」
ダンテが今気づいたとばかりに胡散臭そうなものを見る目でジルクニフを見ると、ぐびりとワインを煽る。
次いでメイドがストロベリーサンデーをダンテの口に運ぼうとしたところで、ジルクニフがダンテの胸倉を掴み上げた。
その拍子にストロベリーサンデーが零れ落ちる。
──ダダァン!
ジルクニフの左耳の鼓膜を破るような轟音が鳴り響いた。
「邪魔するなよ?あぁなりたいのか?」
「何を……」
ダンテに胸倉を掴んだ手を払われると顔の近くに添えられたアイボリーの射線を追う。
ダンテの銃撃によって、ちょうど
主に帝国側の者達の驚きの声が上がる。
「うはああああ!素晴らしい!!あの
ダンテから向けられた殺気と今度こそナザリックを害する行いに呆然としていたジルクニフはフールーダの叫びに我を取り戻した。
同時に我に返ったバジウッドがジルクニフを守るためにダンテに背後から飛び掛かる。
バジウッドはジルクニフからダンテが怪しい動きをした際には問答無用で殺せと命令されていたのだ。
幅広の黒いグレートソードがダンテの頭に振り下ろされる直前でピタリと止まる。
尋常でない殺気を浴びせられ、身動きが取れなくなった。
「………っ!!!」
バジウッドが汗を垂らして止まり、受け身も考えずに転がるように飛び退いた。
そして息を荒げながら、ダンテを振り返る。
ダンテは自身の脇の下から銃の形にした左手を突き付けていた。
バジウッドがそれを視認したことがわかるとニヤニヤと笑みを浮かべながら突き付けていた手を振る。
「で?話は終わったのか?」
ダンテは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたバジウッドを後目に、すぐ目の前でバジウッドと同じような表情を浮かべたジルクニフに問いかけた。
ジルクニフはダンテの行いに対し謝罪をしなければと見送りについて来ていたユリとルプスレギナをちらりと見遣る。
「ご心配なさらず、アインズ様は
「そ、そうか、それはありがたい。しかし、ゴウン殿に伝えてくれないか?こちらの者が失礼をしたと……」
「かしこまりました」
ユリの言葉に一瞬ホッとしながらも、伝説のアンデッドなどと呼ばれる
一応の謝罪をしながら固唾を飲んでこちらを見ている部下たちに告げた。
「ここでの用は済んだ、帰るぞ」
ジルクニフはユリたちに見送りの感謝を告げると馬車に向かった。
それを見たダンテはメイドに「うまかったぜ」と一声かけ、自らの乗ってきた馬車に乗り込んだ。
残念ながら気を失っていた兵士たちが目覚めるまで出発できなかった。
◆
「まったく度し難い男ですな?」
「そうだな……」
ロウネに代わって乗り込んだ秘書官の一人がダンテの態度を非難するような呟きにジルクニフは呆けたように頷いた。
「ただ、陛下の言う通り力だけはあるみたいですな」
「いや、あれは予想以上だ。さすがに
ジルクニフはフールーダの興奮具合、バジウッドが
実際に襲いかかり手も足も出なかったバジウッドは黙っている。
「そこまでですか!?」
フールーダの代わりに馬車に乗っていた高弟の一人が驚きの声を上げる。
しかし、ジルクニフは再び苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ黙りこくってしまった。
「お前たち、あの化け物に勝てるか?」
再び顔を上げたジルクニフは唐突にそんな問いを投げかけた。
「帝国の軍をもってすれば……」
「陛下、そりゃあ無理ってもんですよ」
秘書官の答えとバジウッドの答えが割れた。
つい先ほどまでダンテの話をしていたところで化け物に勝てるかと聞かれバジウッド以外秘書官はダンテないし
