そして短いです。
「
アインズはリベリオンを構え突撃してくるダンテを咄嗟に魔法で防ぐ。
しかし、ダンテはわかっていたとばかりに骨の壁を割り砕いた直後、身体を捻り袈裟斬りの一閃を繰り出す。
「ハアアアアアアアッ!」
「かかったな、
「ッ!?」
「
アインズはダンテの袈裟斬りを無効化すると、アインズを中心に地面を割り幾千もの骨の槍をあたり一面から突き出しダンテを攻撃する。
ダンテもダンテでそのパターンはお見通しとばかりに、一瞬にしてアインズの頭上に現れ、流星のごとく落下し、蹴りを放つ。
「それもお見通しだよ」
直後、ダンテの進路で爆発が起き吹き飛ばされる。
「
「チッ……随分と用意周到じゃねぇか」
ここまででの応酬で明確にダメージとなったのはアインズの
アインズの追撃を軽く避けると、ダンテは顔をしかめて声を掛けた。
「この程度の用意など戦場に出てくる以上、当然のことだろう?」
アインズは何を当たり前のことをとダンテを若干馬鹿にしたような声色で応答した。
当然、アインズは帝国の陣地を出てくる前にあらかたの強化魔法を自分にかけ、ダンテに備えていた。
開幕の超位魔法を放つ前にも各種魔法で襲撃に備えてはいたが、仔山羊の出現後にダンテが動き始めたのを確認すると更にできる限りの支援魔法をかけていた。
いるかもわからない襲撃者よりも、確実にこちらに来るであろうダンテに備える。
それはダンテを敵と認識しているということに相違ない。
「そうか、モモンガはもういないんだな」
「何を言っている?目の前にいるだろう?」
「アインズ・ウール・ゴウンにとって俺は敵か?」
「さっきからなんだ?お前が私の前に立ち塞がっているんだろう?」
「…………」
「安心するといい。もしもの時は蘇生するさ」
アインズはできるかどうかも検証していない蘇生をすると事もなげに言い放った。
悪い言い方をすれば「万が一殺してしまったら、プレイヤー蘇生の実験に使ってやるよ」である。
「……とにかく殴る。蘇生より陥没した顔の治し方でも考えておくんだな」
言外に「殺さないように手加減してやるよ」と言うと、ダンテは再びアインズの頭上に現れリベリオンを兜割の要領で振り下ろす。
ふわりと横にずれたアインズは手刀を構えた。
「
「ハァッ!!」
ダンテの胸が一文字に切り裂かれると同時にアインズの腹を横薙ぎにリベリオンが奔る。
「ぐっ……」
同じように、一撃ずつ食らうも、ダンテのみがたたらを踏む。
加えて、アインズが持つ痛覚の抑制によりアインズは痛みを感じようとも冷静に対処が可能だが、ダンテはこの世界に来て一番のダメージに一瞬動きが止まってしまった。
「もう一発食らえ!
───キンッ!
澄みきった音が響くとそれに相反するような轟音と衝撃が走る。
閻魔刀を納刀するダンテの姿にアインズはたっち・みーとダンテとのPVPを思い出し舌打ちをした。
(予想通り、
一方でダンテはニヤリと不敵に笑う。
(危なかった……が、今なら俺の負けはない!)
