これから
断末魔が鳴り響く。手足を切断してすぐにその場を離れる。こんなにも体力を使うマッピングは初めてだ。当たり前か。もう攻略を再開して2週間が経ち、既に87層のアクティベートまで終わった。敵からは逃げるだけ、ボスも居なければこんなものか。急がなければどんどん一般プレイヤーが犠牲になっていく。もし奴らがプレイヤーを連れて行くだけで、必要以上に攻撃してこなければこんなに急ぐことは無い。しかし奴らは基本的に連れて行く事よりもプレイヤーを倒す事に重きを置いているように感じる。もう何度もHPがレッドゾーンまで削られたからこそ言える。奴らはこれ以上仲間が増えても意味が無いと分かっているのだろう。だから容赦なく襲ってくる。減ることの無い、減らしてはならない敵。いつまでもそんなのを相手取りながら終わりを目指せば良いんだろうか。
そんなことを考えていると、もう何度目になるのか分からない、しかしつい喜んでしまう恥ずかしい気持ちになる。元ボス部屋の前に着いたのだ。既に開け放たれたドア。中には俺達が命懸けで巨大なモンスターを討つ為の広めの空間。
さぁ次の層だ。急がなければ。流石にここまで上層になるとプレイヤーの亡骸は無く、全てNPCの亡骸ばかりだ。最初は一般人が巻き込まれたようにも見えてとても見ていられなかったがもう慣れてしまった。痛みなのか苦しみなのか、恐らく自分には想像出来ないようななにかが彼らを襲い、彼らを動かすプログラムに伝わり、人間に近いように作られた彼らはプログラム通りに苦悶の表情を浮かべる。ふと、下層で別れた少女を思い出す。自分の眼前に広がる壁に埋もれた有象無象と彼女が重なる。
「何を今更・・・女々しいんだよ!!!!」
近くにある卵に八つ当たりする。自分から突き放しといて、せっかく歩み寄ってくれた少女を突き放しておいて、罪悪感を感じている。今になって悔やんでいる。自己嫌悪。自己嫌悪。自己嫌悪。イライラする。いっそ自殺でもしてやろうか。
───チリッ───
!?なにかの気配がした。いや、気配と言うよりも空気が重くなった。辺りを警戒し、見回してみて、初めて気が付く。妙に奴らの卵が多い気がする。こんなに密集しているなんて・・・これのせいでラグいのか?しかし気づかなかっただけでおそらくこれは最初からあった。だとするとなにが・・・
ボッ…ボッ…ボッ…
ボス部屋の壁に最初からあった、なんとかはみ出ていたトーチに火が灯る。久しく忘れていたこの演出に背筋を凍らせる。ボスが生きていた!?でもなんで!?思考が追い付かない。
パキ…パキ…
上から音が聞こえた。関節をほぐす時のような子気味のいい音。
グチュ…ムチェチュチチ…
続いて聞こえてくるのは、卵が排泄される音。
女王が、そこにはいた。