ジルクニフの問いに正しく答えたのはバジウッドだった。
ジルクニフはアインズを指して化け物と評していた。
それには勝てないと正直に言ったバジウッドに対し、ジルクニフはコクリと頷いた。
「とりあえずダンテのことは措いておく。ここにいる全員であの地で感じたことについてすり合わせを行う」
今はダンテのことなどより、アインズないしはナザリックへの対策を考える方が急務であると、ジルクニフはナザリックで感じたこと考えたことを何でも、的外れでも構わないから述べるように命令した。
そして率先して、アインズについての所感を述べ始めた。
アインズ・ウール・ゴウンは
もし敵対すれば帝国は容易く滅びるし、敵対しなかったとしてもアンデッドとの間では価値観そのものが違うため、生者が遊び半分で殺されることもあり得るだろう。
このジルクニフの考えに対し異を述べるものはおらず、バジウッドも戦いにすらならないだろうと考えを述べた。
「絶対的な支配者として君臨し、さらに王としての魅力も併せ持っている」
「あれはすげぇよな、下手したら陛下よりカリスマ性があったなありゃ」
「バジウッド殿!」
「構わん、事実だ。それよりも恐ろしいのは……あの化け物は頭も回るということだ。一手一手に意味を持たせている稀代の策略家だ。でなければこうも簡単に帰すはずがない。私が訪れてからここまでの流れはすべて奴の狙い通りのはずだ。あれほどの力を持つ化け物が策を用いるなど単純に強いだけの相手ではない」
一息に述べたジルクニフの言葉に異論はないようだった。
「次は奴の部下だ。意見を」
発言を促し、意見を求める。
いくつもの意見が飛び交い、議論されたがやはり相手は強大であるということに変わりはない。
帝国にアインズを倒せる者はいない。
それでも倒す必要があるのならばどうしたらよいか、他所から連れてくるしかないだろう。
では、どこから?
王国、ナザリックが足元に出てきたのだから当事者といえるので協力はできるが、戦力として全くあてにできない。それは例年の戦争からも明らかだ。
法国、対ナザリックであれば協力することはできるだろうが、アレに勝てる存在がいるとは思えない。
竜王国、あそこは今それどころではない。現在進行形で自国の維持すら危ういのだ、頼れるとは思えない。
聖王国、この国も法国と同じだろう。協力はできても対処はできない。
評議国、戦力とするならば一番引き入れたい国ではあるが、あの国の竜王達が重い腰を上げるとも思えない。
戦力面だけで考えても評議国以外はあてにならない。
(ゴウンの横に並んだ者たちが直近の部下なのだろう、帝国にやってきたダークエルフの二人もあの位置にいたことを考えればあの場でも屈指の強者だろう。あの中からこちらに引き込めればあるいはゴウンを倒せるやもしれない)
アインズを倒すには内部分裂を狙うのが一番早いとジルクニフは感じた。
その上で諸国による大連合が必要なのだが、普通にまとまるはずのない国々をまとめるには共通の敵が必要である。
そのためにも周辺諸国はナザリックの脅威を知るべきだ。
やはり、ここはいつもの戦争にかこつけて、ナザリックの脅威を知らしめるしかない。
王国にはそのための生贄となってもらう。
その脅威でもって大連合を組み、ナザリックを討つ。
現状ナザリックの同盟者となっている帝国も無傷では済まない可能性もあるが、こればかりは仕方がないだろう。
身を挺して時間稼ぎを行ったと何とか言い逃れるよりほかない。
(まったく、爺も飛んだ厄介事を持ってきたものだ………ん?)
ジルクニフは状況に強烈な違和感を覚えた。
(………待て、爺は何故素直に帝国に帰ろうとしている!?)