ダンテは勝利の確信をもってアインズに突撃する。
最初の一合のようにアインズの
息もつかせぬまま打ち合う二人だがアインズが後退する場面が増えてきていた。
「ぐぅっ!!(まずい、このままでは押し負ける)」
互いの攻撃を相殺しあうも、次の動作へ移る速度がほんの少しだけダンテのほうが速いのが、ここまで積み重ねた応酬によって現れていた。
アインズが使用する各種魔法はユグドラシルにいたころのようにコンソールで叩くだけの簡単な操作ではなくなったが、感覚的に使える点で言えばかなり攻撃速度が上がっている。
対するダンテもユグドラシルのころと比べれば武器の切り替えがいくらかスムーズに行えている。
そのうえ、ユグドラシルのころには武器切り替えの対象数が決まっていたが、今は手持ちの武器ならほぼノータイムでいくつでも切り替えられる。
お互いに転移によって長所が伸ばされているのだが、それを存分に発揮するには『慣れ』が必要になる。
剣士の真似事で冒険者として活動しマジックキャスターとしての戦いをほとんどこなしていないアインズと、取るに足らない雑魚も含めれば本来のスタイルでかなりの回数の戦闘を熟しているダンテでは転移後の習熟度が違う。
ユグドラシルでは同等であったそれも、転移後の環境では相当の差がついた結果だった。
そんなダンテの多種多様な武器の切り替えによる連続攻撃は単一武器の連続攻撃と比べても圧倒的な速度差を生み出す。
もちろん速度差だけではなく、武器毎の攻撃力も違えば重量も違うため、アインズにとっては自然と発生するフェイント染みた緩急に対応する必要もあるのが厄介だった。
ユグドラシルにおける高レベル帯のPvPは精神力の削り合いといった側面が大きい。
それも当然といったところだろう、レベルはほぼ同等、ビルドによって違いはあれどステータスも高水準でまとまっている。
戦う本人たちのプレイヤースキルも上位になればなるほどある程度は近いものとなる。
実力が離れていれば弱い方が完封されることもある。
実力が拮抗していれば、千日手にも似た膠着状態になることも珍しくはない。
故に精神力を削り相手の手を乱す必要がある。
その観点で見ればアインズは魔人化していない状態でLv80程度と抑えられてこそいるが、いつもLv100を相手に戦ってきたダンテ相手にかなり善戦しているといえる。
ロマンビルドでレベルのわりにステータスは高くなく、魔法も実用一辺倒ではない。
ユグドラシルで賭けをしていればダンテ優勢は間違いないだろう。
アインズがここまで善戦できているのは偏にアインズの戦闘スタイル故である。
相手を徹底的に分析し有効な手を講じていく、課金によって得た膨大な魔法の数々から最適なものを選択できる知識量。
特に分析に関しては長年ゲームを共にしてきたダンテ相手であれば2手、3手先を読むこともできるだろう。
ただ、現状はダンテの速さに若干の遅れをとっているに過ぎないのだ。
一方でダンテもアインズの手口は何度も見てきている。流石にアインズの覚えている魔法をすべて把握してこそいないがアインズが好んで使う魔法の傾向はしっかり押さえている。
だからこそ、攻撃速度で一枚上回るダンテが若干押しているのだ。
しかし、一方では切り札を1枚封じられてしまっているダンテは現状で決め手に欠けている。
「
「ちっ! Keep still!!」
アインズが読んで字のごとく時間を停止する魔法を放つと、ダンテがそれを相殺すべくクイックシルバーを発動する。
そんなやり取りが定期的に繰り返されることで、アインズはダンテの切り札である魔人化に必要な魔力を消費させているのだった。
だたし、アインズもいたずらに時間を浪費するだけでは
互いに異形種で疲労は無効であるためアインズはMP切れが負けとなる。対してHPがある限り動き続けるダンテは持久戦に持ち込みさえすれば勝てるのだ。
すなわち遅かれ早かれ決着はするが、アインズはMP切れ前に、ダンテはその気性故に早期決着を望んでいた。
その他にもダンテとしては守護者が乱入してくる可能性も考えている。
それこそ、いま同じ場所にいるマーレが参戦した場合、勝てる可能性は今より格段に落ちることだろう。
故にそれぞれの攻撃は苛烈さを増し暴風となって吹き荒れる。
三度ダンテのリベリオンを突き出す突撃を咄嗟に
「しまっ!?」
「何回も同じ手を使うんじゃねぇよ!!」
