「なんという事だ…‼」
研究室で男は思わず叫んでしまった。普段の彼を知るものなら、それがどれだけ異様なことだか分かるだろう。
彼の名は茅場晶彦
世界初のVRMMORPGを作った人で、その天才性は世界中が認め、賞賛されていた。彼の作ったソードアート・オンラインが正式サービスを開始したその日までは。しかし、彼の世界が今まさに、壊されようとしていた。
「1万人近くの人間を巻き込み…ようやく私の理想が動き出したというのに…‼」
彼は凄まじい勢いでキーボードを叩く。アインクラッドに入り込んだ異物を取り除く為に、必死になってキーボードを叩く。先程の声同様、普段から余裕のある、落ち着いた彼からは全く想像出来ないような焦りと激怒の表情は、その場にいる神代凛子を酷く動揺させた。そもそも、緊急用に用意はしていたがこの2年間ログインしっぱなしだった先輩が緊急用のログアウト権を使っている時点で凛子の思考は停止していた。
「STLを今すぐ起動してくれ!スキャニング後、私の意識をカーディナルに直接保存する」
彼の並々ならぬ気迫に凛子は動揺しながらもなんとか思考を再開し、その緊急性が相当のものだと理解して、茅場に従った。たとえ可能性が限りなく0に近くとも、残りの数%にかけて出るしか 天才 茅場晶彦ですら解決策が思いつかなかったのだ。そこまで凛子も理解し、STLを起動させた。
そして、ソードアート・オンライン正式サービス開始から2年後、茅場晶彦の肉体は死を迎えたのである。
其処には確かに、巨大な城があった
無限の蒼穹に浮かぶ巨大な石と鉄の城
内部にはいくつかの都市と多くの小規模な町や村、森と草原、湖までが存在していた。
しかし、今はもうその面影はまるでない
かつてあった町や村は、規模によっては凄まじい活気による喧騒にあふれていたが、現在はそれとは真逆の、悲鳴や断末魔により支配されている。さらにそれぞれの階層ごとに定められたテーマに殉じた街並みは、黒く、禍々しく、そして忌々しく一面を均一化させていた。
かつてあった森も草原も、ジメジメとした空気と、町や村を飲み込んだものと同質の真っ黒な何かに侵されている。
唯一難を逃れたように思われた湖だが、それを囲っていた美しい野山の景観が無ければ結局は同じである。
アインクラッドの上部からそれはジワジワと、しかし着実にアインクラッドを変質させていった。
そして、そこに放り込まれたプレイヤーたちは、もう何度目になるかわからない絶望を、これまでの何倍も味わうことになる。
この時点で攻略は、73層まで進んでいた。
ハイ、いきなりオリジナル設定があります。
1 茅場専用ログアウト権
2 STLプロトタイプが既に存在する
次回もお楽しみに~