一番の違和感はそれだった。
ナザリックに着いて一番初めに見せられた天気を操る魔法は第6位階魔法の
フールーダ自身にも制御できない
アインズ・ウール・ゴウンは確実にフールーダを凌ぐ大
いつものフールーダであれば恥も外聞もかなぐり捨てて教えを乞うはずである。
それを我慢したとしても、ロウネがナザリックに残ることになっているにも関わらず、自らは素直に帝国に帰ろうとする。
それはあまりにも不自然だ。
そもそもナザリックの調査はフールーダが提案したものである。
そこはまだいい。
万が一にも帝国が主導の調査と気付かれないよう切り捨てる予定の貴族を使ってワーカーを送り込む。
これも問題はない。
ワーカーは全滅し、ナザリックからダークエルフが使者としてやってきた。
前者は想定の範囲内だが、後者は違う。
何故バレた?工作は完璧だったはずである。
誰かがリークしたとしか思えない。あるいはグルだったか……
そのことに考えが至った瞬間、脂汗がブワっと滲んだ。
ジルクニフはフールーダが裏切っていることを確信した。
「裏切ったな……そうか。裏切ったな。帝国を売り渡したか……」
「えっ?」
聞こえなかったのか、信じたくない事実だったのか分からないが、他の者が聞き返す。
「フールーダ・パラダインが裏切った」
「まさか師が、そんな……」
「帝国の受ける被害はどれくらいだ?フールーダを閑職に回して飼い殺しにすることは可能か?」
「まさか、陛下……いくら何でもご冗談が過ぎます」
「もう一度言う。フールーダ・パラダインが裏切った。この場合、帝国の受ける被害はどれほどになる?」
「想像を絶し、目を覆いたくなるような被害になるかと……」
裏切り者を使い続けるわけにいかず、閑職に追いやれば帝国は甚大な被害を受けることは確実だ。
ともすれば、どこかの国から侵略を受ける可能性すらあるのだ。
これまで帝国はフールーダを矢面に出すことで他の国を威圧し、謀略とは無縁でいられたのだ。
それを閑職に回せば、それらの国が蠢動し始めるだろう。
冗談で考えていたダンテの英雄化を進めるより他ないかもしれない。
(とはいえ、あれが思い通りに使われるだろうか……)
◆
ダンテがナザリックから帰ってきて一か月が経ったある日、相変わらずウレイリカとクーデリカの2人がキャイキャイと燥ぐ事務所でダンテは机に足を上げた格好で本を読んでいた。
双子の持ち込んだ絵本だが、事あるごとにそれを眺めていたダンテは簡単な文章なら読めるまでに成長していた。
絵本を眺めるダンテにまとわりつく双子に対し、ここは託児所ではないと思いつつも文句は言わずに我慢している。
これまでレイナースとクレマンティーヌの2人に養われてきた訳だが、最近ではアルシェも家賃と妹達の面倒の手間賃としていくらかダンテに金を渡してくるためダンテは何も言えなくなっていた。
どこで稼いでいるのか知らないがそれなりの収入を得ているようだった。
女に貢がせつつ、自らは好き勝手に行動し借金を拵えてくるダメ男の見本のような生活を送っている。
なんとかしなければとユーゴの部分は思っているがユグドラシルの設定、クラスに引き摺られているのか普通に働く事に向いていないダンテは相変わらず街を徘徊しては悪魔を狩るだけだった。
それなりに悪魔が発生しているにも関わらずそれが収入に直結しないのは悪魔狩りが依頼として入ってこないからである。
それも、依頼になる前にダンテが悪魔を狩っているからである。
便利屋の側面もあるため、雑多な依頼もあるにはあるのだが片っ端から断っているダンテは全くもって商売に向いていなかった。
そもそもダンテに悪魔狩り以外の依頼を受ける気がないのに加えて、悪魔という存在が浸透していないのが大きい。
悪魔たちはただのモンスターとして認識され冒険者組合ないし帝国兵士達に通報された結果、大きな被害を生みながらもなんとか討伐されている。