気付けばショットガンを突き出したダンテが目の前に迫っていた。
それを認識した次の瞬間アインズは顔面に衝撃を受け吹き飛んだ。
しかも、衝撃の割にダメージは多くない。ダンテの宣言通り手加減されているようだった。
アインズが体勢を立て直し前を向いた時には、すでに目の前に青白い蝙蝠の群れが迫っていた。
身体中を走り回る電撃にダメージを受けつつも麻痺などのバッドステータスは無効化しているアインズだったが、ついにダンテにローブの胸倉を掴まれた。
「歯ぁ食いしばれよ?」
ダンテはイフリートを装備した拳を叩きつけるようにして振り下ろした。
アインズが叩きつけられた地面にはクレータができ、殴られたアインズの顔の骨には罅が入り、ダンテの宣言通り若干陥没している。
「で?目は覚めたか? モモンガさん」
「…………」
「この行動をみんなに胸張って報告できるなら何も言わないですよ。こんなの胸張るどころか、報告もできないでしょ?」
「……そうですね」
ダンテとしては王都での悪魔召喚騒ぎも納得していないが、あれはイレギュラーも多分にあったので仕方ないと感じるところはある。
そもそも、悪魔なんて召喚しなければよかったと思ってはいるが……
「ここまでやらなくたって戦争は勝てるんですよ、省エネでいかなきゃ。手の内を見せるなんてモモンガさんらしくもない」
「その通りですね。情報は武器だと散々教わってきたのに……」
「こんなこと言いたくないけど、ナザリックの環境が悪すぎる。あとモモンガさんも人間辞めすぎ。マジでナザリックの宝物庫で人化のアイテムを探してみるべきじゃない?なかったっけそういうの?」
多少アバターに引っ張られるところがあるとしても今ほどじゃないはずだと考えている。
~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~
「なんなのだ……」
思わず呟いたガゼフの言葉はこの場に残った3人の共通の感想といえる。
3人揃って最初の一合で巻き起こった爆風に吹き飛ばされ、しかし何とかその戦いを目に焼き付けようと起き上がれば、そこには理解不能の光景があった。
最初から勝ち目などないとは思っていた。
一騎打ちの後、敗れた己の後に続く者にほんの少しだけでも情報を残すことができればと考えていた。
ガゼフはそんな小さな希望すら高望みであったことに気付いた。
もともとゴウン殿もダンテ殿も自分とは隔絶した強さを持っていることを理解していたつもりだった。ダンテ殿はついさっき自分が手も足も出なかった漆黒の怪物を極僅かな時間ですべて屠っている。
それにしても次元が違いすぎる。
二人が戦っているのは状況からわかるがそれだけだった。
どのように戦っているのか視認できていないのだった。
一時期、ゴウン殿の拠点にいたというブレインが言っていたことをふと思い出した。
『あの場所では俺はほんの小さな虫ケラ以下の存在だった』
ブレインほどの男が一体何を言っているのかと思ったものだが、今は納得してしまっている。
彼らが自分を下すことは『赤子の手を捻るより容易い』という言葉以上にもっと容易いのではないだろうか。
何がゴウン殿との一騎打ちで少しでも後に続く者に情報をだ……瞬く間に決着がついて情報もあったものではない。
そうなることが脳裏に浮かぶ。
周辺国家最強などとは言われているが、上には上がいることはもちろん認識していたし、自らに近い位置にブレインをはじめとした強者がいることも理解していた。
そのつもりだったが、それでも自分が驕り高ぶっていたのかと思わずにはいられなかった。
「ぐぉっ!!」
どれほどの時間が経っていたのか、戦いの趨勢が分からないにも関わらず、その場に留まり様子を見ていると今までの爆風とは桁が一つ違うような勢いで吹き飛ぶ。
下手をすればクライムなどはそのまま死んでしまうかもしれないという勢いだった。
痛む身体を無理に起こし、二人の様子を見るとクライムは気絶しておりそのすぐ近くにたブレインはダメージを受けつつもクライムのそばで刀を杖にして立ち上がろうとしていた。
どうやら、ブレインがクライムを守ってくれたようだった。
ホッと一息つき、戦いの場に視線を戻せば、先ほどまでとは打って変わって静まり返っていた。
鏡のように景色を反射する水たまりのようなものを残し、ダンテとアインズが忽然と姿を消していた。
すでに信用はありませんが、極力早めに次話上げられるよう頑張ります。