そんな背景もありながら、ダンテはナザリックから戻ってからヒモ生活を満喫していた。
「ダンテ様、いらっしゃいますか?」
事務所の外から声を掛けながら全く遠慮なく扉を開いたのはレイナースだった。
「「レイナースお姉さま」」
「いい子にしていたかしら?」
レイナースは嬉しそうに駆け寄る双子を優しく撫でる。
ダンテは双子を引き連れて寄ってくるレイナースを見つめる。
「本日帝国はリ・エスティーゼ王国に対しエ・ランテル周辺が魔導国の領土であるとの宣言を行いますわ」
「あー、宣戦布告か?」
「そうですわね、実質そのようなものですわ」
魔導国というのはナザリックが建国する国の名前である。
ダンテはその名をアインズから直接聞いていたので知っているが、ダンテとしては国を作るというのは賛同し難い。
ユグドラシルからの転移者は異世界人であり、この世界の営みに手を出すべきではないと考えている。
自分たちが支配することは悪魔が人間界に侵略しているのと同義だと感じている。
百歩譲って建国して引き篭もっているなら問題はないと思っている。
「この宣言を以って帝国は例年の戦争を行います。その際、魔導王には同盟国として参陣してもらい、魔導王の持つ最強の魔法によって開戦の狼煙とする予定ですわ」
「………は?」
「何か?」
ダンテはレイナースの言葉を聞いて思わず声を上げた。
レイナースは国家機密をダンテに漏らしているわけだが、何か聞き返すような情報があったかと首を傾げる。
「……最強の魔法?そもそも戦争に参加させるのか!?」
「えぇ、周辺諸国に対して魔導王の脅威を理解させる心算ですわ」
机から脚を下ろして前のめりに問いかけたダンテだったが、レイナースの答えを聞くと椅子の背凭れにぐったりと寄りかかって天井を仰ぎ見た。
「マジかよ……」
国を作るとは聞いていたが、その手段までは聞き及んでいなかったダンテはため息を堪えきれなかった。
一方で、
王都での事件の時もダンテは作戦の詳細を知らされていなかった。
今回もレイナースから聞くことがなければ、国同士の戦争に興味のないダンテはアインズが戦争に参加するなどとは知る由もなかっただろう。
明らかにナザリックからの情報が制限されている。
アルベドないしはデミウルゴスが制限しているのだろう。
「あの野郎、一度殴っとくか」
「?」
ダンテの言葉に意味を図りかねるレイナースが首を傾げた。
ダンテはレイナースの疑問に答えることなく、一声かけると事務所を出た。
スラムの割に治安が良くなりつつある、通りなれた道をブラブラとあてもなくダンテは歩いた。
アインズを一度殴ると決めたはいいがいつ、どこで殴るかが問題だった。
以前アインズには「殴ってでも止めてやる」と直接宣言していたとはいえ、実行すればダンテも無事ではいられない可能性が大いにある。
ナザリックから見れば紛うことなき反逆。
下手をすればアインズに加え守護者総出で袋叩きに会う可能性もある。
ナザリックに乗り込んでというのは避けたい。
モモンになっている間に殴るのは弱いものいじめみたいで気が乗らない。
となれば、そんなものは戦争に乗じる他選択肢はない。
理想はアインズとタイマンを張れることだろうが、誰か一人は間違いなく連れてくる。
それがプレアデス程度なら問題はないが、守護者の場合であれば返り討ちに遭う可能性も出てくる。
(今ぐだぐだ考えても仕方ねぇか……殴ってから考えよう)
デス・ナイトをダンテが1撃で倒したように書いていますが、帝国側の人たちの勘違いです。ダンテは銃弾を2発放っています。
次回あたりから戦争ですかね?
気長にお待ちください……
不定期更新タグ増やした方がいいだろうか……
いや、そんなことしたらもっと遅くなってしまうかも……
たくさんのお気に入り、感想、評価。本当にありがとうございます。
また、誤字脱字の報告もありがとうございます。
また次回もお付き合いいただければ幸いです。